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飲食開業知識 / 絶対成功する飲食店開店・経営の教科書

その品揃えは誰のため?飲食店の「常識」を疑え

商品力を高めるには、品揃えを徹底的に研究してみることが大切だ。言い替えれば、品揃えの「常識」を疑ってかかれ、ということである。

ラーメン店のような単品専門店を別にすると、飲食店は基本的に、複数の品目によってメニューを構成している。 一般にはせいぜい20〜30品日程度のお店が多いが、居酒屋のように100品日以上の品揃えが当たり前、という業種もある。さらに細かく見ていくと、飲食業には業種によって「標準的」な品揃えがあることがわかるはずだ。

問題は、この品揃えの「標準」である。標準があるということは、同業種の飲食店のメニュー構成はどこも似たり寄ったりということになるわけだが、実際、大半の飲食店のメニューは、絵に描いたような「標準」になっている。これで他店との差別化ができるのだろうか。競争力をもてるのだろうか。そこを考えなければいけない。

品揃えが標準的になってしまう最大の理由は、その品揃えによって「業種らしく」見せたいということだ。もちろん、業種らしさというのは長い間の経験則で決まってきたことだ。しかし、それ以上の意味はない。そもそも、業種らしく見せることでお客様が増えるのなら、だれも苦労はしないということになってしまう。

業種らしい商品なら何でも揃っていますというのは、実は自信のなさの裏返しでしかない。同業種の他店にあるメニューがないと不安というのは、自信をもつておすすめできる商品がない、ということなのだ。

また、お客様が何を望んでいるのかがわからないという理由もあるだろう。しかし、競争のシビアないまの飲食店は、ただお店を開いていればお客様が入ってくれるわけではない。お客様は呼び込むものだ。どんなお客様のどんな利用動機に対応するのか。そこをしっかりと突き詰めていれば、他店の真似をする必要はない。自店の特徴を堂々とアピールできるはずである。

たとえば、この商品には絶対の自信があるというのなら、無理してオールラウンドのメニュー構成にする必要などまつたくないわけだ。看板商品、おすすめ商品をフオローする形でメニューを構成すればいいのである。

たしかに、いろいろなメニューを数多く取り揃えているのは、お客様が選ぶ楽しさを提供するため、という考え方もある。しかし、お客様の立場から見れば、何を売り物にしているお店なのかがわからない。要するに、自信のある商品などないお店なのだと映ってしまう。また、メニュー数が豊富すぎて、何を選んだらいいのかわからなくなってしまうという弊害もある。

もちろん、お客様に選ぶ楽しさを提供するというのは、飲食店の大事な付加価値である。しかし、本来あるべき姿は、ただ数ある中から選んでくださいということではない。「当店がおすすめできる商品はこれだけありますから、お好みで選んでください」という明確なアピールになっていなければ、お客様の支持は得られない。選ぶべき価値のある商品が並んでいるからこそ、お客様は選ぶ楽しさを味わうことができるのだ。

結局、売るべき根拠をもたずに業種らしい品揃えをしていても、プラスになることはひとつもない。フリー客なら来てくれるだろうが、目的客、固定客をつくることはむずかしい。なぜなら、お客様にとって選ぶ価値のあるお店ではないからだ。

飲食店が品揃えをするのは、あくまで売上を上げるためである。つまり、お客様に喜んでもらうためであって、お店側がなんとなく安心するためなどではない。「何でもあります」というメニューは、売り物は何もないといっているのと同じなのである。

売りたい商品をいかに確実に売るか。飲食店の基本はこれである。したがって、メニューはそのための戦略を表現したものでなければならない。売りたい商品を際立たせ、なおかつお客様が選ぶ楽しさも満足させる。そのためにいくつかの商品と価格を並べる。それが戦略的品揃えというものだ。

ただし、メニューの品目数自体が問題なのではないということを注意しておこう。多いから悪いとか、少なければいいということではないのだ。要は、その品揃えの各品目に、メニューにのせる明確な根拠があるのかどうかということである。

どんな品揃えでも、全商品がまんべんなく売れるということはあり得ない。自然と売れ筋商品と死に筋商品とに分かれていくものだ。それは仕方のないことだが、死に筋商品をたくさん抱えていれば、そのための材料が過剰在庫になってしまう。ムダな品揃えが多いと、材料ロス発生の確率が高くなるということだ。

