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飲食繁盛知識/決定版 飲食店の店長&経営者 これができなければ務まらない

クレンリネスは店長のレベルを語る[1] 最大のポイントはトイレ

不潔感の10ポイントに気をつける

お客がお店に入ってきて感じる主な不潔感を挙げると、次のようになる。

①テーブルの汚れ、水滴、拭き跡
②テーブルの脇または裏側の汚れや床のゴミ
③カスターセットの汚れ(とくに油汚れ)
④イスの汚れ
⑤ メニューブックの汚れ
⑥窓ガラスの汚れ
⑦照明器具の汚れや照度の落ちた蛍光灯、電球
③トイレの汚れ(とくに便器とその周辺)
⑨化粧台、鏡の汚れ
⑩ レジの汚れと周辺の乱雑さ

これらのなかで致命的なのが、③のトイレの汚れである。当然だろう。不潔感が直接的でもっとも強烈だから、お客のお店への評価はガタ落ちになる。

たとえば、食事を終えたあと「ちょっとお化粧を直しに」とトイレに立つ女性客は多い。そのとき、ドアら、満足した気分にサアッーと水を差されてしまう。

男性でも同じだ。ましてや食べる前だとなおいけない。神経質なお客だと、食欲までなくなってしまう。また、注文して料理を待っている間とか、料理を食べている最中に、汚くてイヤな思いをさせられたトイレを従業員が利用するのを目撃したとする。これほど興ぎめなこともない。

「そんな大袈裟な」と思ったとしたら、自分のクレンリネス意識について疑ってかかる必要がある。別項で清潔感は十人十色、人によって感じ方が違うといったが、それは店長には当てはまらないのである。

トレイはクレンリネス意識を反映する

私はクレンリネスの話をするときによく、小学校の先生から聞いた話を例として挙げる。その先生は、家庭訪間のときに必ず、訪問先の家庭のトイレを借りることにしている。トイレに入ってその様子を見れば子どもにどの程度のしつけをしているかの察しがつくからだという。便器が汚れていたり、髪の毛やホコリがたまっているようでは、きちんとしたしつけをしていることは期待できない、というのだ。

「トイレを見ればその家がわかる」というわけだが、まったくそのとおりである。そして、このことはそっくりそのまま飲食店にも当てはまる。トイレほどそのお店のクレンリネス意識を反映する場所はほかにない。

トイレの様子をひと目見れば、そのお店の飲食業に対する考え方、取り組みの姿勢がたちどころに判明する。「トイレよければすべてよし」ということはある。しかし、トイレだけは例外で、トイレを除けばお店全体、どこもかしこもピカピカに磨きあげているなどということは、現実にはあり得ないのだ。

別のいい方をすれば、トイレの清掃のよし悪しは、お店の文化の程度をあらわすバロメーターである。つまり、店長のレベルを物語るということで、そのことを一番よく知っているのは、実はお客なのである。こういう無神経さに対しては決して妥協してくれない。

トイレ清掃とクレンリネス

ところで、お店のクレンリネスで誰もがイヤがるのが、トイレの清掃である。しかしこれは、お店のトイレに限ったことではないだろう。誰もが清潔なトイレのはイヤだというのが、たいていの人のホンネのはずだ。自分の家のトイレとそれ以外のトイレは別、という人も少なくない。

なぜか。他人の使うトイレは不潔、という感覚があることは事実である。しかし、そういう感覚とは別の意識が働いていることもの否定できない。それは「トイレ掃除はレベルの低い仕事だ」という意識である。

もちろん、そんなことがあるはずがない。また、ふつうはとくに根拠をもってそう考えているわけでもないだろう。日本では昔から「トイレは不浄の場所」という考え方があったが、その名残かもしれない。ともかく、そういう風潮が根強く存在していることは確かであり、それが従業員の意識に多分に影響していることは否めない。したがって、トイレのクレンリネスを徹底するためには、従業員教育のなかでそういう意識を改革していく必要がある。

店長のリーダーシップとクレンリネス

しかし、先決はまず、店長であるあなたの意識改革である。すでに十分な意識をもって実行しているのであれば、こういういい方は失礼になるかもしれないが、その認識をより強固なものとするためにも、もう一度この問題について考えてみてほしい。

まず、店長はお店にいる問つねに、トイレがきれいな状態に保たれているか、意識の内に置いているようでなければいけない。店長がいつもトイレの様子を気にかけている姿勢を部下に示すことが大切だ。

そのうえで、教育としつけによって部下の意識改革を徹底する。飲食業として、トイレのクレンリネスがいかに大切なことかを理解させる。もちろん、衛生面での重要性もわからせる。これが教育だ。しかし、たんに頭で理解しただけでは、なかなか身体が動かないのが人間である。いわれなくても誰もが身体を動かすようにする。しかも、誰もが同じ清潔感の基準をもって清掃するようにする。これがしつけである。どこをどうきれいにするのか。モップや洗剤の使い方はマニュアルで示せばいい。これが訓練である。

