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はじめに

はじめに

長かった景気の低迷にも、ようやく薄日がさすようになってきた。まだまだ本格的な景気の回復とは いかないだろうが、それでも、飲食店の客足が確実に戻り始めているのだ。
外食の市場規模はかつてに比べればやや縮小しているものの、それは持ち帰りの弁当や惣菜などの、いわゆる中食市場が拡大して いるためだ。再び、飲食店開店の追い風が吹き始めている。

ただし、回復基調になったからといって、昔のやり方がそのまま通用するということではない。飲食店の経営環境というのは常に変化するものだが、とりわけここ数年は、お客様の変化が激しい。
たとえば、最近のお客様はケチになったとこぽすお店がよくあるが、実は違う。バブルの頃のようなムダ遣いをしなくなっただけで、むしろ外食を楽しむことに積極的になっている。

つまり、より賢い消費者になっただけである。
だから、単純に安くさえすればお客様が入るという図式は成り立たない。もちろん、価格はお客様に 対してもっともアピールする要素だ。しかし、いまのお客様が求めているのは、ただの安さではない。
安くて上質のものを求めている。外食の目的自体がよりレジャー化しているから、楽しく豊かな気分で過ごせるということが、お店のお値打ちとしてより評価されるようになっているわけだ。

要するに、新しい時代にマッチした飲食店が求められている。いまのお客様は本当のお値打ちを見抜く目を持っている。うわべだけ飾り立てても、中身がなければ通用しない。
もはや、派手なお店づくりでお客様を集める時代ではないのである。そもそも、そんな投資をしてもペイしない。
だから、これからの飲食店経営では、最大効果の見込める「低投資」の実現がもっとも重要なテーマ になる。私が本書で「居抜き(中古)店舗」 の活用を強く提唱するのもそのためだ。居抜き店舗の魅力は、なんといっても投資額を低く抑えられることである。

従来、居抜き店舗はどちらかというと敬遠される物件だった。いまもその風潮は根強い。しかし、ではなぜ敬遠しなければならないのかと問われて、明快な答えを出せるだろうか。中古よりも新品がいい。
根拠といっても、せいぜいその程度のことが多い。
ビジネスとは、いくら投資していくら儲けるか、である。だから、経営者はある意味でケチでなけれ ばならない。ただし、たんなるドケチではダメで、お金の使い方にメリハリがなければ儲からない。

つまり、単純に居抜き店舗を利用すれば「安く上がる」というのではダメなわけで、メリハリのある 投資をしなければいけないということだ。なぜなら、飲食店はお客様が満足してくれなければ(お客様 が来てくれなければ)意味がないからである。居心地感、厨房機能など、手を入れなければならない部分には、きちんとした投資が不可欠である。
また、居抜き店舗に限ったことではないが、お店の「顔」である看板で妙にケチッてはいけない。繁盛とは、いかにたくさんの人たちにお店を認知してもらえるかで決まる。これは飲食店の成功原則のひとつである。

一方、これからの時代の飲食店経営では、多店化も重大なテーマである。経営環境が激変しているということは、お店の存続がそれだけむずかしくなっていることを意味する。と同時に、経営者自身も体力が続かなくなっていく。元気であれば、いろいろな変化に対応していくこともできるだろう。
しかし、あえてはっきりいうが、気持ちだけではどうにもならなくなる日が必ず来る。その時になっ て慌てないために、いまから多店化を目標にすべきなのだ。経営を安定させるには、最低三店持てというのが私の持論だが、そのためにも、超低投資でお店をオープンできる居抜き店舗を最大限に活用すべきなのである。

ところで、だれもがお店のオープンと簡単にいってしまうものだが、実は失敗事例の大半は、そもそものお店づくりで失敗している。お店づくりというと店舗デザインばかりに頭が行ってしまう人が多いが、本当に大切なのは、立地の選定とその立地特性の生かし方である。
立地特性と業種業態がマッチしなければ、どんなに「いいお店」を出しても成功はできない。とにかく、ビジネス発想をしっかりと持つことだ。そうすれば必ず、居抜き店舗のメリットがはっきりと見えてくる。あとは、そのメリットをいかに取り込み、どう生かしていくかである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。