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飲食店経営の強み、小投資・高粗利益率を生かす

飲食店経営の強み、小投資・高粗利益率を生かす

前項で見たように、飲食店の経営には実にさまざまな経費がかかる。表は、飲食店の損益計算書のモデルである

損益計算書とは、 一定期間(毎月、年間)の営業成績を明確にするため、すべての費用と収益を一覧表にしたもので、これを見れば、いくら儲かったか(儲からなかった)がひと目でわかる。また、売上高と比べた各費用の割合もわかるから、適正な運営内容かどうかの判断材料になるわけだ。

準備編で述べたように、飲食業の2大メリットは、投資額が比較的小さいことと、他のビジネスに比べて粗利益率が抜群に高いことだった。投資額が小さいから、だれにでもチャレンジできる。そこまではいい。

問題は、高粗利益率のメリットをどう生かすかである。粗利益とは、売上高から材料原価を引いた残りの金額だ。ということは、この粗利益ですべての費用をまかない、なおかつ利益を出していかなければならないわけだ。粗利益率が高ければ利益など簡単に出るのでは、と思うかもしれないが、そういう考え方は非常に危険である。粗利益率が高いことがメリットなのは、あくまで利益を出しやすいということであり、確実に利益が出るという意味ではない。そこを誤解するから、つまらない失敗のケースが後を絶たないのである。

大事なのは、日標利益を確保するためには売上高はいくら必要で、経費はどのくらいに抑えなければならないのか、という確かな見通しをもつことだ。この見通しを計数的な視点でもつことが、経営の基本なのである。飲食店の経営は、支出と収入の繰り返しだ。確実に利益を出していくには、売上高を大きくするための努力と、原価をつねに適正な範囲に収めるようにする管理が不可欠になる。

要するに、シビアな原価意識をもたなければいけない、ということだ。この意識の持続と実践があってはじめて、小投資・高粗利益率という飲食業のメリットを享受できるのである。

さて、ここでもう一度、損益計算書に戻ろう。前項の表に比べて各費用の分類が細かくなっているが、大きく分類すれば、①一売上高、②材料費、③粗利益高、④人件費、⑤諸経費、⑥初期条件、⑦経常利益の7項目になる。1月の欄に入っている数字(%)は、これら7大項目の指標(適正標準値)とされている数値(売上高に対する割合)である。

損益計算書はお店の運営を始めてからの数字ということになるが、計数管理は毎月の経費だけで終わるわけではない。オープン後は、開業費用として調達した借入金を返済していかなければならないからだ。これらすべての支出を超える売上高があってはじめて、利益を確保できる。そこで大事になるのが初期条件である。

初期条件とは、地代。家賃、支払金利、減価償却費の3つの固定費(リース料、本部費があればこれらの費用も含む)の合計だ。オープンの時点で支払金額が決まっており後からの変更がきかないため、初期条件と呼ばれている。したがって、利益を出しやすくするにはまず、初期条件の設定をできるだけ低くする必要があるわけだ。

初期条件の指標の数値は対売上高20%だが、こんな数字が成り立つのは、粗利益率が高い飲食業くらいのものである。逆に言えば、他のビジネスに比べて少ない売上高でも十分に利益を出せるということだが、初期条件をさらに低く設定すれば、それだけ楽に利益が増えるということを意味する。ここが大事なところである。

また、減価償却費と純利益を足した金額をキャツシュ・フローと呼ぶ。減価償却費は帳簿上では費用だが、実際の支出を伴わない費用である。つまり、その分の現金は手元にある。したがって、キャツシュ・フローは借入金の毎月の返済可能額の上限ということになる。よく資金繰りに行き詰まるというのは、返済予定額が返済可能額を超えている場合だが、キャッシユ・フローさえしっかりと管理していれば、返済に困ることはない。

飲食店の運営にはさまざまな経費がかかるが、それらを吸収してさらに利益が出るのは、ひとえに粗利益率が高いからである。ただし、そのメリットも、適正な投資額(借入金)でなければ発揮できないが、そもそも小さなお店は、過大投資をする必要がない。小投資でオープンできるというメリットを追求することが、ひいては高粗利益率というメリットも自然と引き寄せてくれるのである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。