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全てのお客様に大切に接する飲食店には、常連客との馴れ合いの時間はない

お客様に親しみをもってもらうことは、固定客づくりの一番の近道だ。親しみをもってもらうには、お客様とのコミュニケーションが欠かせないが、これも接客サービスの大事な役割である。

お客様は飲食店に「自分のオアシス」を求めているものだ。だから、自分を大切にしてくれるお店を探している。もちろん、多数のお客様が出入りすることくらいお客様もわかっているわけだが、できれば自分は特別な存在になりたいと思う。それがお客様の心理というものだ。お客様は口には出さなくても、お店の人間と親しくなって、心の触れ合いをしたいと期待しているのである。

しかし、お客様のほうから声をかけてくることを期待していてはいけない。こちらから積極的に声をかけるのである。たとえば、お迎えのときに、ひと言「今日は暑かったですね」と添えてみたり、雨の日なら「よく降りますね」と話しかける。何でもないひと言だが、お客様にとっては手を差し延べてくれたような

オーダーを受けるときはお客様と最も近い距離で接しているときだから、このときもコミュニケーションの絶好のチャンスである。たとえば、ただメニュー表を渡すだけでなく、「もしよろしかったら、今日はこんな料理ができるのですが」などと料理の説明をする。その料理をオーダーしてくれなくてもいっこうにかまわない。お客様を大事に考えているというお店の気持ちが伝わればいいのである。

お客様にもいろいろなタイプの人がいるが、ふつうは自分から話しかけるのは、なんとなく気恥ずかしいと思っているものである。話をしたいのだけれども、自分からは切り出せないでいる。それなら、お店のほうからきっかけをつくってあげればいい。

食事中なら、「何か御用はございませんか、なんなりとお申し付けください」と声をかけるのもいいだろう。そして、食後なら「お楽しみいただけましたか」と話しかける。もちろん、食事やお客様同士の会話の邪魔にならないように注意しなければならないが、お客様は、こういう「ひと言」に感動するのである。

ただし、お客様に親しみをもつてもらうことと、特別なお客様に過剰サービスをすることは別である。ここはきっちりと理解しておいてほしい。すべてのお客様と親しくなれるように心を配ることが大切なのだ。すべてのお客様に平等にというのは、飲食店のサービスの大原則である。

たしかに、一部の常連客との馴れ合いは一見、固定客ができたような気にさせてくれるだろう。しかし、それは結局、錯覚でしかない。なぜなら、一部のお客様だけ特別扱いするということは、他のお客様を軽く見ている、大切なお客様として認めていないということを公言しているようなものだからである。

常連客が大きな顔をして店主と馴れ合っているのは、だれにとっても気分のよくない光景だ。そんなお店にわざわざ通ってくれるお客様はいない。お客様はだれでも自分を大切にしてほしいと思っている。このことを忘れてはいけない。

飲食店の印象はオーダーの取り方が決める

お客様のオーダーを取るのは、サービススタッフの最も基本的な仕事のひとつである。そのため、何も考えずにやつているお店が多いが、実は、このときにお客様の心証を害してしまうことが少なくない。接客サービスの落とし穴でもあるわけだ。

オーダーを取るときは、お客様と最も近い距離で接するときである。したがって、お客様の心証に大きな影響を与えやすい場面ということになる。また、オーダー時は、スタッフがお客様をどれだけ大切に思っているかということが、はっきりと表れてしまうときでもある。

通常、お客様が席についたら、最初のサービスとして水やお茶、おしぼりなどと一緒にメニュー表を提示する。ここで最初の問題点が浮かび上がる。お客様に圧力をかけて平気でいるお店が多いということだ。

最近は、メニュー表を手渡した直後に「お決まりでしたら」とオーダーを促すやり方がまかり通っている。まだお客様がメニュー表をよく見てもいないのに、まだかまだかとせかすわけだ。

これでは、何のためにメニュー表を渡しているのかわからないし、お客様はメニューを選ぶという楽しさも味わえない。限定メニューだけのランチタイムとか、居酒屋でとりあえずドリンクだけオーダーしてもらうというのならまだ許されるが、あたかもお客様を無視したような態度は大問題である。本来「お決まりでしたら」というのは、お客様がメニューを検討して注文が決まったら、教えてくださいという意味の言葉なのである。

