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アンケートのつくり方[お客の生の声をつかむ]

アンケートのつくり方[お客の生の声をつかむ]

アンケートの効用

「クレーム」の項でも述べたが、ふつうお客は、お店に対して何かしら不満を抱いても、それを国に出して抗議することは少ない。かつては「お店のためになることだから」と、あえて苦言を呈してくれるお客もけっこういたものだが、いまはそういうお客はほとんど期待できないといっていい。そして、そのお客は二度と来店しない、という事実だけが残る。

また、お客の不満は必ずしも抗議ではない。ひとつの提案ということも少なくない。お店の商品を見て、「ここをこうすればもっといいお店になるのに」と思っているお客は意外と多いものだ。

もちろんその場合、お店に対して好意をもってそう思うお客と、そうでないお客とに分かれる。そうでないお客は三度と来店してくれないだろう。しかし、好意をもってくれているお客だからといって、今後も来店してくれる保証はない。お店の欠点を見抜き、それがいっこうに改善されないことに愛想を尽かして、そのお店を見限ってしまうかもしれない。

お客の国から出たクレームなら、何が原因だったのかがわかるから、すぐにも改善策を打てる。しかし、日に見えない、耳に聞こえない苦情や提案は、こちらからそれをすくい上げようとしない限り消えてしまう。

アンケートは、こういう貴重なお客の声に耳を傾けるためのものである。

「顧客満足度」(CS)の考え方

「お客様あっての当店です」とは、誰もが口にする言葉だが、実際には、それを正直に実践しているお店は少ない。残念なことだが、これが現実である。

そのため、手抜きのない誠実なQSCを実践しているお店は、お客の圧倒的な支持を受けるという、皮肉な結果になっている。飲食店であれば「お客様第一主義」は当たり前のことなのだが、その数が少ないために貴重な存在となってしまっているのだ。少なくともあなたのお店は、その貴重な少数派にならなければならない。

さて、何度もいうようだが、お客が支持してくれるのは、満足してくれているからである。つまり、お店の支持率はお客の満足度で決定される。

この「お客の満足」という評価基準を最優先しようというのが、近年注目され定着してきている「顧客満足度」(Customer Satisfaction)=CSの考え方である。

顧客第一主義の立場に立って顧客の満足度を調査・数値化して客観的に自社を評価・分析する。それによってサービスの質の向上をめざそうというものだ。

CSの手法そのものはアメリカで開発されたものだが、わが国では自動車メーカーやホテル、銀行、航空会社、百貨店などが導入し、経営改革運動に結びつけている。

アメリカではフードサービス業界でも盛んに取り入れられているが、わが国の飲食業界ではまだ端緒についたばかりである。

顧客第一主義は何もいまに始まったことではないが、会社の利益よりもお客の満足度を優先するというところに、この考え方の革命的な意味がある。なぜ優先するのかというと、会社にとっていちばん大事なことは、一時期の利益ではなく会社がいつまでも存続することだからだ。

CSについて説明するのが目的ではないからこのヘんでやめておくが、なぜこれを持ち出したのかというと、お客の満足度と評価ということを、これまで以上に重く、真剣に考えてほしいからである。

お客の生の声を吸いあげる価値

店長の仕事は、お店のスタンダードをきっちりと表現し、それを維持していくことだといった。それがお客に満足を提供し、売上高を上げていくための手法だとは、誰もがいうことである。

しかし、スタンダードとは唯一絶対の価値ではない。

たとえば、チェーン店ではよくあることだが、東京で決めたスタンダードをそのまま地方へもっていっても、受け入れてもらえなかったりする。そしてそれは、別の地方でなくとも十分に起こり得ることだ。いわゆるニーズとの不一致である。

経営者はこれがベストだと考えている。店長もそのとおりだと思う。しかしそれは、ごく限られた人間の意見でしかない。それが必ずニーズの大勢と合致するとは限らないのだ。

飲食店の経営は「ほかのお店とは違う」という「こだわり」が土台になっているだけに、どうしても一人よがりが強くなる傾向がある。一定の支持を得ているとなおさら、考え方が独善的に陥りやすい。そのため、最初はほんの小さなものでしかなかったお客のニーズとのズレが、どんどん拡大していきやすいのである。

