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飲食メニューABC分析の手法と有効活用法

メニューひとつひとつの貢献度を把握する

メニューを構成する商品は次の四つに分類される。

①売れて、しかも儲かる商品
②売れるが、あまり儲からない商品
③あまり売れないが、儲かる商品
④売れも儲かりもしない商品

メニューとは、分析してみるとまさに玉石混交であることがわかる。とくにメニュー数の多いお店では、この混交によって材料や調理手段にかなりのムダが出ている可能性が高い。したがって、商品一品一品についての貢献度を正確に把握することで、材料や調理の合理性を高めていく必要がある。このための分析手法を「ABC分析」という。

メニュー分析としてのABC分析

ABC分析とは、たくさんの管理対象物のなかから重点的に管理すべきものを探し出す計数手法で、対象をA、B、Cの3つのランクに分けて検討することから、この名称がつけられている。製造業や小売業でも盛んに用いられている手法である。

メニュー分析の手法としてのABC分析には、
①出食数ABC分析=消費者支持度別ABC分析
②売上高ABC分析=売上高貢献度別ABC分析
③粗利益高ABC分析=粗利益高貢献度別ABC分析
の三つがあるが、分析の手順はいずれも簡単である。

たとえば、①出食数ABC分析を例にとると、
(1)月間の品目別売行き個数を集計する
(2)売れ行き個数の多い順に、品目を一覧表にする
(3)全体の個数を100として、各品目別の構成比を算出する
(4)さらに、その構成比を順次累計する
(5)累計構成比が上位から七五%までの品目をAランク、95%までをBランク、それ以下をCランクとする

以上である。②売上高ABC分析の場合は売れ行き個数に単価を掛け、③粗利益高ABC分析の場合は、売上高に粗利益率を掛けて算出するだけだ。下記表24では、これらのうちの売L高ABC分析の例を示した。

75%、95%という区切り方をするのは、社会現象では一般に、少数のものの貢献度が大部分を占め、多数の貢献度は小さいという法則に基づいている。事例の表では、16品目中わずか3品目だけで売上げ全体の75%を占めているが、一般に、Aランクに入るのは、全商品のうちせいぜい10〜20%程度である。つまり、ごくひと握りのエリート商品(Aランク商品)を重点管理するだけで、全売上高の75%が管理可能になるということだ。

バレート図で分析結果を示す

図3は、売上高ABC分析のデータをパレート図にあらわしたものである。イタリアの社会学者パレートが開発した構成比累積図表なので、パレート図と呼ばれている。要するに、各商品の構成比累計値を線で結んだもので、各商品の売上高構成比を順に積み上げていくと、パレート曲線になる。

パレート図にすると、いっそうメニュー分析がしやすい。もしもすべての商品が均等の働きをしているとすると、累計点を結ぶ線は直線になってしまうが、実際にはそういうことはほとんど起こり得ない。そして、パレート曲線のふくらみ具合が大きければ大きいほど、強力なエリート商品をもっていることを示す。

事例でいえば、上位3品目(d,f,a)の売れ行きがこれほど突出してなく、Bランクの2品目(e,c,g)に人気が分散していれば、パレート曲線はもっとなだらかなカープを描くわけである。

Aランクに属する商品の品目数が少なければ少ないほど、お店の主カメニューが明確であることを意味するから、材料の仕入れ、ロス管理、調理手順のムダの排除について、さらに高効率化を図れることになる。

ABC分析の真の目的

ところで、実際に分析表を作成してみるとわかるが、売上高ABC分析、出食数ABC分析、粗利益高ABC分析の結果導き出される貢献度(順位)は、多少食い違ってくる。

たとえば、売上高では貢献度が一位なのに、粗利益高貢献度では二位に甘んじ、売上高では三位だった商品がトップに踊り出たりする。これは、商品の原価率が.品目ごとに違うために起こる現象だ。かりに全商品の原価率が一律=粗利益率が一律であるなら、売上高ABC分析の結果と粗利益高ABC分析の結果はぴたりと一致する。

しかし、全商品の原価率を一律にすることなど、常識では考えられない。原価率を先に決めて価格をその率とコストで決める方法を原価主義というが、これではとうていお客に支持される価格設定などできないからだ。

また、ABC分析の目的を誤解しているケースがあるので、注意を促しておきたい。いちばんの問題は、Cランク商品の扱いである。たとえば、その商品があることでファミリー客を呼べるとか、老人客にも喜ばれるなどのケースは少なくない。居酒屋でも子どもが好むメニューが必要な場合もある。子どもと老人への対応は、今後さらにその重要性が高まってくる。たんにレパートリーをひけらかしたいがために、あるいは無政策の結果としてメニュー表に載せているのなら、Cランクとわかった時点で切り捨てなければならない。しかし、立地条件や客層をも勘案した臨機応変さは絶対に必要である。

商品にはそれぞれ、役割分担がある。

粗利益率の高さで儲ける高収益型商品もあれば、粗利益率は低いが価格が高いため金額としては儲かる高収入型商品もある。また、売れ筋商品にお客を誘導するためのおとり商品や引き立て商品は、順位が下でも品揃えの必要がある商品だ。通年さばける商品もあれば、季節性による波の大きいものもある。したがって、あまりに分析の結果に従順すぎると、かえってメニュー政策がぼやけてしまうことになってしまう。

ABC分析の第一の目的は、売れているAランク商品がよりたくさん売れるように、管理の重点を置くことにある。

飲食店の売上伝票の整理と現金管理(レジ)はこうする

正確な売上げ報告

店長は経営者の代行者として、人とお金と店舗(資産)を預かっている責任者である。したがって、店長にはさまざまな報告義務があるわけだが、もっとも大切なのは、正確な売上報告だ。お店の運営にはさまざまな要素と場面があるが、その結果はすべて、数字であらわれる。売上高と経費である。この二つの数字を正しく計上しなければ、正確な収支はつかめない。

このうち経響の管理についてはすでに述べたので、ここでは「売上げ」の管理と報告、そして現金管理についてまとめておく。

売上げ報告でいちばん大事な点とは何か

最初に理解しておかなければならないのは、「売上高」と「売上金」は違うということ。本来は同じでなければならないものだが、実際にはしばしばギャップが発生する。1日の営業が終わり、レジを集計してみたらレジの合計額(あるべき売上高)と売上げの現金とに差が出てしまった、というケースである。

現金とのギャップは、10円単位のこともあれば、1,000円を超えることもあるだろうが、いずれにしろ、二つの売上高が出てしまったことになる。金額が小さい場合はうやむやに処理されがちのようだが、これではいけない。問題はギャップの金額の大小ではなく、ギャップが発生すること自体にあるのだ。

では、この場合、店長はどう対処すべきなのか。いうまでもなく「あるべき売上高」を正規の売上高として計上しなければならない。「あるべき売上高」とは、レジに打ち込まれた売上伝票一枚一枚の合計額である。最近は会社への売上報告書にレジの記録用紙を添付するシステムを採用する会社が増えているが、それは「売上高」を厳密にとらえることで、計数管理の精度を高めるためなのだ。

つまり、売上げ報告でいちばん大事なことは、「あるべき売上高」と「実際の現金残高」とに差が出た場合は、そのありのままを報告するということである。

わずかな金額ミスは何人もの信用を失う

「あるべき売上高」と「実際の現金残高」の食い違いは、不正がおこなわれていないとすれば、お客に料金を過少請求したか過大請求したかのどちらかである。

過少請求した場合はお店がその分の損失を被ることになり、過大請求した場合はお客に大変な迷惑をかけ、お店の信用をいちじるしく損ねることになる。

最近は欧米人のように請求金額を細かくチェックして、間違っていれば指摘するというお客も増えているが、たいていのお客はよほどの金額の間違いでなければ、気がついても知らぬふりをするものだ。そして、三度と来店してくれない。また、「あのお店は会計がいい加減だ」という噂もすぐに広まる。わずかな額のミスが元で、何人ものお客を失うことになってしまう。