また、メニュー品目数が多すぎると、ピーク時に何種類ものオーダーが殺到して対応しきれなくなるというリスクも見逃してはいけない。

飲食店でのオリジナルメニューは五感への総合アピールで勝負

オリジナルメニューと聞いて、どんな料理を思い浮かべるだろうか。どこの国の料理かわからないような、奇妙キテレツな料理だろうか。いや、そんなことはないだろう。

たいていの人が思い浮かべるのは、それほど「変わった」料理ではないはずだ。たとえば、ラーメンならスープや麺、チャーシューに凝っているといったことくらいではないだろうか。しかし、それこそが個性なのだ。常識的な料理に何か光る工夫がほどこしてある商品。それがオリジナルメニューである。

たとえば、いまは定番のメニューになっている和風スパゲッティーも、商品化されたときは大きな驚きをもって迎えられたものだった。なぜ驚かれたのか。洋のメニューであるスパゲッティーに和の素材を使うという発想が飛び抜けていたからである。まさに常識をくつがえす工夫だったわけだ。

いまのお客様は外食に慣れているため、ありきたりの商品では満足してくれない。そこでオリジナルメニューが求められるわけだ。しかし、誤解してはいけないのは、お客様は見たこともないような珍味を求めているわけではないということだ。

食というのは基本的に保守的なものである。お客様に広く支持してもらうには、個性と同時に、安心感がなければならない。安心感のある料理とは、自分が知っている料理の範囲内、あるいは延長線上にある料理である。

つまり、ベースはあくまで、前からある料理でいいということだ。そこに独自の工夫を加えることで個性が生まれる。しかも、より大きなヒツトにするには、よリポピュラーなメニューのほうが適している。オリジナルラーメンが次々に進化をとげてブームを維持しているのは、ベースがだれでも知っているラーメンだからなのである。

前置きが少し長くなったが、オリジナルメニューを開発するには、まずこういう意識をしっかりともつことが大切だ。開発したくてもできないというのは、要するにむずかしく考えすぎているからなのだ。もっと単純な、身近なところで、発想の面白さを追求してみるべきである。

次に、オリジナルメニューの開発手法を具体的に挙げてみよう。
①盛りつけを工夫する
②調味料やスパイス類の種類や配合の仕方を工夫する
③食材の組み合わせを変えてみる
④調理法、または調理法の組み合わせを変えてみる
⑤独自の食材を使用する⑤独自の食材を使用する

こうして見ると、オリジナルといっても、そんなにむずかしいことではないということが実感できるはずだ。

さて、この開発手法は、①から⑤に向かうほどお客様に対するアピールカが強くなるが、同時に、技術的な難易度も高くなる。たとえば、①の盛りつけの工夫など、努力しているお店が少ないだけで、実際にはだれでもできることだ。少なくとも、③までの段階なら、すぐにでも実践可能な手法である。

また、商品開発といっても、調理技術を競うコンテストに出場するわけではない。技術はもちろん大切だが、お客様へのアピールということでは、むしろ発想の仕方、アイデアがものをいうことが多いものだ。

たとえば、炒める調理を煮る、焼く調理に変えてみるというのは、とくに高度な調理技術がなくてもできることだが、これは④の手法である。言い替えれば、いまある料理をアレンジするアイデアが開発の基本になるということだ。

こういう発想の仕方を武器にするのに私がおすすめしているのが、人間の五感をヒントにする開発だ。言うまでもなく五感とは、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の5つの感覚のことである。

料理というと、どうしても味の面ばかりがクローズアツプされがちだ。おいしさ第一主義である。もちろん、おいしさは絶対に必要だ。しかし、お客様はそれだけで満足するとは限らない。レジャーとしての外食ではむしろ、おいしく、しかも楽しい、面白い料理が求められている。

たとえば、自分の手で巻いて食べさせる生春巻きは、触覚へのアピールで楽しさを表現している。時代にかかわらず焼肉の人気が高いのは、ジュージューと肉の焼けるシズル感やにおいが、お客様の視覚、聴覚、嗅覚にアピールするためだ。春巻きにしろ焼肉にしろ、調理師が作って提供したほうが味としてはおいしいかもしれない。しかし、お客様にとっては、自分で調理するという感覚のほうが満足感を味わえるわけだ。

オリジナルメニューの開発で大事なのは、料理でございますなどと生真面目に考えすぎないことだ。遊び心を生かすことである。アイデアというのは、正攻法からは生まれにくい。ちょっとした思いつきが大ヒットを生むものなのである。

飲食店にとってのオリジナリティーを追求とは?