そして、もうひとつ大事なことは、部下の中からリーダーを育てることだ。そして、リーダーは店長と同様、つねにトイレの状態に気をつかい、率先してトイレの清掃をおこなうようにさせると同時に、ほかの部下に対してもいつでもトイレ清掃の命令を出せる権限を与えてあげることだ。いつまでも店長が中心になっていたのでは、店長が不在のときに必ず心のスキが生まれるし、次第に士気の緩みにつながっていく。

クレンリネスの原動力は、いかにお客に尽くし、いかにお客に喜んでもらうかという心である。他人に奉仕することの喜びを部下にわからせてあげること。それができるかどうかで、お店の評価が決まり、店長の評価も決まるのである。

店長の顧客管理術 [リピーターをいかにつかむか]

再来客をいかにつかむかは店長の責任

どれだけの客数を確保するか――飲食店の繁盛の条件をつきつめていくと、この1点に絞られている。だから、できる店長はみな、どうすれば客数が増えるか、毎日知恵を絞っているものだ。

ところで、お客は初回客と再来店客に分けられる。このうち初回客の誘致は、お店づくりのコンセプトや宣伝など、経営者の経営施策に左右される部分が大きいため、店長の責任とばかりはいえない。

しかし、一度来店したお客に二度、三度と来店してもらい、自店のファン=固定客になってもらうことについては、原則的に店長の責任である。初回客の再来店を促し、固定客にすることを、顧客管理という。

そこで理解してほしいのは、顧客管理とは技術だということである。技術である以上、方法論を知り、努力をすれば、誰にもできるということだ。逆にいえば、顧客管理がきちんとできないようでは、店長は失格ということになる。

ただ待っているだけでは繁盛は絶対ない

顧客管理にはいくつかの方法があるが、最初に顧客名簿の活用について考えてみよう。

飲食業に限らず、あらゆる商売にとって重要な戦略は、需要の掘り起こしである。需要には顕在需要と潜在需要とがあるが、ふつうはどうしても顕在需要にばかり日を奪われがちだ。ランチタイムだから満席を期待できるとか、ディナータイムだから何人のお客を見いる人=お客と見なす傾向が強い。

たしかに、ランチタイムとディナータイムは、レストランの利用動機の発生要因である。当たり前のことである。しかし、同様に当然のことに、外食動機をもつ人たちが全員、自店のお客になってくれるわけではない。そんなことはいわれなくてもわかっている、と思うだろう。しかし、何も手を打っていなければ、わかっていることにはならない。要するに、来てくれるかどうかわからないお客を、ただ待っているだけに過ぎないのである。

これは、初回客ばかりではなく、固定客についてもいえることだ。固定客といっても、毎日通ってくれるわけではないのだ。ここに、顕在需要のみに頼ることの怖さがある。

アテにならない来店を期待しているだけで繁盛できるほど、いまの飲食業界は甘くない。そのいい例が、いわゆる繁華街商法の凋落である。かつて繁華街では、開店していれば黙っていてもお客が入った。それが、いわゆる一等地信仰をつくってきたのだが、いまは不振店が続出している。 いくら店前通行量があっても、自店のお客になってくれなければ何の意味もないということを、この事実は教えている。

また、いまのお客は、自分の「お店リスト」をいくつも持っている.利用動機別にそれぞれ五〜六店のリストはあるはずだ。ということは、 一人のお客当たり、5〜6店の同業態店=競合店があるということになる。

場合によっては、同業種同業態ということをもあるはずだ。したがって、固定客と思い込んでいるのはお店の側だけで、お客にとっては「たまに行ってもいい」くらいの一店なのかもしれないのである。

DMを上手に活用する

DM (ダイレクトメール)の目的は、そういうお客に対して、自店への来店という明確な目的意識をもたせることにある。お客の意識の中で眠っている来店動機=潜在需要を揺すぶって、顕在化させるのである。

そのためには、ふだんから顧客名簿を整理しておくことが、最低の条件になるの固定客と初回客のいちばんの違いは、自店の商品やサービスを知っているかどうかという点にあるが、この違いは想像以上に大きい。ひと口に需要掘り起こしといっても、その対象は幅広い。いうまでもなく、初回客の誘致も重要なテーマである。しかし、一度でも来店したことのあるお客の来店動機を促すのと、まだ来店したことがないお客予備軍を相手にするのと、どちらが確度の高い需要掘り起こしかは明らかである。