これは別に大袈裟な話ではない。お金にかかわる信用とはそれほどシビアなものなのである。

また、現金残高が不足していることが続いたり、その金額が1,000円を超えるようなまとまったものだったりすると、たんにお店の損失というだけにとどまらず、レジ担当者の責任問題を引き起こすし、従業員同士が疑心暗鬼にかられたりしてチームワークにヒビが入る恐れもある。

レジ担当マニュアル作成のポイント

現金の過不足が発生する原因はいろいろ考えられるが、ほとんどは単純なミスである。

たとえば、5,000円札を預かったのに1万円札と勘違いして釣り銭を渡してしまったり、レジを打ち間違えるといったミスで、気をつけていれば未然に防げるはずである。しかしそこが人間のやること、ピークタイムで忙しかったりすると、ついうっかり、のミスが出る。オーダーエントリーシステムがレジと連動しているお店ならレジの打ち間違いは起こらないが、現金の授受に関してはつねにミスの可能性がある。

これを防ぐには、レジ担当マニュアルをつくって、従業員に徹底させるしかない。

マニュアルのポイントは、次のようになる。
①お客が売上伝票と現金を一緒に出しても、まず伝票だけを受け取る。
②伝票の金額をレジに打ち込んだあとに現金を受け取る。
③ 1,000円以上の紙幣はすぐにレジに入れず、会計後にレジに入れる。
④金額にかかわらず、お客からの預かり額は必ず国頭で確認する。
⑤釣り銭の一円玉や五円玉をお客が受け取らなかった場合、会計後すぐにレジ横の募金箱などに入れる。

一方、レジの打ち間違いをした場合だが、すぐにミスに気づけば、現金授受のトラブルは防ぐことができる。しかし、間違えて発行したレシートとレジ登録の訂正という管理上の問題は残る。

この場合の処理は、
① レジを打ち直して、正しいレシートをお客に渡す。
②打ち間違ったレシートには、担当者のサインと伝票ナンバーを書き入れておく。
③間違って発行してしまったレシートはその売上伝票と合わせてホチキスで止め、レジ内に保管する。
④店長または店長代行者は、レジの集計前にミスの確認をし、レジ登録の訂正をおこなう。打ち間違えたレシートには承認のサインをする。

不正予防と店長の姿勢

一日の業務終了後、売上伝票を整理するのは店長の義務である。その日的は、毎日の売上高を確認すると同時に、来客数や来客組数、来客時間、各商品の出食数などを把握することだが、もうひとつ、不正防止という意味もある。

不正にもいろいろな手国があるが、たとえば、レジの訂正キーをレジ内などに保管していると、このキーを使ってある伝票の金額をマイナス処理し、現金を浮かすことができる。この場合、レジの登録金額と現金残高が合っているから、レジを集計するだけでは不正を発見することはできない。不正にしろミスにしろ、正しい記録は売上伝票だということを忘れないことが、予防の第一歩なのである。

なお、現金の過不足が出たとき、ポケットマネーで不足分を補填したり、過剰だった場合は次に不足したときのためにと「貯金」したりする店長がいるが、絶対にしてはならない。こうした取り扱いのルーズさは、必ず従業員に伝染し、不正の温床をつくる元になる。

管理はシビアにし、一方で、人間がやる以上は現金の過不足はあるていど起り得るのだ、ということを部下にわからせることが、不正を防ぎ、チームワークを乱さないためのポイントである。

小口現金管理と店舗運営

お店の現金管理にはもうひとつ、小□現金管理がある。たとえば文房具とか電球ひとつとかちょっとした買い物をするときや、近所のコンビニエンスストアでコピーを取るときなどのお金の扱い方である。

残念ながら、飲食店は従来、この管理がズサンだった。金額も大したことがないからとレジの現金から平気で使ってしまう、というのがぶつうだった。小規模店ばかりではない。あるていど店長の計数管理を重視している大型店でも、現金はレジから出して、営業日報で報告すれば事足れり、としているケースがいまだに少なくない。なかには、レジの現金で食材の支払いまでしてしまっているケースすらある。しかし、こういうやり方はすぐにも改めなければならない。

こういうやり方をしているお店は、買い物をしたら領収証があるのだし、計算が合えば問題はない、と同を揃える。たしかに、それはそのとおりである。しかし、これを続けていると、従業員の現金管理に対する認識は必ず甘くなる。本来レジとは、厳正に管理されていなければならないのだ。その現金をルーズに流用するのでは、現金残高の過不足に対しても認識が薄れてしまうことになる。店長の経費管理意識については、いうまでもないだろう。

こういうルーズさはまた、不正を招く要因にもなる。小口現金はレジとは別に、毎月金額を定めて管理する必要がある。その使用に当たっては当然、店長の月次報告のひとつとして会社に報告すべきである(下記表参考)

現金の管理は、店舗運営上もっとも重要なテーマである。あらかじめ厳重なルールを定めておくべきだ。

発注システムのつくり方と納品伝票の管理

正確な発注量を生み出す条件

正確な発注量は、次の式で求められる。
発注量=各食材の標準在庫量-現在庫量

逆にいえば、正確な現在庫量がつかめなければ、正確な発注量を決めることはできないわけだ。ということは、棚卸しは毎月一回ではなく、毎週、いや毎日でも実施する必要があることになる。

とはいえ、業種業態によっては、ひと口に食材といっても300〜400品目にものぼる。いかに棚卸しのやり方をシステム化しても、これを毎日実施するのにはやはり無理があるだろう。それに、生鮮品を別にすれば、毎日棚卸しをしなくても、発注や在庫品の品質管理に支障の出ない食材もけっこうある。そのへんは臨機応変に判断すればいい。

ただし、生鮮品を頻繁に発注しなくてはならない食材については、毎日実施すべきである。標準在庫量=適正在庫量が決まっていて、棚卸しのやりやすい仕組みもつくってあれば、それほど大変な作業ではない。

調理長とよく話し合い、飲食店として当たり前の仕事だという認識をもちたい。これができない限り、発注量はいい加減な数字ということになる。

ふつういわれる適正な在庫量とは

ところで、棚卸しと発注業務に関して必ず問題になるのが、標準在庫量である。

適正な在庫量とは、
①品切れを起こさない
②過剰な在庫量にならない
③材料の品質が劣化しない
以上二つの条件を満たす量である。

具体的には、お店ごとの売上高予測(メニュー出数予測)と業者からの配送スケジュール(配送回数)によって決まってくるが、一般には、週一回の配送の食材については、一週間の使用量プラス三〜四日分の在庫量を適正としている。日配(毎日配送)や週に2〜3回配送の場合で、出数予測×120%前後である。

ところが、実際にはかなりの過剰在庫を抱えているお店が多い。そして、そういうお店は必ずといっていいほど、毎月の材料費率の変動が激しい。なぜか。

品切れが怖いからである。そしてこの傾向は、単独店に多くあらわれる。チェーン店の場合は、出数予測を上回って品切れを起こす恐れがあれば、エリアマネージャーを通して近くのお店から食材を回してもらうことができるが、単独店はそうはいかない。そのため、どうしても多めの在庫になってしまうのだ。

店長みずから在庫チェックを心がけよ

いま、適正な在庫量の条件として三つ挙げたが、そのうち①と②とはつねに裏腹の関係にある。このコントロールの自信がないと、品切れを避けようと在庫が多めになり、それが材料の品質低下や腐敗などのロスを発生させてしまう。さらに、在庫量が多ければ、棚卸しが面倒になるから、ますます大ぎっぱな発注になる、という悪循環に陥りやすいのだ。

