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これが飲食店業務の正しい教え方だ[責任とOJT]

これが飲食店業務の正しい教え方だ[責任とOJT]

徹底した訓練は、この仕事の喜びを知る近道でもある

従業員がヤル気をもって、気持ちよく働けるようにするためにはどうしたらいいのか。何よりもまず、従業員全員がきちんと仕事ができることが、その条件になる。飲食店では、お客に尽くし喜んでもらうことで、はじめて働く喜びを味わうことができる。お客の喜びがそのまま自分の喜びとなることこそが、飲食業ならではの醍醐味なのである。

ところが、きちんとした教育・訓練を受けていないと、お客にうまく対応できない。場合によってはみなの前で、お客に怒られることもあるだろう。また、同僚や先輩たちの態度も冷たくなる。これではたまったものではない。

一般に、飲食店は従業員の定着率が低いといわれるが、その要因は仕事そのものにあるのではない。仕事の教え方が悪いか、あるいはほとんど教育・訓練らしいことをしていないからである。

たとえば、人手不足のため、店長が現場の先頭に立っているお店は多い。そして、忙しいからとつい、従業員の教育・訓練がおろそかになる。だから次々と従業員が辞めていくのに、店長はいっこうに気づかないし、人手不足はどんどん深刻化していく。典型的な悪循環の構図である。

また、あまり徹底して教えると、すぐに辞めてしまうのではないかと臆病になっている店長もいるが、それは逆である。

もちろん徹底といっても程度(パワーハラスメント・モラルハラスメントなど)の問題だが、部下に対する愛情をもって教えるのであれば、訓練が苦痛だといって辞める人はいない。なぜなら、入念に訓練されることで、早くこの仕事の喜びを知ることができるからだ。そうなれば自然と、与えられた目標を達成しようという意欲が湧いてくる。

店長の体験をありのまま部下に伝えろ

誰でも最初は、仕事に対する興味をもっている。そして、自分の力を試してみたい、自分を活かしたいという意欲をもっている。その芽を摘み取ってしまわないようにすることが大切だ。

とくに、社員と違ってパート・アルバイトにとって、生活の中心はお店ではない。主婦には家庭があり、学生には学校や友人とのつき合いやサークル活動という生活の中心がある。お店での時間は、彼らにとって生活の中のほんの一部分にしかすぎない。だからこそ、その限られた時間を充実したものにしてあげなくてはならないのだ。

私自身、飲食店ではじめて働いたのは、大学一年生のときのピザハウスでのアルバイトだった。もちろん学生のアルバイトだから、動機も何もない。ほんの軽い気持ちだった。ところが、ウエイターの仕事を始めてまもなくの頃、自分がひどく感動していることに気づいたのである。仕事はピザやコーヒーを運んでいるだけなのだが、お客はとても喜んでくれる。私も一所懸命に働いていたが、なかには「君がいるからこの店に来るんだよ」といってくれるお客もいた。お店の外ではなんの個人的関係もない人たちが、お店の中ではまるで友人や後輩のような、親しい態度で接してくれる。そのことに感動したのである。

お客に喜ばれるということがどれほど素晴らしいことか。あなたの体験にもしっかりと刻み込まれているはずだ。あなたには、その体験を部下に伝える義務がある。それが、みなが楽しく気持ちよく働ける職場をつくっていく。お店の伝統とは、そのようにつくられていくものなのである。

うまくいく仕事の教え方、四つのステップ

一般に、効果的な仕事の教え方として、次の四つのステップが知られている。
①心構えをさせる
②仕事の内容を教示する
③実地に訓練する
④反復指導する

このうち、①と② のステップは、教育としつけの段階である(第2章6項を参照)。ふつうはこの二つのステップを飛ばして、いきなり③の実地訓練から入ってしまうようだが、結果的には優秀な部下が育ちにくい。奉仕業としての飲食業の本質やその社会での存在意義が理解できていないと、お客に喜ばれることの喜びがわかりにくいからだ。

次の「マニュアル」の項で詳しく述べるが、心のこもらないロボットのようなサービスでは、ある意味で作業効率は上がっても必ず客数の低下を招くことになる。また、①、②の段階では、すぐに覚えられるという自信をつけさせることが大切である。

正しい順序で教える

さて、店長がおこなう教育。訓練の中心になるのは、いうまでもなく、毎日やる仕事を教えること、つまり③、④である。これをOJT 、または職場内訓練と呼ぶ。

ここで人事なことは、まず正しい順序で教えることだ。たとえば、オーダーをとる訓練をするには、新人はメニュー名と価格を正確に暗記していて、かつ基本の接客用語があるていど身についていなければならない。しがたって、その前にメニュー表を渡して覚えさせ、接客用語がスムーズに口をついて出るようになるまで発声練習をしておく必要がある。

また、OJTで大事なことは、その人に合った教え方をするということだ。個人差を無視して画一的なやり方で教えても、効果はあがらない。そして、よくできたときはほめ、間違いがあれば、その場ですぐに指摘して直させること。ここで大事なことは、温かな態度で接することと、本人に納得させることだ。とくに、間違いがあったときは、どんな小さなことでも率直に指摘すること。基本動作訓練の段階で完璧に身についていないと、応用段階に進んでも自分のものにならないからだ。

また、本人が納得できないときに、遠慮なく質問できるような雰囲気をつくっておくことも大切である。徹底した訓練とは、何も厳しい顔をしてスパルタ式に教えることではない。仕事の習得という点についてのみ、妥協のない厳しさをもって訓練することなのだ。

部下の習得レベルは個別に観察、把握する

飲食店の基本サービスとは、それほどむずかしい仕事ではない。接客基本用語も「いらっしゃいませ」「かしこまりました」「ありがとうございました」など、せいぜい7〜8種類くらいのものである。ところが、実際には多くのお店で、それすらも満足にできていない。なぜなのか。

実は、むずかしいからできないのではなく、あまりにやさしいことのためにかえってできないのである。

むずかしい作業なら、頭を使って神経を集中させるから、間違いなくやれる。しかし、飲食店の基本サービスはいちいち頭で考えてやるものではない。お客が見えた瞬間にお辞儀をしているというように、ひとつの反射動作にまでなっていなければならない。だから訓練が必要なのだし、訓練にはある程度の時間もかかる。

だが、いったん身についてしまうと、あとは無意識のうちにできるようになるものだ。これが新人に与えるべき第一目標である。人間は明確な目標を与えられれば、それに向かって努力する。そして、ひとつの目標の達成感を味わうと、次の目標に向かって自ら行動するようになる。

そこで、④の反復指導が大切になる。反射動作にまで習慣化させるということだ。お辞儀の角度ひとつでも、つねに決められた角度になるように仕上げていかねばならない。

そのためには、店長はつねに部下を観察していなければならない。監視するのではなく、見守ってあげるという姿勢が大切だ。部下は店長が見守っていてくれる、という安心感があるからこそ、生き生きと働くことができるのである。この意味でも、店長は現場の先頭に立ってはいけないのだ。

仕事の習得スピードは一人ひとり違う。しかし、スピードの遅い人でも、多少時間をかけさえすれば、一定のレベルには達する。店長は、個々の部下の習得段階を個別に把握して、それぞれが完璧に育つのをじっと待っていなければならない。我慢することを知っている店長は、必ず人望を集める。お店のレベルを上げる原動力は、部下の店長に対する信頼感なのである。

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著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。