すべてのビジネスは競争だ。飲食店も同じで、なんとしてでも他店との競争に勝ち残らなければならない。いまは昔と違って飲食店の数が多い。それだけ競争も熾烈になっている。オープンできたからといつて、それだけで安心してはいられない。では、どうすれば競合店との競争に勝ち残れるのか。その決め手が「差別化」である。飲食業で成功したいなら、この一点を徹底的に追求しなければならない。
どんなに競争の激しいエリアでも、必ず何店かの繁盛店がある。そして、繁盛店には必ず、繁盛を確固としたものとしている理由がある。お客様を魅きつける「何か」を持っていて、それを効果的にアピールしている。その「何か」=お客様を魅きつける魅力はお店によってさまざまだが、要は競合他店との違いがはっきりしているということだ。差別化とは、こういう他店との違いを明確にすることである。
差別化の方法はいろいろだが、商品、サービス、雰囲気のそれぞれで考える必要がある。たとえば、商品の差別化としてまず浮かぶのは、味の問題だろう。たしかに、おいしい料理は飲食店のいちばんの看板だ。しかし、漠然と「おいしい」というだけでは、いまの時代にはなかなか通用しない。そこそこおいしいお店はたくさんあるからだ。では、何が商品の差別化の決め手になるのか。
最大の武器になるのは、何といっても明確なオリジナルメニューである。他店では絶対に食べることのできない料理があれば、お客様は多少遠くてもわざわざ来店してくれる。ただし、オリジナルメニューといっても、たんに独自の味つけとか、珍しい料理ということではない。たとえば、変わった食材を使うとか、とくにヘルシーな食材を選んで使うというのも、立派なオリジナリティーである。ポピュラーメニューであっても、焼き方とか煮方、蒸し方など、調理方法にひと工夫を加えることで自店だけの個性を打ち出すこともできるし、盛りつけも重要な要素になる。調理技術というよりも発想の問題だ。
サービスではどうか。奉仕業としてのきめの細かい接客を徹底するだけでも、そうでないお店が多いのだから、大きな差別化の武器になる。たとえば、家庭的な温かみのある雰囲気を醸し出すサービスとか、感謝の気持ちを上手に表現するなどだ。その上で独自のサービススタイルを持てればなおいい。
雰囲気づくりでは、まず清潔感を徹底的に磨き上げることが基本だが、これも奉仕業としてのサービスと同様、本当に実践できているお店は意外と少ないため、差別化の強力な武器になる。内装のセンスやBGMなどもお客様の心を魅きつける要素だし、花や置物などで季節感を的確に表現してもいいだろう。
こうして見てみると、差別化といってもことさらにむずかしいことではない。むずかしいからできないのではなく、やる気がないからできていないお店が多いだけのことなのだ。自店にできる「何か」は何なのか。そこをつねに追求することが大切である。