• +03-5436-8908
  • info@egg-recruit.com

お客のクレームに対応し活かす方法

お客のクレームに対応し活かす方法

お客に見捨てられるのはあっけないほど簡単

クレームヘの対応も、重要な顧客管理のひとつである。

ふつうのお客は、お店に対して何の不満を抱いてもそれを国に出すことは少ない。そして、三度と来店しない。お店にとっていちばん怖いのはこれだ。

何も指摘されなければ、お店の側の人間は、自分たちのサービスのどこがお客のカンにさわったのか気づかない。気づかないまま同じ誤ちを繰り返していく。

その結果は当然、客数減となってあらわれる。その意味で、クレームはわが身を振り返る絶好のチャンスである。

一般に、お客の苦情への対応を「クレーム処理」といっている。そのため、文字どおりに「処理」のテクニックくらいの認識しかもっていないお店が多いのだが、これはとんでもない勘違いである。

そういうお店は、国先やうわべの態度だけでうまくあしらったつもりでいるようだが、実のところはお客を失っていることに気づいていないだけなのだ。

しかも、失うお客はクレームをつけたお客だけではない。ここも大事なところだ。その「処理」をそばで見ていたほかのお客もまた「どうしようもないお店だな」と果れているに違いない。

それがどういう結果をもたらすか、いうまでもないだろう。お客の信頼を得て固定客化していくには大変な努力がいるが、お客に見捨てられるのはあっけないほど簡単だ。店長はこの点をよく心していなければならない。

クレームは自店への「警告」とうけとめる。対応を誤るな

お客のクレームに対する対応の仕方を見れば、そのお店が伸びるお店か伸びないお店かがわかる、と私はいつもいっている。それだけで店長の力量も、だいたいは察しがつく。

なぜなら、伸びないお店はクレームを「処理」の対象としてしか考えていないが、伸びるお店は自店の失策への「警告」ととらえているからだ。

ひと口にクレームといっても、いろいろなケースがある。本当の苦情の場合もあれば、料理やサービスについてのちょっとした注文、ということもある。いずれにしてもそれぞれの場面で、具体的に対応しなければならないことに変わりはないが、大事なことは、なぜそのクレームが出てきたのか、という点だ。

なぜお客は不満を抱いたのか、徹底的に原因を究明することだ。その研究がおぎなりでは、本当の解決とはいえない。よくクレームをつけたお客が帰ったあとで、原因をつくった部下を責める店長がいるが、本当に責められるべきは、クレームの予防に甘かった店長自身なのだ。

もちろん、すべてのトラブルに関して予防対策がとられるわけではないし、部下に落ち度がなくてもトラブルは発生する。しかしそういう不可抗力のトラブルであっても、その責任は店長に帰するのである。

たとえば、酔っ払ったお客が大声でわめいたり、となりの席の女性客にいやがらせをしていたとする。そのとき、ウエイトレスがうまく対応できなかったとしても、それはウエイトレスの落ち度ではない。

しかし、からまれた女性客や迷惑を受けたほかのお客は、このときどういう印象をもつか。悪いのは酔っ払いだと頭ではわかっていても、お店の対応の不手際に対して、あるいはそういうお客が入ってくること自体に対して、悪い印象をもつものだ。

これは理屈ではない。お店にとっては理不尽この上ない話なのだが、その悪印象をどこまで拭い取ることができるかは、ひとえに店長の力量にかかっているの店長の責任とはそういうものだ。

クレームヘの店長の態度と適切な対応

ちょっと極端な例を出したが、たいていの場合は、お店の側に何らかの落ち度がある。とすれば、ほとんどのクレームは未然に防ぐことができるはずだし、もしもトラブルが起こってしまったとしても、ベストの対応ができるはずである。店長はまずそのことを、真剣に考えなければいけない。

クレームとは、要するにお客のホンネなのだ。そのホンネがどうして飛び出したのか。つねにそう考えることが大切である。お客は飲食店に楽しさを求めてやってくる。だから、少々の不満はあってもそれを国に出すことはない。

クレームをつけることで、せっかくの楽しい気分をブチ壊しにしたくないからだ。それでもあえて国に出して抗議するのである。軽々しく対応していいはずがない。

もちろん、どんなに気をつけていても、人間であれば誰にも失敗はある。また、サービスをしている本人は意識していなくても、お客を不快な気分にさせてしまっているというのも、ままあることだ。そういういたらなかった部分をいかにフォローするか。それが顧客管理としてのクレームヘの対応の第一歩である。

「あしらい」などと軽々しく考えていると、とんでもないことになる。非常に大切な「接客」と考えるべきなのだ。

たとえば、あるお客から「ウエイトレスの態度が我慢ならない」という苦情が出たとしよう。その場は本人と店長が謝り、許していただいた。しかし、それで一件落着ではない。

お客のケースにもよるが、わぎわぎ難クセをつけるようなお客の苦情でないとすれば、そのウエイトレスはほかのお客に対しても、同じような問題のある接客をしている可能性がある。本人は悪気でそうしているのではないのかもしれない。また、ほかのお客からクレームが出なかったのは、許してくれたのではなく、お店を見限ったから口にしなかったまでのことだったのかもしれない。

つまり、たまたま露呈したというところに怖さがあるのだ。

クレームから業務の総点検をおこなう

飲食業はサービス業である。したがって、つねにお客が何を求めているのかを研究する義務がある。よく消費者ニーズというが、お店はたんに、あるニーズに対する商品やサービスを提供する場にとどまらない。