しかし、お客あっての飲食店なのだ。お客に支持されないこだわりなど意味がない。冷静に、客観的に自店を省て、軌道修正すべきところはすぐにも直す必要がある。お客の声に謙虚に耳を傾けなければいけない。

もちろん、すべての意見を取り入れることなどできない相談だ。

このあたりの取捨選択がむずかしいところなのだが、もっとむずかしいのが、お客の生の声を聞くことである。

本当に聞きたいのはお客の苦言だ

お客へのアンケートは、その生の声を聞くために実施する調査である。これは先のCSにおいても重要な管理手法なのだが、一般に、せっかくアンケートを実施しても、ほとんど意味のない結果に終わることが多い。アンケートの方法に問題があるからである。

ぶつうアンケートに答えてくれるお客は、お店に対して好意をもってくれているお客である。そのため、正直な意見や感想を聞きたいと書いても、どうしても誉め言葉が多くなってしまう。クレームと同様、難癖をつけるという行為そのものに抵抗があるからだ。

しかし、本当に聞きたいのはお世辞などではない。お客の音言である。気に入らないこと、腹が立つこと、失望したことなど。そういうお客の期待に応えられなかった自店の欠点こそがアンケートで知るべき第一の客観的事実なのだ。もちろん、お客の立場からの提案も欲しいが、まずはニーズとのズレの修正が先決である。

したがって、三段階や五段階の評価とか、二つないし五つの選択肢から選んでもらうというやり方は最悪なのだ。ほとんどの人は、どっちつかず=普通の真ん中に丸をつける。人間の心理とはそういうものだ。そもそも「普通」という評価を用意すること自体がおかしい。

アンケートヘの工夫

本当にアンケート=お客の生の声を生かしたいと考えるのなら、「お客の苦言がお店をよくするのだから、遠慮せずに欠点を指摘してほしい」という旨を、お客にはっきりと伝えることが大切だ。

お客が「悪□」を書きやすくするための工夫が、絶対に不可欠なのである。

しかし「自由に悪口を書いてください」といわれても、お客の立場にしてみれば、それが従業員に読まれてしまうのはイヤなものだ。店長や経営者以外には読まれない、という安心感がなければならない。それには鍵付きの投票箱を用意して、レジの前に置くようにするといい。

ところで、アンケートなどお客にとっては迷惑なことである。ドリンク券くらいは提供しなければ、「ちゃんと答えてほしい」というのは無理な話だ。ところが 一般にはこれをきちんと用意しない。だから無意味なアンケートになってしまいがちなのだが、どうせなら、住所、氏名、誕生日なども書いてもらい、顧客名簿にすべきである。しかし、それならそれで、もう少しまともなプレゼントが必要になる。

とにかく「タダ」ではダメなのだ。タダということは、たんにお客を利用するだけのことでしかない。そういう姿勢を国先ばかりの顧客第一主義というのである。

お客の声はとにかく大切にしたい

アンケートは必ず集計して、データ化しなければいけない。そして、データには率直に向き合い、改善すべき点と判断したら思い切って変えていく勇気も必要である。

もっともな提案には素早く反応しなければいけない。アンケートを実施したのに何も変わらないというお店が多いのは、それをしないで、ただうなずいて終わってしまうからだ。これほどお客を馬鹿にしていることはないし、また、こういうお店は確実にお客の信頼を失う。

なお、商品やサービスの評価を点数化し、毎月アンケートを実施しながらグラフ化していくと、お客の自店に対する評価を視覚的につかめる。従業員とのミーティングの際に、アンケートで出てきた問題点の検討と一緒に活用すると、従業員のモラール向上にも役立つ。

CS先進国のアメリカの某チェーンなどは、この評価を店長のボーナス査定に取り入れているところもある。お客の声は、決してあなどってはいけない。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。