たしかに、品切れでオーダーストップをすることは、店長にとって大きな恥である。何よりもお客に対する裏切り行為である。しかし、正確な在庫管理ができないことは、もっと問題だ。品切れによる機会損失を防ぐことができても、正確な材料費コントロールができないのでは、店長失格といわれても仕方がない。

適正在庫量のコントロールは、正確な棚卸しを確実に実行し、必要最低額の食材のみを発注する習慣を身につけていくことで、必ず実現できる。それにはまず、店長みずからが在庫のチェックをすることだ。部下任せにするから、不安になってしまうのである。

自動発注システムは万能ではない

ところで、最近は大手チェーンや大手外食企業を中心に、POSレジを導入するところが増えている。POSを使えば、すべてのメニューの出数がたちどころにわかるから、店長の出数予測はぐんと楽になるし、発注システムにも活用できる。実際すでに、大手ファミリーレストラン・チェーンなどでは、この自動発注システムを稼働させているところもある。

しかし、自動発注システムは決して万能ではない、ということを注意しておきたい。なぜなら、このシステムが正しく稼働するには、正確な棚卸しと正確なデータのインプット、そして、1品当たりの正確な食材使用量が前提になるからである。

機械に依存すると人間は必ず、心にスキができる。それでなくても、人間であれば必ずミスやチェック洩れが出る。そして、そのミスをもっとも的確にカバーできるのは、人間の判断力なのである。

また、自動発注システムに依存してしまうと、店長の食材の状態の確認が手薄になりやすいし、食材の先入れ先出しの鉄則が崩れる元にもなりやすい。どんなに便利なシステムが出てきても、最後は人間の判断力がモノをいうのだということを、銘記しておきたい。

経費の「週間管理手法」が注目されている。

さて、飲食店でもっとも繁雑になりやすい書類は、食材を中心とする納品伝票である。備品数の伝票はそれほどでもないが、食材の伝票は1カ月でかなりの数になる。この納品伝票の整理も、店長にとって重要な業務のひとつである。

第1に、納品伝票に書かれた金額は、業者に支払う金額である。

請求書は一カ月分とかまとめて送られてくるが、その金額は、毎回お店に納品した金額を積み上げたものである。つまり、納品されるごとに、注文どおりの量と単価であるかどうかをチェックしない限り、請求書の内容について検討することはできない。意外と見過ごされているので、注意を促したい。

見過ごしている証拠に、納品時に、発注書に基づいた検品を実施しているお店は、驚くほど少ないのだ。業者に悪意はなくても、ミスは十分に起こり得る。発注書と納品書を見比べて数字が合っていたとしても、それでOKとはならないのである。

第2に、経費の計上の問題がある。一般に、お店の月次収支において、売上高はその月の分が計上されるが、経費については支払いが発生した月に計上される。つまり、当該月の売上高に対して、別の月の経費が計上されていることになる。たとえば、材料費についても、肉と野菜とでは支払い月がズレたりするのがぶつうである。しかしこれでは、店長は正確な月次収支がつかめない。

これを改善して、売上高に対する正確な経費率を毎月つかむためには、納品伝票を毎日集計することが基本になる。それを週単位で売上高と対比させるべきで

ある。こうすれば、週単位で問題点を発見できるから、早期に効果的な解決策を打つことができる。従来の月次損益は、売上高の予算管理とお店の中期的なバイオリズムを見るには適しているが、短期的な数字の把握には問題がある。たとえば、材料費に大きなブレが生じていたとする。それを一カ月後(一般に月次損益がまとまるのは翌月一〇日ごろ)に発見しても、その間の損失を防ぐことはできない。経費の週間管理手法が話題になっているのは、そのためである。

ともかく、基本は正確な棚卸しと発注、そして検品と納品伝票の整理である。これなくして正確なコストコントロールはない。

正確な棚卸しの必要性とそのポイント

食材の品質管理は店長の業務

一般に店長は、ホールでのサービス業務にばかり気をとられて、食材の管理への感心が薄れがちだが、これではいけない。店長は会社から、人、モノ、お金を預かってお店を運営している。このうち、人についてはいいとしても、モノとお金とは何なのか。食材(酒などの商品も含む)と店舗設計である。つまり、来客数に応じた人と食材を確保し、店舗がつねに快適な場所であるように管理することは、店長の責任である。

調理関係の仕事は調理長の責任と思われがちだが、そうではない。調理技術については調理長の管轄だが、食材の品質管理は店長の責任業務である。ふつう実際の管理業務は調理長がおこなうが、便宜上の役割分担をしているだけなのだ。なぜなら、売上高と利益の責任は、調理長ではなく店長が負うからである。

また、つい忘れがちなことなのであえて注意を促しておくが、食材はモノであると同時にお金でもある。

お金が形を変えただけのことなのだ。たとえばニンジン1本を腐らせて捨てるということは、その代金を捨てるに等しいのである。

正確な粗利益を把握するためには

利益=売上高-材料費-(人件費+諸経費)=粗利益-(人件費+諸経費)
飲食店の計数管理はすべて、この等式から出発するといっても過言ではない。たとえば、労働生産性や労働分配率がマネジメントできわめて重要な数値であることはすでに述べたが、これらの数値は粗利益率から算出される。つまり、
粗利益=売上高-材料費
この数値が正確でなければ、そこから導き出される労働生産性も労働分配率も正確に把握できないことになる。元になる数字の信頼性が低いのでは、計数管理の意味は半減してしまう。

正確な粗利益をつかむには、正確な材料費を計上しなければならない。そのために必要な作業が、食材の棚卸しなのである。正確な材料費は、次の算式によって計算される。

前月棚卸高+前月受入高-当月棚卸高=当月使用料
この式のうち、当月売上高(仕入高)は納品伝票を集計すればわかる。問題は、調理場や倉庫、ホールの一部などにある在庫である。この在庫高は棚卸しによってしか把握できないのだ。棚卸しが必要なのは、このためである。

よく、仕入高をそのまま材料費としているお店を見かけるが、これではまったく計数管理になっていない.もちろん、仕入高が材料費と等しいことは理屈上はありえる。前月未在庫量と当月末在庫量が等しい(前月棚卸高=当月棚卸高)場合だが、現実にはそんなことはない。

棚卸しをいい加減にやる店はない

別項でも述べたが、材料費、人件費(社員の固定給与を除く)、そして水道光熱費などの諸経費は、売上高に応じて増減する経費=変動費であり、店長の管理可能経費である。しかも、材料費は金額が大きいばかりでなく、商品のクオリティを決定する要因である。

その意味でも、店長は正確な材料費の把握が不可欠なのだが、現実には、棚卸しをろくにやらないお店や、やったとしてもいい加減に済ませているお店が多い。

理由は多忙だからとか人手が足りないからとかいったところだが、私にいわせれば、店長が棚卸しの意義を理解していないためにほかならない。

いいかえれば、正確な材料費をつかむことの重要性をまったく認識していないためである。ちょっとキツイいい方かもしれないが、そういういい方をしなければならないほど大切なことなのだ、ということをわかってほしい。

棚卸しが正確に実施されていない理由としては、
①在庫量自体が多すぎる
②材料のストック場所が一定していない
③材料の梱包単位がバラバラで、数量を把握しにくい

などが挙げられる。要するに、棚卸しをしようとしても時間がかかりすぎるcそれで面倒になってやめてしまうのだ。

棚卸しをやりやすくするポイントとは

正確な棚卸しを実施するにはまず、棚卸しをしやすくするシステムをつくっておく必要がある。1時間も2間もかかるからつい億劫になる。しかし、30分もかからずにおこなえば、人手不足を国にするほどの作業ではなくなるのである。

棚卸しをやりやすくするポイントを挙げておこう。

①適正な標準在庫量を決めておく
②棚卸表と原料単価表を準備しておく
③材料のストック場所を整理整頓する
④材料の配列の順序と棚卸表に記入する順序を一致させる(主な材料については、棚卸表にあらかじめ印刷しておく)
⑤材料の梱包の単位を統一にする
⑥液状の食材(ソース、スープ類) の計算方法を決めておく

