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第3章「開店」の常識編

できるだけ安く飲食店をつくるには

飲食店というのは、お金をかければお客様が来てくれるというものではない。そもそも高級店ならともかく、 一般の小さなお店に、お客様は「本物」の内装や調度類など期待していない。

お客様にとって「いいお店」とは、感じがいいお店である。気分よくすごせればいいわけで、いくら投資したということにはあまり興味をもたないものだ。逆に言えば、お金をかけたくなるのは、ビジネスのためではなく、経営者の自己満足であることが多い。

とくに、はじめてオープンする人は、この傾向が強い。要するにマイホームと同じ感覚で、できるだけ満足のいくものを、と考えてしまうのだ。しかし、お店はあくまでビジネスの場である。必要な投資をすればいいのである。この発想の切り替えができなければ、できるだけ安くつくるということは不可能といっていい。

さて、最も安くお店をつくる方法は、手頃な居抜き店舗を活用することだ。機器類から什器備品類はもちろんだが、食器まで揃っていれば、新しく買うものはほとんどない。

通常はカラ店舗を借りてオープンすることになるが、安くつくるには、まず知恵を使うこと。そして、すべてをビジネスと割り切って合理的に考えることだ。

一般に、客席ホールの内装にお金をかけすぎてしまうのは、いまも言ったようにマイホーム感覚が強いためだが、これはできるだけ長くもたせたいという発想でもある。そのため、つい「いい材料」に目が行ってしまうのである。お客様をもてなす場だから、という思いもあるだろう。

しかし、お店づくりは材料で決まるわけではない。大事なのはデザインというより、むしろ演出だ。お客様が求めているのは、他のお店と違って楽しく、くつろげ、豊かな気分になれる、そんな演出なのである。

雰囲気の演出とは、イメージのふくらみをもたせることだ、たとえば、外国のレストランをテーマにするのなら、その国の素朴な民芸品が2つ、3つ、ポイントとしてあれば十分。あとは、壁紙やカーテンなどで

雰囲気を盛り上げる工夫をすればいい。また、生花をさした一輪挿しひとつで、雰囲気はがらりと変わる。

要はセンスの問題である。

厨房関係ではズバリ言って、中古品を上手に利用することだ。中古品といっても、いまは昔とはまったく違う。ちょっと使っただけの、まだまだ使える機器類がたくさん出回っている。

ものによっては多少の汚れが気になるかもしれないが、たとえ新品を買ったとしても、いずれは汚れてしまうものだ。中古品でも、丹念に磨き上げれば、かなりきれいになる。せっかく念願のお店をつくるのだから、ピカピカの新品を使いたいという気持ちは理解できるが、安く上げたいのなら気持ちの切り替えが必要だ。

お店はビジネスの場といったが、内装や機器類は自己満足のためのものではない。飲食店としての付加価値を生み出すための道具にすぎない。自分のお店を愛することは大切だが、趣味ではないのである。そういう発想がきちんとできれば、お金をかけるべきところとかけないでいい部分の区別がわかってくるはずである。

毎日の習慣にすべき、効果的な飲食店開店宣伝の仕方

いまは飲食店の数が多く、競争の激しい時代だ。飲食店がオープンすること自体、珍しいことではなくなっている。したがって、オープンに当たってはできるだけ効果的な宣伝を打って、自店の存在を強力にアピールする必要がある。

もちろん、看板や外観を工夫するのは自店を目立たせるためである。しかし、それだけでは多くのお客様の目を引きつけることはむずかしい。短期間で軌道に乗せるには、集中的な宣伝活動が不可欠なのだ。飲食店は昔から、広告宣伝費を使いたがらない「伝統」があるが、いまの時代には通用しない。必要な投資をきちんとすることが、確実な成功を手にするための鉄則だ。

言うまでもないが、宣伝で大事なのは効果の最も見込める方法を取ることである。宣伝はただ打てばいいというものではない。効果が期待できるからこそ、投資する意味がある。中途半端なやり方ではなく、こうと決めたら徹底的に実施することが大切だ。

一般的な方法としては、駅前や店頭でのサービス券入リティッシュ配り、各家庭や事業所を対象とするサービス券付きチラシのポスティングがある。最近はこの宣伝が日常的光景になっているため、昔ほどの効果がなくなっているのは事実だが、それでも一定の効果は上がる。問題は、どの程度徹底的に実施するかである。