飲食店の商品の魅力は付加価値にあるが、この付加価値を言い替えれば、他店との違いということになる。要するに、お客様に「あのお店でしか食べられない」と思わせる商品である。そう思うからこそ、お客様は目当てのお店までわざわざ食べに行く。これが繁盛店のパワーである。

他のお店では食べられない、そのお店ならではの商品。お客様が本当に求めているのは、そういう明確なオリジナリティーのある商品である。お客様にとって、どこのお店でも大差がないようなありきたりの商品では、わざわざ出かける必要はない。いつまでたっても繁盛できないお店とは、お客様にそう思われているお店なのである。

もう一度言おう。あのお店でしか食べられない。これこそが、本来あるべき飲食店の商品の付加価値である。だから、お店の存在感を強烈にアピールする。飲食業の成功は、飲食店の最も大きな付加価値である商品の、オリジナリティーの追求から始まるのだ。

たとえば、ブームと熾烈な競争が続くラーメンを考えてみよう。ラーメンは最もポピュラーなメニューのひとつだ。だから、ラーメン店ならいくらでもある。しかし、本当に繁盛しているのは、ほんのひと握りのお店だけである。

どうしてこれほどの差がつくのかといえば、繁盛できない大半のお店のラーメンには個性がないからだ。わざわざ食べに行く価値がないと思われているから、繁盛できない。一方、繁盛ラーメン店のラーメンには、だれの目にも明らかな個性がある。そして、お客様は他のお店では食べられない、個性の強烈なラーメンを食べたいと思っている。それだけのことなのである。

実はポピュラーなメニューほど商品の個性がモノをいうのだ。なぜなら、ポピュラーメニューとは、だれもがふだんから食べる機会が多く、よく知っているメニューだからである。たとえば、ろくに食べたこともないようなフランス料理の話だとしたら、オリジナリティーが云々といわれても、たいていの人はピンとこないだろう。比較のしようがないからだ。

しかし、ふだんから食べなれているメニューなら、自分の好みもはっきりしている。だから、違いがひと日でわかるし、自分の評価もはっきりする。自分の好みに合うから、何度でも食べたくなるわけだ。

ラーメン店の場合は、ほとんどが単品商売だから、オリジナルラーメンだけで勝負することができるが、一般の飲食店の場合はそうはいかない。お客様の多様なニーズに応えるには、ある程度の品揃えが必要だ。

しかし、品揃えの中のわずか1品目だけでもいいのだ。魅力あるオリジナル商品があれば、それが看板商品となってお客様を引き寄せるパワーとなる。その1品だけで、お客様は支持してくれるものだ。

いまは飲食店の数が非常に多い。しかし、本当にそのお店だけの個性を打ち出しているお店は少ない。そして、お客様は外食に慣れているから、昔のように「並」のお店では満足できなくなっている。飲食店の情報はいくらでもあるわけだし、アンテナを張り巡らせてつねに「いいお店」を探している。その結果として、ひと握りの繁盛店にお客様が集中するようになっているのである。

こういう現状をよく考えれば、オリジナルメニューの開発がいかに大切なテーマであるかがよくわかるはずだ。飲食店の経営者であればだれでも、他店との差別化を図りたいと考えているだろう。個性が大切なことくらいはわかつているはずである。ところが、行動が伴わない。たしかに、人間、頭ではわかっていてもなかなか体が動かないものだ。しかし、そんな言い訳をしていても始まらない。成功したければ、オリジナルメニューの開発努力をするしかないのである。

オリジナリティーなどというと、すぐに自分には無理と諦めてしまう人がいるが、そんなことはない。調理技術に自信がないのなら、それなりの方法でやればいい。その方法については次項で説明しよう。大事なのは、自店だけのオリジナリティーを追求するのだという強い気持ちである。

ちなみに、オリジナルメニューは利益を確保しやすい商品でもある。なぜなら、オリジナルメニューの付加価値は、まさにそのオリジナリテイーにあるからだ。

たとえば、ラーメンといえども価格にはかなりの差があるが、安いから人気というわけではない。他店とはまったく違う商品であれば、お客様は比較のしようがないのである。

一般に、商品の魅力を高める方法は原価をかけることと思われているが、原価をかければ当然、利益は少なくなる。薄利多売というわけだが、 一般の小さなお店でそんなにたくさん売れるわけもない。これが、そこそこ売れても儲からないというジレンマだ。

しかし、オリジナリティーという魅力があれば、ことさらに原価をかける必要はない。つまり、オリジナルメニューとは、適正な利益を確保しやすい商品でもあるわけだ。

お客様の飲食店利用ニーズを見極める

ひと口に飲食店といっても、実にさまざまなお店がある。どの業種業態のお店をやろうと、それは経営者の自由である。しかし、成功しやすいかどうかとなると、話は別だ。なぜなら、立地によってお客様のニーズが違ってくるからである。