また、棚卸し実施に当たっての注意点は、

①ストック場所(冷凍庫、冷蔵庫、倉庫、ホールなど)によって分担する
②棚卸し担当者は、カウント担当者と記入者の2名1組とする。
③棚卸表は冷凍品、冷蔵品、缶詰など、部門別、場所別に用意する
④カウント担当者と記入者は、品名、量を互いに復唱しながら集計し、記入する

つねに材料の品質チェックを心がけよ

棚卸しの目的は実は、正確な材料費の把握だけではない。食材の品質チェックと正確な発注も、棚卸しの重要な目的である。

在庫量といっても、材料に生鮮品が多い飲食店では、物販点の比ではない。しかし、生鮮品が多いだけに、品傷みしやすいため、在庫ロスが出やすい。そして、料理は材料の品質が命である。料理の質は、調理技術だけで決まるのではない。材料のよさを引き出し、生かすのが調理技術である。

材料の品質を落とさないようにするには、つねに過剰な在庫量を持たないようにすることと、先入れ先出しの鉄則を守ること。この二点を励行するしかない。

先入れ先出しの鉄則とは、古いものから順に使用するということだ。なんだ、そんなこと当たり前じゃないかと思うかもしれないが、意外と守られていない。

先入れ先出しは、材料の納品時から守られていなければ、とうてい実現できない。納品時に、冷凍庫や冷蔵庫の中のものをいったん外に出して、新しい材料を奥のほうから並べ、古い材料は手前に並べるようにしなければ、ロスはどんどん拡大していく。

しかし、この習慣は簡単なことのようでいて、なかなか身につかない。これを実現するのは、なぜ正確な棚卸しが必要かということが、店長以下、しっかりと理解したときである。

そして、つねに材料の品質チェックをおこなっていれば、店長は自然と材料の質を見抜く力をつけていくことになる。それによって、さらに、材料の品質管理をシビアにおこなうことができるようになる。

飲食店経営で諸経費のムダをなくす管理手法のポイント

エネルギーコストを重点管理せよ

飲食店の諸経費は別項で見たような多岐にわたるが、そのなかでもコストとして大きな比重を占めるのが、電気、ガス、水道といったエネルギーコストである。

エネルギーコストの売上高に対する割合は、一般に5〜8%前後。つまり、一般の飲食店が適正な経費を使って得られる利益とほぼ同額近い金額だ。したがって、このコストコントロールも利益を生み出すために、重点的に取り組む必要がある。

売上高に対してエネルギーコストは適正か

エネルギーコストの管理ではまず、これが変動費だということをしっかりと認識しなければならない。逆にいえば、その使用量が売上高に対して適正であるかどうかについて、つねにチェックする必要があるということだ。そのためには、売上高に対応した水道光熱費のそれぞれの標準使用量を設定しなければならない。

ところで、水道光熱費はふつう、それぞれの業者が検針して使用量を算出し、料金が請求される仕組みになっている。そして、請求書は会社の経理に回され、機械的に支払われているのが現実だろう。すると、経理ないしはその数字を見たトップが問題にしない限り、事実上、エネルギーコストは野放し状態になっていることになる。

また、トップから問題を指摘されたとしても、それまでにぼう大なムダを積み重ねることになるし、そのムダの原因をつきとめ、解決するのに時間がかかってしまう。

水道光熱費が毎月一定でないことくらいは誰でも知っている。しかし、だから変動費なのだという理解の仕方は間違っている。あくまで、その使用量が売上高に対してどうだったか、ということが大切なのである。

ちよっとしたムダがたまりたまってコスト増

エネルギーコストは「公共料金」である。そのためどうしても、「かかった分を支払う」ということになりやすい。つまり、ムダがあってもチェックされないままになってしまいやすいのだ。

しかし、水道光熱費のムダはどこのお店にもあるものだ。たとえば、水の出しっ放しや水漏れといった水道料金のムダ。照明の消し忘れや、フィルターの汚れが原因のクーラーや冷蔵庫などの電気料金のムダ。口火のつけっ放しなどのガス料金のムダ。

ちょっと見回してみれば、さまざまなムダをたれ流していることに気づくはずである。そして、これらのちょっとしたムダが、積み重なって大きなコスト増をもたらすのだ。

とにかくコスト管理では、「これくらいは……」という気持ちになるのがいちばんいけない。「そんな細かいことまで」と不満をもらす店長もいるが、その細かい努力を積み上げてはじめて、利益が確保されるのだ。大ぎっぱな計数管理などあり得ないということを、肝に銘じてほしい。

メーターチェックで使用量把握

水道光熱費の管理の基本は、メーターチェックである。店長みずからが自分の日で検針をおこない、使用量を算出するのだ。少なくとも週1回、できれば毎日、同じ時刻に実施する必要がある(週1回の場合は、毎週同じ曜日の同じ時刻に実施)。

これまで、エネルギーコストに対する意識が低かったお店なら、とりあえず1カ月間、毎日検針してみるといい。つまらないムダによって使用量がかなり変化することが、自分の日で確かめられる。それを部下に伝え、ムダの排除を徹底する習慣をつけるように教育するのも、店長の責任である。

メーターチェックで出た数字は、経理に回される月次の請求書と照合をおこなうが、その結果が一致しても、それは検針業者のミスがなかっただけである。大切なのは何度もいうように、売上高に対応した使用量=標準使用量だったかどうかということだ。

そして、もしも極端な異常値が発生した場合には、ただちに現場の状況をチェックしなければならない。これによって、配線や配管の異常も早期に発見することができるから、事故の防止にも役立つ。

なお、使用量を使用料金に換算しておけば、週間単位で売上高と対比することもできる。この場合、基本料金があるため概算になるが、経費が適正か否かを判断する材料だから、それでとくに問題はない。

備品、消耗品のムダもチエツクしよう

諸経費でエネルギーコストに次いで重点管理の必要があるのが、備品、消耗品である。とくに食器は、どんなに注意していても必ず破損が起こる。

問題は、その破損による損失(補充する食器代)ばかりではない。食器の不備は機会損失や作業ロスを引き起こすのだ。

たとえば、欠けた食器を使っていれば、間違いなくお店の評判を落とすし、最悪の場合はお客にケガをさせてしまうことにもなりかねない。結果はいうまでもなく、客数減である。

また、食器数が不足していると、ピーク時に必ず食器が足りなくなる。そこで、別の料理の皿を流用したりすることになるが、これも確実にお店の信用を落とすことになる。さらに、洗い物が混乱したり、早く補充しろとせき立てられることから洗浄が不十分になり、汚れの落ちていない食器を使ってしまう危険性もある。当然、ホールのサービス作業も混乱をきたしてしまう。

備品、消耗品等の管理方法

対策は、食器別に必要数量を割り出し、つねに標準在庫量を確保しておくようにすることだ。

必要数量は、ピーク時の客数、客席回転数、メニュー別販売数を集計することで算出できる。標準在庫量は、必要数量×110〜120%程度に設定するのが一般的である。ただし、必要数量は季節などによって変化することを忘れてはいけない。

したがって、必要数量の割り出しは季節ないしは各月でおこない、現実に即したデータにしておかなければならない。

次に、具体的な管理方法だが、これは次項で述べる材料費の管理と同様、毎月の正確な棚卸が必要になる(表19を参照)。

なお、紙ナプキンやトイレットペーパー、洗剤などといった消耗品についても、同様に標準在庫量を設定して、毎月1回棚卸しを実施すべきである。これらは客数によって消費量が変化するのだ。

また、消耗品に関しては、一度に大量に発注すると保管スペースや発注金額の問題も出てくる。あくまで各月の売上高に対する経費として管理するためには、棚卸しは絶対に必要である。