オープン後1週間程度は、毎日配布するぐらいの意気込みがほしい。告知というのは、反復が重要なのだ。なお、ティッシュ配りは暇な時間を利用しての片手間ではダメだ。お店が暇な時間は、通行人も少ないし、食事ニーズも発生していないから、興味をもってもらいにくい。できればアルバイトを雇って、効果的な時間帯に配ることである。アルバイトは自分や知人の子どもでもいいのだ。ただし、たんに配らせるだけでなく、通行人に好印象をもってもらえる配り方と態度を考えること。

商圏内に事業所が多い場合は、セールスに打って出るのが最も効果的だ。メニュー表とサービス券を持参して、事業所に挨拶に出向くのである。注意点は、事業所の大小や見栄えでセールス対象をえり好みしないこと。こういうセールスはシラミつぶしにやつてこそ効果が上がるのだ。

以上のほか、地域のミニコミ媒体があれば、それに広告を出してもいい。マスの媒体と違って、ある程度の効果は期待できる。

さて、以上は告知の方法だが、飲食店ならいくらでもある時代に、ただ存在をアピールするだけではやはり弱い。お店を知ってもらうだけでなく、実際に「入ってみようか」という気にさせるためには、開店サトビスの内容が非常に重要になる。

たとえば、 一般に多いのは5%から10%程度のサービスだが、この程度のサービスではインパクトにはならない。20%、できれば30%引きくらいの、思い切ったサービスを打ち出すべきである。また、価格だけでなく、サービス期間も重要だ。最低でも2週間から1カ月くらい実施しなければ、告知を浸透させることはできない。お客様でいっぱいの光景が、さらに新しいお客様を呼ぶのである。

ただし、開店サービスで来店したお客様が、そのまま固定客になってくれるわけではない。お客様を確実に引きとめるには、オープン2カ月後、3カ月後にもう一度、販促キャンペーンを打つべきである。

飲食店オープン前に絶対に必要なスタッフトレーニング

はじめてオープンする人が意外と軽視する傾向があるのが、オープン前のスタッフのトレーニングである。

オープン前は何から何まで未経験のことばかりで、ワクワクする気持ちと同時に、いろいろと不安を抱えているはずだ。ところが、トレーニングは軽く考えてしまう。

どうしてそうなるのかというと、まだ飲食店経営者としての自覚が足りず、お客様に対する甘えがあるからだ。つまり、オープン後しばらくの間は、「まだ開店したてで慣れていないものですから」という言い訳が通用すると思っているわけだ。これでは甘すぎる。こんな心がけでは失敗しても仕方がないというしかない。

飲食店はオープンしたその日から、プロの集団でなければならない。プロでなければ、お客様からお金をいただくわけにはいかないからだ。知人や友人なら大目に見てもくれるだろうが、赤の他人のお客様に一方的に甘えを押しつけるなど、許されるはずがない。

もちろん、少しくらいのトレーニングで、本当のプロといえるレベルに達するはずはない。また、実際問題としてパート・アルバイトで運営する場合、オープンから何年経とうが、同じ問題を抱え続けることになる。それでも、仕事に就く前のスタッフのレベルをできるだけプロに近づけることは、飲食店として当然の義務である。

また、オープン前のトレーニングをしたがらないもうひとつの理由として、「家賃がもったいない」というのがある。一般に家賃は、遅くとも内装工事が始まった時点で発生している。工事中だけでもムダな家賃を払っているのだから、工事が終了したらすぐにもオープンして、少しでも家賃のムダをなくしたい、というわけだ。しかし、「慌てる何とかは……」のたとえの通り、日先の利益に目がくらむと、必ず余計な苦労をすることになる。

とくにオープン時の失敗は、なかなか取り返しがきかない。きちっとした実績のあるお店なら、 一度や二度の失敗は許してもらえるだろう。しかし、新規開店のお店には実績がない。お客様の評価はこれから決まるのだ。必ず成功させたいと思うなら、ぶつつけ本番は絶対にやめることだ。どんなに短くても3日程度のトレーニング期間は予定しておくべきである。つまり、それまでにスタツフを募集して決めておかなければならないということだ。

