• +03-5436-8908
  • info@egg-recruit.com

飲食開業知識 / 絶対成功する飲食店開店・経営の教科書

飲食店の開店スケジュールの基本的な立て方

やってみるとよくわかるが、飲食店のオープンというのは、意外と大変なものだ。オープンまでにやらなければならない仕事は山ほどある。細々としたことも多いし、期間は限られている。忙しさに紛れてつい忘れていたと、オープン直前になって慌てるというケースは珍しくない。

慌てないためには、開店までのスケジュールをきちんと立てることである。慌てるだけですめばいいが、オープンで失敗すると、なかなか取り返しがつかない。

もうひとつ、忘れてはいけないのは、店舗の賃貸借契約を交わした時点で、家賃が発生しているということだ。もしもオープンが2週間遅れれば、半月分の家賃がムダ払いになる。悠長に構えてはいられないはずだが、また、焦ったからといつてうまくいくものでもない。

開店スケジュールの最大のポイントは、店舗の内装工事と機器類、什器備品類の納入である。

効率よく進めるためには、店舗の賃貸借契約を結んだら、すぐにも工事に入れるようにすることがポイントだ。設計・施工業者への工事の依頼は、店舗の契約前、手付金を打った時点ですませて、見積もりを取っておく。この見積もりは、金融機関から融資を受けるときにも必要になる。不動産業者はその辺の事情はわかっているから、本契約を待ってくれるはずだ。

設計施工業者とは完成までのスケジューリングを打ち合わせるから、ここでオープン予定日が決まる。

ただし、業者に依頼したからといつて、自分のやる仕事がなくなるわけではない。ここを甘く考えているから、後で慌てることになる。工事が始まったら、時間のかかる仕事から優先してこなしていくようにする。

何をしなければならないのかについては、最下部の流れ図を参照してほしい。

モレを出さないためには、計画的に、 一つ一つつぶしていくように進めることだ。そこで、開店スケジュール表をつくることをおすすめする。タテにやるべき仕事の項目、ヨコに日付を取った表にして、項目ごとに、取り掛かる日と最終期限を書き込んでおくのだ。こうしておけば、今日は何をすべきか、何はいつまでにできていなければならないのかが一目瞭然。うっかりやり残すという心配がない。進行具合を小まめにチェックして、遅れている項目は早めに修正する。

小さなお店の内装工事期間は、大体1カ月から1カ月半程度。着実にこなしていかないと、あつという間に過ぎてしまう。

居抜き物件での飲食開店の注意点

居抜き物件というのは、飲食店として営業していた店舗が、そのままの状態で賃貸し、または売りに出されている物件のことだ。内装はもとより、厨房設備、空調設備などの設備機器類やイス、テーブルなどの什器備品まで、お店の営業に必要なものがひと通り揃っているわけだ。

ただし、賃貸しの場合でも、賃貸になるのは店舗だけで、設備や備品類は買い取りになる。そのため、居抜きで借りる場合は、保証金(敷金)の他に造作譲渡代(店舗内外装代)を払うことになる。

したがって、店舗の契約時に支払う金額で見ると高く思われるかもしれないが、設備や備品類を買わなくてすむのだから、結果的には安く上げることができるわけだ。資金の少ない人にとっては手頃な物件だし、けっこう掘り出し物があることも多い。

もちろん、そのまま営業できる店舗なのだから、自分の思いどおりのお店づくりができないという制約はある。その場所がどうしてもほしいために居抜きで借りて、新たに内装をやり直すというケースもないではない。しかし通常の場合、内装や機器類、備品類を活用しないのでは、何のために譲渡代金を払ったのかがわからなくなる。

お店は自紙の状態からつくればいいというものではない。自分の考えるビジネスの場として成り立つのかどうかの判断が大切なのである。内装の雰囲気などは、ちょつと工夫すればいくらでも変えることができるし、オープン後、資金の余裕ができてから手直しするという考え方もある。

