飲食店で確実に成功するためには、飲食業とは「付加価値」を売るビジネスなのだということを、きちんと理解しておかなければいけない。
前項で述べたように、飲食業の粗利益率はきわめて高いが、お客様はなぜ、それを認めてくれるのだろうか。いまはコンビニやスーパーに行けば、たいていの食品が揃っている。しかも飲食店に比べてはるかに安い。それにもかかわらず、お客様は飲食店を利用する。なぜなのか。それは、飲食店はたんなる食べ物や飲み物を売っているだけではないからだ。食べ物、飲み物に付加価値をプラスして売っているからなのである。
飲食店の付加価値は次の3つの要素からなつている。
①商品(料理、飲み物)
②サービス
③雰囲気
そして大事なことは、お店の価値とはこれら3つの付加価値の総合力で決まるということだ。たとえば、お客様のお店への評価として、「このお店は料理はおいしいけど、どうもサービスが悪いね」とか「あのお店は感じはいいんだけど料理がまずいね」とか「料理もサービスもいいんだけど、店内が汚いからあまり行きたくないね」といつた声をよく聞くが、これはまさに、飲食店の価値が総合力であることを言い当てている。3つの要素のうちのどれが欠けても、お客様の満足度は低くなってしまう。
いま、飲食店の最大のライバルはコンビニといわれるが、小売業のコンビニとサービス業の飲食店が競合してしまうのは、付加価値の足りない、感じられない飲食店が増えているからなのだ。
誤解のないように断っておくが、ここで言う付加価値とは、お客様にとっての価値である。たとえば、粗利益率が高いのは調理の手間賃が入っているからだとか、食べる場所を提供しているから当然、という経営者がいるが、そういう発想からは、お客様が求めているものが見えてこない。だから繁盛できない。
たしかに飲食店には、調理代行業や場所提供業の要素が含まれる。しかし、それが付加価値として認められるためには、料金を支払う対価としてお客様が期待するレベルをクリアしていなければならない。高い粗利益率に見合った付加価値が感じられなければ、お客様は支持してくれないのだ。いわゆる繁盛店と不振店との差は、この付加価値の大きさや質の違いである。
飲食店の売り物は商品だけではない。いくら料理がおいしくても、サービスに不満があったり不潔感を感じるようではお客様は満足してくれない。当然のことである。
料理や飲み物、プラス人的サービス、お店の内装の醸し出すムード、そして飲食するのにふさわしい清潔感が一体となったもの。それが飲食店の価値なのである。とくに、外食にレジャー性を強く求めるいまのお客様にとって、気分よく楽しくすごせることは大きな意味をもつ。
少しくらい料理がおいしくても、それだけでは材料原価の3倍の価格をお客様に納得させることはできない。もはや料理=商品だけでお客様を呼べる時代ではないのである。