トレーニングは、厨房とホールそれぞれで行い、最後に連携してのチームプレーを反復訓練するといい。いずれにしても、どの仕事をどのようにすればいいのかがわからなければ、スタッフは動きようがない。したがって、厨房での調理作業、ホールでの接客と、2つのマニュアルも用意しておく必要があるわけだ。

なお、トレーニングの最後には、全商品を実際につくり、サービススタツフも含めた全員で試食してみること。調理スタッフに経験させることはもちろんだが、サービススタッフもどんな料理なのかがわからなければ、お客様に対して説明のしようがないからだ。

また、トレーニング期間中もスタッフにはきちんと時給を支払うこと。タダで覚えさせようとしても、効果は上がらない。

飲食店スタッフの募集と就業規則の作り方(テンプレート付き)

スタッフの募集は、オープン準備の中でも重要な仕事のひとつである。前にも言ったが、飲食業は「人」で成り立つビジネスだ。そして、実際にお客様と接するのはスタッフである。つまり、お客様を満足させられるかどうかは、スタッフの働きぶりで決まるということだ。とすれば、オープン前にスタッフを集め、きちんと仕事ができるように教育・訓練しておかなければならない。

したがって、スタッフ募集は早めにしておく必要がある。オープン直前になってから店頭に貼り紙をしても遅いのだ。パート・アルバイトだから、ある程度こなしてくれればいいという経営者がいるが、それは違う。お客様にとっては、パートも何もない。接客した人がお店の代表なのである。

募集方法には求人誌や地域のミニコミ誌などに掲載する方法、店頭の貼り紙、スーパーや駅の掲示板、などがある。もちろん、どの方法が最も効果的かなどということは言えない。求人というのは偶然の要素が非常に大きい。そのことも頭に入れて募集しなければならない。

しかし、いくら偶然に左右されるからといつて、来てくれた人ならだれでもいいといった姿勢ではダメだ。そういう経営者に限って、人材がどうのとグチをこぼすものだが、人材云々をいう資格がないといっていいだろう。人を一雇う以上は、どういう人にスタツフになってもらいたいのか、どうでつ入なら認められるのかということを、あらかじめ明確にしておく必要がある。そういう基準がなければ、面接で客観的に評価することはできない。

小さなお店の場合、調理師を一雇うケースは少ないが、もし一屋うのであれば、そのキャリアだけでなく、自店の規模やメニュー内容に合う仕事をしてきた人かどうかが大事なポイントになる。料理人は腕がよければいいというものではない。とくにポピュラープライスのお店の場合、自店の業態に合わない高級メニューが得意でも意味がないのだ。

また、小さなお店は正社員よりもパート・アルバイトを一雇うことが多いが、未成年者や主婦の場合は、家族の了解を取りつけることを忘れてはいけない。家族の承諾なしに一雇ったりすると、つまらないトラブルに巻き込まれることがある。

なお、小さなお店でも人を一雇う以上は、きっちりとした就業規則をつくつておくべきである。就業規則が必要なのは、複数の人間が働く場では、 一定のルールが不可欠だからだ。また、スタッフとしても、ルールが決まっていたほうが働きやすい。

就業規則には、すべきこととしてはいけないことを箇条書きにして、なぜその遵守が必要なのかをわかりやすく明記しておくことだ。

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実は最も難しい、食材業者の選び方

飲食業の経験のない人にとって、最もむずかしいのが食材業者選びだろう。親しい飲食店経営者がいて紹介してくれるというのならいいが、自分で探すとなると、なかなか大変な仕事である。

というのも、業者選びの最大のポイントは、業者の質、力量を見極めることだからだ。もちろん、調理師の経験のない人の場合、これは非常にむずかしい課題である。しかし、むずかしいからできないというのでは、シビアな競争を勝ち抜いて成功することはできない。多くの先輩たちは、何もわからないところから試行錯誤を繰り返して成功を自分のものにしているのである。

とくに紹介がないという場合は、主要な食材については最低3社は当たりたい。有力業者の多くは飲食店の専門雑誌などに広告を出しているから、とにかく打診してみることだ。ただし、扱い品目や値段の話を聞くだけでなく、サンプルを取り寄せてみること。わかるわからないではなく、こういうことは自分で比較検討してみることが大事なのである。

もちろん、3社なら3社からきちんと見積もりは取るわけだが、おそらく価格的にはそう大きな開きは出ないはずだ。業種や考えているメニューにもよるが、扱い品目にも大差はないだろう。