たとえば、都心で繁盛しているカフェやレストランのコピーを、そのまま地方の小さな町に持って行って失敗するというケースがよくある。失敗して当然だ。そういうお店に対するニーズがほとんどない立地で、成功できるはずがないのである。

お客様とお店の関係は、つねに需要と供給の関係にある。いくら供給しようとしても、それに対する需要がなければ売れないということだ。経営者の思い込みは、飲食店の最も陥りやすい落とし穴である。この商品は絶対においしい、すばらしい、だから絶対に売れると思い込む。こういう経営者はいくらでもいるものだ。だから、売れないお店が多いということになる。

自店の商品に自信をもつことはすばらしいことだ。事実おいしいのかもしれない。しかし、飲食店の商品である以上は、売れなければ意味がない。逆に言えば、食べたいと思ってくれるお客様がいない商品など、自己満足以外の何の意味もないということなのだ。

おいしいから絶対に売れるという思い込みは、技術に自信のある調理師出身の経営者によく見られる傾向だが、最悪なのは、お客様が入らないのは自分のつくる料理のよさがわからないからだと思ってしまうケースだ。お客様を馬鹿にしているつもりで、実は自分で自分の首を締めているだけなのである。

本来、飲食店の商品とは、つねにお客様のニーズは何かを追求した結果でなければならない。この追求がおろそかだと、いくらいいお店を作っても成功できない。なぜなら、経営者にとっては「いいお店」であっても、お客様にとってはただの必要のないお店でしかないからだ。

お客様は、自分の要求を満たしてくれるお店しか利用しない。だからお店を選ぶのである。それなら、どんな商品が求められているのか、飲食店はもっと真剣に考えなければいけないはずだ。

お客様のニーズは立地によって変わる。また、客層によっても違ってくる。したがって、商品づくりに当たってはまず、商圏内にどんなニーズがあるのかを的確につかむ必要がある。オープン準備のときに商圏調査をしなければいけないのはそのためだ。

立地条件は、単純に商圏内人口が多ければいいということではない。自分の考えているお店がこの立地で成り立つのかどうか。つまり、自店の商品を支持してくれるお客様(客層)が十分に見込めるのかどうかということ。大事なのはそこである。

だから、商圏内の競合店調査も重要になるわけだ。競合店とは、自店と同業態のお店のことだが、競合店が何店か繁盛しているようなら、少なくとも自店のターゲットとするニーズは十分に存在していることになる。

ただし、競合店が繁盛していれば自店も繁盛できるということではない。それはニーズがあるという証明でしかない。繁盛を引き寄せるのは、そのニーズに合致した強力な商品力なのである。

商品力=継続繁盛力、飲食店の生き残りはメニューが決める

当たり前のことだが、飲食店の看板は商品である。もちろん、飲食店の価値は商品だけでなく、サービス、雰囲気も合わせたトータルな付加価値で決まる。しかし、第一の売り物はあくまで商品なのだ。

ところが、多くの飲食店はこのことがまるでわかっていない。どうしてそう言えるのかといえば、理由は簡単だ。多くのお店が、自店の商品力のなさを何とも思っていないからである。何の魅力もない商品を漫然と売っているだけだ。

なるほど、そういうお店に言わせれば、メニュー表にのせていれば、それがうちの商品、売り物だ、ということになるのだろう。しかし、お店側の自己満足や弁解など、それこそ何の役にも立たない。飲食店として営業している以上、お客様に認めてもらえなければ意味がない。お客様が魅力ある商品と感じてくれなければ、商品価値はゼロに等しい。当たり前のことである。

また、たしかにいまのお客様は、たんに空腹を満たすだけの目的で飲食店を利用しているわけではない。

お客様の本当の目的は、食事を通して豊かで楽しい時間をすごすことだ。つまり、外食のレジャー化である。

だからこそ、商品ばかりでなく接客サービスや雰囲気のレベルアップが不可欠なわけだ。しかし、それでもお客様を納得させる最大の不可価値は商品なのである。料理に魅力があるからこそ、そのお店での食事が楽しくなるし、豊かな気分も味わえる。逆に、料理がまずかったらどうか。どんなにサービス態度がよくて雰囲気も立派だったとしても、満足感は得られない。

よく「料理さえよければもっといいお店なのにね」というお客様の話を耳にすることがあると思うが、そういうお店が繁盛できたためしはない。カフェなど流行のスタイルのお店で一時的に繁盛できたとしても、結局は長続きしない。

