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労務管理は飲食業の落とし穴

労務管理は飲食業の落とし穴

部下がつくりだすサービスと雰囲気

売上高を安定させるための店長の第一条件は、仕事のできる部下を一人でも多くもつことである。店長がどんなに優秀でも、優秀な部下がいない限り、売上高を安定させることはできない。これが、店長は部下を通して仕事をする、ということの意味である。素晴らしい商品もサービスも、そして雰囲気も、飲食店の売り物もすべて、部下=従業員がつくりだすものだ。

ところが、このことを理解していない店長が少なくないから、労務管理のいい加減なお店が多い。というよりも、労務管理の大切さがわかっていないのだ。

これは、長いあいだ飲食業界がどっぷりと漬かってきた業界の体質によるところが大きい。いわゆる「水商売」の旧弊である。

もちろん、この20〜30年ほどの間に、大手飲食業を中心に、経営の近代化がはかられてきている。最近になってようやく、中小規模の飲食店でも水商売から脱却し、ビジネスとしてとらえるところが増えてきた。そのため、一見、いまの飲食業界はすっかり、かつての経営体質から脱却したかのように見える。

「いい人材がいない」とこばす前に

しかし残念ながら、それはごく一部の現象であって、まだまだ業界に浸透したとはいえないのが現状である。

その証拠に、繁盛店が行き詰まる最大の理由は、いまもって「人」の問題だ。サービス担当の質がガタリと落ちたり、調理担当者が変わったことで商品の品質が低下して、客離れを起こしている。

そういうお店の店長は決まって、「いい人材がいない」、「できる人材が集まらない」とこぼす。たしかに、人手不足はこの業界の慢性的な体質だし、人材確保がむずかしいことは事実だ。しかし、その現状を嘆く前に、店長、そして会社のトップは真剣に考えなければならないことがある。それは「人」の問題こそが、水商売体質の旧弊の最たるものだということだ。

たとえば、パート・アルバイトの問題。ここ数年の間にパート・アルバイトの時給はぐんと高くなった。時給には地域ごとの相場があるから、相場が上昇すれば、高い時給を払わぎるを得ない。そこで、時給がアップするたびに、必要な粗利益高を得るために値上げをおこなう。しかし、値上げはいうまでもなく客数減少の最大の要因である。あるいは、人件費が高くなったからと、ピーク時の人員まで削減してしまう店長がいるが、これも結局は売上げを落とす(機会損失)。

かつて、パート・アルバイトの時給は格段に安かった。飲食業は、その安い賃金のおかげで、かろうじて経営を維持していたのである。そして、当時はお客の飲食店に対する価値観も、いまほどシビアではなかった。だから「寄せ集め」的な従業員でも、経営は成り立っていた。ところが、お客のほうはどんどんシビアになっていくのに、飲食業界の体質はほとんど変わっていない。いまの飲食店が抱える「人」の問題は、実はかつて安易にパート労働力に依存していたツケにほかならないのである。

「いい人材」は自店で育成するつもりで

よく「アルバイトなのだから、まあ無断欠動しないでそこそこ働いてくれればいい」という店長がいるが、とんでもない間違いである。そして、こういうダメな店長に限って、「いい人材がいない」という。

飲食業は人が相手のビジネスである。そして同時に、人の手をかけなければ成り立たないビジネスでもある。そのため、生産性は他産業に比べてきわめて低い。ということは、飲食業においては、労務管理は最大のテーマでなければならないのであるが、現実にはその認識ははなはだ薄い。労務管理が飲食業の大きな落とし穴になっているのは、そのためである。

「いい人材」とは、たまたま来てくれる人のことではない。自店で育成すべきものである。これについては第2章6項で述べたのでここでは省くが、とにかく優秀な部下を育成しない限り、適正な人件費コントロールはできないし、サービスの質も向上しない。何より売上高を確保できない。

店長は自店のQSCのスタンダードを維持する責任をもつが、そのスタンダードとは、従業員の仕事の結果である。つまり、労務管理とは、自店のスタンダード管理ということなのだ。

従業員にヤル気を起こさせ、気持ちよく働くことによってその人の能力を引き出していくためには、公平なルールづくりが不可欠である。そのルールが就業規則だ。

就業規則というと、従業員を縛りつける規則と考えがちだが、そういうマイナス思考からは「いい人材」は生まれない。そうではなく、誰もが同じ条件で働くことができ、さらに本人の努力や能力に応じて報酬も高くなることを従業員に約束するためのものなのだ。

繰り返すが、サービス業である飲食業は、人間関係によって左右される。就業規則の内容は会社によって違うが、その位置づけは店長によって大きく変わってくる。つまり、飲食店の労務管理は、店長の教育・訓練技術と人格に負うところが大きいのである。 

以下は実際に過去に店舗で配布された規則要項を元にした例文となりますが、人口分布や価値観の変化に伴い企業と従業員のあり方も同様に大きな変化をしております。あくまでも一例と捉えて頂き、時代の世相を反映した適切な要項を策定する必要があります

