クレームとはお客様からの苦情のことである。教科書的にいえば、クレームは本来あってはならないことだろう。しかし、お客様もお店のスタッフも人間だ。現実の問題として、100%防ぐことは不可能といっていい。それなら、逃げの姿勢になるのではなく、予防策を講じた上で、それを生かす方法を考えるべきである。
ひと口にクレームといっても、いろいろなケースがある。たとえば、料理に異物が入っていたなど、お店側の不注意が原因のこともあれば、無理やり相席にされたとか、スタッフの態度が悪いといった、ちょっとした苦情の場合もある。とくに不手際がなくても、お客様にとってスタッフの相性が悪いというだけで注文がつけられることもある。
しかし、原因が何であれ、クレームが出るということは、お客様の気分を害してしまったわけである。素早く的確に対応して、何とか気分を直してもらわなければならない。どんなときにどんなクレームが発生するのかあらかじめ想定して、対応の仕方を考えておく必要がある。
ベテランのサービスマンなら臨機応変に対処できるかもしれないが、ふつうのスタッフではそうはいかない。ムッとした顔をしたり、自分には非がないからとお客様の言い分に逆らつたりすることすらある。傷口を広げて最悪の結果を招くことだけは、絶対に避けなければならない。
クレームヘの対応で最も大事なことは、スタッフ全員に「お客様の気持ちは正しい」という理念を徹底しておくことだ。飲食店は、お客様が楽しい時間をすごすための場所である。その気分を台なしにしてしまったのだから、理由にかかわらず、まず誠心誠意謝罪するのは当然のことだ。
お客様というのは千差万別で、ものわかりのいい人もいれば、そうでない人もいる。また、クレームを聞かされるのはだれだつて気持ちのいいことではない。しかし、お客様はお店に期待しているからこそ、貴重な意見を言ってくれている。こういう謙虚な意識をもって、それぞれのクレームにきちんと対応していれば、かえってお店の評価を上げるチャンスにもなるし、スタッフが成長していくきっかけにもなる。クレームを生かすとは、こういうことである。
クレームをプラスに転じるには、その原因を徹底して究明することが大切だ。たとえば、スタッフの態度が悪いというクレームがついたとしよう。本人には別に悪気はない。それなら相性の問題と済ませていいのかといえば、それは違う。本人が意識していないということは、放っておいたら他のお客様に対しても、同じような接客を続けることになる。
対処の仕方では、まずお詫びすることが先決。絶対に言い訳したり口論したりしてはいけない。もちろん、お客様の話は最後までまじめな態度で聞く。そして、あらためて誠心誠意謝罪して、責任者を呼んでくることを伝える。解決のための対応は、スタッフに任せてはいけない。必ず責任を取れる人間(経営者、店長)が当たることが鉄則である。