顧客名簿こそ、繁盛を揺るぎないものにするための貴重な財産なのだ。そしてDMは、その財産=顧客名簿のもっとも効果的な運用方法である。

ただ、最近はDMや投げ込みチラシの類いを実施するお店が非常に多くなっている。また、飲食店以外からのDMも増えているから、DM自体を目立たせる工夫をしないと、せっかく出しても読んでもらえない。

という事態が起こる可能性がある。したがって、数打てば当たる式ではなく、的を絞り込んだ効率のいい出し方を考えなければ、DMの経費ばかりかかってしまうことになる。

また、DMは出したら必ずその反応=来店を確認しなければいけない。顧客名簿と同じナンバーをふっておき、来店の際は持参してもらえるようにサービス券の扱いにするといい。この整理が必要なのは、顧客名簿とはどんどん変わっていくものだからである。少なくとも一年間区切りで効果を確かめ、反応のない名簿は切り捨てなければいけない。

「顧客創造」の精神

つまり、固定客は必ず日減りするということだ。たとえば、転勤などで来たくても来店できなくなるお客もいれば、ほかのお店に浮気してしまうお客もいる。

とくに、後者のケースは今後、どんどん増えていくと考えるべきである。はじめて入ったときは、素晴らしいお店に思えても、三度、三度と来店するうちに、最初に感じた素晴らしさは「当たり前」になってしまうからだ。

お客は多かれ少なかれお店に期待感をもっている。新鮮な感動を求めている。しかし、新鮮さは長続きしない。新鮮さ以外の魅力を感じてくれてはじめて、お客は固定客になっていくのだが、やはり人間である以上、飽きるということがある。

したがって、つねに意識的に固定客をつくっていく必要がある。これを顧客創造という。固定客の来店頻度が落ちてゆくことが明らかな以上、その穴を埋め、さらに売上げアップが実現できるだけの新たな固定客

づくりが不可欠なのだ。いわゆる不振店とは、その努力をせずに、漫然と固定客化を待っているだけのお店のことだ。

再来店のために店長ができること

固定客づくりのポイントは、初回客への対応の仕方である。いうまでもないことだが、すっかり馴染みになった固定客も、元をただせば初同客なのだ。

ところが、初回客に対して、固定客化に向けての適切な対応のできているお店は、驚くほど少ない。固定客に対しては何かと愛想がいいのに、初回客には手のひらを返したような無味乾燥な対応をするお店が多い。

どうせフリ客だからとあなどっているとしか思えないのだが、これでは固定客が増加するわけがない。

初回客のハートをつかかサービスは、店長が主役にならなければいけないc席への案内やメニュー表を渡すまでは従業員でかまわないが、オーダーは店長がとるべきなのだ。その際に、当店の簡単な紹介ができるし、メニューを見て迷っているようなら、おすすめ料理を中心に料理の説明をすることもできる。

それぐらいなら従業員でもできるじゃないかと思うかもしれないが、わざわぎ店長が出てくる、というところが大事なポイントなのである。

どうしても店長がオーダーを受けられない場合は、伝票にそれとわからないようなマークをつけておくといい。店長は身体があいたら、そのマークを見て挨拶に出るのだ。もちろん、従業員にもそのマークが何を意味しているのかを周知徹底させておく。そうすることで自然と、食事中の気配りもきくようになる。一人客の場合は、食事中に店長が何かひとことかけるようにする。

食べ終えたら、間を置かずに店長がテーブルに行き、「料理はいかがでしたか?」と声をかける。このひとことでお客の満足感はより大きなものとなり、お店に対する好感も大きくなる。ただし、ほかのお客もいるのだから、お客との会話はあまり長くなってはいけない。

そして、お客が帰るときは出口まで出向いて見送る。

その際、「またのお越しをお待ちしております」と、「当店の大事なお客さま」という意志表示をすることを忘れてはいけない。ドリンク券や割引券などがあれば、このとき手渡すといい。また、レジ担当の従業員も、伝票のマークを確認して、よりていねいな対応をすることができる。

お客とのコミュニケーションをどうとるかが再来店のカギ

また、一般には初回客は4人で来店することは少ない。たいていは2人以上か、固定客に同伴されて来店する。この固定客との同伴というケースも、意外と見過ごされやすい。店長や顔馴染みの従業員がテーブルに出向くのはいいのだが、固定客とばかり話をして、初回客をおいてきぼりにしてしまいがちなのだ。

もちろん、固定客に対しては当店をひいきにしてくれていることへの感謝の気持ちをあらわさなければならないし、「自分はこの店で大事にされているんだ」という同伴客に対しての自尊心も満足させる必要がある。しかし、それはある程度で十分なのであって、店長が話をすべきなのは、同伴されてきた初回客なのである。