つまり、居抜き物件でオープンする場合は、できるだけその店舗のまま生かすことが大前提になるわけだが、そこで注意しなければならないのは、内装設備が本当にそのまま使えるのかどうかということだ。

物件によって一概には言えないが、厨房設備にしろ備品類にしろ、見た日以上に傷んでいることがままある。なにしろ、少し前までは毎日使用してきたものなのだ。借り手が見つからず長期間放置されていたため、設備が故障しているというケースも考えられる。

イスやテーブルなどの状態はもちろん、トイレなどの水回りやドアや窓の建て付けなど、ガタがきているということもある。その辺のチェックは入念に行う必要がある。できれば、リサイクルショップなどの専門家に頼んで、きちんと点検してもらうといい。

また、厨房設備や空調設備などの場合、リース契約になっていることがある。その場合、支払いはどうなっているのか、保証期間はいつまでなのかということも、不動産業者を通して確認しておくことだ。

これらのチェックをした上で、その譲渡代金が適正かどうかの判断をするわけだが、居抜き物件を活用するのなら、新品を使いたいという欲求はとりあえず抑えておくことが大切。なんとなく買い替えたりしていたら、居抜きのメリットがなくなってしまう。それなら、最初からカラ店舗(内装工事が施されていない通常の店舗)を借りるべきなのだ。

ただ、お店の経営方針上どうしても導入しなければならない厨房機器類などが出る場合があるが、スペースの問題やビルの構造上の問題などで設置できないということもあり得る。この辺も事前に確認しておくことだ。

飲食店開店の候補物件の見分け方

候補物件の適否を判断するには、物件周辺の立地調査と、物件自体の調査の2つの視点が必要だ。すでに商圏内の立地調査によって、エリア内の様子はある程度つかんでいるはずだが、ここでは物件周辺に絞り込んで、人の動きと競合店の状況を調査する。

まず、人の動きの調査は、物件の店前通行量調査である。道端で両手にカウンターをもち、通行人の数を調べている光景を見たことがあると思うが、ファーストフードなど店前通行量が直接集客力に結び付く業態以外は、カウンターを使用するには及ばない。

この調査のポイントは、人数は概算でいいから、男女別、年齢別、職業別の大まかな傾向をつかむことだ。自店のお客様になりそうな人が通っていなければ、いくら通行量があっても意味がない。

また、飲食店はその業種業態によって、お客様の利用する時間帯に大きな波がある。したがって、調査の時間帯は1時間ごとに区切り、予定している営業時間の前後1時間まで調査する。曜日別の傾向をつかむには、最低でも平日、土曜、日曜の3回は物件の前に張りついて調査する必要がある。

郊外型のお店の場合は、曜日別、時間帯別のクルマの通行量を調査するが、クルマの数だけでなく、車種(乗用車、トラック)、1台当たりの乗車人数、ナンバー(地元、他府県)などをチェックする。この場合は、できればカウンターを使用して正確な数を出したほうがいい。見るだけだと、渋滞している道路は通行量が多いと錯覚しがちだ。

なお、ロードサイド立地では、中央分離帯の有無や、反対車線から右折しやすいかということが大きなポイントになる。一般に、大きな道路だと、片側車線しかお客様を見込めないことが多い。

周辺の飲食店については、競合店と思われるお店はすべて、お客様として利用してみることだ。メニューと価格を見ることはもちろんだが、お客様を注意深く観察することで、客層の動向や消費レベルもつかめる。

次に、店舗物件調査に入る。ポイントは、オープンする業種業態に適しているか、賃借条件が適正か、である。

ところで、店舗物件は1階だけでなく、2階(以上)や地階もある。1階に比べて家賃・保証金が安いから、小さなお店が入りやすい物件だ。ただし、この場合は階段の形態やエレベーターの有無と位置も重要なポイントになる。

つまり、立地条件とは平面だけでなく、テナントビルに出店する場合は、タテの条件も重要になるということだ、ここで、1階、2階、地階の特徴をまとめておこう。

まず、1階はお客様がお店に入るのに最も抵抗感がないから、立体で見た場合の一等地になる。しかも、ほとんどすべての業種業態にとっての好立地であるため、家賃・保証金が高くなるわけだ。

