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「多店化」こそ最大のテーマ

「多店化」こそ最大のテーマ

これからの飲食店経営は、多店舗展開しなければ安定しないというのが、私の持論である。たとえ個店であっても最低三店は持つべきだと考えている。そして、そのために活用してほしいのが、家賃・保証金の安い居抜き店舗なのだ。ここ一〇年ほどで、飲食業界は大きく様変わりしている。まず、お客様のニーズがどんどん変化、多様化している。時代が変わればお客様のニーズが変わるというのは当然の話だが、最近は変化のスピードがますます速くなつている。

バブルがはじけた後の長期不況もこの業界を大きく変えた。飲食店は昔から不況に強い商売といわれてきた。それは事実だったのだが、その神話に陰りが出てきたのである。外食のマーケットそのものの縮小化に加え、再開発や大型商業施設の出店。撤退などによる立地の急激な変化も目立つ。さらに、個店の場合、繁盛店が衰退していく大きな要因がもうひとつある。それは、経営者が年をとっていくということだ。いまはお客様のニーズに対応できていても、お店そのものを存続できなくなる日が必ず来る。

飲食業は一種の製造販売業である。とくに個店の場合は、多品目少量生産・販売が基本だ。そのため、労働集約性が極めて高い。つまり、他の業界に比べて非常に人手がかかる仕事である。お客様を迎えるためには朝早くから仕込みをしなければならない、午後のアイドルタイムすら仕込みに追われるのがふつうだ。もちろん、営業のピーク時には猫の手も借りたいほどの忙しさになる。そして、閉店後の後片づけ。繁盛すれば繁盛するほど、まさに体力勝負になる。

結局、経営者をはじめとするスタッフの頑張りによつてかろうじて支えられている。それが個店の宿命だ。しかし、現実問題として、そんな重労働をいつまで続けていくことができるだろうか。年齢を重ねれば、体力は確実に落ちていく。経営者一人の力でどうにかなるというのは、いま現在の話であって、将来の保証にはならない。しかも、年金や保険すらアテにならなくなる時代である。

私が積極的な多店化をめざそうといつているのは、そういう理由からである。 一店をなんとか守り抜こうという消極的な経営姿勢から、なんとしてでも二店日、三店目を出店していこうという発展型経営に、頭を切り替えるべき時期にきているのである。

では、どうして最低でも三店なのかというと、三店あれば、もしも一店がダメになったとしても残りの二店でより有利に生き残ることができるからだ。

というより、一店を守るためだけにアクセクして年をとつてしまうというのでは、あまりにも悲しいではないか。せっかく飲食店をオープンして、繁盛させようと努力するのである。その先には、経営者としての楽しい人生が待っていてくれなければ、頑張りも続かなくなるだろう。これからの時代、飲食店の経営者として楽しく生きるためには、「多店化」こそ最大のテーマになる。

多店化などというと、大手のような資金力がないとか理由をつけて、自分には関係のないことと思い込んでしまう人がいるが、実はそんなことはない。要は考え方、やり方の問題なのである。とくに、これからお店をオープンしようという人には、声を大にしていいたい。あらかじめ、少しずつ経営規模を拡大することを計画に織り込んで、その目標に向かって経営を進めてほしい、と。これを私は「ステップアップ方式」と呼んでいる。

実際、私たちコロンブスのたまごでは、小規模店からスタートし、三年目に二号店、五年後には三号店を出店する三段階方式の開業支援を行っているが、そこでも居抜き店舗を積極的に活用している。たしかに、多店化していくには資金力が不可欠だ。しかし、居抜き店舗は物件取得費や家賃が安いばかりでなく、厨房設備機器類や什器備品類など、お店のオープンに必要なものがひと通り揃っている店舗である。そのため、出店の投資額自体を非常に低く抑えることができるというメリットがある。

現状維持の発想は必ず衰退を招く。これからの時代を楽しい経営で生き抜くには、多店化への明確な意志を持たなければいけない。居抜き店舗をどう活用するかは、まさに時代のテーマでもあるわけだ。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。