また、お客様にメニューを検討させるのはいいのだが、メニュー表を渡したままほったらかしにしてしまうケースも多々見受けられるが、この点も十分認識してほしい。

お客様にメニュー表を渡したらお客様の様子に注意するというのは、接客サービスの基本である。注文が決まれば必ず、サービススタッフを探すそぶりをしたり、メニュー表を閉じたりという、お客様からの合図がある。その合図を見逃さずに、さっとおうかがいするのが、当たり前のサービスなのだ。もしも合図に気づかなかったら、そのお客様を無視していたことと同じなのだ。

こういうところで、知らず知らずにお客様の印象を悪くしているとしたら、どうするのか。お店にとって大変な損失である。

さて、オーダーを受けたら、必ず声に出して伝票に書くこと。聞き間違いを防ぐためで、これが原因のトラブルは意外と多い。また、お客様が「ご飯」と言っているのに「ライスですね」と言い替えるようなことは厳禁である。お客様の言い方を否定するニュアンスは、飲食店では絶対にあってはならない。スタッフには日頃から、お客様を肯定する習慣をつけさせておくことだ。

ドリンクや複数の料理を注文された場合は、必ず提供する順番を確認する。調理に時間がかかる場合は、あらかじめお客様にそのむね断って了解を得ておく、といったことも大切なポイントだ。

なお、オーダーを受けているときに他のお客様から声をかけられることもあるが、絶対に無視してはいけない。「はい、ただいま」など必ず返事をして、すぐにうかがうようにする。

飲食店でリピーターを増やす「いらっしゃいませ」とは。

お客様のお店に対する評価は、お店に入ったときの第一印象でほとんど決まつてしまう。もしもお客様が来店したときのスタッフの対応に失礼があったら、お客様の心証をよくすることはほとんどできないといってもいい。お客様にとって第一印象は、それほど強烈なものである。したがって、お出迎えの仕方には、つねに十分注意しておく必要がある。

飲食店のお出迎えは「いらつしやいませ」という挨拶から始まる。そんなことは常識だろう。そして、あまりに当たり前の接客用語のために、その意味を深く考えようとしない傾向がある。オウムのように機械的に繰り返すだけというお店は、いくらでもある。しかし、「いらっしゃいませ」という言葉には、次の3つの意味が込められていなければならないのだ。

①来店してくれたことへの感謝の気持ち
②大切なお客様さまと認めていることを示す意思表示
③楽しく豊かな時間をすごしてもらうためのきっかけづくり
いかがだろうか。①はともかく、②、③の意味までしつかりと意識して、この言葉を使っているだろうか。

はじめて入るお店というのは、だれにとっても不安なものだ。なんとなく落ち着かない気分になってしまう。そういう不安を一瞬のうちに取り除いて、楽しい時間への期待感をもたせる。それがお出迎えである。

人間だれでも、人に歓迎されたいと思っている。お店に入るときはなおさらそうだ。何しろお客様なのである。大切なお客様としてきちんと扱ってほしいと思う。当然のことである。それが、お客様を軽んじるような態度を取られたらどう思うだろうか。

ただ機械的に「いらつしやいませ」を繰り返すだけのお店は、そういうお客様の心理がまるでわかっていないのだ。来店してくれたことを感謝するのは当然の礼儀だが、② の大切なお客様と認めているという意思表示の意味の大きさを、しっかりとかみしめてほしいと思う。

以上ははじめて来店してくれたお客様の場合で、何度か来店したことのあるお客様の場合は、「いらつしやいませ」だけではなく、「今日はお一人ですか」とか「今日はお早いですね」といったひと言を付け加えるといい。このひと言によって、当店の大事なお客様さまというお店側の気持ちがストレートに伝わり、お客様の気分はぐんとよくなる。

別に予約をしていなくても、「お待ちしておりました」という気持ちをはっきりと伝える。これは、お客様をお店につなぎ止めるための大切なポイントでもある。いまは競争の激しい時代だ。お客様にとって、他にも行くお店はいくらでもある。「やっぱりこのお店に来てよかった」と思ってもらえなければ、固定客を増やすことはできない。