いまは昔と違って、そこそこおいしいことなど当たり前の時代である。一定レベル以上の味であることは、飲食店としての最低の条件と思われている。だれがそう思っているのかというと、お客様である。

もうひとつ、商品力とはたんなる味だけの問題ではないということを、しっかりと理解してほしい。要するに価格である。

お値打ち感というのは、味と価格のバランスがとれていてはじめて成り立つ価値だ。こんなにおいしいのに、こんなに安い。これが究極のお値打ちである。そして、多くのお客様に支持してもらうためには、多くのお客様が買いやすい価格に設定することが鉄則だ。

いくらおいしいという自信があっても、お客様に高いと思われたら利用してもらえない。つまり、同業態の他店と比較してどうかということも、考慮に入れなければならないわけだ。味と価格。この2つの面で他店との競争力をもってはじめて、商品力があるといえるのである。

繰り返すが、飲食店の看板はあくまで商品である。商品あっての飲食店なのだ。適正な価格で、お客様に「あのお店でしか食べられない」と思わせるパワーをもつことが、繁盛の最大の武器なのである。飲食店で成功したいと思うのなら、何よりもまず商品力をつける努力を惜しまないことだ。

一等地でない飲食店ほど女性客に好かれる必要がある

これからの飲食店は、女性客をどれだけ取り込むことができるかということが、成功のための大きなポイントになっていく。女性客に嫌われるようなお店では、明るい未来はないといっていいだろう。

女性客を取り込んで成功している例として第一に挙げられるのは居酒屋だ。昔は居酒屋といえば、酔っ払いの巣窟みたいなイメージが強く、飲食店としても格下に見られる傾向があった。それがこれだけの市民権を得たのは、10数年前の居酒屋チェーンによる一大ブーム以来、女性客が安心して利用できるお店に変身したからである。

また、ラーメン店も大変身を遂げつつある業種である。「汚い店ほどおいしい」などとウソぶいていられたのは、もう昔の話だ。いまはオシャレをした若い女性客が入りにくいようでは、成功などおぼつかなくなっている。立ち食いのそば。うどんや牛丼などのチェーンも、かつては男性客中心だったものだが、最近は店舗をクリーンでライトなイメージにし、明るい雰囲気にすることで、若い女性客を取り込んでいる。

女性客に好かれることがなぜ大切なのか。簡単に言えば、客数がぐんと増えるからだ。女性客の集まるお店には男性客も寄ってくるが、通常その逆はない。どうしてこうなるのかというと、女性客が入りやすいということは、雰囲気のいいお店の証拠だからだ。

だから、だれもが安心して利用できる。つまり、女性客に好かれるということは、幅広い客層に好かれるための条件ということになる。

また、女性客はお値打ち感に敏感で、お店選びの評価も男性客に比べて非常にシビアではあるが、その一方で、自分だけのお店、自分の行きつけのお店をもちたがる傾向が強い。したがって、固定客になりやすいわけだが、消費単価も意外と高いという魅力もある。

さらに、女性客には飲食店利用の主導権がある場合が多い、ということも無視できない。たとえば、住宅地立地のお店などはその最たる例だ。この立地では、主婦層を中心とする女性客に嫌われたら、まず繁盛はできない。他の立地の場合でも、カップル客などの場合は、やはり女性のほうにお店を決める主導権があるといっていいだろう。

ただ、実は女性客に好かれるお店になるといっても、特別なことは何もない。もちろん、女性客が好みそうな料理やドリンクを導入する必要があるのは言うまでもないが、とくに女性客中心に絞り込む場合以外は、特殊な条件などないのである。

いちばん大切なことはセンスのよさと磨き上げた清潔感だが、そんなことは成功をめざす飲食店として当たり前のことにすぎない。また、女性客は「大事にされたい」という思いが強いから、ハートをつかむには、公平でしかも配慮の行き届いた「愛」のあるサービスが不可欠になる。しかし、これもまた、だれからも評価されるお店になるための必須条件である。

雰囲気づくりとしてはセンスが必要といったが、明るくシンプルな内装デザインがいいだろう。流行を取り入れることも大切だが、すぐに飽きられるような要素はやめておいたほうが無難である。むしろ、調度類や置物、小物類など、ちょっとしたところにセンスのよさを表現したい。

