まずいっておきたいのは、店舗引き渡し日と店舗の完成日は必ずしも同じではない、ということだ。
たしかに、 一応は工事終了日になっているが、問題なく仕上がっているかどうかは別だ。当然のことだが、もしも問題があったら完成とはいえない。
つまり、店舗引き渡し日とはあくまで、改装工事が予定通りに完成しているかどうかをチェックする日なのである。設計図、見積書、工程表と突き合わせながら、詳細にチェックする必要がある。
ところが、初めてオープンする人は、どうしてもこのチェックが甘くなる。ひと通り見て回って簡単にOKを出してしまうケースも少なくない。業者に遠慮してしまう人もいるようだが、そんなことではこの先が心もとない。また、嬉しさのあまり、つい点検がおろそかになってしまいがちなこともあるが、余計なトラブルを招かないためにも、引き渡し時には慎重なチェックを心がけたい。
チェックの方法は簡単だ。設計図や見積書と照合しながら、実際に使ってみる。それだけである。ただし、必ず業者を立ち会わせること。問題があった場合の証人になってもらうわけだ。業者不在のままチエックして問題点が出た場合、それだけムダな時間を費やすことになるし、やり直し工事が必要な場合は何かとトラブルの元になる。
重点チェック箇所は、動かす部分である。業者と一緒に、動かせるものはすべて動かしてみる。自動ドアなど電動のものはスイッチを入れて、何度も開け閉めしてみる。主導のドアや窓、戸棚、収納庫、カウンターの出入口など、戸の付いているものは、すべてきちんと開け閉めする。
こういう建て付けが肝心のものは、ちょつと試してみるだけではダメだ。ほんのわずかの引っ掛かりがあるだけでも、非常に使いづらいものになる。動きはスムーズか、何度も使ってみて確かめることが大切である。
水回りも重点チェック箇所である。もっとも多いトラブルは水漏れだが、これはただ水を流しただけでは気づきにくい。ある程度の時間、水を流しっ放しにして、水漏れがないかどうか、シンクの裏まで点検してみることだ。トイレを直した場合なども、ほんのわずかな水漏れが出る場合があるから、注意してチェックする。
また、空調関係もトラブルの多い箇所である。冷暖房の効き具合はもちろんのこと、排気工事をした場合は、千物でも用意しておいて実際に焼いて確かめてもいい。その他、壁紙などの仕上がり具合など、ひとつひとつていねいに点検していくが、昼間のチェツクで忘れがちなのが照明である。
問題があつた場合は、ただちに補修工事に取り掛かってもらう。そして、再度チエックを行い、それで問題がなければはじめて完成ということになる。最終的な工事代金の支払いもこの時にするといい。