お客様はそれぞれの期待感をもってお店に来る。その期待感を絶対に裏切らないことが、成功への鉄則である。

なお、第一印象をよくするには、サービススタッフの明るい笑顔と声だけでなく、身のこなしや身だしなふも大切な要素になる。経営者は、つねにそこにも気を配って、スタッフを教育していかなければいけない。

お客様の自尊心を傷つけないための言葉遣いとは

接客サービスの目的は、お客様に気分よくすごしてもらうことだ。お客様が楽しく豊かな気分ですごせるように、いろいろと配慮して尽くすことが仕事である。当然のことだが、スタッフの言葉遣いには十分注意しなければならない。

しかし、言葉遣いというのは、意外とむずかしいものだ。とくに、ふだんの生活ではあまり使わないだけに、敬語の表現はむずかしい。よくクイズなどにも出題されるが、なかなか全問正解とはいかないのではないか。

接客サービスの言葉遣いで最も大切なことは、絶対にお客様の自尊心を傷つけてはならないということだ。これが飲食業の鉄則であり、敬語や丁寧語を使わなければならないのもそのためである。

言うまでもなく、お客様とお店との間には厳然とした一線がある。絶対に超えてはならない一線だ。そして、その一線をはさんでの礼儀というものがある。だから、お客様はお店の人間の言葉遣いに対して、非常に敏感である。ちょっとしたひと言で気分を害してしまうし、最悪の場合は本気で怒らせてしまう。

言葉遣いなど常識の範囲内でできることではないのか。そう思っているお店も少なくない。しかし、はたしてそうだろうか。悪気はなくてもお客様を怒らせてしまうというのはよくあるケースだが、たいていの場合、怒らせてしまうきっかけはスタッフの無自覚な言葉遣いにある。

一般に、接客サービスで必要な基本用語はそれほど多くはない。「いらつしゃいませ」に始まり、たしましょうか」「はい、かしこまりました」「申し訳ございません」「ありがとうございました」ぜい10種類くらいのものだ。これくらいの用語ならだれでも覚えられる。

しかし、当たり前のことだが、接客サービスは基本用語だけでは務まらない。基本用語はあくまで基本であって、オーダーを取るだけでも、お客様とのさまざまなやり取りがある。そして、そこでは絶対に敬語を使わなければならないのである。これがスタッフの「常識」だけですむことなのか。そこを真剣に考えなければならない。

たとえば、自分のことを「わたし」といっているようでは失格で、「わたくし」と言わなければならないが、こんなことも徹底されていないお店があまりに多いのだ。だから、平気で「うち」とか「うちの店」などと言ってしまうが、正しくは「わたくしどもの店」である。

その他、よく見かける誤用として「いいですか」「何人ですか」「ありません」「すみませんが」「知っていますか」「お連れします」などがある。それぞれ正しい言葉遣いは「よろしいですか」「何人様でいらつしゃいますか」で」ざいません」「恐れ入りますが」「ご存じでしょうか」「ご案内いたします」である。

スタツフに正しい言葉遣いをさせるには、敬語表現はむずかしいという前提で取り組むことが大切だ。想定問答集をつくって、日頃から練習させるのである。言葉というのは、使いつけていないと、なかなかスムーズに出てこない。

ただし、言葉だけ暗記させるのでは効果はない。おもてなしの心と一緒に教える。そこが肝心である。

飲食店は接客マニュアルでの画一化で気持ちを込めるゆとりを持つ事が必要

飲食店はつねに、 一定レベルの付加価値を提供しなければならない。このお店が守らなければならない一定のレベルのことをスタンダードという。もちろん、スタンダードを決めるのは経営者だ。そして経営者は、商品、サービス、雰囲気のすべてにおいてスタンダードを維持していく責任をもっている。

しかし、日で言うのは簡単だが、これを実現するのは簡単なことではない。なぜなら、人それぞれ考え方も感覚も違うからだ。プロのサービスマンを使うのなら、ある程度は個々の判断に任せることができるが、パート・アルバイトにそれは不可能だ。

たしかに、 一般の飲食店の接客サービスは、基本的にはそれほどむずかしい仕事ではない。また、サービススタイルにしても、どのお店でも大きな違いはないものだ。しかし、お客様に対してきちんと対応できるかどうかは別問題である。そこで個人差が出ていたら、お客様はどう思うだろうか。また、お客様とのやり取りの中では、いろいろな場面が想定される。その対応をすべて、個々のスタッフの判断に任せていいものだろうか。