飲食店のカウンター席は常連ひとり客への投資と捉える

最近はカウンター席を設ける飲食店が多い。もっとも、カウンター席といってもいろいろで、オープンキツチンで調理作業が見えることをお店の演出の目玉にするというケースもあるわけだが、単純に席数をたくさん取るためという事例が圧倒的だろう。実際、すべてをテーブル席にするよりも、カウンター席を設けるほうが席数を確保しやすい。だから、とりわけ小さなお店は業種にかかわらず、カウンター席をつくるようになっている。

それはいい。問題なのは、カウンター席をどう利用してもらうのかという発想がないところにある。バーのようなカウンター主体の業種を別にして、一般の飲食店の場合、カウンター席はたんに席数を増やすために設ける席ではない。一人客への対応のためという大切な目的がある。つまり、カウンター席があるお店は、基本的に一人客を歓迎するお店のはずなのだ。ところが、カウンター席を設けているにもかかわらず、一人客を大切にしないお店があまりに多い。

昔から飲食店は、一人客を軽んじる傾向がある。これは事実だ。理由は簡単。客数を稼げないからである。一人客に4人掛けテーブルを占領されたら大損、という発想だ。

4人掛けテーブルに1人ずつしか座ってくれなければ、非常に効率が悪い。しかし、だからといつて「一人客などはお客様ではない」とでもいうような態度を取っていいということにはならない。カウンター席があるのに一人客を大事にしないお店は、要するに一人客では損をするという発想のわけだ。しかし、何人で来店しようがお客様はお客様だ。この原則を忘れてはならない。

たしかに、 一人客は客数から見ればたつたの1人だ。単純計算すれば、売上は2人客の半分である。欲張って4人客まで想定すれば、わずか4分の1でしかない。

しかし、売上高というのは、1組客数だけで決まるものではない。お店にとって最も大事なのは、同じお客様の来店頻度である。たとえ一人客でも月に何回も利用してくれれば、そのお客様の累積売上貢献度は大

きなものになる。一方、2人、3人で来店してくれたとしても、月に1回も利用してくれないのでは、月間の売上貢献度は小さい。ここに固定客の大きな意味がある。

もちろん、来店頻度が高い、低いでお客様のありがたさが変わるものではない。たまにしか来店してくれなくても、等しくありがたいお客様だ。それと同じで、 一組客数がたつた1人だとしても、ありがたいお客様なのである。それなのに、1人だからとぞんざいに扱うなど、絶対にあってはならないことなのだ。

また、ふだんは1人でも、友人などを連れてきてくれることもあるし、いいお店として気に入ってくれていれば、周囲に宣伝もしてくれる。そのお客様が来店するときは1人でも、何人ものお客様を紹介してくれるのだ。そういう広がりも考えたら、とてもぞんざいになど扱えないはずだ。

そもそも4人掛けテーブルを基本にするから、席の効率が悪くなる。2人掛けでテーブルを付けられるようにすれば、どんな客数にも対応できるのだ。それと、 一人客を大切にするには、サービスの面でもカウンター席の居心地のいいお店にすることが大切だ。

提案型で宴会に強い飲食店になる

収益力をつけるには、宴会に強いお店になることだ。宴会に強いお店と弱いお店を比べると、収益性は雲泥の差である。

宴会のメリットの1つ目は、まとまった人数で利用してもらえるということだ。 一組客数がぐんと増えるから、非常に効率のいい営業ができる。

2つ目は、客単価が高いことである。宴会はお客様にとって特別な利用動機だ。極めて非日常的な利用動機である。したがって、通常の利用金額よりも高くなってもあまり抵抗がないわけだ。

3つ目は、宴会用のメニューでは利益率を高めやすいということもある。もちろん、お値打ち感のない宴会メニューではダメだが、見た目の華やかさなどで原価率をカバーするテクニックはいくらでもある。ホテルの宴会メニューを見てみると、このことがよくわかる。

さらに、会社の集まりなどの場合、ふだん利用していない取引先の人たちも招かれたりするというメリットもある。つまり、新規客獲得の絶好のチャンスでもあるわけだ。

宴会にはこれだけメリットがあるのだから、そのニーズを取り込まないという手はないだろう。当然、最近は小さなお店でも、宴会に力を入れるところが増えてきている。

ところが、成果を上げているお店はそれほど多くはない。しかし、誤解してはいけない。小さなお店では宴会を取れないということではないのだ。

宴会は別に大型店の専売特許ではない。小人数の宴会なら小さなお店でも十分に取れるわけだし、人数によっては貸し切りという手もある。問題は、お店側の宴会ニーズのとらえ方にある。要するに、宴会といえば忘年会。新年会くらいのもの、という思い込みが足を引っ張っているのである。