エレベーターのない場合の2階は、階段を上がるのに抵抗があるお客様が多いため二等地の位置づけになる。階段を降りる地階の場合は、2階よりもお客様は楽だが外から目立ちにくい。そこで、やはり二等地となる。

しかし、業種業態によって、ビル内立地の評価は変わる。1階は一等地といっても、1階であることが絶対条件になるのは、ファーストフードなど日常的利用動機を取り込む業態の場合である。逆に言えば、それ以外の小さなお店は、無理してまで1階に入ることはないわけだ。

2階は比較的カジュアルな業態が向いており、窓の採光があればなおいい。また、窓からの眺めがいいなどの場合は、一等地といってさしつかえないケースもある。

反対に、地階の場合は高級感を重視するなど比較的重い業態に適している。隠れ家的な雰囲気を演出しやすいのも地階の特徴だ。つまり、この場合もお店のコンセプトによつては一等地になる。

さらに、フロアの中での位置も重要だ。たとえば、2階や地階でも、階段やエレベーターの近くは一等地になるし、ビルの奥に引っ込んでいて見えにくい場所は二等地となる。他店や柱などで見えない場所もあるが、そういう場所はできれば避けたい。

以上は店舗の位置を中心にした判断基準だが、店舗は面積だけでなく、その形状もじっくりと検討したほうがいい。形によつては席数を取りにくいケースもままあるし、柱などの出っ張りも予想以上に邪魔になるものだ。小さなお店だからこそ、間回の広さにはこだわるべきだ。

また、物件調査では、ガス・水道。電気の容量は必ず確認すること。別工事をするとかなりの出費になってしまう。ビルによっては、看板やサンプルケースに制限がある場合があるから、これも注意してほしい。

賃借条件が適正かどうかは、これら店舗の状態を確認して判断することになるが、保証金の償却や共益費・管理費などの付帯条件についても、慎重に検討するべきだ。家賃が多少安くても、これらが高かったら意味がないことになってしまう。

単価×人口×所要時間で見る飲食店の立地調査のカンどころ

候補物件が出たら立地調査を行うが、基本は、その物件を中心に、商圏と考えられるエリア内をくまなく歩いてみることである。

一度だけではなく、いろいろな曜日、時間帯、天気と条件を変えて、歩き回ってみるのだ。これで、そのエリアの全体像をざっとつかむことができる。観察するポイントは、町のタイプ(住宅地、商業地など)、出店しているかということだ。

さらに、地元の役所や商工会で、人口動向(人口構成、世帯数、年齢構造、男女比など)や消費水準、職業構成などを調べるといい。事業所や学校もターゲットになる場合は、その規模や数、位置なども調べる。

なお、商圏の範囲(人口、所要時間)は業態によって変わるから、 一般的な目安を挙げておく。

・客単価500円まで / 1万5000人〜2万人:5分以内
・500円〜1000円 / 3万人〜6万人:10分〜20分
・1000円〜2000円 / 6万人〜10万人:20分〜30分
・2000円〜5000円 / 10万人以上:1時間
・5000円以上 / 基本的に無制限

ただし、これはあくまで目安であって、商圏内人口を満たしていなくても繁盛している例はたくさんある。繁盛店はロコミなどで名声が広がるため、来店所要時間の制限を受けにくくなることも付け加えておこう。

また、商圏は自店を中心とする円形になるとは限らない。駅やデパート、大型スーパーなど、消費行動のマグネット施設がある場合は、その施設から自店に向かう方向の商圏は広めに設定できる。逆に、片側2車線以上の繁華な道路や鉄道、川などがある場合は、商圏はそこで切断されるということも知っておく必要がある。

立地調査といつても、大袈裟に考えることはない。要は、どんな人たちが集まっている町なのかを、できるだけ具体的につかむことが大切なのだ。役所などでデータを集めるのもそのためで、地域の消費者のトータルな生活像を把握することで、どんな業種。業態がしっくり受け入れられそうかという予測も立つわけだ。