飲食店メニュー基準表の必要性と食材ロス退治の方法

基本になる二つの基準表

調理は調理長の役割であるが、店長が調理場に無関係でいいわけがない。なぜなら、お店の利益の大部分は調理場の中で決まってしまうからだD調理自体は、調理長の役割だが、メニューの品質管理は店長の責任である。もちろん、調理長との役割分担と協力関係の強化が前提になるが、店長は絶対に商品から逃げてはいけないのだ。まずこのことを銘記してほしい。

商品である以上、お店の料理はすべて、いつ誰がつくっても同じでなければならない。調理担当者によって味が変わったのでは、お客の信用を得られない。

「同じ」とは、味であり量であり、見映えである。また、同じ材料費で同じ時間でつくれなければ、一人前の飲食店とはいえない。調理マニュアルは、これら五つの「同じ」を実現するために絶対に必要なのだが、その基本になるのが、二つの基準表である。
①仕込み基準表
②メニュー基準表

仕込み基準表作成のポイント

調理は仕込み(ブリクック)から始まる。この段階の作業がいい加減だったり、手抜きや勘違いがあったりすると、「同じ」商品は絶対につくれなくなる。地味な作業ではあるが、調理作業のなかでもっとも重要な工程といえる。

仕込み基準表の作成に当たってはまず、 一度に何人分を仕込むかを決める。そのうえで、すべての使用材料の数量と単価、合計金額を記入する。すべての材料とは、調味料類を含む。その費用も計算に入れなければ、正しい原価率は算出できなくなってしまう。

また、各材料の分量は正確を期することが大切だ。とくに調味料類やスープなどは、日分量になりがちなので注意したい。

なお、テイクアウト商品の場合は、包材や箸、ペーパーナプキンなど(これらをペーパーコストと呼ぶ)の原価も基準表内に表示し、これらを含めた原価率や粗利益率を算出しなければならない。また、破損や紛失で食器を発注するときに、食器名と注文番号(商品コード)、価格なども付記しておくと便利である。

調理の手順については、使用道具、機器類、その扱い方、所要時間、注意事項までキメ細かく記入する。また、必ず二人以Lでかかるような態勢にしておくことも人事なポイントだ。毎日の作業で慣れてくるとダレが出てくるし、1人でやるとどうしてもミスが出やすい。ミスを防ぐためには、複数の人間の目でチェックすることである。

メニュー基準表作成のポイント

一方、メニュー基準表は、お客の注文を受けてからの最終調理(オーダークック)の標準化が目的である。ただし、お店や会社によっては、仕込み基準表を別に作成せず、メニュー基準表1本にまとめる場合もある。

これは管理の考え方が違うだけで、基準表の作成ポイントはほぼ同じといっていい。いずれにしろ、メニュー基準表では、使用材料の数量や単価、合計金額と、原価率、粗利益率も表示する。

この数字がお店の標準原価率=あるべき原価率となるのしたがって、メニュー基準表がなければ、お店の正確な原価管理も、ロス率の算出もできない。

さて、仕込み基準表が別に作成してある場合、メニュー基準表では調理手順と盛りつけが非常に重要な要素となる。同じ味に仕上げたとしても、見た日にバラツキがあるのでは、お客の目には技術の低さとしか映らない。

また、同じ材料を使っても、おいしそうな盛りつけもあれば、食欲を全然そそらない盛りつけもある。盛りつけには、たんなる体裁のよさを超えた、大事な役割があるのである。したがって、メニュー基準表には必ず、サンプルやメニュー表と同じ完成品の写真を貼付しておく必要がある。ただし、基準表の写真はわかりやすさを優先するから、メニュー表のものとは写す角度は違っていても構わない。

年に何回かつくりかえる

仕込み基準表とメニュー基準表は、年に四回作成する。なぜなら、季節や時期、作柄、相場などの関係で、基準表に表示した原価が変動するからだ。そこで、年に四回は各材料の原価を見直し、トータル原価を算出し直さなければならない。

なお、テイクアウト商品の場合は、包材や箸、ペーパーナプキンなど(これらをペーパーコストと呼ぶ)の原価も基準表内に表示し、これらを含めた原価率や粗利益率を算出しなければならない。また、破損や紛失で食器を発注するときに、食器名と注文番号(商品コード)、価格なども付記しておくと便利である。

材料ロスを見越しての原価設定

ここで、材料原価の考え方について述べておこう。材料原価は仕入れ価格なのだということを理解していなければ、正確な原価管理などとうてい不可能だからである。調理長クラスでも、勉強不足のためこれがわかっていない人がいるのが、残念ながら現状なのだ。

たとえば、ステーキを売ると仮定して考えてみよいうノ。牛肉のブロックをステーキ肉に整形するには、切り落とす脂肪やスジなど、かなりのロスが出る。かりに、この場合のロス率を20%としてみると、200グラムのステーキを一枚取るには、250グラムの牛肉を仕入れる必要がある。そして、この牛肉の値段が100グラム500円だったとすると、250グラムでは、1,250円のこれが仕入れ価格である。したがって、商品の原価としては、20%のロスを含めた200グラム1,250円を計上しなければならないのだが、1000円としてしまうことがよくあるのだ。

たしかに商品としては200グラムしか使ってはいない。しかし、その200グラムのために50グラム余分に仕入れなければならないのである。つまり、ロスも原価のうち、ということだ。この場合、ステーキとして使えるのは全体の80%で、この20%のロス分を含めた価格を歩留まり単価という。

大手チェーンなどでは、あらかじめロスを見越して標準歩留まり(商品として使える部分の割合)を設定し、メニュー基準表には歩留まり単価が表示されているところもある。今後は、勘や意見に頼らず標準歩留まりを設定し、原価管理を強化するお店はもっと増えていくはずだ。まさに「利は元にあり」なのである。

ロス率のキャッチとロス管理

ところで、メニュー基準表には、メニューごとの標準原価=あるべき原価が表示されている。これを基に次の式で、お店の一カ月間の標準原価率を算出することができる。
標準原価率=[(メニュー別販売個数×同標準原価の総和)/当月販売売上高]×100
一方、実際にかかった原価率=実際原価率は次のように算出される。
実際原価率=[(前月棚卸高+当月仕入高+当月棚卸高)/当月売上高]×100

理論上はこの二つの原価率は同じになるはずだが、現実にはそうはならない。なぜなら、調理ロスや廃棄ロスなど、さまざまなロスが必ず発生しているからだ。

また、メニュー基準表に表示してある各材料の分量を100%正確に守っているとはいえないからだ。この標準原価率と実際原価率の差をロス率という。

原価管理とは、このロス率をいかに小さくするか、いいかえれば、実際原価率をいかに標準原価率に近づけることができるか、ということである。

ただ、ロス率がつかめても、どの食材でどれくらいのロスが発生しているのかを特定できなければ、有効なロス退治対策を打つことはできない。とくに、いくつものメニューに流用される食材について、個別に管理することは不可能である。

しかし、すべての食材を管理できなくても、効果を上げる方法はある。自店の主要食材を重点管理するのである。主要食材を把握する方法には、第3章11項で後述するABC分析を用いる。

いま、いくつものメニューに流用されている食材といったが、実際には、売れている商品(AランクからBランクまで)と使用頻度の高い食材とはほぼ一致する。

したがって、Aランク商品(売上高の75%を構成する商品)を管理すれば食材の使用額全体の75%が、Bランク商品(同75〜95%の20%を構成する商品)まで管理すれば、使用額全体の実に九五%までのロス管理ができることになるのだ。

材料費予算は毎月変わる[その調整のしかた]

標準原価率とコストコントロール

本来、メニューの原価率は個別に決められていなければならない。そうでないと、つくるたびに原価率が変わってしまい、材料費管理はたんなるお題日にすぎないことになる。この、あらかじめ決められた原価率=あるべき原価率を標準原価率という。

