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材料費率と人件費率の考え方とコントロール

材料費率と人件費率の考え方とコントロール

店舗経営上、最も重要な原価

材料費と人件費は、飲食業の総原価のうち、もっとも大きな割合を占める。単純に考えれば、この2つの原価が低ければ低いほど、利益が上がる。反対にお客の側からすれば、2つの原価率が高ければ高いほど、付加価値が高くなる。では、高すぎず低すぎず、ちょうどバランスのとれた原価率はどのくらいなのか。この数字は、店舗運営上もっとも重要な数字である。

ここで大事なことは、2つの原価を総和で考えるということだ。一般論だが、材料費と人件費の対売上高比率の合計で60〜63%前後が、経営管理上の適正原価とされている。

徹底した低コスト戦略で一層の原価低減

ただし、これはあくまで一般的な平均値で、絶対の数字ではない。前後と書いたのはそのためだ。実際、ひと口に繁盛店といっても65%のお店もあれば58%のお店もある。そして、58%のお店が63%のお店よりも儲かっているかというと、必ずしもそうではない。売上高の大きさが違うからだ。同じ一%でも、売上高によってその金額はまったく違ってくる。

だから一概に理想的数字を挙げるわけにいかないのだが、どんなに高くても六五%止まり。70%では経営は成り立たない。どんな業種業態でも、お店を運営するには、諸経費と初期条件が一定率かかってしまうためだ。これは損益計算をしてみればすぐにわかる。

一方、この「適正原価」よりもはるかに低い数字の業態もある。ハンバーガーやフライドチキン、ラーメンなどの代表される、フランチャイズシステムの成功事例だ。これらのお店の材料費プラス人件費のコストは、高くて55%、50%以下という事例もある。

なぜこれほど低いのか。フランチャイズシステムでは毎月、本部が加盟店からロイヤリティを徴収しなければならないからだ。ロイヤリティや広告宣伝費は額、売上高の3〜8%程度にもなる。一般の飲食店の純利益と同じくらいのロイヤリティを徴収して、なおかつ加盟店に利益を上げさせるには、50〜55%という数字が絶対条件になる。

これを可能にしているのは、主材料に価格の低い肉と小麦粉を使った商品開発と、パート・アルバイト主体による運営システムである。もちろん、海外まで足を延ばした原材料の調達から低コストでの一次・二次加工、配送システムなどを含めたマーチャンダイジングによる、徹底した低コスト戦略も見逃せない。

ただ、最近になって、こういう業態に対する消費者の目はいちだんとシビアになっていることは、銘記しておきたい。同じ1,000円を払うのに、付加価値の低いお店をわざわざ選んでくれるお客など、常識的にはあり得ない。ここが経営のむずかしさで、費用の割合だけを操作しても、いずれ力べにぶつかる。

何度もいうようだが、いちばん大事なのは売上高なのである。いいかえれば、より多くのお客に支持されるということだ。つまり、お客を満足させることができてはじめて、適正原価といえるのである。

お客を満足させてはじめて原価を云々できる

さて、ではなぜ、材料費プラス人件費と、2つの原価を足して考えなければいけないのか。第一の理由はもちろん、これらが飲食業の二大原価だからである。

総原価に占める割合がこれだけ大きいのだから、あらゆるコストの中で最優先に管理されなければならない。

しかし、この理由だけに眼を奪われていると、飲食業の原点である「お客の満足」を見失ってしまうことになる。実は、もうひとつの理由のほうがはるかに大きな意味をもっているのだ。

それは、飲食店は商品とサービスを切り離しては成り立たないということだG飲食店の付加価値はQSC(商品、サービス、雰囲気)の3つの要素のトータルで決まる、という大原則を忘れてはいけない。

お客を満足させることができてこそ、原価を云々できるのである。お客を納得させることのできるボーダーライン、そこがサービス業としての適正原価なのだ。

材料費と人件費をこれだけに抑えているのに、いっこうに儲からないなどとボヤくお店も少なくないが、要はそこがわかっていないのだ。

売上高が上がらないのは、お客が不満を表明しているからである。さっそく、満足させ得るように、自店の数字をコントロールしなければならない。

適正なQSCのスタンダードがあってこそ、コストコントロールは可能

材料費プラス人件費の考え方は、業態=客単価によって2つに分かれる。たとえば、ステーキ専門店は材料=牛肉の品質をストレートに訴求しなければならないため、材料費率は高くならぎるを得ない。しかし、客単価が高いため粗利益の絶対額は確保できるし、加工度が低いため人件費率は低く抑えられる。結果、材料費プラス人件費の割合は適正原価におさまる。

反対に、材料費率が低い代表的業種は喫茶店だが、客単価も低く、粗利益額も少ない。そのため、人件費率は高くなるが、材料費率と合わせた割合は、同様に適正原価となるわけだ。

また、原価コントロールの考え方も二つに分かれる。料理に力を入れてそのお値打ち感で勝負するのなら、人件費を抑える。サービスを重視するのなら材料費を抑える、というわけだ。

たとえば、とんかつや刺身のように加工度が低く、材料そのものの品質をセールスポイントにする場合は前者になる。逆に、女性のサービスの付くバーやスナックは後者になる。これはちょっと極端な例かもしれないが、考え方としてはこのほうがわかりやすいと思う。ただし、あくまで「適正原価」でなければならず、人件費も材料費も、低すぎては話にならない。材料費をかけているからといってサービスがないも同然では、お客に支持されないし、その逆も同じである。

二つの原価をどう配分してバランスをとるかは、お店の売り方=コンセプトによって変わる。コンセプトが曖味では、的確なコントロールはできない。いいかえればこれは、お店のQSCのスタンダードの問題である。店長のコストコントロールは、適正なスタンダードの設定があってはじめて可能なのである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。