そして、店長は話のきっかけづくりに徹して、初回客に話をさせるようにすることが大切なポイントだ。こうすることによって初回客の、お店に対する親近感が強くなる。居心地がよければ、次回の再来店につながっていく。

要するに、お客とのコミュニケーションをいかにうまくとるかが、固定客づくりのポイントである。お客はお店に対して、飲食というモノだけを要求しているのではない。ホッとできる温かみとか、心の触れ合いを期待しているのだ。だから私はいつも、飲食店の最大の売り物は「お客への愛」だといい続けている。お店が繁盛するということは、多くのお客にお店の愛が受けとめられている証拠なのである。

顧客管理という言葉にはどこかしら冷たい響きがあるが、実はそうではない。また、先に管理は技術だといったが、それは「心」のともなった技術という意味だ。サービス業はすべてにおいて、お客への奉仕=愛がベースになっていなければならないのである。

店長は機会損失を防がなければならない

販売チャンスを逸するケースは日常いっぱいある

飲食店の機会損失とは、本来なら売れるはずだったのに、何の対応策も打っていなかったばかりに、みすみす販売チャンスを逃がしてしまうことを意味する。

機会損失発生の可能性は、毎日の営業の中にゴロゴロころがっている。ところが、機会損失がいつ、どこで発生しているかは、ふつうはなかなか気づかない。

正確な数字によって記録に残るものではないからだ。たとえば、皿やグラスを割ったとか、機器が破損したとかなら、損害額は明らかだ。従業員もそのことを意識する。しかし、機会損失の場合は、そのことへの対処の認識がないと、まず意識されない。たまに気づくことはあっても、逸失利益の金額がはっきりしないから、そのまま兄過ごされやすいのだ。

「時間」と「収容力」の制約

実は、機会損失は飲食店の宿命でもある。ファーストフードショップは別にして、レストランは料理のジャンルにかかわらず、テーブルサービスが原則だ。つまり、原則として一組のお客がひとつのテーブルを占拠する。そして、その一組のお客がテーブルを占拠している時間は(渋滞時間)、業種業態によってある程度決まっている。このことから、飲食店は「時間」と「収容力」という、二つの制約をうけていることがわかる。そして、飲食店の機会損失の大半は、この二つの制約が原因になっているのだ。

「生きている席」を確保

この問題の根は、まず店舗レイアウトにある。売り上げは客数と客単価で決まるのだから、席数をできるだけ確保しなければならない、と誰でも考える。だから、ホールの設計では1席でも多くとろうとして苦心する。しかし、ここで考えなければならないことは、席数=客数ではないということだ。

お客に利用されずに空いている席を「死に席」という。レイアウト上でいくら席数がとれても、すべての席が有効に稼働しなければ意味がない。詰め込んで100席を確保していても、30席が「死に席」だったら、実質的には70席しかない。しかも正確にいえば、最初から70席を配置したレイアウトに比べて、はるかに居心地の悪い客席になってしまう。

同じ営業面積で70席なら、一席当たりの空間は単純計算して1.4倍強である。お客にとって、このゆとりの違いは大きい。せせこましく詰めるお店よりも、理である。実質的に70席なのだから、1人分の空間も同じこと、ということにはならない。

かりにガラガラに空いているお店でも、客席がギチギチに詰め込んであると、お客の日には狭苦しいとしか映らないものだ。モノを効率よく並べるのとはわけが違う。「生きている席」を確保するというのは、お客の居心地感のよさを前提にするということだ。

もちろん、ホールのレイアウトは店長の一存で変更できるものではない。しかし、修正はきくし、また、そうしなければならない。その前提として、この「生きている席」を確保する、ということの意味を、しっかりと頭に叩き込んでおいてほしい。

機会損失の具体例

ピーク時間帯の在席客数を客席数で割った数字を、満席率という。たとえば、ランチタイムには、ウエイティングの列ができる。このウエイティングが発生した時点が、満席状態である。ところが、ふつうは満席といっても、満席率は70〜80%前後でしかない。

この原因は、席のとり方にある。通常、レストランのテーブル席は4人掛けを基本パターンにしている。 一組当たりの客数を3〜4人と想定しているためだ。しかし、実際の1組当たり客数は一般に、平均して2人以下である。多いお店でも、せいぜい二人だ。みかけの席数はあっても、実質稼働率は低=死に席が多いのである。それなら、はじめから2人席にしておいて、 1組2人以上のお客の場合はテーブルをつなげられるようにしておくべきなのだ。

お客はふつう、相席をいやがる。混雑が当然のランチタイムでも敬遠されるし、ディナータイムならほかのお店へと流れてしまう。これが機会損失である。

たとえば、4人掛けテーブルに2人(1組)のお客が着席している。そこに1人で相席させられるのは、お客の心理として非常に抵抗がある。また、同じ相席でも、二人掛けテーブルだと、知らない人と向かい合っても、それほどの抵抗感はないものだ。