だから、サービスマニュアルが必要になる。マニュアルによって、自店のスタンダードを教え込まなければならないのだ。ただし、注意しておきたいのは、マニュアル習得をスタッフの目標にしてはいけない、ということだ。マニュアルによって接客用語や動作、態度などを統一するのは、そうすることが、お店のスタンダードを維持するために最低限必要だからである。

ところで、よくスタッフの教育・訓練というが、たいていのお店は「教育」には手抜きをする。そして、いきなり実地訓練に入ってそれでよしとする傾向がある。よリサービスを向上させようという指導もろくにしない。マニュアルのイメージがあまりよくないのは、そのためといっていいだろう。

マニュアルは作業の指示書だ。どの仕事をどのようにすればいいのか。その指示を明確に出して、守らせるためのツールである。しかし、飲食店の接客サービスはたんなる作業ではない。仕事の仕方は統一しなければならないが、その仕事の中で、お店のお客様に対する奉仕の心、感謝の気持ちを表現していかなければならない。そこで「教育」が重要になるのである。

お店のスタンダードを維持していくには、サービスの仕方のある程度の画一化は避けられない。しかし、画一的だからサービスのレベルが低いのではない。お客様が不快になるのは、サービスの背後に「おもてなしの心」が感じられないときである。

お客様にとって快いサービスになるか、それとも不快なサービスになってしまうのか。その分かれ日は、サービススタツフの「心」のもち方なのである。お客様に対する感謝の気持ち、楽しんでもらいたいという気持ちがあるかないかで、同じ行動、動作がまったく別のものになってしまう。それが接客サービスというものだ。

したがって、サービスマニュアルには、作業の指示だけではなく、それぞれの用語や動作の裏にある意味と奉仕の心を明記して、その教育に力を入れなければならない。サービスとはたんなる形ではないことを徹底的に教育する。そうしてはじめて、マニュアルのメリットを最大限に生かせるのである。

飲食店は、お客様に豊かな時間を過ごしてもらう「おもてなし」の場

ふつうの飲食店の接客サービスは、どのお店でも大差はないものだ。お客様が入ってくれば「いらつしゃいませ」と声をかけ、オーダーを取る。厨一房にオーダーを通して料理を運び、帰るときには「ありがとうございました」と言う。

ところが、同じようなサービススタイルなのに、お店によって印象がかなり違う。気分よくすごせるお店と、そうでないお店の違いは歴然としている。あなたもよく感じていることではないだろうか。

接客サービスで最も大事なことは、サービススタツフ全員に「おもてなしの心」をもたせることだ。「おもてなし」とは、言い替えれば、お客様に尽くすことである。飲食業とは、お客様に尽くすことが仕事、つまり「奉仕業」なのだ。このことをスタッフにしっかりと理解させない限り、お店のサービスレベルは向上しない。だから、お店のファン=固定客をつくることができない。

形ばかりで中身がなければダメということはよくあるが、接客サービスはまさにそれである。いくら「いらつしやいませ」「ありがとうございました」と言っても、心から出ている言葉か口先だけなのか、お客様にはすぐにわかってしまう。オーダー取り、料理を運ぶ、食器を下げるといった態度にも、それは如実に表れる。お客様も心をもつ人間である。隠そうとしても隠しきれるものではない。

商品としてのモノを通して「心」を提供するのが、飲食店のあるべき姿だ。お客様の喜びを最優先に考える「心」、それが尽くす心である。お客様にとって一番大切なことは、楽しく豊かな気分ですごすことだ。

だから、お客様に尽くすということの意味を正しく理解していれば、お客様のためにいろいろと配慮するのは当然と思えるはずだ。しかし、その本質がわかっていない人にとっては、接客サービスはただの「作業」でしかない。決められた言葉を使い、決められた動作を繰り返していればいいということになってしまう。

