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ワークスケジュールの上手なつくり方(1) スケジュールづくりの前提

ワークスケジュールの上手なつくり方(1) スケジュールづくりの前提

ワークスケジュールづくりは最重要のマネジメント技術

来客数に応じた人員配置計画をワークスケジュールと呼ぶ。たとえば、ランチタイムのピーク時にはホール何名、キッチン何名、アイドルタイムは何名というように、人員態勢を変えていくことだ。

一般に飲食店では、季節、月、曜日、そして時間帯によって、来客数に大小の波がある。それなのに、いつも同じ人員配置をしていたら、非常に効率が悪くなってしまう。来客数の多いときは、お客に対応し切れずに機会損失(売れるはずだった売上げを逸すること)を起こしてしまうし、反対に来客数が少ないときは人手が余り、ムダな人件費によって利益を圧迫してしまう。

こんなことは、少し考えてみれば誰にもわかることだ。ところが、現実にはしっかりとしたワークスケジュールをつくることなく、漫然と営業しているお店が少なくない。

ピーク時にはフル回転して走り回るから、しっかり働き稼いだという充実感が機会損失を忘れさせ、アイドル時や暇な月などには、忙しいときもあるのだから仕方ないなどと、妙に開き直ってしまうのだ。

また、とんでもないことだが、ワークスケジュールを考えるのが面倒だ、と考えている店長が少なからずいることも事実である。

しかし、一番の原因は、ワークスケジュールがなぜ大切なのかという認識が不足していることではない。それは、店長であれば誰でも、うすうすは感じていることだ。

決定的なのは、ワークスケジュールをどうつくればいいのか、その方法論が欠落していることである。つまり、ワークスケジュールづくりが店長にとって、もっとも重要なマネジメント技術だということを知らないのである。

近ごろ、飲食業全体でサービスレベルが低下しているとよく指摘されるが、それはたんなる人手不足や安易な店づくりのせいばかりではない。ワークスケジュールについての店長の認識こそが問題なのだ。

ワークスケジュールづくりの意味

いま「しっかりとしたワークスケジュール」といういい方をした。なぜなら、実効をあげないワークスケジュールをつくっても、意味がないからだ。そしてこのことが、一般にヤル気のある店長の評価を下げ、意欲を減退させる原因になっている。

このテーマについてはヤル気だけではダメなのだ。あくまで方法論が問題なのである。ここでもう一度、ワークスケジュールの意味を考えてみよう。「来客数に応じた人員配置計画」ということだった。ということは、来客数にかかわらず、つねにすべてのお客に満足を提供できる人員態勢づくり、ということになる。重要なのはここだ。

これまで何度も、自店のQSCのスタンダードを繰り返してきたが、これが守られていなければならないのは、お客に満足してもらい、何度も来店してもらって売上高を上げるためである。

ところが、ワークスケジュールをつくって実行していても、売上高の上がらないお店が現にある。その理由はいうまでもない。お客が不満に思っているからだ。

たしかにピーク時には、たくさんの人数をそろえているのだが、料理の出来にはバラツキがあり、ろくなサービスもできない。ただパニック状態で走り回り、汗をかいているだけ―― これは別に、極端なたとえ話ではない。

店長の実力が試される

どうしてこういうことになるのかというと、スケジュールづくりの前提に、「お客の満足」がないからだ。だから、単純に人数を集めればいいと考えてしまう。違うのだ。ワークスケジュールとは、単なる頭数合わせではない。きちんと教育・訓練された人員を必要な人数だけ、計画的に配置することなのである。

しかし、そのためにはまず、すべての従業員の教育・訓練を日ごろから徹底していなければならない。そして、店長は従業員一人ひとりについて、その能力や技術の習得度を正確に把握していなければならない。

そのうえで、店長自身は全体の指揮・監督ができるように、店長代行者を務められる有能な部下を一人でも多く育てあげていなければならない。

これらの成果があってはじめて、店長は「お客の満足」を前提にした人員配置を組むことができるのである。

つまり、日ごろの店長の労務管理の集大成、それがワークスケジュールなのだ。店長にとってもっとも重要なマネジメント技術だといったのは、このためである。

お客不在の発想に陥るなかれ

また、ワークスケジュールづくりでは、先に挙げた例と逆のケースもよくある。つまり、むやみに人の効率を追及するため、必要な人数を切り詰めてしまうというケースである。これは現象としては反対の方向だが、その発想の元をたどれば同じ、「お客の満足」不在の発想である。

極端に人手を切り詰めるのは、その発想が生産性の向上に凝り固まっているためだ。たしかに人件費のコントロールは店長の腕の見せどころだし、それなくしていまの飲食店は利益を確保できない。

しかし、人件費は決して「余計な」経費ではないのである。お客に満足を提供するための適正な人件費をかけてこそ、お客の支持が売上高となってあらわれ、結果として適正な利益を得ることになる。このことを絶対に忘れてはならない。

よく数字は魔物というが、計数管理をしていると、往々にして、数字至上主義に陥ってしまう。数字をコントロールしているつもりが、いつの間にか、数字に振り回されるようになってしまうのだ。そして必ず、自己矛盾に陥って苦しむことになる。人件費やその他の経費を切り詰めたはいいが、肝心の売上高が落ちていくからだ。

一般にワークスケジュールは、人時売上高ないしは人時生産性をもとにつくられている。とくに人時売上高は、店長が人件費をデイリーでチェックするのにわかりやすい指標だから、これを基本に考えれば大変つくりやすいし、決して間違いではない。

ただし、人時売上高や人時生産性は、あくまで効率上の考え方である。したがって、そこだけを追求していけば当然、お客不在の発想にたどり着くことになる。一方、「お客の満足」を追求していくと、つねに十三分な人員を配置しなければならないことになる。過剰な人件費を使えば当然、売上高はそこそこ上がっても、利益は出ない。

結局、ワークスケジュールづくりは、人の効率とサービスの質という矛盾との戦いなのだ。人時売上高や人時生産性の追及と、サービスの質の追求とのはざまで、どう折り合いをつけてお客に納得してもらうか、その技術にほかならない。

それともうひとつ、従業員の気持ちを忘れてはいけない。いくら有能な部下をたくさん抱えているからといって、彼らに不当な負担を強いるようではしょせん、長続きしない。従業員の不満がたまってくれば、それはお店の雰囲気の劣化やサービス自体の低下をもたらす。

従業員にとっても、お店の繁栄は喜ぶべきことだ。それが誇りとなり、働く意欲も高まっていく。しかし、そこには楽しく働けて、かつ十分な給与を得られる、という大前提がある。ワークスケジュールは、従業員が働きがいのもてる職場づくりの技術でもあるのだ。

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著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。