小さな飲食店の場合、開業時の総投資額はそれほど大きくはない。脱サラの人たちでも用意できる金額である。ただ、用意できるといっても、たっぷりと余裕があるというわけではないはずだ。
一般には、貯金や退職金などで足りない分は金融機関からの借入金でまかなうことになるが、当然、開業予算というものがある。その予算内で収めるように借入も行うわけで、資金的にはギリギリのところで開店準備に入ることになる。そこで注意しなければならないのが、予算オーバーである。
資金不足に至る原因で最も多いのは、店舗の物件取得費やお店の内装工事費が予定以上にかかってしまったというケースだ。最初はこの金額の範囲内でと計画していても、物件を探しているうちに、あるいは、設計を進めているうちに、もっといい物件があったとか、もっといいお店にしたい、あの厨房機器もほしいというように、出費がどんどんふくらんでいく、というケースである。
また、 一応は予算内に収めたつもりなのに、結果的にオーバーしてしまうということもある。たとえば、厨房設備や空調設備などの見積もりが甘かったため、予想以上の費用がかかってしまったというケースだ。
資金不足に陥らないための基本は、開店に当たって必要な出費項目とその費用の下調べをしっかりとすること。これに尽きる。だいたいこれくらいだろうといった大ざっばな見積もりでスタートすると、必ず予算オーバーという事態を招くことになる。次に、 一般的な開業資金の内訳を挙げておこう。
①店舗物件取得費
保証金(敷金、権利金など。居抜き物件の場合は、別途に内装譲渡費)、仲介料、前家賃
②店舗工事費
設計料、内装。設備工事費、外装(造園工事費)、厨房設備工事費、看板工事費
③什器備品費・その他
イス・テーブル費、調度類費、レジシステム費、装飾品費、調理用具・機器類費、食器類費、事務用品費、サンプル費、ユニフォーム費、デザイン関係費(メニュー表、ロゴなど)、消耗品費、開店費(求人費、広告宣伝費、教育。開発費など)
④予備費
予定外費用の予備費、運転資金
以上はあくまで一般的な費用の項目だが、それだけでも相当の数だ。たとえば、ここでは食器類費としているが、細かく分ければ相当な数になる。食器類は、調理師経験者であっても、後になってから「あれが足りなかった」などということがよく起こるが、それに限らず素人の場合、必要なものを完璧に把握することはできない。
しかし、それでも、できるだけ細かく調べて、予算を立てなければいけない。必要なものはすべて書き出して、その一つ一つの項目について具体的な値段を確認する。この作業を綿密に行って、必要な出費を確実に積み上げていくことが大切なのである。
最後に忘れてはいけないのが、④で挙げておいた予備費である。目安としては総額の2割程度。そして、それとは別に、開店後の運転資金として売上の3カ月分程度は予算に組んでおくことだ。