たしかに昔から、宴会シーズンといえば年末年始だし、この期間は飲食店の最大の書き入れ時である。ふだんの月の3倍を売り上げるお店も珍しくはない。そして、そこにばかり目を奪われているから、他の宴会ニーズをみすみす見逃してしまうのだ。宴会に強いお店になるためにはまず、宴会ニーズは一年中あるという発想をもつことである。

宴会は人が集まる場だ。それなら、お客様の一年間のライフサイクルに目を向けてみよう。そうすれば、さまざまな宴会ニーズがあることがよくわかる。

たとえば、3月、4月といえば、卒業、入学、入社、転勤の季節だが、どれもお祝いごとを伴うものばかりである。人生の大きな節目の月だからだが、もともと宴会というのは、そういつ節目に開くものだった。だったら、そのお祝いをお店でやってもらえばいい。

改まった宴会の形ではないにしても、友人同士など親しい人たちが集まって飲食するのなら、実質的には立派な宴会だ。この発想が大事なのである。たとえば、主婦たちのサークル活動などでも、こういう宴会ニーズはたくさんある。立地によつては、ホームパーティー代わりの利用も見込める。

こういう宴会ニーズは潜在的なものが多い。したがつて、お値打ちな宴会プランをつくり、つねにアピールしておくことが必要なのだが、ただ「各種宴会承ります」というのでは弱い。こんな集まりにもご利用くださいという、提案型のアピールが大切になる。

売り上げを上げる飲食店のテイクアウトサービスで見落としがちなポイント

飲食店の泣き所は席数が限られているということだ。売上は客単価と客数で決まるが、客数アップのカベになるのが席数である。

満席状態のときに次々とお客様を断らなければならないというのは、経営者にとつて実に忍びないことのはずだ。お客様になつてくれていたら、それだけ売上が上がっている。つまり、みすみす損をしていることになるのだから、これ以上の泣き所はない。

最近は行列のできる店が話題になるが、お客様というのはなかなか待ってはくれないものだ。とくに小さなお店は、席数が少ないだけに痛い。

また、お客様の滞席時間という問題もある。限られた席数で客数を増やすには客席回転数を高めるしかないわけだが、これもなかなか思うようにはいかないものだ。込み合っているからと自分から席を立ってくれるお客様ばかりなら苦労はしないが、通常はそこまで気を遣ってもらえない。

そこで、あからさまではないにしても、お客様に帰ってほしいという意思表示をするお店もあるわけだが、お客様を追い出すような態度ではお客様の信頼は得られない。

一般に、飲食店というのは来店してくれたお客様に対応する商売と考えられている。しかし、そういう受け身の姿勢では結局、客数を増やすことはできないし、売上高も頭打ちになってしまう。そこで考えなければいけないのが、テイクアウトヘの取り組みである。

最近はテイクアウトを導入する飲食店が増えているが、 一般の小さなお店ではまだまだ少数派だ。大型店や名声店の商売と思い込んでいるようなのだが、実はそんなことはない。お客様のニーズの見込める立地であれば、積極的に取り組むべきテーマなのである。

たとえば、いま飲食店のランチタイムの最大のライバルはコンビニだが、それはなぜなのか。コンビニで売っている弁当や調理パンを買う人が非常に増えているからだ。

コンビニを利用する人たちの利用動機にもいろいろあるだろう。そのコンビニの弁当が好きという人もいるだろうし、単純に安いからという人も少なくないはずだ。しかし、圧倒的に多いのは、飲食店に行く代わりにコンビニで買う、という人たちである。そしてその理由の多くは、ランチタイムの飲食店は混んでいて

待たされるから、または時間がない、という理由だ。行列のできる店にお客様が行列してくれるのは、話題性とか人が並ぶと並びたくなる心理など、いろいろな要素がからんでいるためで、時間の余裕のない通常のランチタイムには、できるだけスピーデイーにすませたいという人がほとんどである。だから、テイクアウトが有効なのだ。

また、お店側から考えると、テイクアウトはそのための人件費がかからない、という大きなメリットがある。席数を増やす手として出前もあるが、出前のための人手が余計にかかる。テイクアウトの場合は、仕込や調理態勢を見直すことで、現状のスタッフでも十分に対応できる。

いまは便利な包材が開発されていて、スープでも何でもテイクアウトにできる時代だ。ただし、お土産ニーズにも対応するには、持ち歩いても恥ずかしくない包材を使うこと。そして、最も大切なことは、食中毒への注意を徹底することだ。

飲食店経営の二毛作の実現とは?