もちろん、小さなお店でここまで調査する必要はないという意見もあるだろう。また、大した調査をしないでオープンしても、繁盛しているお店があるのも事実だ。しかし、確実に成功したいのなら、できる調査はしておくべきである。

たとえば、住宅地といっても、新興住宅地と旧住宅地とでは住民の層が違うし、消費行動も違う。マンションやアパートが多いかどうかということも、大事なポイントだ。

また、町は生き物ということも頭に入れておいてほしい。いまこうだからといつて、1年後、2年後にも同じ姿だという保証はない。新道ができるとか、大型商業施設が一カ所オープンしただけで、人の流れはガラリと変わってしまう。町の将来像を事前につかんでおくことも忘れてはいけない。

一等地でなくても成功できる飲食店とは?

飲食店にとつて、立地条件は非常に大切な要素である。飲食業は立地産業といわれるほどで、成功するための重要なポイントだ。はじめてオープンする人でもそれくらいのことは知っているようで、できるだけ「いい立地」に出店したいと思っているはずだ。

ただ、ここで問題になるのが、「いい立地」とはどういう立地か、ということだ。何をもって立地条件のよし悪しを判断すべきなのか。このことをきちんと理解しておくことが大切なのである。

飲食店の立地については、 一等地とか二等地といった評価がよく使われる。もちろん、二等地よりも一等地に出店したほうが有利という意味だ。たしかに、 一般論で考えれば一等地が有利なのは事実である。しかし、だからといつて、 一等地なら必ず成功できて二等地では成功できない、ということにはならない。

個別のお店の出店条件という視点から見ると、 一等地がかえって不利になることもあるし、二等地だから成功しやすいということも少なくないのである。

一等地とはどんな立地かというと、たとえば、繁華街や商店街のメインストリートに面しているとか、中心地にある立地である。駅前広場に面しているとか、デパートやスーパーなどの集客力のある施設が近くにあるというのも有利な条件だし、有名店がたくさん集まっているエリアも一等地である。

しかし、当たり前のことだが、そういう立地は家賃・保証金が高い。また、 一等地の根拠のひとつは人通りが多い(店前通行量が多い)ことだが、それはそのまま競争が激しいことを意味する。そこそこお客様が入ったとしても、高い家賃が利益を食ってしまうし、お客様の回転がいいと人件費も増大する。しかも、フリー客中心の立地のため、経営が安定しにくい。 一見非常に有利そうな一等地にも、こういうデメリットが隠されているわけだ。

一方、二等地と呼ばれるのは、裏通りや路地裏、路地奥にあるとか、駅からの所要時間が長いとか、飲食店の数自体が少ないといった条件の立地である。

たしかに、素人が見れば不利な立地としか思えないかもしれない。しかし、家賃・保証金が安いというのは、損益分岐点を低くできるのだから、経営的に見ると大変なメリットである。また、競合店が少なく「わざわざ客」が中心になるため、固定客化しやすいというメリットも見逃せない。 一等地のようなお客様の回転は望めないが、人件費は節約できる。要するに、売上高は小さくても利益が出やすいのが、二等地の隠されたメリットのわけである。

飲食店は立地のよさだけで繁盛できるものではない。ましてや、小さなお店は少ない客数で成り立つビジネスだ。低投資・高利益をめざすのが、最も合理的な戦略である。無理な投資をして苦しい経営を選ぶ必要

お客様は、 一等地にあるかどうかでお店を選ぶわけではない。自分の気に入るお店かどうか。それがお客様の判断基準だ。二等地であっても、ターゲットとする客層と利用動機を吸引できるエリアであれば、何の問題もない。 一般論の一等地神話は忘れることである。

飲食店に取っての商圏とは何か

別項でも触れたように、商圏というのは、自店のお客様(になる可能性のある人)が住んでいたり、勤めていたりする地域の範囲のことである。お客様を呼び込むことができるエリアということだ。