飲食店がサービス面で最も陥りやすい落とし穴は、サービスの形骸化なのである。ここで大事なのは、サービススタッフは全員が、お店の「顔」だということだ。スタッフ一人一人が「お店の代表」としてお客様に接しているのである。気分を害してしまったお客様の評価は、担当したスタッフ個人に対するものではない。たった一人のスタッフの接客が悪かったために、お店全体が悪く思われてしまうのだ。ここに接客サービスの怖さがある。

最近の飲食店は、パート・アルバイトを多用する傾向にある。人件費を節約するにはそれしかないし、そのこと自体が悪いのではない。問題なのは、どうせパート・アルバイトなのだから、という意識が経営者に根強くあることだ。しかし、それはお店側の事情にすぎない。お客様にとっては、スタッフがアルバイトだろうが社員だろうが関係ない。どういう接客を受けたかということだけが問題なのだ。

接客サービスというと、用語や動作ばかりに目が向きがちだが、本当に大事なのは、スタッフ全員に「おもてなしの心」を徹底させることである。この原点を忘れないで実践することが、お客様の高い評価を呼ぶのである。

売りたい商品が売れる飲食店メニュー表のつくり方

ヤル気のある飲食店なら、売りたいと思う商品が必ずあるはずだ。お店が売りたい商品とは、自信のある商品であり、お店が儲かる商品である。しかし、何の工夫もしなければ、お客様はなかなかオーダーしてくれない。確実に成功するには、お客様のオーダーを誘導する発想が不可欠だが、その役割を担っているのがメニュー表である。

メニュー表はたんなる商品カタログや価格表ではない。たとえば、商品の内容など、お客様が知りたいと思っている情報を伝えるためのコミュニケーション・ツールでもあるし、お客様の期待感を高めるイントロとしての役割ももっている。しかし、最も大事な役割は、お店が売りたい商品をアピールし、オーダーしてもらうためのセールスマンとしての機能なのである。

メニュー表によつてお客様のオーダーを誘導するには、そのための仕掛けが必要だ。見やすく読みやすいということは当然として、お客様の目線の動きを予測した戦略的なデザイン、レイアウトを工夫する必要がある。メニュー表のデザインというと、見た目がきれいとか可愛いとか、たんなる見栄えのよさでしか考えないケースが少なくないが、それではセールスマンとしての機能は果たせない。

次に、メニュー表をつくるときの主な注意点を挙げておく。

まず、基本的には1枚のボードタイプと、見開き2ページ以上のブックタイプに分かれるが、多数ページのブックタイプの場合は、簡単な目次や索引をつけるといい。

料理はジャンル別に掲載するが、単品商品とセットメニューなどもグループ分けする。メニュー表は、お客様にメニュー選びの楽しさも提供するわけだが、雑然と商品が並んでいるのでは、お客様はメニュー情報を整理できず困ってしまう。どれにしようかと迷うのが楽しいのは、候補の商品をある程度絞り込めるからで、ただ目移りしているだけでは楽しむどころか、オーダーを決めるのが億劫になったり苦痛になってしまう。ジャンル分けなど当たり前のことのようだが、この基本すらきちんと踏まえていないケースが意外と多いのである。

各ジャンルごとに、それぞれの商品を並べていくが、ここで大事なのは並べる順番である。売りたい商品はどれなのかをお客様にはつきりと伝えるには、ページのどの辺に記載するのかが非常に重要になる。 一般にはベージの頭に置くのが最も目立つとされるが、デザインによつては、真ん中とかいろいろな位置取りが考えられる。周りの人たちにも協力してもらい、最も効果的なレイアウトを追求することである。

売りたい商品を目立たせるには、アイキャツチをつけたり枠で囲んだりといつた、デザイン的な工夫をする必要がある。

また、表現方法としては、文字だけと、写真、イラストを併用する方法とがあるが、どちらがすぐれているとは一概にはいえない。ただ、写真を使う場合は、売りたい商品の写真を大きくするなど、メリハリをつけること。それと、写真は「おいしさ」を的確に表現できるものを使うことだ。おいしそうには全然見えない素人写真では、かえって逆効果になってしまう。

小さな飲食店を伸ばすメニュー基準表の書き方と見直すタイミング

メニュー基準表とは調理マニュアルのことだ。マニュアルというと、チエーン店や大型店のものと思い込んでいる人が多いが、そんなことはない。小さな個店でも、お客様の信用を得るために絶対に必要なものである。

