ひと口に飲食店といっても、さまざまな形態がある。大衆的なお店から高級な料理屋、レストランまでいろいろだ。
しかし、どんな形態のお店であろうと、飲食店である以上は、絶対に変わってはならないことがある。それは「お客様に尽くす」ということと、「お客様への感謝の気持ちを忘れない」ということだ。よく「お客様は神様」というが、まったくその通り。であるなら、すべての面でお客様第一の視点から発想し、お客様の満足を最優先する姿勢が徹底されていなければならない。
そんなことは当たり前のことじゃないかと思う人もいるだろう。しかし、現実は違う。あなたもお客としていろいろなお店を体験しているはずだが、すべてのお店で、本当に大事にされただろうか。本当に親身になって尽くしてくれただろうか。よく思い出してみてほしい。「当たり前のこと」としてお客様に尽くしているお店は、むしろ少なかったのではないだろうか。
では、なぜ飲食店はお客様に尽くさなければならないのか。お客様に愛され、支持されるためである。お客様に対する愛がないのに、お客様には愛されたいなどという自己中心的な考えは、世間では通らない。お店が繁盛するということは、言い替えれば、多くのお客様にお店の愛が受けとめられている証拠である。
飲食店やホテルなどでの接客の心得を表す言葉として、ホスピタリティーという言葉がよく使われる。ホスピタリティーとは、もともとは疲れた旅人や病人を手厚くもてなしたり看護したりするという意味で、病院(ホスピタル)の語源でもある。これが「尽くす」ということだ。このサービス業としての原点を見失ってしまつたら、もはや飲食店とはいえないのである。
もちろん、営業を続けていれば一応は飲食店ではあるだろう。しかし、問題はお客様が価値ある飲食店として認めてくれるかどうか、ということである。ここを勘違いしてはいけない。飲食店で成功するというのは、より多くのお客様に認めてもらえた結果なのだ。
ところで、ここで大事なのが「お客様に対する感謝の気持ち」である。
言うまでもないことだが、飲食店はお客様が入ってくれなければ経営が成り立たない。お店を開いていられるのは、お客様が利用してくれた=お金を払ってくれたからである。経営者はもちろん、お店で働く人たちが生活していけるのも、お客様が払ってくれたお金=売上があるからだ。
だから、お客様が来たら「いらつしやいませ」と頭を下げる。まず、来店してくれたことに感謝するわけだ。お客様が帰るときには「ありがとうございました」と、また頭を下げる。利用してくれたことに対する感謝の気持ちを表すためだ。そして、お客様がお店にいる間は、お客様ができるだけ楽しく豊かな気分を味わえるように尽くす。これが、飲食業というビジネスの本質なのだ。
たしかに、外食は経済行為である。だから、利用したらお金を払ってもらうのは当然という人がいる。しかし、そもそも利用してもらえなければ話にならないのだ。そこをよく考えることである。