新しいニーズ、隠されているニーズを探し出し、顕在化させ、そのニーズにも対応できる商品やサービスを開発する場である。

その努力があってはじめて、競合店をものともしないパワーをもつことができる。安定した繁盛への道が開かれる。

いいかえればそれは、お客の微妙なホンネをすくいあげる、ということだ。お客のクレームはイヤなものと思っているお店は多いが、視点を変えてホンネを問かせてくれるのだと考えれば、逆にこれほどありがたいことはない。ミスやいたらなかった部分に気づくチャンスを与えてくれるからだ。

最近はあまりいなくなってしまったが、かつては「あなたのためを思うから」と、あえて苦言を呈してくれるお客がいたものである。そういうお客に育てられた店長や経営者は、クレームの指摘するところの大切さをよく知っている。

また、昔からよく「自分の欠点を指摘してくれる友人をもちなさい」といわれるが、お店にとってはお客が、そのよき「友人」なのである。

ウエイトレスの言葉づかいが気に人らないとか、料理が遅いから帰るとか、そういうレベルのクレームは、つねに発生の可能性があると考えていい。うちのお店に限って、などということはあり得ない。そのことを、お客という「友人」が教えてくれるのだ。

これでいいと思っていた自店のサービスマニュアルに、どこか欠陥がなかったか。ふだんの従業員教育で欠けていたことはないか、厨房内の作業の流れや訓練の仕方に問題があったのではないか――そういう、ふだんは忙しさにかまけて見過ごされがちな問題点を、あらためて総点検する。クレームは、その絶好のチャンスなのである。

なんとかごまかそうという姿勢には、そういう問題意識が欠落しているのだが、それ以前に、クレームがついて即座に、わが身の問題と思い当たらない感覚こそが問題だ。

クレーム対応のマニュアル化

本来は、お客からクレームが出ること自体があってはならないことだ。しかし、理想は理想として、現実には現実的な対応をしていく必要がある。

そのためには、起こり得るクレームをあらかじめ想定して、即座によりよい対応ができるように従業員を訓練しておかなければならない。クレーム対応のマニュアル化である。

クレームというのはいつも、突発的に発生するものだ。かなりのベテラン・サービスマンなら臨機応変の判断、対応ができるだろうが、そういう能力をすべての従業員に求めるわけにはいかない。

実際には、ほとんどの従業員がその能力も経験もない、と考えるのが妥当だろう。動揺してオロオロするばかりだったり、つい「これくらいのことで文句をいわなくても!」といった気持ちが態度や言葉の端に出てしまったりするのがふつうだ。

前者ならまだ可愛気もある(といっても、お客に許してもらえればいいということではない)が、後者は最悪である。そして、現実には後者になってしまう危険性が高い。

最悪の結果を招かないためには、とりあえず従業員全員が同じレベルでの対応をできるようにしておかなければならない。そのうえで、改めて店長であるあなたが丁重に謝り、それだけで済まない場合はしかるべき対策を講じなければいけない。

これは意外と見過ごされていることだが、クレームに対しては絶対に言いわけをしてはいけない。まず素直に謝り、頭を下げることが鉄則である。それからお客の言い分をよく聞いて最善の対応を考えるわけだが、そこからは店長の仕事である。従業員まかせにしてはいけない。

しかしマニュアル化だけでは不十分

ただ、クレーム対応のマニュアル化は、 一歩間違えるとかえって傷口を広げてしまいかねない。このことを肝に銘じておいてほしい。

たとえば、ウエイトレスが何かのはずみでスープをこぼして、お客の服を汚してしまったとする。当然、お客は怒る。怒らないまでも非常に不快な気分にさせられている。

こういう場合にどうするか。

あるチェーン店では、まず謝り、あとは「お客がクリーニングに出してその領収証をもってきたらその代金を払う」というマニュアルを用意している。しかし、はたしてそれが最善の対応なのだろうか。

このマニュアルは、お客との間答も想定してあり、店長もすぐに飛んできて対応することになっている。しかし、あなたはきっと、どこかおかしいと思うはずである。

なぜなら、まさに「処理」の典型だからだ。 一見、それなりの対応をしたように見えるかもしれないが、たんに「処理」の仕方をマニュアル化しただけにすぎ

ない。おカネを払えば一応の誠意を示したことになるという、サービス業としてあるまじき思い上がりがその根底にある。だから、対応は通りいっぺんだ。

店長がミスをしたらウエイトレスと一緒になって謝ってみせたところで、最終「処理」は決まっているのだから、店長が出てくる意味がない。それでも店長が出たほうがマシ、などという考えは捨てるべきだ。お客にとっては迷惑この上ない話なのである。

食事の気分は台無しだし、汚れた服で外に出るのは恥ずかしい。女性ならなおさらだ。仕事にもなるまい。

しかも、自分でクリーエング店に洗濯に出しに行き料金を立て替えて、もう一度、イヤな思いをしたそのお店まで立替え分の請求に出向かなければならないのだ。

そのために費やす時間だけでも大変な損失だし、また、いくらシミ抜き技術が発達しているといっても、生地が傷んでしまう心配が残る。

要するに、事例のマニュアルはお客に、これだけの理不尽を強いているのである。

クレーム対応マニュアルは、決して解決策ではない。あくまで、お客のクレームに対して迅速に、誠意ある対応をするための基本でしかない。本当の対応と解決はそこから始まるということだ。ここを勘違いすると、事例の某チェーンのような、不遜きわまりないお店になってしまう。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。