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飲食業の価値を決めるQSCの三要素(商品・サービス・雰囲気)

飲食業の価値を決めるQSCの三要素(商品・サービス・雰囲気)

「飲食業とは何か」を整理する

店長の仕事とは何か、ということを考える前に、飲食業とはどういう業種なのかについて、整理しておこう。なぜなら、このことを本当に理解していなければ、あるべき店長の姿が見えてこないからだ。

飲食業がサービス業だということくらい、誰でも知っている。サービス業であれば、お客を大切にすることなど当たり前のことである。しかし現実に、本当にお客を大切にしているお店が、どれほどあるのか。ランダムに100店のお店に入り、お客としての日で採点してみるといい。少なくとも、繁盛店とそうでないお客との違いが見えてくるだろう。

とはいえ、その違いをひとことで表現するのはむずかしいはずである。その違いは商品力だったり、サービスの仕方だったりで、ひとつの要素だけを取り上げて同列に並べて論じることはできない。ここに、飲食業のむずかしさがある。

また、同じような接客用語と接客態度であっても、お客として感じる居心地のよさとか楽しさは、A店とB店とではかなりの違いが出てきたりする。味もボリュームも値段も似たようなものなのに、満足感が違うというのもよくあることであるcでは、こういうお客の印象の違いは何に起因しているのか。店長たるもの、その原因を明確につかみ取っていなければならない。

居心地が悪かったり満足感が薄かったら、お客は三度と自店を利用してはくれないのである。

逆にいえば、お客は何をもって飲食店を評価するのか、ということだ。お客は飲食店に何を期待し、何を求めているか。それがわかれば、お客の心をひきつけ、繰り返し来店してもらえるようになるだろう。

よく店長の責任は利益を上げることだ、という。たしかにそのとおりだが、利益を上げるためにはまず、しかるべき売上げを確保しなければならない。利益とは、売上げからさまざまな経費を引いた残りなのだ。

そして、売上げとはお客の支払ってくれた代金である。客数が増えなければ、つまり一人でも多くのお客に支持されなければ、売上げよりも経費が上回って利益どころではなくなってしまう。

飲食店はただお店を営業していればお客が来てくれる、というものではない。お客はお店を選ぶのである。しかも、いまのお客は外食に慣れているから、お店に対する選択眼は非常に厳しい。

しかし、お客は何も法外なことを要求しているわけではない。飲食店を利用するにあたって当然のことを期待し、求めているだけである。ところが、その期待に沿えないお店があまりにも多いのが現実だ。当たり前のことを当たり前にやっているだけのお店が繁盛する、という皮肉な状況すら生まれているのである。

Q(商品)とS(サービス)とC(雰囲気)

ところで、飲食店も食料品店も同じく食べ物を売っているのだが、飲食業の粗利益率は食料品店に比べてはるかに高い。それは、飲食店は食べ物プラス付加価値を売っているからである。食料品店が物販業で飲食店がサービス業と区別されているのは、そのためだ。

つまり、粗利益率が高い分に見合った付加価値がなければ、サービス業とはいえないのである。付加価値とはお客にとっての価値であるから、それが少なければ当然、お客は評価してくれない。お客に「不当に高い代金を取られた」と思われても文句はいえない。

では、飲食店の付加価値とは何か。ふつうこれを、飲食業の三要素として、次のように表現している。

①商品(クオリティ)=Q
②サービス=S
③雰囲気(クレンリネス)=C

商品=料理の内容は、お客に十分に納得してもらえるレベルにあるか。サービスのレベルはサービス業としてのレベルを維持しているか。お客のフロアは食事をするのにふさわしい雰囲気で、かつ常に清潔に保たれているか。

これら三つのレベルがお店の代金と比較して正当であると認められれば、そのお客は支持を受ける。そして、そのレベルが上がれば上がるほど、お客は繁盛することになる。

お客がお店の評価を下すのは、ふつうは食事を終えてレジで料金を支払うときである。お店に人った瞬問から、そのお店の雰囲気はある程度つかめる。メニュー表を見れば、価格は一目瞭然である。そして料理を食べれば、味のレベルとサービスのレベルもわかる。

しかし、そういう段階では食事を楽しもうという心理が働いているから、それらの印象はふつう、判断材料にとどまっている。しかし、レジでは違う。人間は具体的にサイフが痛なときもっともシビアになるからだ。

このとき、お客が高いと感じるか、安いと感じるか。それがお店の繁盛の成否を決定づけるのである。

飲食店の価値はQSCの総合力で決まる

いまQSC〇二要素のひとつ(Q)として商品=料理を挙げたが、飲食店の価値はあくまで、これら二要素の総合力で決まるのである。

もちろん、飲食店は料理を売るのだから、商品は料理ということになる。しかし、飲食店の売りものは商品だけではない、ということだ。料理プラス人的サービス、内装の醸し出すムード、そして清潔感が一体となったものが、本当の意味での飲食店の売りもの=商品なのである。逆にいえば、これら三つの要素がバランスよく保たれていなければ、お客の支持は得られないということになる。

たとえば「うちの料理はおいしいのだから」という自信が強すぎるあまり、サービスや雰囲気に対してほとんど神経を使わないお店があるが、たいていは繁盛とはほど遠い状態だ。反対に、料理は他店に比べて格段にすぐれているわけではないのに、大繁盛しているお店もある。こういうお店を見て前者の経営者は「味がわからないお客だ」と、お客を馬鹿にしたがる。しかし、いくらお客のせいにして自己満足にひたってみても、売上げが上がらないのでは話にならない。

前者の間違いは、飲食店の売りものは料理だけだと決めつけている点だ。だから「おいしければお客は入る」と短絡的に思い込んでしまうのしかし、いまのお客はたんにおいしいだけでは満足しなくなっている。

おいしいことなど飲食店の当たり前の条件と思っている。よほど飛び抜けたおいしさと価格の安さがなければ、料理だけではお客を呼べない時代なのである。

QSC=お客が期待するポイント

くりかえすが、飲食業の粗利益率が食料品店などに比べて圧倒的に高いのは、そこに付加価値分が含まれているからである。少しくらい料理がおいしくても、それだけでは材料原価の三倍の価格をお客に納得させられない。調理技術も付加価値の一要素(料理のクオリティ)ではあるが、サービスや雰囲気とのバランスがとれてはじめて、その価値が生きてくるのである。

一応サービス要員がいたとしても、そのサービスのレベルが低ければ、お客はサービスとは思わない。逆に、どんなに愛想のよいサービスをしても、料理がまずかったり、薄汚れたフロアでは、お客は振り向いてくれない。QSCの三要素とはこのように総体としてはじめて機能するものであって、そのトータルな付加価値が、お客のお店に対する評価の対象となるのである。いいかえれば、QSCの三要素とは、お客が飲食店に期待しているポイントである。

QSCと店長の仕事

ここで、店長としての立場でQSCの三要素について考えてみよう。三要素のレベルはどの程度でなければならないのか、という命題に直面するからである。

結論からいえば、そのレベルを決定するのは会社=経営者である。店長の仕事とはおおまかにいえば、経営者が考え設定したQSCの総体的レベルを身につけて、それをつねにお客に提供できるようにすることなのだ。このQSCに関する会社の総体的レベルのことをスタンダードという。

もちろん、店長であるあなたの経験や知識を生かして、改善策を経営者に具申することはすばらしいことだ。しかし、スタンダードはあくまで、経営の理念や戦略に基づくものだということを忘れてはならない。

店長の仕事とは、その戦略を実現するための戦術である。そして実現すべきものは、店長個人のレベルではなく、会社の設定したレベルなのである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。