ピーク時間帯の満席率を高める

飲食店の最大のテーマは、売れるときにお客に迷惑をかけずに、いかにたくさん売るかということだ。季節変動があれば、売れる月にとにかく稼ぐ。同様に、曜日や時間帯によって来客数が違うのであれば、平日、土曜日、日曜・祭日、あるいは金曜日と、客席レイアウトを変えていく必要がある。ピーク時間帯の満席率をいかに高めていくかということが、店長の重要な仕事になるわけだ。

そのためには、自店のピーク時の満席率と、曜日、時間帯別の一組当たりの客数のデータをとり、集計・分析してみることだ。調査機関は、季節ごとにあるていど安定した客数が見込めるのであれば、各季節に一カ月間、曜日(平日、週末)ごと、時間帯ごと(ランチタイム、ディナータイム)におこなう(表2参照)。

データの分析というと平均値がつきものだが、この場合は平均人数を求めても意味がない。2人客と4人客が多いと、平均は2人ということになるが、2人を想定して4人掛けテーブルのみにしたのでは、元のモクアミである。この場合に大事なのは、もっとも多く来店する一組当たりの客数に対し、テーブル当たりの客席数がうまく対応しているかどうかなのだ。

与えられた条件のなかで改善できる店舗レイアウト

店舗レイアウトでは、従業員の作業動線も重要なポイントである。

まず、ホールの場合、どの席に対しても最短距離で行くことができ、テーブルでのサービスの支障にならないテーブル配置になっていることが理想だ。と同時に、厨房へのオーダー通しやテーブル・セッティングの準備、料理を運んだり皿を下げる、といった一連の仕事がスムーズに流れるようなレイアウトになっていなければ、ピーク時のサービスが混乱するのは必至である。その混乱が結局はお客の滞席時間を長くして、客席回転率を低くしてしまう。ウェイティング客が全員、黙って待っていてくれるわけではないのである。

また、厨房内の作業動線も重要だ。これの効率が悪いと、オーダーをさばき切れず、客席回転率の低下をもたらす、クレームの原因をつくることにもなる。

こういう基本的な店舗レイアウトについてはもちろん、店長の一存でどうこうなるものではない。しかし、だからといって、その点では店長の責任はない、ということにはならない。

レイアウトに欠陥があるならそれなりに、与えられた条件のなかでのもっとも効率のよりやり方を考え出すのは、店長の責任である。しかし、理想的な作業動線を確保できるレイアウトを知らなければ、なんとかそれに近づけようとする努力もできないわけだ。また、場合によっては、レイアウトの変更や手直し=改装を会社に提言することも、店長の役割なのである。

せっかくの売るタイミングを逃しているところで、機会損失は客数だけの問題ではない。サービスの仕方も大いに関係してくる。

たとえば、客単価アップは売上高増大の重要なテーマである。いちばん手っ取り早い方法は値上げだが、これが簡単にできるのなら誰も苦労はしない。一般に、1割値上げすれば客数は1割減少するといわれている。

そこでテーマとされるのが、推奨販売である。なかでも、追加オーダーは無理なく客単価を上げるため、多くのお店で少しでもとろうと努力している。

ところが、これがトップのかけ声ばかりでいっこうに効果が上がらない、というお店が少なくない。機械的に押し売りするばかりで、売れるタイミングということが頭に入っていないからである。

推奨販売に無理押しは絶対に禁物である。お客の意思を尊重しない強引な売り方は、必ずお客の反発を招く。お客の満足度はレジでおカネを支払うときにだいたい決まるが、そのとき「余計に使わされた」と思われたらおしまいだ。納得して払うかどうかは、金額以前の問題なのである。

そうではなく、お客がオーダーしたいと思っているそのときを逃さずに売る、これが、売れるタイミングということだ。

たとえば、別項でも触れたが、お客がそのサインを送って寄こしているとき。これを見逃してしまうお店が多いのだ。せっかくの売れるタイミングを、みすみす逃してしまうのである。お客の声が小さいから、アクションが小さいから、あるいはピーク時で忙しかったから、など言いわけはいくらでもあるだろう。しかし、それは言いわけにはならない。ぶつうお客は、わざわざ大声を出してまで追加の注文をしたりしない。

そういうお客ばかりだと思い込んでいたとしたら、多くの追加のサインを見落としていた証拠なのだ。

これは、店長の従業員教育の問題である。サービス要員全員がこのことをしっかりと頭に入れていれば、かなり機会損失を防ぐことができる。と同時に、サービス技術を訓練して、人時接客数を高めていくことだ。そうすれば、客回転もおのずとよくなっていく。

