飲食業のメリットは、とくに技術や経験のない素人でもチャレンジできるということと、他のビジネスに比べて投資額がそれほどかからないということ、そして粗利益率が抜群に高いということである。つまり、お金の面での大きなメリットが二つもあるわけだ。
まず投資額だが、通常、小さな個店であれば初期投資額は概ね2〜3000万円以内に収まる。この程度の資金であれば、脱サラの人でも十分に用意できる金額の範囲内である。実際、貯金と退職金などを元に借入を起こして、独立開業する脱サラの人たち(飲食業の素人)は数えきれないほどだ。
粗利益率というのは、売上高から材料原価を引いた残りの金額で、売上高に対する粗利益の割合を粗利益率という。飲食業の粗利益率は65〜70%が標準だが、これは一般の小売業の粗利益率の3〜4倍、場合によっては五倍という高率である。さて、お店を運営するには、材料費のほかに人件費(社員人件費、パート・アルバイト費)や店舗の家賃、水道光熱費などさまざまな費用がかかるが、これら材料費以外の費用はすべて粗利益から支払われる。そして残った金額が利益となる。
これは小売業でも同じなのだが、粗利益率の高い飲食業は、粗利益率の低い小売業に比べて、各費用を支払うための余裕が大きいということになる。飲食業界は他の業界に比べて小さな個店が圧倒的に多く、しかも儲かっているが、これは実は、粗利益率の高さの恩恵があるからなのだ。
しかし、粗利益率が高いといっても、売上高が決まっている以上、各費用の支払い能力には上限がある。つまり、できるだけ利益を出すためには、できるだけ経費を抑えなければならない。当たり前の経営の基本である。
ただし、飲食店の経営には、経営努力では圧縮できない費用がある。それは家賃と借入金、この二つの費用だ。家賃というのは、営業していようがいまいが、毎日欠かさず発生するものである。また、借入金の返済も待ってはくれない。毎月きちんと元金と金利を支払っていかなければならない。
逆にいえば、同じ売上高でも利益を確実に大きくするには、まず家賃を低く設定することが不可欠ということになる。また、できるだけ借入金を小さくして、毎月の返済額を低く設定する必要があるわけ
だが、借入金が少なければ投資額の回収も早く進み、より大きな利益を得ることができるようになる。
そこで、居抜き店舗のメリットが浮上してくる。前節で説明したように、居抜き店舗でのオープン資金は通常の新店舗(カラ店舗)の3分の1である。この超低投資であることが、利益を出しやすいという飲食業ならではのメリットを最大限に引き出してくれるわけだ。少ない元手でたくさん稼ぐというビジネスの原則を考えれば、居抜き店舗活用がどれだけ有利かが、よく理解できるはずである。