一般に、商圏は距離と人口で表される。たとえば、お店を起点に半径何キロとか、商圏人口は〇〇人、という具合だ。しかし、お店からの時間と人口で考えたほうが、より正確である。なぜなら、お客様が来店する移動手段は、徒歩とは限らないからだ。自転車利用のお客様は、同じ所要時間でも距離はかなり遠くなる。クルマ利用ならなおさらだ。

そして大事なのは、お客様が消費行動を決定する要因は、日標店までの距離ではなく、あくまで所要時間だということである。

さて、別項で、ポピュラープライスの小さなお店は商圏の設定範囲を狭くしたほうがいいといつたが、商圏の広さは業態(価格設定)によって変わる。

価格が高い業態になるほど、商圏は広く設定しなければならない。どうしてかというと、価格の高いお店はお客様の利用頻度が低くなるからだ。反対に、価格が低い業態になるほど利用頻度は高くなるため、商圏は狭くても十分に成立するということになる。

業態のところで説明したように、お客様の飲食店の利用動機は「日常的利用動機」と「非日常的利用動機」とに分けられる。そして、価格が低いほど、お客様の利用動機は日常的になる。だから利用頻度は高くなるわけだ。逆に、サイフの痛む「非日常的利用動機」はそうそう発生することはない。当然、利用頻度は低くなる。

また、商品の特性によっても、商圏の範囲は変わる。たとえば、焼肉店のようなヘビーな商品を売り物にしているお店の場合は利用頻度が低いから、広い商圏を設定しておかなければならない。 一方、ラーメン屋とかそば・うどん屋のような日常的利用動機を狙うお店の場合は、 一人のお客様の来店頻度が高いから、狭い商圏でも成り立つというわけだ。

一般に、高級店は大商圏主義が、ポピュラープライス店は小商圏主義が適していると言われるのは、このためである。とくに、小さなお店の場合は、できるだけ狭いエリア、少ない商圏人口で成り立つことが望ましい。だれもが知っていて日常的な商品を、気軽に利用できる価格で提供すれば、人口は少なくても客層の幅が広がるし、お客様の来店頻度も高くなる。

ただし、頭に入れておかなければならないのは、商圏が狭いほど、競合店の数が増えるということだ。お客様の利用動機がつねに発生していれば当然、その奪い合いが起こる。競合店とは業態が同じお店のことだ。

ということは、その競合店とは同じ利用動機を奪い合う関係になる。したがって、同一業態内では必ず、価格競争が起こることになるのだ。

そうなると、モロに商品力が問われるわけで、たとえポピュラーな商品であっても、オリジナリティーのアピールが非常に大切になる。また、シビアな競合を避けて確実に成功するためには、別業態、または競合店の少ない立地を選択する必要も出てくる。

飲食店開業ではFC加盟をどう考えるか

フランチヤイズチエーン(FC)とは、簡単に言えば、本部企業との契約により、本部の提供するノウハウにしたがつて店舗を運営していくお店のチェーンである。店舗、商品。調理方法、サービス手法からお店の運営ノウハウまで、飲食店経営に必要なすべての要素がパッケージ化されているわけだ。

繰り返し強調するが、飲食店はだれにでもチャレンジできるビジネスだ。しかし、実際にオープンしようとすると、これが意外と簡単ではない。その方法をまとめようとすれば、最低でも1冊の本になってしまう。

だから、はじめてオープンする人はたいてい、準備に取り掛かってみて、その大変さにガクゼンとしたりする。その点、FCに加盟すれば、それらの大変な作業はほとんど本部が代行してくれるのだから、こんなに楽なことはない。

ただし、FCに加盟したからといつて、必ず成功できるという保証はない。このことは、しつかりと頭に入れておいてほしい。ここを誤解するから、失敗する人が後を絶たないのである。