従業員規則要項
「規則」は、私たちのファミリーの一員として、あなたが自信と誇りをもって仕事に励めるよう、楽しく働きやすい職場にするために作りました。あなたの行動が、他の大勢の人々に影響を及ぼすことを忘れずにチームワークに徹してください。

-私たちの信条-
※各店舗に応じた信条を記載

1 入店に関する事項
(イ)入店に際しては、履歴書に写真を貼り提出してください。また免許、資格証明書(写)、そのほか会社(店)が求めた書類を提出してください。
(ロ )入店時には、本人の身元確認のうえ、本籍、年齢に間違いのない場合は採用となります。ただし、 3ヵ月間は見習い期間とし、見習い期間内または見習い期間終了後、従業員として勤務させることを不適当と認めたときは採用を取り消すことがあります。
(ハ)入店時には、誓約保証書を提出してください。

2 退店に関する事項
(イ)退店届けは、退店日の15日以前に文書にて提出してください。なお、届け後15日間の実働を必要とします。
(ロ )無届け退店者または雇用取り消し者への給与は、基本給のみの日割計算にて支払われます。
(ハ)見習い期間内での退店の場合は、(□ )と同じ扱いになります。

3 遵守事項(違反者は、即時雇用見直しとなります)
(イ)勤務時間中は禁酒・禁煙を守ってください。
(ロ)商品・備品の盗用、横領のあつた場合は、弁済のうえ即時退店となります。(ハ)お客さま(男女問わず)および異性従業員間の交際は認められません。
(二)社会通念からの逸脱やコンプライアンス違反などの理由なくして上司の指示に従わない者は即時退店となります(理由なく職場を放棄した者も同じです)。
(ホ)お客さまより苦情が持ち込まれ、これが営業上重大な影響を及ぼすと認められた場合には、雇用は取り消されます。
(へ)従業員間およびお客さまとの金品の貸僣は禁じられています。
(卜)外出はすべて許可を必要とします(買い物など)。
(チ)お客さまとのトラブルは、理由の如何にかかわらず最高25%の減給、または退点処分となります。
(り)マニュアルの遵守

4 病状に関する事項
(イ)伝染病を患い接客し、お客さま、または従業員に多大な影響を及ぼす場合は雇用の見直しを行います。
(ロ)病気を患い、これが長期10日以上に及ぶ場合は一時休職となります。

5 欠勤に関する事項
(イ)欠勤届けは、遅くとも1週間前までに提出してください。
(ロ)電話での欠勤届けは原則として認められません。やむを得ず欠勤する場合は、自分の勤務時間以前に会社(店)まで必ず電話をください。
(ハ)土曜日、祝日の前日、日祭日、25~ 月末の/AN体、欠勤は原則として認められません(病気診断書提出の場合には例外)。ただし、やむを得ないと会社(店)が認めた場合には公体となります。
(二)見習い期間内に無断欠勤のあつた場合は雇用を見直します。
(ホ)無断欠勤が3日連続に及ぶ場合は、無届け退店として扱われます。
(へ)皆勤手当は、欠勤1日するとなくなり、無断欠勤は罰金として日給相当額が差し引かれます。

6 遅刻に関する事項
(イ)30分単位で時給の10割増の罰金が差し引かれます。ただし、前日までに会社(店)の承諾を得ている場合はこれに該当しません。
(ロ)遅刻が3回に達すると精勤手当がなくなります。

7 早退に関する事項
(イ)早退した時間分だけ時給計算にて差し引かねます。
(ロ )早退が勤務時間の2分の1以上になる場合は、その日は欠動扱いとなります。

8 休憩時間および休日に関する事項
(イ)休憩は1日1時間与えられます(食事時間は別)。
(ロ)休日は月4回とし、ロ―テーション表に従つてください。そのほか会社の定めた日。

9 体暇に関する事項
(イ)半年間継続勤務した者には、継続または分割して10日の有給休暇を与えます。
(ロ)1年半以上継続勤務した者には、 1年を超えることに、 1日を加算した有給休暇を与え、20日を限度とします。

10 特別体暇に関する事項
結婚、出産休暇、葬祭休暇などは、会社、従業員の状況を考慮の上
都度協議をし策定をいたします。

11 昇給に関する事項
(イ)昇給は年*回、*におこないます。
(ロ )昇給の算定期間は、*月26日より翌年*月25日までとします。
(ハ)昇給審査基準は、算定期間における職務能力の伸長、発揮度および勤務成績、勤務態度とします。
(二)昇給審査基準により次に挙げる者を除きます。
① 8月21日以後に採用された者。
② 昇給算定期間における所定就業日数の3分の1以上就業しなかつた者。
③ 昇給時において休職中の者。

12 給料に関する事項
(イ)給料は毎月、月末メ切りの翌月5日支払いとなります。
(ロ )給料の内訳は、基本給50%、営業手当50%です。
(ハ)給料の間違いは、その場で明細書を付け、提出してください。
平成 年 月 日
説明者
入店日
◎従業員規則要項を確認しました。
氏 名 (印)

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著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。