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お客様に好かれるお店の雰囲気とは

お客様に好かれるお店の雰囲気とは

お店の雰囲気づくりにはいろいろな考え方がある。当然、経営者の好みもある。しかし、どんなお店にするのであれ、絶対に守らなければならない基本がある。それは、
・清潔感を磨き上げる
・居心地のよさを追求する
の二つである。

飲食店では清潔感が大事ということなど、だれにとっても常識だろう。なにしろ、飲食店はお客様が飲食する場である。しかも、お金をいただくのだ。不潔であっていいはずがない。こんなこと、だれでもわかっていることのはずである。しかし、人間、頭ではわかっていても、なかなか体が動かないもの。そして、実は清潔感の維持はその最たるものなのである。わざわざ「磨き上げる」としているのは、そのためだ。

ところで、清潔感が飲食店にとって大事なのは、衛生の問題からだけではない。この節のテーマである「雰囲気」を大きく左右してしまうことも忘れてはならない。雰囲気づくりというと、すぐに内装デザインにばかり頭が行ってしまう人が少なくないが、どんなにカッコのいいデザインにしたところで、清潔感の感じられないお店ではお客様の支持は得られない。おした居抜き店舗であっても同じである。

次に、居心地のよさについて考えてみよう。お客様に心地よいと感じてもらうには、イスの座り心地が大切なことはいうまでもない。しかし、それ以上に大事なのが客席のレイアウトなのである。飲食店の売上は客数と客単価で決まる。同じ客単価なら、 一人でも客数が多いに越したことはない。小学生でもわかる算数である。そのため、どうしても席数を欲張りたがる傾向がある。その気持ちはわかるのだが、実はこのことが、お客様の居心地を決定的に悪くする原因になっているのだ。繰り返すが、飲食店はお客様がくつろぐための場所である。しかし、ぎりぎりまで客席を増やして、目一杯に詰め込まれるようなお店で、はたしてお客様は心からくつろぐことができるだろうか。

飲食店の客席で、お客様がもっともイヤがるのは狭苦しさだ。たとえばカウンター席。七席が限度なのに無理して八席取ったとしよう。計算上は一人客数が増えることになる。しかし、そうそうお店側の計算通りにはいかないものだ。

イスとイスの間隔が狭いために、イスヘの出入りが大変なばかりではない。食べたり飲んだりするにも、隣のお客様のヒジなどを気にしなくてはならなくなる。もちろん、業種業態にもよるが、通常、お客様はそういうお店を敬遠する。忘れてはいけないのは、お客様はお店を選んで利用しているということだ。

成功するお店とは、お客様に選ばれるお店である。選ばれるためにはどうしたらいいか。つまり、居心地のいい席にするにはどこまでが限界なのか。そこを真剣に考えなければならない。また、居心地のよさは内装にお金をかけるかどうかで決まると考えている人もいるようだが、それも客様の気分を害してしまうからだ。飲食店は、飲食を通してお客様が豊かな気分を楽しむ場所である。

薄汚れている店舗では、とても豊かな気分など味わえない。考えてみれば当たり前のことなのだが、意外と実践されていないのがこれである。ただし、飲食店に求められる清潔感とは、 一応は掃除をしていればいいというものではない。もつとハイレベルの清潔感である。これを業界ではクレンリネスと呼んでいる。クレンリネスとは「ピカピカに磨き上げた清潔感」のことである。お店のどこもかしこも、つねにピカピカに磨き上げる。これなくして、飲食店にふさわしい雰囲気はあり得ないのだということを、肝に銘じてほしいと思う。

では、どうすればクレンリネスを徹底できるのか。まず第一に、経営者自身が清潔感に敏感になることだ。クレンリネスが守られていないお店の経営者に話を聞くと、十中八九、スタッフのせいにする。なかなかいいスタッフが集まらなくてとこぼすものだ。しかし、本当の問題は経営者本人にあるケースが少なくない。要するに、経営者自身に、クレンリネスに対する厳しい姿勢がないのである。これでは、スタッフがきちんと働くはずがない。スタツフは、経営者の背中を見て仕事をしているのである。とくに小さなお店の場合は、経営者が先頭に立ってクレンリネスを実践することが大切である。

ちなみに、本当に清潔感を感じさせるお店かどうかということについて、店舗自体の年数、つまり新しいか古いかということは、基本的には関係がない。内外層が多少古くなったとしても、つねに清掃を怠らず磨き上げていれば、実に気持ちのいい雰囲気のお店になる。これは、前店の内装をほとんど利用お店側の思い込みにすぎない。たしかに、高級店の場合なら、その値段に見合った豪華な内装が不可欠になる。しかし、 一般の飲食店では、内装に過度にお金をかける必要はまったくないのである。

基本的にお客様にとつての居心地のよさとは、お金をかけているかどうかではない。気分よく過ごせるようにと配慮してくれているかどうかで決まるのだ。たとえば、季節の花を効果的に飾るだけで、なごみや癒しを感じられる空間になる。雰囲気というのはそういうものだ。絵や写真でもいいし、ちょつとした小物類を飾るのでもいい。要は、お客様の気分を盛り上げようという工夫、それが大切なのである。

別項で、飲食店の仕事とは「お客様に喜んでもらうこと」といったが、それは商品、サービス、雰囲気づくりのすべてに求められることだ。無理に席数を欲張らないのもお客様のためだし、こまめに掃除をしてクレンリネスを実践するのも、すべてお客様に気分よく過ごしてもらうためである。そういう

「心」が感じられるからこそお客様は支持してくれる。

つまり、お客様に好かれる雰囲気とは、お客様を愛するお店側の気持ちが生み出すものだということだ。ビジネスというと「計算」が先に立ってしまいがちだが、それでは結局うまくいかない。そこが飲食業のむずかしさであり面白さなのである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。