前項では年度予算を各月別に割り振る手法について述べたが、今度はその月別売上計画を目別に割り振らなければならない。日別売上計画がなければ、別項(第4章10〜12項)で説明したワークスケジュールが組めず、店長のマネジメントの主要な柱である労働時間コントロールができないからである。
また、予算はたんなる予定ではない。実現しなければ意味がないわけだが、月次予算を確実に達成するためにも、毎日の売上計画と実績との対照が不可欠になスリ。
ここであらためて強調しておくが、月次売上高とは毎日の売上高を集計した結果ではない。なんとしてでも達成されなければならない目標値なのだ。
店長にはさまざまな計数管理が求められるが、それらの管理行動はすべて、この月次予算の達成=日別予算の達成のためにおこなわれるのである。逆にいえば、店長のマネジメントとは、月次売上計画を日別売上計画に適正に配分することからスタートするわけである。
日別売上計画を決定する方法はいろいろあるが、最初に注意しなければならないのは、飲食店の日別売上一局は曜日によってパターンが変わるということだ。したがって、単純に月次売上計画を営業日数で割って、それを目別の売上予算とすることはできない。
そこで問題になるのが、どう曜日別に配分すればいいのかということだが、その主な方法として次の四つがある。
①前年同月の同曜日の売上高に、今年の対前年比目標伸び率を掛けて算出する。
②前年同月度の曜日別平均売上高に今年の対前年比目標伸び率を掛けて算出する。
③過去二期同月度の曜日平均パターンを指数化し、それを基に算出する。
④過去三期同月度の各月売上傾向をそのまま反映させて算出する。
①の方法については説明の要はないだろうから、次に②〜④の方法について解説しておこう。
まず②だが、これはさらに、月曜日から日曜日までの各曜日ごとに算出する方法と、平日、土曜日、日曜・祭日の3分類で算出する方法とに分かれる。平日といっても月曜日から金曜日までの各曜日によって売上げの波が大きい場合は前者とするが、平日の各曜日に大きな違いがなければ、後者の3分類でもさしつかえない。
次にその手順だが、まず、前年同月度の月間売上高を曜日別に分類(ここでは三分類)し、曜日別に売上高合計を出す。これを前年同月度の曜日別合計日数で割れば、各曜日ごとの一日平均売上高が算出される。
この各曜日一日平均売上高に対年比目標伸び率を掛ければ、今年度の各曜日別計画売上高が算出される。
土曜日売上高指数=(土曜日平均売上高/平日平均売上高)
たとえば、平日の平均売上高が30万円、土曜日の平均売上高が50万円とすれば、
50万円/30万円=1.67(小数点第2位以下四捨五入)
となる。日曜・祭日についても同様に計算して指数を算出する。
次に、それぞれの曜日ごとに、指数に合計日数を掛けて合計し、月間での合計指数を算出する。たとえば、
平日月間指数=1.00×17=17.00
土曜日月間指数=1.67×4=6.68
日曜・祭日も同様に計算し、合計指数を出す。次に、今年度の月次売上予算をこの合計指数で割れば、平日の日別売上予算(指数一・OO)が出る。これに上曜日と日曜・祭日の指数を掛ければ、それぞれの曜日別予算が求められる。
なお、②、③の方法とも、端数を四捨五入する関係で月次予算に対する誤差が出るが、これについては通常、月末(最終日)の予算で調整する。
また、②、③の方法とも、平日、土曜日、日曜・祭日の三分類で算出する場合は、月間の細かい売上げ変動要因を勘案したうえで、各日予算に振り分けると、さらに確度の高い予算になる。
たとえば、給料日の前後などによって売上げが影響される場合や、月の上。中・下旬や特定の曜日による売上げ傾向の顕著な場合、それらの特注を加味した微調整が必要になるわけだ。
④の方法は少々時間がかかるが、過去二期分の同曜日の売上げ傾向が直接、各日ごとに反映されるため、もっとも確度が高く、使いやすい予算になる。
上記は、その計算例である。
ここでまず注意してほしいのは、第4期、第5期、第6期と、日付の位置がひとつずれていることだ。これは、日付ではなく曜日に合わせているためで、表を見ればわかるように、翌月度の売上げも一部入ってくる。今月度の予算を計算するわけだが、売上げは通常、日付ではなく曜日によって変動する(祭日や連体などは別)ため、この方法が合理的なわけである。
さて、計算の方法だが、まず曜日でそろえた過去第四、五期両年度の各日実績を合計し、さらにそれを合計する。日別売上指数とは、両年度の各日実績をその合計実績で割った数字で、これが今期(第6期) の売上予算に対する各日の売上構成比を示す。したがって、今期の月次売上予算にこの指数を掛ければ、日別予算が求められる。
たとえば、6月1日(月曜日)を例に計算すると、まず、
244,000円(第5期 6月2日 実績)+233,000円(第4期 6月3日 実績)=474,000円
と、第四・五期の各日実績計を算出する。
ところで、すでに注意したように、第4・5期の月次実績欄の数字は、各期の実際売上高(第4期が12,000,000円、第5期が12,500,000円と仮定)ではない。7月1・2日の分も含まれるわけだから、第4期は6月1・2日分、第五期は6月1日分を差し引かなければならない。
12,000,000円+(241,000円+256,000円)-(475,000円+870,000円)=11,152,000円….第4期
12,500,000円+267,000円-914,000円=11,853,000円….第5期
したがって、第4・5期の月次実績計は、
11,152,000円+11,853,000円=23,005,000円
となる。次に、日別売上指数を計算する。
(23,005,000/474,000)=2.02(小数点2以下四捨五入)
したがって、第六期六月一日の日別計算は、
13,430,000円×0.0202=271,000円(1,000円以下四捨五入)と求められる。
なお、この方法でも四捨五入によって月次予算との誤差は出るので、最終日の日別売上予算で調整する。
いま飲食店の売上げは曜日別に変動すると述べたが、1日で見ると、時間帯によって変動していることがわかる。
したがって、日別売上計画と実績とを対照し、その内容を検討するためには、 一日の売上げを時間帯別に管理する必要がある。そのための基礎データとなるのが下記 「月間時間帯別売上高統計表」である。
表では、時間帯を三時間刻みに取ってあるが、これは、お客の利用動機の発生・変化と一致するからだ。各時間帯を利用動機であらわせば、
・8時〜11時=モーニングタイム
・11時〜14時=ランチタイム
・14時〜17時=ティータイム(デザート)
・17時〜20時=ディナータイム
・20時〜23時=ナイト
・23時〜2時=ミッドナイト
となる。ただし、この区分は一般的なレストランの場合で、業種業態や立地によっては時間帯の取り方が変わってくる。
もっとも単純なケースは、昼と夜の三分類である。お店によっては売上日報の中で記入しているところもあるが、データ分析のためには、日報とは別に統計表をつくるべきである。
分析は次の三つの視点でおこなう。(表はページ最下部に掲載)
①週間・月間の時間帯別売上げの推移[表6,7]
②曜日別・月間の時間帯別一日平均売上高[表8]
③曜日別・月間の時間帯別一日平均売上高の年間推移[表9]
それぞれ、売上高、客数、組、客単価をチェックして問題の所在を確認し、問題がある場合はその原因を分析する。
例示した表では前月対比までしかできないが、一年間以上データを取り続ければ、前年同月対比も可能になり、より精度の高い日別売上計画管理ができるようになる。