つねに飲食業プロとしての問題意識をもつ

店長は飲食業のプロである

店長にとって、現状肯定は最大の落とし穴である。経営は生き物というが、まさにそのとおりで、成長が止まったとき=現状を肯定したときから、お店は衰退への道を歩き始める。

たとえば、QSCのスタンダードの維持は店長の義務だが、正確にいえばこの「維持」とは、固定された状態のことをいうのではない。スタンダードはたゆまぬ改善の上に成り立つものである。

なぜなら、飲食店のマネジメントに完璧ということはないからだ。ある時点では一応満足のいく状態だったとしても、次の時点ではもはや、それはあるべき状態ではなくなっている。次の改善のテーマが浮かび上がってくる。その改善の積み重ねでしかお店は成長することはできないのだ。

店長は飲食業のプロであるっプロとは、お店を成長、発展させることができる人、という意味だ。いま自店には何が足りないのか。店長はつねに、その問題意識をもち続けていなければならない。

「これでいいのか?」という問題意識をつねにもつ

問題意識とは、現状を変革しようという意識である。それにはまず、現状に疑間をもつことだ。「これでいいのか?」という意識でお店の中を見回してみる。そうすれば、次々と問題点が浮き出てくるはずだ。

たとえば、マニュアルは誰もが均質な仕事ができ、また仕事を覚えやすくするために絶対必要なのだが、いくらよくできたマニュアルがあっても、実際にマニュアルどおりに仕事が遂行されているかどうかは別だ。

従業員全員が完璧にこなせているなどというのは、現実にはあり得ないわけで、仕事の習得が遅い部下に対しては、訓練の方法や訓練に当てる時間を考え直さなければならない。

場合によっては、挨拶の仕方などマニュアル自体を改善すべきかもしれない。

店舗チェック表の活用

ここで、マニュアルの遂行度のチェックについて、具体策を紹介しておこう。以下のような店舗チェック表の活用である。

飲食店が不振に陥る要因はいろいろあるが、そのもっとも大きな要因のひとつは、マニュアルの有名無実化だからだ。

いま述べたように、どんなマニュアルもそのとおりに仕事が遂行されていなければ、そのマニュアルは存在しないも同然なのである。これはちょっと極端ないい方かもしれないが、マニュアルと違うやり方や手抜きを許すことは、最初はささいなことでも必ず、マニュアルの有名無実化を引き起こすことになるのだ。「これくらいはいいか」という意識が怖いのである。

さて、店舗チェック表だが、別項(第2章1項)で挙げた「店長の営業中のチェック項目」をまとめたものと考えていい。

チェックすべき内容別に、
①店舗の店頭および外観
②従業員就業状況
③商品管理
④店舗管理

の四つのグループに分け、それぞれのグループごとに各項目の評価を採点できるようになっている。四グループとも100点満点なので合計400点満点になる。そこで、わかりやすくするため100点満点に換算し、現状があるべき姿= 100点に対してどうなのかを点検し、問題点を探し出すのである。

ただ、注意しなければならないのは、評価の基準を明確にしておくということだ。この基準がバラついていては、チェックの意味がない。マンネリ化からいつの間にか、無意識的に現状肯定になってしまうことにもなりかねない。

また、実際に仕事をするのは従業員なのだということも忘れてはいけない。彼らの仕事に対する理解と納得がなければ、問題の発見はできても改善にはつながらない。評価の基準づくりには、従業員も参加させるべきである。

問題点を見つけたら即、改善の行動を

マニュアルの遂行度以外にも、改善すべき問題点はいくらでもある。

たとえば、食器の破損をもっと少なくできないかとか、サンプルのディスプレイはいまのままでいいのかとか、アイドルタイムをより有効に使うことはできないか、等など。

少し考えれば、キリがないほど出てくるはずだ。店長自身のワークスケジュールづくりに問題があることもあるかもしれない。

こういう問題点はたいていの場今、改善すること自体がむずかしいわけではない。改善しようとする意識がないから、放置されているにすぎない。一度胸に手

を当てて、自分がどれほどの問題意識をもっているか、素直に反省してみてほしい。ところで、問題点は何も、店長自身の状況観察からしか発見できないのではない。お客のクレームが教えてくれることもあれば、部下の提言によって明らかになることもある。

また、他店を見学することによって、自店の欠点も見えてくる。これらについては後の項目で詳述するが、大事なことは、問題点を発見したら即、改善行動に移すことである。そして、何をどう改善するかということだけでなく、誰が(あるいは誰と誰が)、いつ取り組むのかということと、改善の理由、そして改善目標を明確に部下に示すことがポイントになる。