そもそもFCとは、本部と加盟店の共同経営ではない。共同事業である。本部も加盟店もそれぞれ別個の事業者であり、自店の運営上のリスクについては、自己責任の原則が適用される。要するに、成功を保証しているのではなく、成功の確率が高いビジネスを、契約によって提供してくれるだけなのだ。

したがつて、本部にオンブにダツコ式の甘い期待をしても「裏切られるだけ」である。そして、悪いのは本部ではない。自己責任の原則を忘れて(知らずに)無理な期待をした加盟店なのだ。

どんなにすぐれたFCに加盟しても、各店の売上はその条件によって決まる。ノウハウは同じでも、立地条件とお店の運営能力には各店によって差があるからだ。

もちろん、優良チエーンの本部は加盟を許可するまでの調査・審査も慎重だし、オープン後の指導も受けられることになっている。その分、独立開業のリスクは軽減され、個人の独立開業に比べて失敗の確率は小さくなるはずだ。

しかし、どんな事業でも必ずリスクを伴うということを忘れてはいけない。オープン後に成功できるかどうかは結局、加盟店のオーナー次第なのだ。どんな形でオープンしようと、飲食店の経営では、地道な努力を重ねるしか成功への道はない。

また、FCの場合はいわば既製品を売るビジネスである。お店の個性はチェーンの個性であって、加盟店オーナーのものではない。というより、加盟店が勝手なことをしたら、チェーンとしての統一性をとれなくなってしまう。

したがつて、自分の個性や考え方を重視したい人には、FCビジネスは向かないということになる。オープン後に嫌気がさして「失敗した」と悔やむくらいなら、苦労してでも自分でオープンすべきだろう。

FC加盟は、いい悪いの問題ではない。要は、あなたの生き方の問題なのだ。私自身は、どちらを選択してもいいと思っている。自分の性格をしっかりと見つめて、冷静に判断することが大切である。

飲食店開店資金借入のための、説得力のある事業計画書とは?

金融機関から融資を受けるには、事業計画書を提出しなければならない。事業計画書とは、これからオープンしようというお店の経営の青写真だ。

事業計画書なしに、いくら口で「絶対にうまくいきます」といってみたところで、そんな話はだれも聞いてくれない。このお店をつくることによってどれだけの利益が上げられるのか、はたして長続きする事業なのか。公的金融機関といっても、確かな採算性と将来性がある事業だということを客観的に説明できなければ、融資などしてくれない。

いかに説得力のある計画書にするかが、融資を受けられるようになるための決め手になるわけだ。いわゆる水商売感覚のどんぶり勘定経営では、いまの飲食業界は乗り切っていけない。

したがって、かりに全額自己資金でオープンするとしても、この計画書は絶対に必要になる。飲食業に限らず、収支計画のいい加減な経営は必ず失敗する。

事業計画書といっても、決まった書式があるわけではない。金融機関の場合は、融資の窓口で所定の用紙をくれるからそれに書き込むことになる。たいていの場合、それほど複雑な書式ではないから、だれでも記入することはできる。

問題は、記入した中身である。たとえば、予想売上高という項目に、適当な数字を書き込んでおいたとして、はたして融資担当者が納得してくれるだろうか。もちろん「ノー」である。

売上高に限らず、事業計画は基本的に数字で示されることになるが、それぞれの数字に説得力のある根拠がなければ、ただの絵に描いた餅だ。金融機関は、確実に返済できると判断した事業でないと融資してくれない。当たり前のことだが、意外と甘く考えている人が多いので注意しておきたい。

かりに金融機関の書式が簡潔なものであったとしても、面接の段階で、その数字に根拠をもたせる説明ができなければ、審査は通らない。つまり、提出する書式は別にして、自分の頭の中では綿密な事業計画書を作成しておかなければいけない、ということだ。作成のポイントは、次の3点である。

