飲食店の泣き所は席数が限られているということだ。売上は客単価と客数で決まるが、客数アップのカベになるのが席数である。
満席状態のときに次々とお客様を断らなければならないというのは、経営者にとつて実に忍びないことのはずだ。お客様になつてくれていたら、それだけ売上が上がっている。つまり、みすみす損をしていることになるのだから、これ以上の泣き所はない。
最近は行列のできる店が話題になるが、お客様というのはなかなか待ってはくれないものだ。とくに小さなお店は、席数が少ないだけに痛い。
また、お客様の滞席時間という問題もある。限られた席数で客数を増やすには客席回転数を高めるしかないわけだが、これもなかなか思うようにはいかないものだ。込み合っているからと自分から席を立ってくれるお客様ばかりなら苦労はしないが、通常はそこまで気を遣ってもらえない。
そこで、あからさまではないにしても、お客様に帰ってほしいという意思表示をするお店もあるわけだが、お客様を追い出すような態度ではお客様の信頼は得られない。
一般に、飲食店というのは来店してくれたお客様に対応する商売と考えられている。しかし、そういう受け身の姿勢では結局、客数を増やすことはできないし、売上高も頭打ちになってしまう。そこで考えなければいけないのが、テイクアウトヘの取り組みである。
最近はテイクアウトを導入する飲食店が増えているが、 一般の小さなお店ではまだまだ少数派だ。大型店や名声店の商売と思い込んでいるようなのだが、実はそんなことはない。お客様のニーズの見込める立地であれば、積極的に取り組むべきテーマなのである。
たとえば、いま飲食店のランチタイムの最大のライバルはコンビニだが、それはなぜなのか。コンビニで売っている弁当や調理パンを買う人が非常に増えているからだ。
コンビニを利用する人たちの利用動機にもいろいろあるだろう。そのコンビニの弁当が好きという人もいるだろうし、単純に安いからという人も少なくないはずだ。しかし、圧倒的に多いのは、飲食店に行く代わりにコンビニで買う、という人たちである。そしてその理由の多くは、ランチタイムの飲食店は混んでいて
待たされるから、または時間がない、という理由だ。行列のできる店にお客様が行列してくれるのは、話題性とか人が並ぶと並びたくなる心理など、いろいろな要素がからんでいるためで、時間の余裕のない通常のランチタイムには、できるだけスピーデイーにすませたいという人がほとんどである。だから、テイクアウトが有効なのだ。
また、お店側から考えると、テイクアウトはそのための人件費がかからない、という大きなメリットがある。席数を増やす手として出前もあるが、出前のための人手が余計にかかる。テイクアウトの場合は、仕込や調理態勢を見直すことで、現状のスタッフでも十分に対応できる。
いまは便利な包材が開発されていて、スープでも何でもテイクアウトにできる時代だ。ただし、お土産ニーズにも対応するには、持ち歩いても恥ずかしくない包材を使うこと。そして、最も大切なことは、食中毒への注意を徹底することだ。