とくに「理由」を挙げたのは、一方的な押しつけでは部下の協力が得られないからである。改善とはいいかえれば、現状否定だが、人間には一般に、そういうことに対する抵抗感をもつ傾向がある。なぜ改善すべきなのか、そして改善することによってどういう効果があるのかを、店長は具体的に、部下に示すことができなければいけない。

ワークスケジュールの上手なつくり方(3) 月間人件費予算の立て方と手法

「標準人件費率」を考える

月間人件費予算の作成は、前項で述べたパート・アルバイト採用計画の考え方の応用である。さて、ここでもう一度考えなければならないのが、標準人件費率ということだ。

経営である以上、会社はどうあっても必要利益を確保しなければならない。それが企業としての社会的責任だからだ。したがって会社は、すべての経費予算は売上高予算対比で決定することになる。その結果が、たとえば売上高対比25%といった数字として示される。

しかし、これはあくまで「標準」の人件費率である。

ここでいう標準というのは、 一年間をトータルしたときに適正である、という意味だ。理由は主として二つある。ひとつは、飲食店の売上高は季節による変動が激しいこと。

もうひとつは、お客の満足を前提とする飲食店の運営は、適正な人員配置によっておこなわれなければならず、その適正な人員数は必ずしも売上高の増減とは比例しないということだ。

一般に、売上高が高くなるときは人件費の効率はよくなるが、反対に売上高が低くなると効率は極端に悪くなる。光熱費にたとえれば、たとえまったく電気を使わなくても基本料金はかかってしまうからだ。

お店を開いている以上は、どんなにお客の入りが悪くても最低限そろえておかなければならない人員配置がある。それがお店のスタンダードを維持するのであり、結果としてお客の満足を得られ、トータルで売上高を確保できることになる。

A店のケースを考えてみると

つまり、毎月の売上高が季節による変動をほとんど受けず、なおかつ一定レベル以上の売上高を確保できるお店(それはほとんど例外だが)を別にすれば、1月から12月までのすべての月の人件費予算を、同一の基準値(標準人件費率)によって算出することはできない、ということだ。

ひとつ例題を挙げてみよう。
A店は年間の平均月商は1,100万円だが、もっとも落ち込む二月の売上げは700万円、もっとも稼ぐ12月は1,500万円を売り上げる。社員人件費は毎月150万円(1人平均30万円)。お店を経営するには、社員のほかにパート・アルバイトの労働が最低400時間必要で、ピークの12月には700時間必要である。

さて、A店で設定した標準人件費率を二五%として、これを各月の売上高に当てはめるとすると、
2月の人件費=700万円×0.25=175万円
12月の人件費=1,500万円×0.25=375万円

となる。

では、この人件費ではたして適正な運営ができるのかを考えてみよう。

まず、2月。社員人件費の150万円を引くと残りは25万円。これでは時給800円として312時間分のパート・アルバイトしか雇えないから、とてもまともな運営はできないことになる。

次に12月だが、この月は明らかにパート・アルバイトの予算が過剰である。使用可能な労働時間は、時給800円として2,800時間。1,000円でも2,250時間。余裕があるからといって人手を増やせば、従業員はラクはできるが、年間での標準人件費率をオーバーしてしまうことは確実である。

月の人件費予算をはじき出す方法

各月の人件費予算を、適正人員配置を崩さずに合理的に作成するには、パート・アルバイト採用計画で使った「人時売上高」と「人時接客数」を基準にする方法がある。

一般に、店長にとってわかりやすく、かつ使いやすいのは、従業員の生産性の指標である人時売上高を基準に算出する方法だ。

1人1時間当たりの売上高を基準とするため、各月の売上高の変動に対応し、予算と実績の誤差も小さくなる。ポイントは各月の正確な売上高予測と、季節変動に合わせた、各月ごとの適正な人時売上高の設定だが、これは少なくとも過去三年間のデータを分析する必要がある。

計算式は次のとおり。
当該月計画客数=当該月計画売上高/計画客単価
当該月計画労働時間数=当該月計画売上高/当該月計画人時売上高
当月パートアルバイト必要労働時間数=当該月計画労働時間数-当該月社員労働時間数

当該月パート・アルバイト人件費予算=当該月パート・アルバイト必要労働時間×パートアルバイト平均時給
当該月人件費予算=当該月パート・アルバイト人件費予算+社員人件費予算

店長は日標達成率を毎日確かめよ

繰り返し述べているように、店長がコントロールすることのできる人件費管理は、主としてパート・アルバイトの労働時間数である。そして、その目的はお客の満足を得ながら売上高を上げて利益を確保するための、適正人員配置である。

ところで、この項では各月の人件費予算の立て方について述べたが、実際にはなかなか予定どおりにいくものではない。毎日で見れば売上高には波があるし、ワークスケジュールをつくっても、来客数が多すぎて残業しなければならないこともあれば、遅刻や欠勤もある。