①お店の見通しと借入計画
②開店後の経費と売上計画
③予想損益計算書と資金繰り

まず①では、立地調査の結果(商圏設定、ターゲットとする客層の分析、既存店の動向など)をもとに、お店の営業方針、事業の確実性、将来性について簡潔にまとめる。

次に、開店資金の見積もりを出し、借入計画をまとめる。借入計画で最も大事なことは、総投資額に対してどれだけの借入金を予定するかという点だ。必要資金額と自己資金を明確にして借入金額を決定し、無理のない返済計画を立てる。

返済計画は5年間程度の中期事業計画とするのが一般的だ。5年というのは、飲食店の減価償却期間の平均が、大体5〜7年だからである。金額にもよるが、5年間を何年も越える長期返済や、返済期間を短くするために元金返済額を無理に大きくするのは危険だし、そもそも金融機関が相手にしてくれない。

②で大切なのは、開店後の経費をできるだけ正確に予測することだ。健全な経営における経費とは「かかった結果」ではない。あくまで適正な割合、金額にコントロールすべきものなのだ。

これについては、別項で説明する飲食店の原価を参考にしてほしいが、注意しなければならないのは「初期条件」の設定だ。この金額は売上高にかかわりなく一定額がかかる。したがって、この設定が高すぎると、利益が出にくい体質になってしまう。といって、その分、売上高を大きく見積もるなどという発想ではダメだ。実現可能な売上高でなければ、説得力をもてない。

売上計画の予想売上高は、席数と稼働率から算出する方法と、店前通行量から算出する方法がある。いずれの場合も、「売上好調」「売上標準」「売上低調」の3つのケースを想定しておくといい。

事業計画書の中で最も大事なのは損益計画だが、その試算が③である。②で予測した開店後経費と予想売上高をもとに、月次の損益計算書をシミュレーションとして作成する。この場合もコ冗上好調」から「低調」まで3通りの試算をする。資金繰り表とは、5年間の資金の流れをまとめたものだ。経営を安定させるための最大のポイントである。

この場合の売上高は、予想損益計算書の「標準」売上高を用いる。

この資金繰りで大事なのは、借入金の返済計画との整合性だ。健全な経営を実現するには、つねに返済可能額が返済予定額を上回っていなければならない。

このように、事業計画書の数字とは、すべてがリンクしているものだ。したがって、担当者の目をごまかそうと売上高などを大きくしてみても、簡単に見破られてしまう。誠実に、客観性のある数字として示すことである。

飲食店にとって最も信頼できる資金の借入先は?

ひと昔前までは、銀行や信用金庫で借り入れるのが当たり前だったが、すでに過去の話である。いまの民間金融機関は、中小企業や個人事業への融資には非常に消極的になっている。いわゆる「貸し渋り」である。

それでは融資は受けられないのかというと、そんなことはない。政府系の公的金融機関を利用すればいい。一般にはあまり知られていない金融機関だが、融資限度額が大きく、金利も極めて低い。そもそも公的資金は、資金の足りない零細事業者の支援が目的だから、銀行などのような貸し渋りはない。

飲食店の開業の場合、一般には、国民生活金融公庫が扱っている「かんえい融資」を利用することが多い。低利の固定金利で長期返済だから、最も有利で安心な融資先といって間違いない。設備資金としての一般貸付の上限は7200万円(返済期間13年以内、据置期間は1年以内)。もちろん、だれにでも限度額まで融資してくれるというわけではないが、通常の小さな飲食店の開業費用であれば、まず何とかなるはずだ。

この融資は、脱サラなど、これまで飲食業に従事していなかった人でも受けられる。国民生活金融公庫、または代理店(銀行、信用金庫、信用組合、商工中金)の窓口で相談に乗ってもらえる。

また、飲食店開業の場合は、各自治体の融資制度を利用するのもいいだろう。有利な融資を確実に受けようとするなら、アンテナを張り巡らせて資料を集め、とにかく当たってみることだ。

ところで、借入先は何も金融機関と限つたことではない。いちばん手近な方法は、身内(親、兄弟、親戚等)や知人から借りるという方法だ。この借金のやり方にはいろいろな意見があるようだが、私は悪い方法とは思わない。