では、なぜ絶対に必要なのか。それは、飲食店の商品はつねに一定のものでなければならないからだ。商品が商品として通用するための条件は、その内容がつねに一定であることだ。

①味、②量、③盛りつけ、④材料原価、⑤提供時間、の5つである。

定価を付けてお金をいただく以上は、これら5つの内容がいつでも同じでなければ、 一人前の飲食店とは言えない。行くたびに味や量が変わるお店は意外と多いものだが、そんなことを平気でやっていたら当然、お客様の信用は得られないということになる。

メニュー基準表は、これら5つの要素を一定にするためのマニュアルである。いつ、どの担当者がつくっても「同じ」商品を提供するためには、ひとつの基準が不可欠だ。その基準を示したものである。

調理マニュアルがチェーン店や大型店だけのものではないということが、これで理解できるはずだ。商品の内容がつねに一定でなければいけないということに、お店の規模の大小や店舗数は何の関係もない。というより、小さなお店だから多少のことは許される、などという甘えた発想で商品づくりをすることが、最も危険なことなのである。

さて、調理マニュアルの基本となるのは「仕込基準表」と「メニュー基準表」の2つである。最終調理のための手順ならともかく、仕込に基準表は必要ないのでは、と思う人もいるだろうが、実はそこに落とし穴がある。

通常、仕込作業はアルバイトや新人に担当させることが多いが、この段階でミスがあると、一定の商品は絶対につくれないのである。作業が単純、複雑というのではなく、ミスを防ぐために必要なのだということを理解してほしい。次に、それぞれの基準表の注意点を挙げておこう。

まず仕込基準表では、 一度に仕込む量、使用材料のそれぞれの分量と単価、合計金額を決める。使用材料は調味料類まですべて書き込むこと。とくに調味料類は目分量になりがちだが、できるだけ正確に表記することが大切である。単価と合計金額を書き込むのは、原価管理を徹底するためだ。

調理手順としては、使用する道具、調理機器、その扱い方、所要時間、注意事項を記入する。作業内容をどれだけ細かく指示するかは、仕事の難易度によって判断すればいいだろう。

メニュー基準表の内容は仕込基準表とほぼ同じだが、こちらはお客様のオーダーを受けてからの最終調理の標準化が目的だ。したがって、調理手順と盛りつけの指示が非常に大切な要素となる。サンプルやメニュー表の写真と同じ完成写真を貼付して、こまかい注意事項も記入しておくことだ。

なお、これらの基準表は、最低でも年に4回見直す必要がある。なぜなら、季節によって使用材料や原価が変わるからである。

調理技術を超える食材は、調理技術の習得よりも時間をかけて選別する。

仕入では食材業者とのパートナーシップが大切と言ったが、さらに飛躍するためには、同時に、独自の食材仕入ルートを開拓していく努力も欠かせない。なぜ、独自のルートが必要なのかというと、それこそが「独自の食材」をもつための方法だからである。

商品差別化は、飲食店成功のための最大のテーマである。他店では食べられない商品をもつことは、他店との競争を勝ち抜くための最大の武器になる。他店の真似のできないオリジナルメニューがあれば、どんなに競合店が増えても恐れるに足りない。

ところで、そもそも商品開発の基本は材料である。どんな材料を使うかで、商品の付加価値は大きく変わってくる。

たとえば、最近はスーパーなどでも「こだわりの食材」が主婦の間で人気になつている。銘柄品といえば牛肉というのは、遠い昔の話である。卵や鶏肉、豚肉、ジャガイモ、トマトといった、ごくありふれた食材でも、いろいろな産地、銘柄がアピールされるようになっている。

その違いがどれくらいあるのかということは、いまは問題ではない。大事なのは、その材料自体がもつ付加価値である。そして、残念なことに、食材へのこだわりということでは、いまは飲食店よりも消費者のほうが進んでいるのだ。ということは、他店では使っていない材料、自店だけの「変わった食材」を使うとうことは、それだけでも大きな付加価値になるということだ。

オリジナルメニューのつくり方の項でも述べたが、商品の差別化にはいろいろな方法がある。調理技術も大切だが、どんなに高度な技術があっても、使う材料がよくなければ料理の完成度は低くなってしまう。商品開発も同じで、材料さえ飛び抜けていれば、技術が足りなくても高い付加価値を生み出すことができるのだ。

