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飲食店のメニュー表はお客様とのコミュニケーションツール

飲食店のメニュー表はお客様とのコミュニケーションツール

お客様はメニュー表を見て、食べたいメニューを注文する。当たり前のことだ。しかし、もう一歩進んで考えてみよう。そのメニュー表を見ただけで、お客様は本当に自分の食べたい料理を注文できたのだろうか。あるいは、お店が売りたいと思っている料理を注文してもらえるのだろうか。

ただ漫然と商品、価格を並べただけ。これがもっとも一般的なメニュー表である。ということは、かりに売りたい商品があったとしても、それをオーダーしてもらえるかどうかは運任せ、というのと同じ

だ。そんなことだから、せつかく自信のある商品がありながら、ほかの商品をオーダーされてしまうことになる。お薦め商品など完全に無視されている。だから、お店の本当のよさが伝わらない。

たしかにメニュー表は、基本的には商品名と価格を提示するためのものだ。つまり商品カタログ、価格リストとしての役割である。しかし、商品カタログであるならば、価格以外にもいろいろな情報を伝達できていなければおかしい。

というより、お客様はいろいろな商品情報をほしがっているのである。初めて利用するお店で、メニュー名だけを見て商品の内容がわかるお客様がいるだろうか。いるはずがない。 一、三度利用したことがあっても、それは同じだ。どんな料理かある程度の想像はできたとしても、それだけでしかない。このお店ならではのどんな特徴があるのか、素材にこだわりがあるのかなど、お客様が本当に知りたがっている情報は何も伝わらない。

繰り返すが、お客様がメニュー表で知りたい情報とは、品揃えと価格だけではないのである。もちろん価格は大切な要素だが、どんな商品なのかが知りたいのだ。だったら、必要な情報はどんどん提供すべではないか。

もちろん、それらの情報は、オーダーの際にサービススタッフが説明することである程度は伝えることができる。しかし、当たり前のことだが、すべてのお客様にすべてのメニューについて説明することなど、できるはずがない。もしもいちいち説明したとしても、お客様のほうがうんざりしてしまうだろう。

メニュー選びは外食の大きな楽しみのひとつだが、その欲求を満足させるためには、まずメニュー表で十分に商品情報を伝えなければならない。それが、メニュー表の本当の役割なのだ。だから私は、メニュー表はお店とお客様とのコミュニケーション・ツールだといつもいっている。

メニュー表にはまた、お店のお客様に対するメッセージを伝えるメッセンジヤーとしての役割もあるし、商品だけではなくお店のコンセプトに関するいろいろな情報を発信する役割もある。

しかし、もっとも大切な役割は、お店が売りたい商品を強力にアピールするための、セールスマンとしての役割である。どの商品に自信があるのか、どの商品がお薦めなのか。それを的確に伝えることで、お客様のオーダーを上手に誘導するわけだ。そういう認識でつくられたメニュー表かどうかで、売れ方は大きく変わる。たんなる価格リストと軽く考えるなど、とんでもないことなのである。

さて、メニュー表によってお客様を誘導するには、それなりの仕掛けが必要だ。まずは、お客様の目線の動きを想定した、見やすく読みやすいデザインでなければならない。最近はメニュー表のデザインを意識するお店も増えているが、重要なのはたんなる見栄えのよさではない。

最近は料理の写真を使うお店も多いが、ただ写真を載せればいいというものではない。メニュー数やメニュー表のつくりによっても変わってくるが、あまり写真が多すぎてもかえって見にくくなってしまうし、どの商品を強調したがっているのかが伝わらない。写真の有無やサイズなど、メリハリのあるレイアウトにすることが大切だ。

メニュー表自体の質感もお客様の印象を大きく左右する。別に高級感がなければいけないということではないが、あまりにチープなものではお客様の印象はよくない。自店の業態に合ったレベルで、個性的な質感を訴求することが大切だ。

また、あえて写真を使わず文字だけで表現する考え方もあるし、各料理の説明を添えるという方法もある。いずれにしても、お客様の立場に立って、お客様がメニュー選びを楽しめることを第一に考えることである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。