前節で、設備機器類がきちんと使えるかどうか、また、空調関係の効き目はどうか入念に確認することの大切さについて説明したが、とくに換気・空調関係の設備については、その設置条件が大きな問題になることがよくあるから注意が必要だ。
最近は町の環境保全のために、飲食店に対してもさまざまな規制が設けられていることがよくあるが、換気・空調設備はその最たる例ともいえる。どうしてかというと、飲食店の換気・空調というのは、外の立場から見れば、イヤな煙や臭いなどの排気でしかないからである。
いわれてみれば当然のことなのだが、人間どうしても、自分中心に考えてしまいがちなところがある。たとえば、焼肉店の場合、お客様の居心地感を考えれば当然、無煙ロースターを採用することになる。大量の油煙が飛び散る中国料理店なら、その油煙をきれいに吐き出さなければお客様はたまったものではない。そのために、換気・空調設備があるといっても過言ではないだろう。
しかし、いうまでもなくいまの時代は、音のように吐き出しっ放しというわけにはいかない。それがまかり通っているお店がたくさんあることも事実だが、地域に密着して地元の人たちから愛されるお店として営業していくためには、そういった環境問題への配慮は不可欠になっているのである。
たとえば、最近は路面一階のお店でも、排気をわざわざビルの外壁にダクトで回して屋上に出すケースが多い。そうしないと、換気一扇から吐き出される煙や臭いが通りばかりでなく、近隣のビルにも多大な迷惑をかけてしまうからだが、この工事には想像以上のお金がかかる。
ところで、居抜き店舗の場合、この問題がクリアになっているかどうか、傍からではわからない。よくあるのが、前の経営者がこの排気の問題で周囲のビルとトラブルを起こしていたのに隠していたというケースだが、そういう物件を知らずに借りてしまうと、思わぬ出費を招くことになる。
また、譲渡される換気・空調設備が不十分なことがわかっていて、新たに設置し直そうと考えていたとしても、問題が生じることがある。ビルの構造上、設置できる設備が制約されてしまうケースである。必要な能力の設備機器を使えなければ、店内の空調がひどい状態になってしまうのは火を見るよりも明らかだろう。
なお、設置条件ということでは、看板についてもきっちりと確認しておく必要がある。看板はお客様にお店の存在を知ってもらい、来店を促すためのものである。その設置条件がいろいろと制約されるのではたまらない。たとえば、マンションの場合は袖看板が付けられなかったりするし、大きさが決まっている場合もある。これもまた、契約後に気づいても後の祭りなのである。