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店長マネジメントの基本は原価意識から

店長マネジメントの基本は原価意識から

利益に関する2つの式

店長の最終責任は利益目標の達成だが、この利益についての考え方は、次の二つの式であらわすことができる。
(1)売上高-経費=利益
(2)利益=売上高-経費
一見、何の連いもないように思えるかもしれない。
単純な等式の右辺と左辺を入れ替えただけである。しかし、経営としての考え方として見ると、この二つには根本的違いがあるのだ。

うに思えるかもしれない。
単純な等式の右辺と左辺を入れ替えただけである。しかし、経営としての考え方として見ると、この二つには根本的違いがあるのだ。

①の考え方をひとことでいえば、利益とは「売上げから材料費、人件費その他を差し引いた残り」ということになるっいわゆる「結果オーライ」で、典型的な水商売感覚である。

一方、②には、H標利益を確保するためでは売上高はいくら必要で、経費はいくら抑えなければならないか、という見通しがある。この見通しを計数的な視点でもつことが、経営の基本である。

経営は支出と収人の繰り返しである。そこで確実に利益を出していくためには、売上高を大きくする努力と、原価を適正な範囲に収めるようにするための管理が不可欠である。

ここで、あなたが今度、新規開店するお店の店長になると仮定して、お店の原価について考えてみよう。

お店を開店するためには、店舗物件の保証金と内装工事費、諸設備等の費用がかかる。そして、営業を開始すると、材料費、人件費、水道光熱費、家賃などの費用のほか、開業費用として調達した借入金の元金の返済分も支払わなければならない。利益はこれらの支出を超える金額の売上げがあってはじめて、確保できるのである。いいかえれば、原価意識を徹底させることが先決なのだ。

固定費にはどんな費用があるか

飲食業にはさまざまな原価がかかるが、それらの原価は、
①固定費
②変動費
の二つの費用に分けられる。

固定費とは読んで字のごとく、売上げの多少増減にかかわりなく固定的に必要な一定の費用であり、かりに売上げがゼロだとしても営業している限り支払わねばならない費用である。

代表的な固定費は社員人件費のうちの本給、家族手当等の部分と、地代・家賃といった賃借料だ。社員の本給は就業規則に定められている範囲内での休日であれば、その日数に関係なく一定額を支払わなければならない。家賃についても、営業日数・時間にかかわりなく発生する。したがって、売上げが伸び悩んでいるときの家賃は、かなりの経費負担になる。

減価償却費とは、店舗の内装設備に要した費用を法定の耐用年数に基づいて、毎年、損金として落としていくための費用である。

内装や設備機器は、何年にもわたっての使用が可能な固定資産である。それを使って何年にもわたって儲けを得られる。そうすると、内装工事や機器の購入をした年に一度に損金処理するのは不合理なので、稼働期間(耐用年数)に核分して処理するわけだ。したがって、帳簿上では経費として処理されているが、ほかの経費のようにお金が支出されるわけではない。すでに固定資産の取得時にお金は支出されているからである。そのため企業に内部留保されるお金ということになる。実際には借入金の元金返済に当てられるのがふつうだ。

なちみに、この減価償却費に税引後利益を加えた金額をキャッシュ・フローと呼ぶ。毎月返済しなければならない借入金がキャッシュ・フロー以内に収まらな

また、支払金利も毎月必ず返済しなければならない固定費だ。これら地代、家賃、減価償却費、支払金利の三つの固定費を合わせて初期条件と呼ぶ。開店の最初から決まっていて、動かすことのできない条件という意味である。ただ、厳密に考えるなら、厨一房設備なので、初期条件のひとつとしてとらえる必要もある。

その他の固定費には、諸税(固定資産税、自動車税)、火災保険料、法定福利費、各種基本料金(電気、ガス、水道、電話)などがある。

人件費の変動費化を高めよ

一方、変動費とは、固定費とは逆に売上げの増減にともなって支出される費用のことをいう。代表的な経費は材料費(飲食費、外注費も含む)で、そのほかに、社員人件費の一部とパート・アルバイト人件費、諸経費がある。

ここで注目してほしいのは、人件費の分解である。従来、人件費は固定費として考えられてきたが、それでは適正なコストコントロールができないことから、最近は固定費と変動費の両方の性格を併せもつ準変動費として扱われるようになっている。

たとえば、社員三〜四人のみで運営しているような小規模店なら、人件費はほとんど固定費ととらえてさしつかえない。しかし、従業員の総労働時間に占めるパート・アルバイトの労働時間比率が高くなればなるほど、人件費は準固定費の性格が強くなっていく。

そして大事なことは、変動費はコントロールが可能だということだ。このコントロールについては後で詳しく述べるが、店長として心しておかなければならないのは、固定費とされてきた人件費をいかに変動費化するかということである。

ところで、ひと国に人件費といっても、いろいろな費目がある。ふつう人件費と聞いて思い浮かぶのは、すでに挙げた社員の本給・手当にパート・アルバイトの給与くらいだろうが、そのほかに、賞与、退職金、法定福利費、福利厚生費、教育費、そして求人費も人件費に含まれる。

賞与とはボーナスを支給するための引当金だから、毎月、年間賞与を予定金額の十三分の一ずつ積み立てておかなくてはならない。退職金は賞与と違ってそれを支払った時点で会計に計上するが、会計勘定科日では法定福利費に計上するのが一般的だ。

