どんなビジネスでも、脱サラの人が独立して痛感するのは、経費の負担の大きさだろう。サラリーマンは仕事に関わるすべての経費が会社持ちだ。自分で負担するわけではないから実感がないのも仕方がないだろう。しかし、独立したらそうはいかない。
利益とは、売上高からすべての経費(原価)を引いた残りである。ただし、「残り」といっても「結果オーライ」ではいけない。確実に利益を上げていくためには、売上高を大きくすると同時に、原価を適正な範囲に収めるための管理が不可欠になる。つまり、利益とはたんなる結果ではなく、計画的に生み出していくものなのだ。
飲食店を経営するのにかかる原価は、次の2つの費用に分けられる
①固定費
②変動費
まず固定費だが、読んで字のごとく、売上高の多少や増減にかかわらず、お店を運営する以上は固定的にかかる費用のことだ。もしも売上高がゼロだったとしても支払わなければならない費用で、代表的な固定費は家賃と人件費である。
家賃は営業日数とか営業時間にかかわりなく、店舗を借りている間はつねにかかる費用だ。家賃を少しでが落ちてくると、その負担が重くのしかかる。
次に人件費だが、表では固定費(社員人件費)と変動費(社員人件費のうちの能率給。残業手当、パート・アルバイト費)に分かれている。これについては別項で詳しく述べるが、いずれにしろ、スタッフを一雇っている以上は人件費は必ず支払わなければならない、ということだ。
リース料は厨房設備などをリースで利用する場合の費用だ。通常は5年契約になっているが、毎月一定額を必ず支払わなければならないわけだから、固定費として考える必要がある。支払い金利は、開業費用をまかなうための借入金の返済金利である。
ところで、はじめてオープンする人にわかりにくいのが減価償却費だろう。減価償却費とは、店舗の内装設備に使った費用を法定の耐用年数に基づいて、何年かに接分して、損金として落としていくための費用である。
もう少し詳しく説明しておこう。内装や設備機器は、何年にもわたっての使用が可能な固定資産である。
投資した最初の1年だけでなく、何年にもわたって利益を生み出す。そうすると、最初の年に一度で損金処理をするのはいちじるしく不合理ということになる。そこで、設備機器の種類ごとに耐用年数を決めて、按分して処理するわけである。
つまり、帳簿上では毎月の経費として扱われるが、他の経費のように現金が支出されるわけではない。取得費用はすでに支払っているからで、この費目に計上されたお金は、そつくり手元に残ることになる。そのため、通常は借入金の元本返済に当てられる。逆に言えば飲食業は、借入金の返済をしやすい会計内容になっているわけである。
その他、細かく見れば、諸税(固定資産税、自動車税)や火災保険料、法定福利費、各種基本料金(電気ガス、水道、電話)も固定費である。
一方、変動費というのは、固定費とは反対に、売上高の増減に伴って金額の変わっていく費用のことだ。代表的な変動費は材料費で、その他、社員人件費の一部とパート・アルバイト費、諸経費がある。
言うまでもなく、変動費の中で最も金額が大きいのは材料費だ。業種業態や商品政策によって変わってくるが、 一般的には売上高の35%前後になる。単純計算だが、100万円の売上高なら35万円、売上高が300万円に増えると105万円という具合に増えていく。ゆえに変動費である。
諸経費とは、ここまで挙げた経費以外の費用であり、代表的なものはエネルギー費(水道光熱費、ただし、基本料金は固定費)だが、その他、物件費、販売促進費、その他の雑費がある。もちろん、最も費用がかさむのはエネルギー費だが、その他3つの費用も馬鹿にならない。
物件費というのは、備品。消耗品費(食器、箸・ナイフ・フォーク類、テーブルマット、紙ナプキンなど)、事務用品費、装飾品費、サンプル費、メニュー費などで、修繕費もこの中に含まれる。
販売促進費とは形にならない費用のことで、販売促進費のほか、広告宣伝費、接待交際費、寄付金、諸会費などがある。
その他の雑費は、以上に含まれない経費のことで、主なものは通勤交通費(人件費に含まれる)以外の旅費交通費、通信費(電話代、郵便代)、支払手数料などがある。また、貸しおしぼり代や貸しマット、貸し植木、ユニフオームのクリーニング代、ゴミ処理費用などもその他の雑費として扱われる。