しかし、標準原価率が決められていても、それだけでコストコントロールができるわけではない。なぜなら、各メニューごとに標準原価率の設定が違うからである。1品目だけの単品商売なら、標準原価はつねに一定だが、一般のレストランではそんなわけにはいかない。少なくても30〜40品目のメニュー構成というのが普通である。したがって、どの商品がどれくらい出るかという売れ方しだいで、トータルの原価率は変わってくることになる。

このトータルの標準原価率を計算するのは簡単である。まず、各商品ごとに標準原価を出し、販売個数とで割れば、トータルでの標準原価率が算出される。

たとえば、ハンバーグ類の標準原価率が25%、売り値が1,000円、フライ類は同様に32%、1,200円の場合で、ハンバーダ類が10個、フライ類が8個売れたとすると、以下となる。

標準個数原価率
1,000円×0.35=350円
1,200円×0.32=384円

売上高
1,000円×10個=10,000円
1,200円×8個=9,800円

350円×10個+384円×8個=6,572円….原価合計
→標準原価率(トータル)=(6,752/19,600)×100=33.5%

毎月の月次損益では、このトータルの標準原価率と実際原価率との差が問題となるわけだが、それでは実は材料費管理にはなっていない。なぜなら、それはたんなる営業の結果であって、日標=予算の達成という考え方にはなっていないからである。

材料費率の変動を見込んで予算の中におさめる

店長が毎月達成しなければならない材料費予算は、あくまでトータルの数字である。各商品の個別標準原価を守らなければならないのは、そうしなければ正確な計数管理ができないからで、それ自体が目的ではない。

したがって店長は、調理長と協議して、それぞれの商品の標準原価率を踏まえたうえで、全体として予定の材料費率の枠におさめるようにしなければならないわけだ。

しかし、それぞれ材料費率の異なる商品を30〜40品目以上も販売して、なおかつ予算を達成するということは、いくら経験を積んでいても、カンに頼るだけではほとんど不可能に近い。たまたまうまく的中した月があったとしても、ほかの月で大幅な予算オーバーをしているようでは、ひと昔前の水商売感覚と何ら変わるところはない。

しかも、材料費予算にはもうひとつ、忘れてはならない大事なポイントがある。それは、材料費率は毎月変わる、ということだ。

材料費予算が、季節的変動を見越して各月に振り分けられている場合は、店長も対処しやすい。ファミリーレストランのナショナルチェーンや会計制度のしっかりした飲食企業では、一般に、各月ごとの予算を組んでいる。たんに予算を示すだけでなく、個別標準原価率と売上高構成比を勘案したうえで、予算が決められているのがふつうである。

しかし、一般のお店や会社では、なかなかそこまで考えてくれないケースが多いの年間予算で何%と枠を決めて示されるだけで、各月の特性によって材料費の変動を見込み、全体として予算の数字におさめるのは店長の責任となる。

材料費率の相乗積について知る

そこで知っておいてほしいのが、材料費率の相乗積の考え方である。

上記表13は、あるレストランの材料費率と相乗積との関係を示したものである。総材料費率と相乗積の合計はともに二五・三%で、同じ数字になっている、ココに注目してほしい。

材料費の相乗積とは、各料理部門の売上高構成比とそれぞれの材料費率とを掛け合わせた数値のことで、次の計算式で算出する。
材料比率相乗積=部門売上高構成比×部門別材料費率
したがって、
材料比率相乗積合計=全体の材料費率
となる。

つまり、予算として示された総材料費率は相乗積の合計のわけだから、そこから逆算すれば、全体として予定の材料費率におさめるために、どの料費部門の材料費率をどれくらい調整すればいいかもつかむことができるのである。下記の表14はその例題である。

総材料費率は40%と決まっている。また、アルコール類の材料費率(仕入れ価格)も取引業者との契約で50%と決められている。この条件のなかで、料理の材料費率をいくらにすればいいか、という問題だ。

まず、料理とアルコール類の売上高構成比とアルコール類の材料費率がわかっているのだから、アルコール類の相乗積は、37.5%×50.0%=18.8となる。

次に、相乗積の合計は総材料費率と等しいのだから、
料理の相乗積=40.0-18.8=21.2と求められる。

そして、相乗積は売上高構成比と材料費率を掛け合わせた数値なのだから、
料理の材料比費率=(料理の相乗積/料理の売上高構成比)
=(21.2/62.5)=33.9(小数点2以下四捨五入)
となる。

これは、料理とアルコール類と、二つの部門間で材料費率を決めるという、もっとも簡単な例題である。一方が決まっていれば、他方も必然的に決まる、という関係にあるからだ。

各料理部門の材料費率はどのように調整したらよいか

では、いくつもの料理部門があり、二つ以上の部門の材料費率を調整しなければならないときはどうするのか。そういう場合は、まず、これまでの経験則と標準原価率とを勘案して、仮定の材料費率を立ててみる。次に、各部門の売上高構成比と総材料費率が決まっているのだから、調整すべき部門の相乗積の合計を求める。

そのうえで、仮定の材料費率の相乗積を算出して、その相乗積の合計と、あるべき相乗積合計からすでに決まっている部門の相乗積を差し引いた残りの数値を比較してみる。その結果しだいで、各部門とのバランスを見ながら調整すればいい。

なお、各料理部門の売上高構成比率は前年までの数値を参考にするが、できるだけ誤差を小さくするため、最低でも過去三年間の実績を平均して算出するのが望ましい。

また、材料費率の季節変動は、アルコール類の売上高構成比率に大きく左右されることに注意したい。(以下、表15参考)

材料費率と人件費率の考え方とコントロール

店舗経営上、最も重要な原価

材料費と人件費は、飲食業の総原価のうち、もっとも大きな割合を占める。単純に考えれば、この2つの原価が低ければ低いほど、利益が上がる。反対にお客の側からすれば、2つの原価率が高ければ高いほど、付加価値が高くなる。では、高すぎず低すぎず、ちょうどバランスのとれた原価率はどのくらいなのか。この数字は、店舗運営上もっとも重要な数字である。

ここで大事なことは、2つの原価を総和で考えるということだ。一般論だが、材料費と人件費の対売上高比率の合計で60〜63%前後が、経営管理上の適正原価とされている。

徹底した低コスト戦略で一層の原価低減

ただし、これはあくまで一般的な平均値で、絶対の数字ではない。前後と書いたのはそのためだ。実際、ひと口に繁盛店といっても65%のお店もあれば58%のお店もある。そして、58%のお店が63%のお店よりも儲かっているかというと、必ずしもそうではない。売上高の大きさが違うからだ。同じ一%でも、売上高によってその金額はまったく違ってくる。

だから一概に理想的数字を挙げるわけにいかないのだが、どんなに高くても六五%止まり。70%では経営は成り立たない。どんな業種業態でも、お店を運営するには、諸経費と初期条件が一定率かかってしまうためだ。これは損益計算をしてみればすぐにわかる。

一方、この「適正原価」よりもはるかに低い数字の業態もある。ハンバーガーやフライドチキン、ラーメンなどの代表される、フランチャイズシステムの成功事例だ。これらのお店の材料費プラス人件費のコストは、高くて55%、50%以下という事例もある。

なぜこれほど低いのか。フランチャイズシステムでは毎月、本部が加盟店からロイヤリティを徴収しなければならないからだ。ロイヤリティや広告宣伝費は額、売上高の3〜8%程度にもなる。一般の飲食店の純利益と同じくらいのロイヤリティを徴収して、なおかつ加盟店に利益を上げさせるには、50〜55%という数字が絶対条件になる。

これを可能にしているのは、主材料に価格の低い肉と小麦粉を使った商品開発と、パート・アルバイト主体による運営システムである。もちろん、海外まで足を延ばした原材料の調達から低コストでの一次・二次加工、配送システムなどを含めたマーチャンダイジングによる、徹底した低コスト戦略も見逃せない。