もちろん、たんなる親掛かりの甘えん坊というのでは、開業後の経営が心配になるし問題だろう。しかし、金融機関と同じように、きちんと借りるのであれば、何の問題もない。むしろ、身内や知人なら、経営が軌道に乗るまでの苦しい時期などに返済を猶予してもらえるなど、メリットがあるといっていい。ちょっとした金額の支払いが滞ったために事業を台なしにすることほど、馬鹿馬鹿しいことはない。ただし、相手がだれであろうと、適正な金額の金利は必ず支払わなければいけない。

借金というと抵抗感のある人もいるが、どこの会社でも借金によって成り立っている。借金というから話がヘンになるわけで、事業の立ち上げ資金を借りるのは、融資を受けるという経済行為であってやましいことではない。

また、借金がないと経営が甘くなりがちなのに対して、返済のプレッシャーがプラスに働くということも見逃せない。もともと、飲食店の経営というのは、適正な範囲内の借金であれば、無理なく返済できて利益も出る構造になっているのである。

開店準備で最も大切なことは、必要な資金を間違いなく調達することだ。そのための方法は、可能な限り追求すべきである。

運転資金は何ヶ月分が妥当? 飲食店開店資金の見積もり

小さな飲食店の場合、開業時の総投資額はそれほど大きくはない。脱サラの人たちでも用意できる金額である。ただ、用意できるといっても、たっぷりと余裕があるというわけではないはずだ。

一般には、貯金や退職金などで足りない分は金融機関からの借入金でまかなうことになるが、当然、開業予算というものがある。その予算内で収めるように借入も行うわけで、資金的にはギリギリのところで開店準備に入ることになる。そこで注意しなければならないのが、予算オーバーである。

資金不足に至る原因で最も多いのは、店舗の物件取得費やお店の内装工事費が予定以上にかかってしまったというケースだ。最初はこの金額の範囲内でと計画していても、物件を探しているうちに、あるいは、設計を進めているうちに、もっといい物件があったとか、もっといいお店にしたい、あの厨房機器もほしいというように、出費がどんどんふくらんでいく、というケースである。

また、 一応は予算内に収めたつもりなのに、結果的にオーバーしてしまうということもある。たとえば、厨房設備や空調設備などの見積もりが甘かったため、予想以上の費用がかかってしまったというケースだ。

資金不足に陥らないための基本は、開店に当たって必要な出費項目とその費用の下調べをしっかりとすること。これに尽きる。だいたいこれくらいだろうといった大ざっばな見積もりでスタートすると、必ず予算オーバーという事態を招くことになる。次に、 一般的な開業資金の内訳を挙げておこう。

①店舗物件取得費
保証金(敷金、権利金など。居抜き物件の場合は、別途に内装譲渡費)、仲介料、前家賃

②店舗工事費
設計料、内装。設備工事費、外装(造園工事費)、厨房設備工事費、看板工事費

③什器備品費・その他
イス・テーブル費、調度類費、レジシステム費、装飾品費、調理用具・機器類費、食器類費、事務用品費、サンプル費、ユニフォーム費、デザイン関係費(メニュー表、ロゴなど)、消耗品費、開店費(求人費、広告宣伝費、教育。開発費など)

④予備費
予定外費用の予備費、運転資金

以上はあくまで一般的な費用の項目だが、それだけでも相当の数だ。たとえば、ここでは食器類費としているが、細かく分ければ相当な数になる。食器類は、調理師経験者であっても、後になってから「あれが足りなかった」などということがよく起こるが、それに限らず素人の場合、必要なものを完璧に把握することはできない。

しかし、それでも、できるだけ細かく調べて、予算を立てなければいけない。必要なものはすべて書き出して、その一つ一つの項目について具体的な値段を確認する。この作業を綿密に行って、必要な出費を確実に積み上げていくことが大切なのである。

最後に忘れてはいけないのが、④で挙げておいた予備費である。目安としては総額の2割程度。そして、それとは別に、開店後の運転資金として売上の3カ月分程度は予算に組んでおくことだ。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。