社会保険料や厚生年金、雇用保険、労災保険などの会社負担金も、この法定福利費に計上する。福利厚生費には、従業員の慰安・レジャーなどの一般的な費用のほか、賄費(食費)、寮費、社宅費などの住居費、そしてお店に通勤するための従業員の交通費が含まれる。

教育費は図書購入費や研修費などの従業員教育にかかわる費用、求人費は従業員募集のためにかかる費用で、紹介者への謝礼もこれに合まれる。

人を一人雇うということが、いかに出費を要することかよくわかると思う。とくに社員の場合は、時間給に換算するとパート・アルバイトの2〜二・五倍になってしまうのが常識だ。この意味でも、人件費の変動費化=パート・アルバイト比率を高めることが、利益を生み出す大事なポイントになるのである。

諸経費のなかで最も大きい原価は水道光熱費だ

諸経費は表では便宜上ひとつくくっておいたが、会社の経営管理のための管理会計では一般に、
① エネルギー費 ②物件費 ③販売促進費 ④その他の雑費
の四つのグループに分けられている。

①のエネルギー費とは、水道光熱費と冷暖房費のことである。諸経費のなかでもっとも金額が大きい原価である。厳密にいえば基本料金分については固定費ということになるが、とりあえず変動費と考えてさしつかえない。

②の物件費とは、お店の中のモノに関する費用の合計である。具体的には備品・消耗品費(食器、箸、テーブルマット、紙ナプキンなど)、事務用品費、装飾品費、サンプル費、メニュー費などで、修繕費もこの中に含まれる。

③の販売促進費は、②のモノに対して形のない費用をまとめたもので、販売促進費、広告宣伝費、接待交際費、寄付金、諸会費などがある。

④のその他の雑費には、①、②、③に含まれない諸経費をまとめて計上する。主な内訳は、通勤交通費以外の旅費交通費、通信費(電話代や郵便代)、火災保険や食中毒保険などの保険料、車両費、租税公課(特別地方税や固定資産税、収入印紙代など)支払手数料、それにサービス費などである。サービス費というのはお客のサービスに関する費用で、貸おしぼり代や貸植木、貸マット、ユニフォームのクリーニング代、ゴミ処理費用などが含まれる。

店長の力量によって原価は変動する

このように、飲食店の運営にはいろいろな原価がかかるわけだが、いま見てきたように、家賃や支払い金利、減価償却費、租税公課、そして社員の給与などは現場の店長がいくら努力しても、どうにも動かしようのない経費である。

しかし、それら以外の経費、つまり変動費の大部分については、増減の余地があることがわかる。この店長の力量によって増えたり減ったりする経費のことを、店長の管理可能費という。

管理可能費の中の最大の経費は人件費である。人件費に対して厳しい原価意識をもつことが、店長のマネジメントのスタートとなる。まず、客数に応じた人員態勢をいかに正確に整えることができるか。そして、社員の総労働時間をいかに抑えて、できるだけパート・アルバイトの労働でまかなうようにしていくか。つまり、人件費の変動費化にこそ、店長の力量は如実にあらわれる。

材料費や水道光熱費に関しては、調理長や調理担当者の協力が不可欠だが、コストコントロール推進の原動力は何といっても、店長の原価意識とリーダーシップなのである。厳しい原価意識をもつことは、店長のマネジメントの基本ということができる。

初期投資額に対して毎年いくら売上げればよいのか

ところで、店舗をオープンするまでに要した費用の合計を初期投資という。その内容についてはこの項の最初で見たが、投資はすべて回収されなければならない。最初に、新規開店するお店、という前提をつけたのは、経営者の代行者である店長として、ぜひともこの投資の回収という視点をもってもらいたかったからなのだ。

そしてまた、投資はできるだけ早く回収しなければならない。回収しなければ、お店の利益が会社の利益にならないからだが、それでは、できるだけ早く回収するには、いったいどれくらいの売上高が必要なのだろうか。これがわかっていなければ、売上目標もその結果としての利益日標も立てられないのである。

投下資金が一年間に稼ぎ出した利益を総資本利益率と呼ぶ。資本効率をあらわす数値で、経営の最終日標=店長の評価である。総資本利益率は次の式によって求められる。
総資本利益率=資本回転率×売上高利益率=(売上高/投資額)×(利益/売上高)
一般に、初期投資額は最低でも年間売上高と同額でなければならないとされるが、売上高利益率を10%としてこの式で計算してみると、
総資本利益率=1×0.1=0.1
となるのつまり、毎年投資額の10%ずつ回収してていくわけだから、回収速度は10年ということになる。

しかし、ホテルや高級レストランのように投資額が非常に大きい場合はともかく、一般の飲食店で10年では、回収速度が遅すぎる。ふつうの回収速度の目安は7年くらいが常識とされ、成長いちじるしいお店の場合は五年で回収している。

5年で回収ということは、初期投資の20%を毎年回収しているわけだから、利益率を同じ10%として先の式に当てはめると、
0.2=(x)×0.1 x[基本回転率]=2
となって、投資額の三倍の売上高があることがわかる。一億円投資したのなら、二億円の売上高があるということである。

お店の条件によって一概にはいえないが、最低でも投資額の1.5倍以上を売るというのは、店長として当然の目標である。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。