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ロス・ムダをなくして飲食店運営の材料原価率を下げる

ロス・ムダをなくして飲食店運営の材料原価率を下げる

飲食業の最大のメリットは、他のビジネスに比べて粗利益率が群を抜いて高いことだ。 一般に65〜70%にもなる。

ところで、粗利益とは、売上高から材料原価を引いた残りである。ということは、まず材料費を抑えればその分粗利益が増え、利益が出しやすくなるわけだ。理屈の上では、高粗利益率というこのビジネス特有のメリットをさらに大きくできることになる。

とはいっても、単純に材料費を下げることは、商品力を低下させるだけである。お客様の目がシビアないまの時代、適正な材料費をかけなければ、他店との競争に勝ち残ることはできない。実は、 一般の飲食店が抱えている問題は、粗利益率をいま以上に高められるかどうかということではないのである。経営に求められているのは、適正な粗利益率をつねに維持することなのだ。

たとえば、予定の計算上は68%の粗利益率のはずなのに、毎月の結果は69%とか70%になっているというケースはざらにあるが、これは材料のロス・ムダを見過ごしている結果にほかならない。このロス・ムダを徹底的に排除することが、粗利益率を適正値に保ち、確実に利益を出していくことにつながるのである。わずか1%などと軽く考えてはいけない。200万円の1%は2万円である。この2万円の利益を稼ぐのに、何人の客数が必要になるのか。よく考えてみてほしい。

飲食店では通常、調理ロスや廃棄ロスなど、いろいろな材料ロスが発生しているものだ。材料原価の管理とは、このロス率をできるだけ低くするための努力のことをいう。

ロス率自体は、標準原価率と実際の原価率の差を計算すればすぐにわかる。やっかいなのは、具体的にどの材料でどのくらいのロスが出ているのかが、なかなかつかめないことだ。しかも、食材はいろいろな商品に流用されている。すべての材料についてのロスを正確に把握するというのは、実際問題として不可能なわけだ。

そこで、主要食材に絞り込んだ重点管理の必要が出てくる。細かいロスは仕方がないとして、使用頻度と使用量の多い食材のロス・ムダを徹底的に排除するのである。

ここで覚えておいてほしいのがABC分析の手法だ。ABC分析とは、通常はどの商品が売れているか、どの商品の粗利益の貢献度が高いかといったメニュー分析に用いられる分析手法である。

メニューの中には必ず、売れ筋商品とそうでない商品とが混在している。また、売れてもあまり儲からない商品もあれば、あまり数は出なくても、儲けの大きい商品もある。そういう商品それぞれの特性を的確につかみ、効果的なメニュー改定をしていくことで、お客様のニーズとのズレを修正していく。ABC分析は本来そのための手法であり、お客様の支持度を見るための出食数ABC分析、売上高への貢献度を見る売上高ABC分析、粗利益高への貢献度を見る粗利益高ABC分析の3つの手法がある。

分析といっても、やり方は簡単だ。たとえば、出食数ABC分析の場合は、まず月間の商品(品目)別売れ行き個数を集計し、個数の多い順に並べる。次に、全体の個数を100として各品目別の構成比を算出し、その構成比を順次累計する。そして、累計構成比が上位から75%までの品目をAランク、95%までをBランク、それ以下をCランクとする。これだけである。

売上高ABC分析の場合は、売行個数に単価を掛け、粗利益高ABC分析の場合は売上高にそれぞれの商品の粗利益率を掛けて算出すればいい。

さて、主要食材の管理には、このうちの出食数ABC分析を用いる。これは本来、売行個数の多い商品を特定するための分析だが、通常、売れている商品と使用頻度(量)の高い材料はほぼ一致するからである。一般に、Aランクに入るのは全商品のうちの10〜20%程度。メニュー全体で40品目とすると、そのうちの5〜6品目程度である。このごくひと握りの売れ筋商品の材料を管理するだけで、全材料の75%が管理できることになるわけだ。

実際の管理では、とくに廃棄ロスに注意したい。たとえば、魚介類や野菜類を腐らせてしまう(在庫管理のロス)ことはもちろん、野菜の皮など処理すれば使える部分を捨ててしまうなど、つまらないムダを徹底的になくすことだ。慣れないうちはオーダーミスや調理の失敗といった調理ロスも出るだろうが、できるだけ早く改善していかなければいけない。

利は元にありというが、原価管理がいい加減では、いくら粗利益率の高い飲食業でも、適正な利益を上げることはできないのである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。