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健康志向・高齢化社会を意識せよ

健康志向・高齢化社会を意識せよ

世の中の健康志向の広がりは、いまさらいうまでもないだろう。いまや「健康」は、あらゆるビジネスの成功のキーワードといつていい。要するに、健康に悪いものは売れない時代なのだ。とりわけ飲食業では、「健康」はもつとも重要なキーワードである。なにしろ、飲食店の商品はお客様の口に直接入る食べ物、飲み物なのだ。

昔から飲食店は、お客様の健康を預かる責任があるといわれてきた。当然のことに、厳しい食品衛生管理が求められている。しかし、いまの時代は清潔というだけでは足りない。なぜなら、いまのお客様の関心事はおいしさと同時に、「安心」と「安全」にも向けられているからである。

こういう時代の飲食店が「健康志向」に無関心であっていいはずがない。繰り返すが、お客様の「健康志向」を取り込むことは飲食業で確実に成功するために絶対に不可欠のフアクターなのである。このことをしつかりと頭に叩き込んでほしい。ただし、健康にいい食事といつても、極端に考える必要はない。たとえば、病院食や栄養士のいう「健康にいい食事」をそのまま出してお客様は喜ぶだろうか。

もちろん、たまたまそういうメニューと飲食店のメニューが同じということはある。しかし、大事なことは、お客様は健康になりたくて飲食店を利用するのではない、ということだ。健康が気になるから、どうせなら「できるだけ健康にいい食事」をしたいと思っているだけなのである。ましてや、「健康」支持は得られない。

また、ひと口に健康志向といっても、客層によって意識の仕方、感じ方はかなり違うものだ。たとえば、ダイエットが気になる若い女性客にとっては、低カロリー=ヘルシーということになるが、同年代の男性客にそれが支持されるかどうか。また、同じ男性客でも、中高年になると、塩分や脂肪のとりすぎを気にするようになる。

さらに、お客様の健康への関心は利用動機によっても微妙に変わってくる。たとえば、毎日のランチのような日常的利用動機の場合は、当然のことながら健康を意識する度合いはかなり高いと見るべきだろう。しかし、たまのごちそうのような非日常的利用動機で飲食店を利用する場合はどうだろう。ある程度の健康への配慮はあるだろうが、それでもお客様の意識はずいぶんと違っているはずだ。たまにしか食べないのだから、少ししか食べないのだから、これくらいはいいのではないか。そういう気持ちになるものだ。

つまり、健康志向が定着したからといって、売れる公式が出来上がっているわけではないということだ。健康志向を取り込みながら支持される売り方はいろいろある。そこを見つけることが、成功の条件なのである。

ところで、いま世代によって健康志向が変わるといったが、これからの時代、このテーマでもっとも注目されるのが高齢化社会への対応である。ここで注意しておきたいのは「高齢者」のイメージ、先入観である。 一般に、高齢者とは六五歳以上の人のことを指すが、いまの65歳は昔の「老人」とは違う。つまり、昔からの老人のイメージで考えていると、高齢者に好かれるお店にはなれない、ということなのだ。いまの高齢者は元気なだけに外食志向も強いし、年金などでそれなりの可処分所得も得ている。潜在的にはもつとも有望な市場なのである。ただ、飲食店のほうに高齢者に対応する意識が薄いのが現状だ。だから、目立たないだけなのだ。

こういっても、まだ実感としてとらえられない人も多いだろう。しかし、これからお年寄りの割合は確実に増えていく。30年前にニューフアミリーといわれ、フアミリーレストランを後押しした団塊の世代も続々と退職期を迎えている。豊かな外食をリードしてきた彼らが「昔の老人」になるだろうか。そんなことはあり得ない。彼らの支持を取り付けられるかどうかは、飲食業界共通の最大のテーマといってもいいのだ。これからの飲食店は健康志向への対応が重要な課題になるが、これは高齢者に対しても同じことである。

誤解されては困るが、私は高齢者専用のお店をつくろうといっているのではない。高齢者というより、中高年の「大人」が落ち着いて、豊かな気分で、安心して楽しめる。そういうお店が求められているということを、きちんと理解しようということなのだ。もちろん、どんなお店にするかはあなたの自由である。ただ、若い人たちだけをターゲツトに考えていると、視野がどんどん狭くなる。厳しい競争を勝ち抜くためのヒントとして、このテーマをきちんと考えてみることだ。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。