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発注システムのつくり方と納品伝票の管理

発注システムのつくり方と納品伝票の管理

正確な発注量を生み出す条件

正確な発注量は、次の式で求められる。
発注量=各食材の標準在庫量-現在庫量

逆にいえば、正確な現在庫量がつかめなければ、正確な発注量を決めることはできないわけだ。ということは、棚卸しは毎月一回ではなく、毎週、いや毎日でも実施する必要があることになる。

とはいえ、業種業態によっては、ひと口に食材といっても300〜400品目にものぼる。いかに棚卸しのやり方をシステム化しても、これを毎日実施するのにはやはり無理があるだろう。それに、生鮮品を別にすれば、毎日棚卸しをしなくても、発注や在庫品の品質管理に支障の出ない食材もけっこうある。そのへんは臨機応変に判断すればいい。

ただし、生鮮品を頻繁に発注しなくてはならない食材については、毎日実施すべきである。標準在庫量=適正在庫量が決まっていて、棚卸しのやりやすい仕組みもつくってあれば、それほど大変な作業ではない。

調理長とよく話し合い、飲食店として当たり前の仕事だという認識をもちたい。これができない限り、発注量はいい加減な数字ということになる。

ふつういわれる適正な在庫量とは

ところで、棚卸しと発注業務に関して必ず問題になるのが、標準在庫量である。

適正な在庫量とは、
①品切れを起こさない
②過剰な在庫量にならない
③材料の品質が劣化しない
以上二つの条件を満たす量である。

具体的には、お店ごとの売上高予測(メニュー出数予測)と業者からの配送スケジュール(配送回数)によって決まってくるが、一般には、週一回の配送の食材については、一週間の使用量プラス三〜四日分の在庫量を適正としている。日配(毎日配送)や週に2〜3回配送の場合で、出数予測×120%前後である。

ところが、実際にはかなりの過剰在庫を抱えているお店が多い。そして、そういうお店は必ずといっていいほど、毎月の材料費率の変動が激しい。なぜか。

品切れが怖いからである。そしてこの傾向は、単独店に多くあらわれる。チェーン店の場合は、出数予測を上回って品切れを起こす恐れがあれば、エリアマネージャーを通して近くのお店から食材を回してもらうことができるが、単独店はそうはいかない。そのため、どうしても多めの在庫になってしまうのだ。

店長みずから在庫チェックを心がけよ

いま、適正な在庫量の条件として三つ挙げたが、そのうち①と②とはつねに裏腹の関係にある。このコントロールの自信がないと、品切れを避けようと在庫が多めになり、それが材料の品質低下や腐敗などのロスを発生させてしまう。さらに、在庫量が多ければ、棚卸しが面倒になるから、ますます大ぎっぱな発注になる、という悪循環に陥りやすいのだ。

たしかに、品切れでオーダーストップをすることは、店長にとって大きな恥である。何よりもお客に対する裏切り行為である。しかし、正確な在庫管理ができないことは、もっと問題だ。品切れによる機会損失を防ぐことができても、正確な材料費コントロールができないのでは、店長失格といわれても仕方がない。

適正在庫量のコントロールは、正確な棚卸しを確実に実行し、必要最低額の食材のみを発注する習慣を身につけていくことで、必ず実現できる。それにはまず、店長みずからが在庫のチェックをすることだ。部下任せにするから、不安になってしまうのである。

自動発注システムは万能ではない

ところで、最近は大手チェーンや大手外食企業を中心に、POSレジを導入するところが増えている。POSを使えば、すべてのメニューの出数がたちどころにわかるから、店長の出数予測はぐんと楽になるし、発注システムにも活用できる。実際すでに、大手ファミリーレストラン・チェーンなどでは、この自動発注システムを稼働させているところもある。

しかし、自動発注システムは決して万能ではない、ということを注意しておきたい。なぜなら、このシステムが正しく稼働するには、正確な棚卸しと正確なデータのインプット、そして、1品当たりの正確な食材使用量が前提になるからである。

機械に依存すると人間は必ず、心にスキができる。それでなくても、人間であれば必ずミスやチェック洩れが出る。そして、そのミスをもっとも的確にカバーできるのは、人間の判断力なのである。

また、自動発注システムに依存してしまうと、店長の食材の状態の確認が手薄になりやすいし、食材の先入れ先出しの鉄則が崩れる元にもなりやすい。どんなに便利なシステムが出てきても、最後は人間の判断力がモノをいうのだということを、銘記しておきたい。

経費の「週間管理手法」が注目されている。

さて、飲食店でもっとも繁雑になりやすい書類は、食材を中心とする納品伝票である。備品数の伝票はそれほどでもないが、食材の伝票は1カ月でかなりの数になる。この納品伝票の整理も、店長にとって重要な業務のひとつである。

第1に、納品伝票に書かれた金額は、業者に支払う金額である。

請求書は一カ月分とかまとめて送られてくるが、その金額は、毎回お店に納品した金額を積み上げたものである。つまり、納品されるごとに、注文どおりの量と単価であるかどうかをチェックしない限り、請求書の内容について検討することはできない。意外と見過ごされているので、注意を促したい。

見過ごしている証拠に、納品時に、発注書に基づいた検品を実施しているお店は、驚くほど少ないのだ。業者に悪意はなくても、ミスは十分に起こり得る。発注書と納品書を見比べて数字が合っていたとしても、それでOKとはならないのである。

第2に、経費の計上の問題がある。一般に、お店の月次収支において、売上高はその月の分が計上されるが、経費については支払いが発生した月に計上される。つまり、当該月の売上高に対して、別の月の経費が計上されていることになる。たとえば、材料費についても、肉と野菜とでは支払い月がズレたりするのがぶつうである。しかしこれでは、店長は正確な月次収支がつかめない。

これを改善して、売上高に対する正確な経費率を毎月つかむためには、納品伝票を毎日集計することが基本になる。それを週単位で売上高と対比させるべきで

ある。こうすれば、週単位で問題点を発見できるから、早期に効果的な解決策を打つことができる。従来の月次損益は、売上高の予算管理とお店の中期的なバイオリズムを見るには適しているが、短期的な数字の把握には問題がある。たとえば、材料費に大きなブレが生じていたとする。それを一カ月後(一般に月次損益がまとまるのは翌月一〇日ごろ)に発見しても、その間の損失を防ぐことはできない。経費の週間管理手法が話題になっているのは、そのためである。

ともかく、基本は正確な棚卸しと発注、そして検品と納品伝票の整理である。これなくして正確なコストコントロールはない。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。