ただし、業者によって得意な食材、不得意な食材があるということは知っておくべきだ。ものによっては、品質が大きく違ってくることがある。つまり、何が何でも1社に絞り込む必要はない、ということだ。安いに越したことはないというのも事実だが、食材は商品の品質を直接左右するものだということを忘れてはならない。

小さなお店なんて「ふつうの業者で十分」という人もいる。「ふつうのお店」でかまわないというのなら、それもいいだろう。しかし、ふつうのお店ではなんとか生計は立ったとしても、成功はできない。そこをよく考えることだ。

また、業者の力量ということでは、どんな便宜を図ってくれるのかが問題になる。次に、そのチェツクポイントを挙げておこう。

・材料の品質、価格の安定供給を約束でき、問題があれば返品に応じてもらえること
・業者の通常の配送ルートに乗っていること。ルートからはずれていると、急な注文がむずかしい
・生鮮品の場合は、週に2、3回など、小ロットで小まめに配送してくれること。冷凍という手もあるが、それでも大量仕入は材料ロスを招く元凶である
・イベントなどの企画に協力してくれること。安く、場合によってはサービスで提供してくれるくらいの業者でなければ、わざわざ付き合う必要はない。これからの飲食店は、お客様の来店を促すためのイベントが欠かせないが、通常の仕入でやっていては、採算が合わなくなってしまう

・材料の品質、価格の安定供給を約束でき、問題があれば返品に応じてもらえること

・業者の通常の配送ルートに乗っていること。ルートからはずれていると、急な注文がむずかしい

・生鮮品の場合は、週に2、3回など、小ロットで小まめに配送してくれること。冷凍という手もあるが、それでも大量仕入は材料ロスを招く元凶である

・イベントなどの企画に協力してくれること。安く、場合によってはサービスで提供してくれるくらいの業者でなければ、わざわざ付き合う必要はない。これからの飲食店は、お客様の来店を促すためのイベントが欠かせないが、通常の仕入でやっていては、採算が合わなくなってしまう

その辺の付き合いをわかっている業者を選びたい。いずれにしろ、業者との良好な関係が、安定した仕入の基本である。それには、いわゆる買い叩き的な態度では絶対にダメだ。また、とりあえず使ってみて、期待できないようなら別の業者を探すこと。他の業者に替えたいのに無理して付き合っているというお店がよくあるが、そのために成功できないというのでは、本末転倒である。

適切な週休は?飲食店の営業時間と休日の決め方

一般に、飲食店の営業時間は業種業態ごとの「常識」に合わせて決めてしまうことが多い。たとえば、ふつうのそば屋は、たいてい夜8時頃で閉店になるが、これは業界の慣習になんとなくしたがっているだけにすぎない。そして、この閉店時間を見直そうともせずに、夜の売上が上がらないで困っていると、こぼすばかりだったりする。これでは、自店の営業方針などないに等しい。

ここまで極端ではなくても、飲食店に常識的な営業時間があるのは確かである。それなりの経験則が働いているのだから、頭から否定する必要はない。しかし、他店はそれでよくても、自店の営業時間は別の問題のはずである。営業時間の設定は、最も効率的に売上を上げることが前提でなければならない。ということは、自店の営業時間は他店に追随するのではなく、自店の営業方針によって決定しなければならないことになる。

最悪なのは、お客様ほしさにダラダラと営業を続けることだ。実際には、いたずらに人件費や光熱費をムダにしているだけで、何の意味もない。

また、営業時間は、業種業態だけでなく、立地条件によっても変わってくる。同じ業種業態でも、夜10時頃には人通りが絶えてしまう立地と、深夜まで人がよく通る立地では、設定が違って当然である。要するに、判断の基準は、お客様が見込めるかどうか、この一点だということだ。

その裏づけを取るには、自店の店前通行量調査をしなければならない。出店場所を決める際の立地調査で、店前通行量調査が不可欠なのは、このためである。どの時間帯にどんな客層が多く通るのかを調査することで、ある時間帯にどんな利用動機が発生するかを予測することができるのだ。

だから、最低でも平日、土曜、日曜の3回調査して、曜日ごとの傾向もつかんでおかなければならない。

ただし、立地調査の項でも述べたように、通常の飲食店の場合はカウンターを使った厳密な調査の必要まではない。小さなお店は少数のお客様で成り立つのだから、おおまかな傾向さえつかめれば十分。オープン後に誤差が出てきたら、その時点で修正すればすむことである。

