私はこれまで多くの飲食店を指導してきた。その経験からいうと、飲食店の成功要因は「店舗力」が7割、「経営者力」が3割。これは断言してもいい。店舗力というと、内装のセンスとか雰囲気などと勘違いする人がいるが、私のいう「店舗力」はそんなうわべのことではない。もちろん、内装の醸し出す雰囲気は飲食店にとって重要な要素だが、それだけではビジネスにならない。つまり成功できない。ビジネスとして成功するための店舗におけるトータルな力。それが「店舗力」なのだ。
具体的に説明しよう。
店舗力の第一のファクターは、出店する立地の選択と、その立地特性に合わせた適応力である。立地特性と出店するお店の業種業態が合わなければ、どんなに「いいお店」を出しても成功しない。ここでいう「いいお店」というのは、たとえば、料理がおいしいとか内装が素晴らしいという意味だ。
たしかに、経営者にとって自信のある料理とか内装は、それこそ自慢したくなる要素だろう。自信満々、こんなにいいお店なのだから成功間違いなし、と思ってオープンする。ところが、期待に反してお客様が来てくれない。
こんなにおいしい料理を出しているのに、こんなにお金をかけた店舗なのに、どうしてお客様はわかってくれないのか。その答えが探し出せずに私のところに相談に来る。これはよくあるパターンである。
失敗の原因は要するに立地選定の間違いなのだ。オープンしようとしているお店には、どんな立地が適しているのか。そこがわかつていない。また、立地を選んでしまつたとしても、その立地ではどんな業種業態が受け入れられやすいのかというビジネス発想が、決定的に欠けているのである。
飲食店に対するニーズは立地によつて大きく変わる。立地によつて発生する利用動機や客層が違う。そのため、業種業態によって成功しやすい立地もあれば、成功しにくい立地もある。これは、例の「いいお店」ということとは関係のないことだ。経営者にとっていくら「いいお店」でも、現にその立地にいるお客様の求めるお店でなければ支持されない。当然のことである。立地特性を
冷静に分析し、その特性に合ったメニュー、価格、サービス方式を採用しなければ成功はできないということだ。店舗力の第二のフアクターは、お店づくりだ。といつても、先にも述べたようにたんなる内装デザインのことではない。業種業態に合った店装にしなければいけないのは当然のこととして、同時に、お店の適正規模、客席数、そしてレイアウトのあり方を見極めること。そして、これに付加価値力があるかどうか。つまり、お客様の喜ぶ要素がどう付加されているか。そこが問われるのである。
第三のファクターは、儲かるための運営能力、つまり経営係数のコントロールが適正にできるかどうかということだ。ただし、計数管理とは、帳簿をきちんとつけられればいいということではない。大事なのは、帳簿の元になる数字のコントロール能力である。たとえば、より品質のよい食材を、より安い価格で仕入れられるルートを持っているか。よりよい人材を確保できる人脈を持っているかどうか、といったことになる。
これら三つのファクターが寄り集まって、「店舗力」を構成するのである。一方、「経営者力」というのは、人間としての魅力、人を喜ばせるサービスカ、仕事に対する情熱、そして金銭感覚である。とはいえ、初めて開業する人にいきなりすべての条件を満たせといっても、それは無理だろう。そこで、私たちプロの出番である。私たちの役割は、あらゆるファクターのプロを総動員して、マ不ジメントをサポートすることだ。そのことによって経営者がサービスに専念でき、「経営者力」を最大限に発揮できる環境づくりをすることと考えている。
つまり、私たちは儲かる条件の備わったお店づくりをする。だから、経営者は自分自身の魅力でお客様をひきつけるサービスを継続的に提供していけばいい。たとえれば、宇井義行は演出家で、経営者は俳優、そして店舗は舞台ということができようか。経営者は確実な舞台で、お客様への愛を表現し、わかってもらう努力をするということだ。
もちろん、飲食店はだれでも自力でオープンすることはできる。しかし、飲食店ビジネスの本質を踏まえた成功するための方法論として、あえて提案したいと思う。