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今こそ従業員への「教育・訓練・しつけ」が大切な理由

今こそ従業員への「教育・訓練・しつけ」が大切な理由

店長の責任と教育・訓練・しつけ

よく、 一口に教育・訓練。しつけという。また、これらの言葉が混同されて使われることが多い。たしかに、これら二つには、きちんとした境界線を引くことはむずかしい。しかし、従業員の育成にあたっては、この三つを区別して考え、実践する必要がある。それぞれに目的性をもたせることで、育成される側の従業員が理解しやすくなるからである。

ところで、従業員の育成が大切なことはわかるが、それがなぜ店長の責任なのか。育成が重要な理由については、いうまでもないだろう。お店の売上責任をわきまえている店長なら、誰でも従業員の戦力としての強化に日を向ける。

では、なぜそれが、店長の責任なのだろうか。店長は現場の責任者だから。店長は従業員のもっとも身近な上司だから。個との従業員の性格やレベルをもっともよく知っているから――ふつうはこういう答えが返ってくる。どの答えも、それぞれ正しいが、それで十分とはいえない。肝心なことが二つ抜けているからだ。

それは次の二つの理由である。
①店長は部下の待遇を求める評価者だから
②売上予算にもとづく毎日の行動目標をつくるのは店長だから

これらは「現場の責任者」という答えと一見、同じように見える。事実、現場の責任者というだけで、ほかのすべての理由を呑み込んでいる店長もいる。しかし、私の経験では必ずしもそうではない店長が少なからずいるのである。

以上の「店長の責任」を頭に叩き込んだうえで、従業員の教育・訓練。しつけについて考えてみよう。

店長の責任でおこなうべき教育の内容

教育という言葉は定義がむずかしいが、お店という限定されたなかでは、飲食業という仕事についての基礎知識を与え、お店で働くことの意義を教えること、というふうに理解して間違いない。つまり、仕事の目標を明確にしてあげることで、ヤル気を引き出すことだ。明確な目標が見えて、そこでの自分の存在意義を理解できると、人間のヤル気はどんどん高まっていく。

もちろん、飲食業に従事する者として恥ずかしくないだけの教養を身につけさせることも、大事な従業員教育ではあるが、ここまでカバーできるかどうかは、経験者の経営思想にかかってくる問題だ。

店長の責任でおこなうべき教育とは、会社の経営理念(社会的使命に対する考え方や明日の会社像など)を教えることと、社会人としてお店の仕事に取り組む姿勢を教えることで、お客に対するサービス精神の教育は、どらちのテーマにとっても大事な柱になる。

飲食店に必要なのは訓練としつけで、教育など意味がない、という経営者もいるが、それは間違いだ。サービス業とは人間対人間の仕事、モノを通して心を売る仕事である。お客の満足感は、接客技術だけでは得られないということを、肝に銘じるべきである。

0JTを上手におこなうのも店長の能力次第

教育は従業員の精神面での育成であり、一種の人格形成活動である。したがって、実施したからといってすぐに、日に見える形で効果のあらわれるものではない。教育を軽視するのはそのためなのだが、それに対して訓練は、具体的な作業を身につけさせることであり、効果は段階的にはっきりとあらわれる。

訓練でもっとも大事なことは、決められた作業を100%できるようにすることだ。つまり、お店のスタンダードをマスターさせることであり、完全に身につくまで繰り返しやらせることが大切だ。訓練は、店長がもっとも時間を費やさなければならない部下の育成活動である。店長が見本を示しながらお店の現場でおこなう訓練のことをOJT (現場訓練)という。

OJTで注意するべきなのは、部下ひとりひとりの理解・習得レベルをよく観察すること。そして、訓練は教育と違って習得までの期間を決めなければならない。一定の期間内でいかに効率よく技術を身につけさせられるかは、店長の能力しだいなのである。

「しつけ」対策には信念と気迫でもって

接客サービスの仕事は奥が深いが、とりあえずパート・アルバイトにこなしてもらうレベルはそれほど高いものではない。パート・アルバイトの足りない部分は店長がカバーすればいいのであり、お店の基準どおりの動作・言葉遣いができれば、一応は合格である。

人間にはやはり向き、不向きがあって、まれにどうしても身につかないという人もいるが、ふつうは反復訓練によって一定のレベルには育成できるはずである。

「はずである」というのは、現実には、訓練の効果の見られないお店が少なくないからだ。その原因は、しつけ教育がしっかりとなされていないことにある。

たとえば、飲食業に携っている者として、お客に対して心を込めて「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」というのは常識である。お客もそう対

応されることが常識だと思っている。ところが、そういう「常識」のない人もけっこういるのである。そういう人に、たんに接客用語を教え、暗唱させたところで、いっこうに言葉に心がこもらない。また、日上の人(お客)に対する言葉遣いを知らないと、とんでもないところでボロを出してしまったりする。

人それぞれ、育ってきた環境が違うし、現在置かれている環境も千差万別である。礼儀についての常識もまた、人それぞれなのだ。とくに、いまの若い人たちは、礼儀に対しての認識が希薄な傾向がある。その原因が家庭にあるのかとか、学校教育にあるのか、といった議論はおいて、お店としては、必要な礼儀は身につけてもらわなければならない。つまり、お店の「常識」を教え込む必要があるということだ。この教育を「しつけ」という。身だしなみや勤務時間の厳守、チームワークなども、しつけによって揃えなければならない「常識」である。

しつけとは、簡単にいえば人をひとつの型にはめ込むことである。そのため、人によっては抵抗感をともなうものだ。したがって店長は、ここではこれが絶対に正しいのだ、という信念と気迫をもって従業員に対さなければならない。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。