一方、休日の設定だが、これにも水曜とか木曜といった、エリア内の経験則があるものだ。しかし、これに追随する必要はまったくない。こういう慣習は、週のうち最もニーズが少ない曜日ということで決まって店がいっせいに体業している曜日は営業して、他の曜日に休むという考え方も成り立つわけである。

それではとばかり、チエーン店のように年中無体にするというのは、考え直したほうがいいだろう。たしかに年中無体の個店も少なくない。しかし、無理は禁物だ。商売はアキナイというように、末長く続けていくものだ。疲れがたまってくると、絶対にいいことはない。疲れやストレスがお客様に対するミスという形で出てしまったら、何のための年中無休かわからない。オープン当初は様子を見るために無体で営業してみて、その後は週に1日、少なくとも月に2、3回は休むようにすべきである。

飲食店・工事中と引き渡し時の注意点、必ず見るべきポイントリスト

まず、工事に入る前に、近所に挨拶しておく。これは非常に大事なことである。たしかに、小さなお店の場合、工事自体は大したものではない。期間も1カ月から1カ月半程度と短いし、毎日騒音をまき散らすわけでもない。それほど迷惑はかけないと思うかもしれないが、それは違う。近所にとつては迷惑なのだ。

また、この挨拶はたんに「ご迷惑をおかけします」ということではない。これから末長くお付き合いさせていただく、という挨拶でもある。小さなお店は地域密着が基本。近所に嫌われては成功できない。

さて、工事が始まったら、できるだけ現場に足を運ぶことだ。この期間は他のオープン準備も山積ふだから業者任せにしてしまうケースが少なくない。しかし、できるだけ時間をやり繰りして、実行してもらいたい。

現場に顔を出す目的は、設計と工程表通りに工事が進んでいるかどうかをチェックすることだが、もうひとつ、大切な目的がある。それは、工事の人たちとの良好な人間関係を築くことである。

どんな仕事でも、やる人の気持ち次第で結果はずいぶんと変わる。店舗の工事も同じである。大筋では大差ないかもしれないが、細かい部分で必ず仕上がりに違いが出るものである。とくに内装は、そういうちょっとした仕上げ具合のよし悪しが、印象を大きく左右する。だから、現場に顔を出すときは、何か差し入れをすることを忘れてはいけない。缶コーヒーでもいい。要は、こちらの気持ちを示すことが大切なのだ。

また、工事中ならまだ、いろいろと手直しがきく。とくに厨房は設計図の段階ではわかりにくいが、工事が進んでくると、実際の仕事が具体的に想定できるようになる。そこで不具合が見つかったら、多少の追加料金を払ってでも直しておくべきなのだ。

とくに、大型機器類の配置や配管関係の工事は、完成してから変更するのは、実際問題としてほとんど不可能になってしまう。収納棚の高さ、位置なども自分の体で判断するのが間違いがない。工事の人たちと親しくなっていれば、そういう変更も言いやすいし、ちょっとした棚をつくる程度のことなら、無料でやってくれることもる。                            ・

引き渡しでの注意点はまず、契約した引き渡し日は必ずしも工事完成日ではない、ということである。引き渡し日とは、見積書と設計図通りに仕上がっているかを確認する日なのだ。

店舗の端から端まで細かくチェックすることは言うまでもないが、動くものはすべて動かしてみることが大切だ。機器類などはもちろん、ドア、窓、棚、引き出しなど、何度も開け閉めして建て付け具合を確認する。空調設備はできれば半曰くらいは運転して、きき具合を確認すべきである。

問題があればただちにダメエ事にかかつてもらうが、そのためにも工事契約書には、「完成日」とともに、工事が遅れたり補修工事が必要になった場合の対処の仕方も明記しておかなければならない。こういう契約事での口約束は絶対に避けるべきである。

飲食店が看板を重視しなければならない理由

飲食店にとって、看板は非常に重要な意味をもっている。その意味とは、言うまでもない。自店の存在を知らせるということだ。

ところが、はじめてオープンする人たちばかりでなく、すでに営業している飲食店の多くが、このことに気づいていないのである。だから、たいていのお店はほんの付け足し程度、申し訳程度の看板を出しているだけで、平気な顔をしている。それでも繁盛できている場合はいいが、お客様が少なくて困っているというのに、看板を見直そうという発想が出てこないらしい。