お酒を積極的に売るという発想を進めていくと、二毛作という業態に行き着く。これからの飲食店は、この二毛作の必要性と取り込み方を真剣に考える必要がある。

二毛作とは本来、同じ畑で2種類の作物を作ることだ。飲食業では、昼と夜とでまったく「別のお店」になることをこう表現している。1つの店舗で2種類の商売(飲食業)をするという意味だ。

一般に飲食店の営業は、ランチとディナーに分けられる。そして、本来、飲食店が最も書き入れ時になるはずなのはディナーの時間帯である。ところが、ほとんどの飲食店がいま最も苦戦しているのが、このディナータイムなのだ。

お酒を積極的に売ろうというのには、この弱い時間帯の客単価を上げて売上高を確保するという意味がある。客数が劇的に増えないのなら、せめて客単価だけでも上げようという作戦である。

しかし、二毛作は違う。なんとか客単価を上げるのではなく、夜の時間帯は最初から客単価を取れる業態に変えてしまうという戦略なのだ。したがって、小手先だけの中途半端な取り組みでは絶対にうまくいかない。このことは肝に銘じてほしい。

さて、二毛作を導入するのに最初に考えなければならないのは、昼と夜とではお客様の利用動機が違うということだ。

別項で説明したように、お客様の飲食店の利用動機は、日常的利用動機と非日常的利用動機とに分けられる。これを時間帯で分ければ、ランチは日常的な、デイナーは非日常的な利用動機である。

もっと具体的に言えば、その違いは、たんに空腹を満たすだけの利用なのか、それともレジャーとしての利用なのか、ということになる。そして、目的が違えば当然、お客様の予算も違ってくる。

ランチは毎日食べなければならない食事だ。だから、だれでもできるだけ安く上げたいと思う。いまランチが驚異的な低価格で争われているのは、ただ不景気のせいということではない。もともとランチは経済性が優先されるものなのだ。

これに対して、デイナーは毎日欠かせないという利用動機ではない。ふつうの人が毎日ディナーを楽しんでいたら、生活が破綻してしまうだろう。 一般には、週に何回とか月に何回といつた、たまのぜいたくを楽しむ日ということになる。つまリレジャーである。だから、許容される客単価もぐんと高くなるわけだ。

ここで考えなければならないのは、レジャーにはレジャーにふさわしい場が求められるということだ。たとえば、牛丼のチエーン店にもビールやお酒は置いてあるが、ディナーを楽しむ気になるだろうか。ふつうはなれないはずである。

したがって、二毛作を成功させるには、お客様の利用動機に合わせて、昼と夜の売り方、売り物を明確にして、その違いをアピールする必要があるわけだ。

まず、夜のメニューはお酒を楽しむことを前提にしたものに切り替える。もちろん、食事メニューに重点を置いてもいいが、その前に軽くでもお酒を楽しむことで食事がレジャーになる、ということを忘れてはならない。つまみやサブメニューを充実させて、楽しめるお店ということを前面に押し出す必要があるわけだ。

レジャー対応型のメニューのお手本は居酒屋メニューである。サラリーマンの仕事帰りの一杯から家族での会食まで、ほとんどの利用動機に応えられるメニュー構成になっている。

ただし、お手軽に居酒屋メニューの真似をしようとしてもうまくいかないということを注意しておきたい。たとえば、材料の仕入。幅広いメニューにするということは、それだけ仕入業務が繁雑になるということを意味する。しかも、材料の種類が増えれば、材料ロスが発生しやすい。魚などの生鮮品を多く使うとなるとなおさらだ。

当然、調理技術や調理スタッフの人数など調理態勢の問題も出てくる。当たり前のことだが、職人を雇えば人件費がかかる。こうした問題をきちんとクリアできなければ、居酒屋メニューは実現できないのである。

したがって、中途半端に居酒屋の真似をするのではなく、自店の業種業態に適した夜の売り方を編み出す必要がある。たとえば、メニュー品目数は絞り込んで、 一般の居酒屋では出せない手づくり感のあるものを売り物にする。アルコール類も安く幅広くというのではなく、こだわりを感じさせるものを品揃えする。要するに、居酒屋とは違う個性を打ち出すことだ。

それと、二毛作でもうひとつ大事なことは、お店のイメージ自体を昼と夜とでガラリと変えるということだ。内装や照明からスタッフのユニフォームまで、どうすればあまりお金をかけずに変身できるか、徹底的に検討してみることだ。イメージというのは、ちょっとした工夫でかなり変わるものである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。