ただ、最近になって、こういう業態に対する消費者の目はいちだんとシビアになっていることは、銘記しておきたい。同じ1,000円を払うのに、付加価値の低いお店をわざわざ選んでくれるお客など、常識的にはあり得ない。ここが経営のむずかしさで、費用の割合だけを操作しても、いずれ力べにぶつかる。

何度もいうようだが、いちばん大事なのは売上高なのである。いいかえれば、より多くのお客に支持されるということだ。つまり、お客を満足させることができてはじめて、適正原価といえるのである。

お客を満足させてはじめて原価を云々できる

さて、ではなぜ、材料費プラス人件費と、2つの原価を足して考えなければいけないのか。第一の理由はもちろん、これらが飲食業の二大原価だからである。

総原価に占める割合がこれだけ大きいのだから、あらゆるコストの中で最優先に管理されなければならない。

しかし、この理由だけに眼を奪われていると、飲食業の原点である「お客の満足」を見失ってしまうことになる。実は、もうひとつの理由のほうがはるかに大きな意味をもっているのだ。

それは、飲食店は商品とサービスを切り離しては成り立たないということだG飲食店の付加価値はQSC(商品、サービス、雰囲気)の3つの要素のトータルで決まる、という大原則を忘れてはいけない。

お客を満足させることができてこそ、原価を云々できるのである。お客を納得させることのできるボーダーライン、そこがサービス業としての適正原価なのだ。

材料費と人件費をこれだけに抑えているのに、いっこうに儲からないなどとボヤくお店も少なくないが、要はそこがわかっていないのだ。

売上高が上がらないのは、お客が不満を表明しているからである。さっそく、満足させ得るように、自店の数字をコントロールしなければならない。

適正なQSCのスタンダードがあってこそ、コストコントロールは可能

材料費プラス人件費の考え方は、業態=客単価によって2つに分かれる。たとえば、ステーキ専門店は材料=牛肉の品質をストレートに訴求しなければならないため、材料費率は高くならぎるを得ない。しかし、客単価が高いため粗利益の絶対額は確保できるし、加工度が低いため人件費率は低く抑えられる。結果、材料費プラス人件費の割合は適正原価におさまる。

反対に、材料費率が低い代表的業種は喫茶店だが、客単価も低く、粗利益額も少ない。そのため、人件費率は高くなるが、材料費率と合わせた割合は、同様に適正原価となるわけだ。

また、原価コントロールの考え方も二つに分かれる。料理に力を入れてそのお値打ち感で勝負するのなら、人件費を抑える。サービスを重視するのなら材料費を抑える、というわけだ。

たとえば、とんかつや刺身のように加工度が低く、材料そのものの品質をセールスポイントにする場合は前者になる。逆に、女性のサービスの付くバーやスナックは後者になる。これはちょっと極端な例かもしれないが、考え方としてはこのほうがわかりやすいと思う。ただし、あくまで「適正原価」でなければならず、人件費も材料費も、低すぎては話にならない。材料費をかけているからといってサービスがないも同然では、お客に支持されないし、その逆も同じである。

二つの原価をどう配分してバランスをとるかは、お店の売り方=コンセプトによって変わる。コンセプトが曖味では、的確なコントロールはできない。いいかえればこれは、お店のQSCのスタンダードの問題である。店長のコストコントロールは、適正なスタンダードの設定があってはじめて可能なのである。

飲食店の毎月の売上管理は正確な状況把握から

計画と実績を対照し正確な状況把握

予算管理の基本は、日別売上計画に基づいた曜日・時間帯別売上分析である。毎日の計画と実績を対照することで、自店の売上げが現在どういう状況にあるのかが確実に把握できる。

問題点を発見するタイミングが遅れることもない。経費が適切に使われているかどうかのチェックも日別におこなえば、店長は十分な態勢でコストコントロールに取り組むことができる。

月次損益のコントロールでは何よりも、人件費のコントロールがポイントとなるが、これによって効率のよいワークスケジュールを組めるようになるわけだ。

ところで、月次売上計画についても日別売上計画と同様に、月ごとの累計売上高と予算を対照しながら、その達成状況をチェックしていく必要がある。と同時に、今後の売上推移をできるだけ正確に予測して、最終的に予算とのズレが出ないように調整していかなければならない。

ここでは、そのための二つの手法について説明しよう。

季節指数を算出し管理する

手法のひとつは季節指数の算出による方法である。季節指数とは、その年の月間平均売上高を100%としたときの各月の売上高の規模を割合で示した数値で、次の式で算出する。
(年間売上合計/12ヶ月)=月間平均売上高
各月季節指数=(各月売上高/月間平均売上高)×100
季節指数は月間比とともに、各月売上計画の作成データとしても用いられるが、各月の売上規模と季節変動がわかりやすいため、月次予算管理にも重宝な手法である。

飲食店の売上高が季節によって定期的に変動することはいうまでもないが、季節指数は、年間を通して変動する月別売上構成比や月別の売上げ傾向を数字でとらえられるところに意味がある。

上記表11は、表10の売上高実績を基に算出した二年間の季節指数例である。

また、上記はこれらの季節指数をグラフ化したものだが、こうすると各月のパターンや年度による売上規模の推移がよりわかりやすくなる。

季節指数の対比は3年間で十分だから、毎年、前々年の数値をグラフ化したうえに、今年の数値を毎月プロットしていくといい。

年間移動累計の計算式を活用する

二つめの手法は、年間移動累計という数値を基に、今後の売上推移を予測する方法だ。年間移動累計というのは、各月ごとに過去一年間の売上合計をつかむ手法で、経過月ごとに移動しながら順次、売上合計を求めていくものだ。

いま季節指数について述べたように、各月の売上高は季節によって変化する。したがって、各月の売上高をそのまま比較してもあまり意味はない。しかし、年間移動累計の比較には意味がある。なぜなら、各月の年間移動累計売上高には、過去1年間の1月から12月までのすべての月の売上高を含んでいるからだ。

年間移動累計の計算法は簡単だ。前年度の年間売上高から前年同月の売上高を引いて、それに今年同月の売上高をプラスする。この計算を順次繰り返していけばいい。

たとえば、上記の表12の第4期1月度の年間移動累計は、
142,500千円(第3期年間売上高)-10,500千円(第3期1月度売上高)+11,100千円(第4期1月度売上高)=143,000千円と求める。
そして2月度は、143,000千円-9,500千円+10,000千円=143,000千円 となる。
この計算式を用いれば、いちいち12カ月分の売上高をプラスする必要はないわけである。

視覚的に実績を管理する方法

この年間移動累計を利用して、各月の売上高推移を視覚的に管理するために作成するのが、上記で示したZグラフである。グラフのドの折れ線は各月の売上実績を、斜めの折れ線は各月売上実績の累計を、そして上の折れ線は年間移動累計をあらわしている。 一月の時点では、上と下の点でしかないが、月が経過するにしたがって折れ線が伸びてゆき、最終月(一二カ月目)に三本がつながってZ字形となる。そこからZグラフという名称がつけられた。

さて、Zグラフの活用法だが、まず前年のグラフの上に今年の実績をプロットしていくことで、前年同月対比で、次の一二つをつかむことができる。

①下の折れ線=各月ごとの売上げの格差と月ごとの季節変動
②斜めの折れ線=今年度当該月までの累計売上高の推移
③上の折れ線=前年と今年の売上高の趨勢

とくに、③の移動累計線の傾向は重要なポイントで、少しずつでも低下の傾向を示すようなら、抜本的な対策を講じる必要がある。

また、年間売上予算を各月売上計画に分配してZグラフを作成し、そこに今年の毎月の実績をプロットしてグラフを重ねていけば、売上目標に対する推移を視覚的につかむことができるから、より実戦的な売上高管理ができるようになる。