そして、ここが肝心なところだが、オリジナルメニュー開発手法を5つ挙げた中で、最も難易度が高いのが「独自の食材を使用する」ことだった言い替えれば、独自の食材をもつことは、調理技術をも超える可能性をもっているということだ。

いまのお客様は、ただたんにおいしいというだけでは満足しない。何かしら変わっている部分を求めている。それなら、商品づくりの基本である材料に徹底的にこだわることだ。そして、こだわりを徹底していけば、独自の調達に行き着く。すべての材料で、ということではない。たった1つでもいい。その材料を使った商品が看板になることで、強力な差別化を実現できるのである。

もちろん、ルート開拓は簡単なことではない。しかし、探し続ければぶつかることもある。たとえば魚介なら、漁獲量が少ないために市場に回らないものがけっこうある。野菜でもそうだ。あるいは、変わった栽培をしている生産者に出会うということもある。

ルート開拓で大切なことは、とにかく探し続けること。そして、絶対に焦らないことである。遊びがてら地方を回りながら、たまたま見つかる。それくらいの心構えでちょうどいい。

小さな店舗が食材業者と上手に付き合う方法

言うまでもないが、飲食店にとって食材業者は最も大事な出入り業者である。飲食店は食材がなければ営業できないのだ。また、商品のクオリティーの7割方は材料で決まってしまう。業者には、できるだけいい材料を安くもってきてほしい。これは、すべての飲食店経営者の願いだろう。

しかし、業者も商売である。すべての取引先と完全に平等な付き合いなどできるはずもない。扱う材料にランクがあるのは当然のことで、その届け先の優先順位は付き合いの度合いで決まっていくわけだ。このことはしっかりと頭に入れておいてほしい。

といっても、業者にへつらう必要はまったくない。ないどころか、そんな態度では甘く見られて損をするだけである。また、妙に強気に出て買い叩くことばかり考える経営者もいるが、これも間違いである。素直に値引きするようなら、必ず理由がある。知らぬが仏、というわけだ。

食材業者との付き合いはパートナーシップをもつのが基本である。お互いをビジネスパートナーとして尊重し、お互いに利益を上げられるように考える。この姿勢なくして、有利な仕入は絶対にできないと肝に銘じてほしいと思う。昔から商売はソンしてトク取れというが、業者を儲けさせて、その上で自分が儲けるという発想が大切なのだ。

ただし、業者を儲けさせるというのは、別に高く仕入れるということではない。お店が繁盛して仕入の量が増えれば業者も儲かるという意味である。業者との関係が良好なら、質のよい材料を優先的に回してくれるようになるし、ときには値引きもしてくれるだろう。また、新しい食材の情報をもってきてくれるとか、イベントの際には積極的に協力してくるということもある。

しかし、注意したいのは、パートナーシツプとはただ仲がいいとか馴れ合い体質になることではない、ということだ。

品質の悪い材料が届いたら直ちに返品するなど、毅然とした姿勢を示さなければいけない。それで相手の態度が悪くなるようなら、さつさと別の業者に変えることだ。優良業者であれば、そういう姿勢を示すことでかえって協力的になってくれるものである。業者の商売も競争が激しい。できるだけ優良な相手と取引したいと思っているのは、業者も同じである。

さらに付け加えるなら、支払期日は順守し、場合によっては現金取引にも快く応じることも必要だ。お互いに苦しいときには助け合う。そういう精神を大事にすることが、パートナーシップの基本である。

ところで、業者から仕入れると手数料がかかる。当たり前のことなのだが、これを不満に思っているお店があるのも事実である。しかし、そういう考え方ではビジネスは成り立たない。

食材を業者から仕入れるのが常識になっているのは、はっきり言ってそのほうがラクだからだ。ラクというのは、買いに出かける時間と労力という意味だけではない。市場に行ったところで、材料を見る目がなければ意味がない。それこそ業者に馬鹿にされるだけだ。そもそも、毎日のように仕入に出かける大変さを冷静に考えてみるといい。プロを使うメリットを考えれば、配送費などの上乗せは問題にならないはずである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。