どうしてそれほど看板が重要なのか。看板がなければ、そこにお店があること自体がわからないからだ。いや、 一応は看板を出しているといっても、その看板が通行人の目に止まらなければ、通行人にとって、そこにお店はないも同然なのである。

多くの飲食店が看板を軽視しがちなのは、「自店はけっこう知られているはず」という思い込みがあるためだ。ちょっとよく見れば、気づかないはずがないというわけだ。こうなると、うぬぼれといつたほうがいいかもしれない。

一般に、通行人というのは、それほど細かいところを見ているわけではないものだ。自然と目に飛び込んできたもの以外は、ほとんど見ていないといっていいだろう。何かの看板らしきものがあったとしても、とくに目につくものでない限り、格別興味は示さない。だから、さつさと通りすぎてしまう。そんなものである。看板というのは、出していれば見てくれるというものではない。いやでも日につくようにしておく。そうでなければ、看板の意味がないのだ。

とくに小さなお店は、かりに1階の路面店であってもお店の間回が狭いから、外観もお客様の目に入りにくい。それなのに、看板も目立たないとなれば、見過ごされてしまう可能性が非常に高い。しかも、実際には小さなお店は、投資額の制約から、2階や地階への出店が多いから、ますます不利になってしまうわけである。

繁盛するためには、とにかく目立つことだ。 一人でも多くの人に自店の存在を知ってもらわなければならないからだ。飲食店のよさは、実際に入ってみなければわからない。ということは、とにかく一度、お店に入ってもらわなければ話にならない。看板は、そのきっかけづくりのためにあるわけだ。

看板で最も大切なことは遠視性、つまり遠くからでもはつきりとお店の存在がわかる、ということである。お店の前で看板に気づいたとしても、たいていはそのまま通りすぎてしまう。遠くから見えていて時間的な余裕があるからこそ、「あのお店に入ってみようか」という興味をもってくれる。

したがって、看板は取り付ける(置く)位置が重要になる。お店の周りを歩いてみて、どこが最も目立つ場所かを確認することだ。もちろん、ビルによっては位置や大きさなどに制約があるが、その中で最善の場所に出す努力を惜しんではいけない。また、看板は意外とお金のかかるものだが、日立つための投資はケチるべきではない。

繰り返すが、通行人というのは、地元の人でも、自分に関係があるか興味がある建物、店舗しかよく見ていないものだ。店前通行量がどれだけあっても、気づいてもらえなければ意味がないのである。

席数確保を念頭に置いた飲食店舗レイアウトのポイント

店舗は厨房と客席ホールとに分かれる。理想を言えば、厨房もホールも、どちらも広く取りたいものだ。厨房は働きやすく、使い勝手のよいものにしたいし、客席は居心地がよくて、しかも席数はできるだけ確保したい。店舗レイアウトの最大のテーマは、限られたスペースの中で、こういう矛盾をいかにうまく解決するかということだ。

もちろん、小さなお店の場合、客席数の確保の問題があるから、厨房スペースは当然、ぎりぎりの広さになる。その限られたスペースで、なおかつ働きやすい厨房にしなければならないわけだ。

一般に素人の場合、業者のすすめるレイアウトのままでOKしてしまうことが多いが、後になって、ああすればよかったと後悔することになりがちだ。厨房レイアウトで最も大事なことは、広さに余裕があるとか、機器類が整然と並んでいることではない。本人が作業しやすい厨房でなければ意味がないのである。

たとえば、調理はさまざまな工程から構成されるが、その一連の動きがよどみなく流れなければ、ピーク時にパニックになってしまう。しかも、通常は一人ではなく、何人かのスタッフが同時に働く。それぞれのスタッフの仕事がうまく連携できて、お互いに邪魔にならないような動線を工夫しなければならない。まな板やガス台の高さなど、長時間働いてもできるだけ疲れない位置取りも大切だ。また、盛りつけ台とデシャップ(料理出し下げをする場所)、食器を下げたときの置き場所と洗い場の位置は、できるだけ最短距離にすること。ここが意外と盲点になる。