日別売上計画の設定と検討(曜日・時間帯別管理)

店長マネジメントのスタートはここから

前項では年度予算を各月別に割り振る手法について述べたが、今度はその月別売上計画を目別に割り振らなければならない。日別売上計画がなければ、別項(第4章10〜12項)で説明したワークスケジュールが組めず、店長のマネジメントの主要な柱である労働時間コントロールができないからである。

また、予算はたんなる予定ではない。実現しなければ意味がないわけだが、月次予算を確実に達成するためにも、毎日の売上計画と実績との対照が不可欠になスリ。

ここであらためて強調しておくが、月次売上高とは毎日の売上高を集計した結果ではない。なんとしてでも達成されなければならない目標値なのだ。

店長にはさまざまな計数管理が求められるが、それらの管理行動はすべて、この月次予算の達成=日別予算の達成のためにおこなわれるのである。逆にいえば、店長のマネジメントとは、月次売上計画を日別売上計画に適正に配分することからスタートするわけである。

曜日別売上配分計画を立てるときの4つの手法

日別売上計画を決定する方法はいろいろあるが、最初に注意しなければならないのは、飲食店の日別売上一局は曜日によってパターンが変わるということだ。したがって、単純に月次売上計画を営業日数で割って、それを目別の売上予算とすることはできない。

そこで問題になるのが、どう曜日別に配分すればいいのかということだが、その主な方法として次の四つがある。

①前年同月の同曜日の売上高に、今年の対前年比目標伸び率を掛けて算出する。
②前年同月度の曜日別平均売上高に今年の対前年比目標伸び率を掛けて算出する。
③過去二期同月度の曜日平均パターンを指数化し、それを基に算出する。
④過去三期同月度の各月売上傾向をそのまま反映させて算出する。

曜日別計画売上高算出法――その②を詳しく知る

①の方法については説明の要はないだろうから、次に②〜④の方法について解説しておこう。

まず②だが、これはさらに、月曜日から日曜日までの各曜日ごとに算出する方法と、平日、土曜日、日曜・祭日の3分類で算出する方法とに分かれる。平日といっても月曜日から金曜日までの各曜日によって売上げの波が大きい場合は前者とするが、平日の各曜日に大きな違いがなければ、後者の3分類でもさしつかえない。

次にその手順だが、まず、前年同月度の月間売上高を曜日別に分類(ここでは三分類)し、曜日別に売上高合計を出す。これを前年同月度の曜日別合計日数で割れば、各曜日ごとの一日平均売上高が算出される。

この各曜日一日平均売上高に対年比目標伸び率を掛ければ、今年度の各曜日別計画売上高が算出される。

土曜日売上高指数=(土曜日平均売上高/平日平均売上高)

たとえば、平日の平均売上高が30万円、土曜日の平均売上高が50万円とすれば、
50万円/30万円=1.67(小数点第2位以下四捨五入)
となる。日曜・祭日についても同様に計算して指数を算出する。

次に、それぞれの曜日ごとに、指数に合計日数を掛けて合計し、月間での合計指数を算出する。たとえば、
平日月間指数=1.00×17=17.00
土曜日月間指数=1.67×4=6.68

日曜・祭日も同様に計算し、合計指数を出す。次に、今年度の月次売上予算をこの合計指数で割れば、平日の日別売上予算(指数一・OO)が出る。これに上曜日と日曜・祭日の指数を掛ければ、それぞれの曜日別予算が求められる。

なお、②、③の方法とも、端数を四捨五入する関係で月次予算に対する誤差が出るが、これについては通常、月末(最終日)の予算で調整する。

また、②、③の方法とも、平日、土曜日、日曜・祭日の三分類で算出する場合は、月間の細かい売上げ変動要因を勘案したうえで、各日予算に振り分けると、さらに確度の高い予算になる。

たとえば、給料日の前後などによって売上げが影響される場合や、月の上。中・下旬や特定の曜日による売上げ傾向の顕著な場合、それらの特注を加味した微調整が必要になるわけだ。

曜日別計画売上高算出法――その④を詳しく知る

④の方法は少々時間がかかるが、過去二期分の同曜日の売上げ傾向が直接、各日ごとに反映されるため、もっとも確度が高く、使いやすい予算になる。

上記は、その計算例である。

ここでまず注意してほしいのは、第4期、第5期、第6期と、日付の位置がひとつずれていることだ。これは、日付ではなく曜日に合わせているためで、表を見ればわかるように、翌月度の売上げも一部入ってくる。今月度の予算を計算するわけだが、売上げは通常、日付ではなく曜日によって変動する(祭日や連体などは別)ため、この方法が合理的なわけである。

さて、計算の方法だが、まず曜日でそろえた過去第四、五期両年度の各日実績を合計し、さらにそれを合計する。日別売上指数とは、両年度の各日実績をその合計実績で割った数字で、これが今期(第6期) の売上予算に対する各日の売上構成比を示す。したがって、今期の月次売上予算にこの指数を掛ければ、日別予算が求められる。

たとえば、6月1日(月曜日)を例に計算すると、まず、
244,000円(第5期 6月2日 実績)+233,000円(第4期 6月3日 実績)=474,000円
と、第四・五期の各日実績計を算出する。

ところで、すでに注意したように、第4・5期の月次実績欄の数字は、各期の実際売上高(第4期が12,000,000円、第5期が12,500,000円と仮定)ではない。7月1・2日の分も含まれるわけだから、第4期は6月1・2日分、第五期は6月1日分を差し引かなければならない。

12,000,000円+(241,000円+256,000円)-(475,000円+870,000円)=11,152,000円….第4期
12,500,000円+267,000円-914,000円=11,853,000円….第5期

したがって、第4・5期の月次実績計は、
11,152,000円+11,853,000円=23,005,000円
となる。次に、日別売上指数を計算する。
(23,005,000/474,000)=2.02(小数点2以下四捨五入)
したがって、第六期六月一日の日別計算は、
13,430,000円×0.0202=271,000円(1,000円以下四捨五入)と求められる。
なお、この方法でも四捨五入によって月次予算との誤差は出るので、最終日の日別売上予算で調整する。

時間帯別にも管理する

いま飲食店の売上げは曜日別に変動すると述べたが、1日で見ると、時間帯によって変動していることがわかる。

したがって、日別売上計画と実績とを対照し、その内容を検討するためには、 一日の売上げを時間帯別に管理する必要がある。そのための基礎データとなるのが下記 「月間時間帯別売上高統計表」である。

表では、時間帯を三時間刻みに取ってあるが、これは、お客の利用動機の発生・変化と一致するからだ。各時間帯を利用動機であらわせば、

・8時〜11時=モーニングタイム
・11時〜14時=ランチタイム
・14時〜17時=ティータイム(デザート)
・17時〜20時=ディナータイム
・20時〜23時=ナイト
・23時〜2時=ミッドナイト

となる。ただし、この区分は一般的なレストランの場合で、業種業態や立地によっては時間帯の取り方が変わってくる。

もっとも単純なケースは、昼と夜の三分類である。お店によっては売上日報の中で記入しているところもあるが、データ分析のためには、日報とは別に統計表をつくるべきである。

分析にあたっての三つの視点

分析は次の三つの視点でおこなう。(表はページ最下部に掲載)

①週間・月間の時間帯別売上げの推移[表6,7]
②曜日別・月間の時間帯別一日平均売上高[表8]
③曜日別・月間の時間帯別一日平均売上高の年間推移[表9]

それぞれ、売上高、客数、組、客単価をチェックして問題の所在を確認し、問題がある場合はその原因を分析する。

例示した表では前月対比までしかできないが、一年間以上データを取り続ければ、前年同月対比も可能になり、より精度の高い日別売上計画管理ができるようになる。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。