厨房レイアウトは、いったん工事が終了して設備機器類を設置してしまったら、現実にはほとんど変更がきかない。配管などの工事は、大変なお金がかかるのだ。 一方、客席ホールのレイアウトでは、必要な席数を確保することが最大のテーマになる。必要なというのは、売上計画を実現するために「必要な」席数という意味だ。

しかし、席数はたんに数だけ取れればいいというものではない。1席でも多く取って売上を伸ばしたいという気持ちはわかるが、客席は稼働しなければ意味がないということを知ってほしい。たとえば、4人掛けテーブルに2人客だと、2席が「死に席」になってしまう。実際、 一組当たりの客数は、せいぜい2〜3人である。それなら、最初から2人掛けテーブルを基本にしておくべきなのだ。いまのお客様は相席を非常に嫌がるから、席の取り方には注意したほうがいい。

小さなお店では、オープンキツチンのカウンター席にすると席数を取りやすいが、この場合は、カウンターの下にバツグなどを置ける棚をつくっておくことだ。棚がないとお客様は隣の席まで占領してしまう。また、イスの間が狭くて一人分のスペースが小さいカウンターは、 一見席数を確保できたようだが、お客様に敬遠されやすい。

客席ホールは、いくらデザイン的にすぐれていても意味がない。まず、お客様の居心地感がいいこと。そして、サービスのための動線が単純(直線的)で、距離はできるだけ短くなければいけない。

なお、テーブルの広さは、使用する皿の大きさとオーダーしてほしい皿数を考慮して決めること。狭いと並べきれないから、オーダーもしてもらえない。

飲食店の設計・施工業者の選び方

お店というのは、設計・施工業者によつてずいぶん変わる。業者選びはくれぐれも慎重に進めてほしい。設計も施工も、業者を選ぶ最大のポイントは飲食店専門の業者ということだ。ひと口に設計・施工業者といっても、得意分野はさまざまである。飲食店専門と宣伝している業者でも、業種や業態によって得手不得手があるものだ。ましてや、飲食店の経験のない業者では、 一応はカッコのいい内装デザインはできても、お店の機能性や使い勝手に問題が出てくることが多い。

たとえば、カウンターの幅や高さひとつで、お客様の居心地感はずいぶん違ってくるし、お客様の居心地のよさを大事にしながら席数を確保するのは、それほど簡単なことではない。専門で、なおかつ実績のある業者との差は、デザインではなく、そのあたりのノウハウにはっきりと出てくる。厨房機器類のメーカーや販売店とのパイプがあるかどうかも、大事なポイントだ。

また、工事をスムーズに進行させるには、内装、厨房、空調の各工事を一括して任せられるところがベスト。そして、職人、監督を自社で抱えている業者を選ぶといい。下請けばかり使っている業者では、責任の所在が曖昧になりがちだ。完成後の手直しなどアフターサービスからいえば、地元の業者がいいだろう。

業者の実績は、その業者がこれまでに扱ったお店を教えてもらい、自分の日で確かめること。できればお客様として食べてみて、居心地感や細かい仕上げなどもチェツクする。きちんと話を通せば、厨房も見学させてもらえるはずである。

そして、これは非常に大切なことだが、できれば最低3社から相見積もりを取って、内容を比較検討してみることをおすすめする。そうすれば、素人でもかなり客観的な判断が下せるはずだ。

見積書の見方では、「○〇一式」という項目が多く、個々の数量や種類などが省略されているかどうかが、最大のチェックポイントだ。単純に安い、高いに気を取られてはいけない。見積書の総額は安くても、他の業者に記載されている項目が抜けていることがある。そういう業者は、後になってから「追加」を請求してくるから注意が必要だ。機器類、什器備品類はすべて、カタログか実物で確認させてもらう。

業者との打ち合わせでは、店舗はあくまでビジネスの場だということを忘れないように。ビジネス発想がないと、ついお金をかけすぎたり、業種業態にそぐわないお店にしたりしてしまいがちだ。

こちらの希望を無視して、流行のデザインや自社のデザインパターンを押し付けてくる業者はやめておいたほうが無難。お客様は店舗デザインだけで呼べるものではないし、打ち合わせを面倒がるようでは、とても安心して任せることはできない。

業者選びは簡単ではない。しかし、肝心のお店をつくるのは業者だし、投資額も最も高い。安易に決めてしまっていいわけがない。

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著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。