ところが、月末で集計してみたら偶然に予定どおりになっていた、ということがよくある。しかし、偶然はあくまで偶然である。月末の数字は、店長が確実にコントロールした結果でなければならない。つまり、毎日の来客数に応じた、適正な人員が働いた結果でなければならないのだ。

もちろん、そんなことをしようと思ってもできることではないが、店長の仕事とは、単なる帳尻合わせではないのである。

そのためには、店長は毎日の実績とその日までの累計実績をつねに正確に把握している必要がある。別のいい方をすれば、日標達成率を毎日確認するということだ。そのために必要なのが、デイリーチェック表である。人時売上高と人時接客数とは実は、このチェックのための指標なのだ。

なお、デイリーチェック表が有効なチェックであるためには、
①標準労働時間
②目標人時売上高
③目標人時接客数

の3つが設定されていなければならない。

バート・アルバイトの労働時間コントロール

標準労働時間が設定してあれば、累計労働時間の達成率が算出できる(表5参照)。また、日別計画売上高と日別実績売上高の累計によって、累計売上高達成率を算出できる。

パート・アルバイトの労働時間のコントロールは、この2つの累計達成率を対照することによっておこなう。
コントロール時間数=累計売上高達成率-累計労働時間達成率

この結果、プラスマイナス2%以内であれば、労働時間数のコントロールの必要はない。

マイナス3%を超える場合=労働時間数が多すぎる場合は、土曜日や日・祭日など、標準労働時間を多く設定してある曜日で調整するといい。

プラス3%を超える場合=労働時間数を増加できる場合は、新人の教育・訓練に当てるべきだ。

ワークスケジュールの上手なつくり方(2) パート・アルバイト採用計画

パート・アルバイト採用の原則

パート・アルバイトの採用計画は、人件費コントロールの基本である。社員人件費が固定費的な経費である以上、売上げに対するコントロールはパート・アルバイトの人件費でおこなわねばならないからだ。したがって、パート・アルバイトの採用はつねに、過不足のない適正人員配置と適性人件費率の順守という、二つの要求のせめぎ合いの中で決められることになる。

それがつまり、人件費予算を立てるということなのだが、ここではまず、社員以外に毎月何人のパート・アルバイトが必要かを算出する手法を取りLげよう。

適正な人件費を算出する

最初に、お店は人件費をいくらまで支払えるのかについて考えてみよう。
売上高-材料費=粗利益高
利益=利益高-(人件費+その他経費)

つまり、人件費は粗利益高から支払われるわけであり、粗利益高に対する人件費のバランスが、利益を確保するための重要なポイントであることがわかる。

さて、人件費管理の指標のひとつである労働分配率は、粗利益高のうちの何%を人件費に当てているかを示したもので、一般には40%が限度である。
労働分配率=人件費/粗利益高

ある月の売上高が1,000万円、粗利益率65%、労働分配率40%とすると、支払い可能な人件費は次のように計算できる。
1,000万円×0.65=650万円
0.4=(x/650万円)
x=260万円

この場合、社員とパート・アルバイトの合計人件費は260万円まで支払うことができるということで、この範囲内で一人ひとりの給与に振り分ければ、適正な利益が得られる。ちなみに、標準的な適性人件費率は25% (この場合は26%)である。

そこで、人件費率を厳密に管理するのであれば、必要なパート・アルバイトの人数は、次の式で求めることができる。

月間計算売上高×計画人件費率=計画人件費
パート・アルバイト必要人数=(計画人件費-社員給与)/パートアルバイト1人当たりの給与

たとえば、月商1,000万円、計画人件費率26%、パート・アルバイト一人当たりの給与(平均)8万円(平均時給800円)、社員の給与が150万円(一人平均30万円、手取り額20万円前後)とすると、必要人員(x人)は、次のようになる。

8,000円/800円=100時間
10,000千円/5,000円=2,000時間
x=20,000時間-1,000時間/100時間=10人

ほかの条件は同じで人時売上高を4,000円として計算すると、15人である。仮に、10人採用してその平均給与が八万円、社員給与が150万円とすると、給与合計は230万円となる。これと、先の人件費率のみを尺度とする場合とを比べてみれば、労働生産性がいかに重要であるかがわかる。

しかし、実はパート・アルバイトの採用人員はこれだけでは決められない。従業員一人が何人のお客を接客できるのか、という視点が欠落しているからだ。つまり、人時接客数を同時に設定していく必要がある。

人時接客数=月間客数/総労働時間数
人時接客数×客単価=人時売上高
(1)月間計画労働時間=月間計画売上高/(人時接客数×客単価)
(2)計画客数=月間計画売上高/客単価
月間計画労働時間=計画客数/人時接客数

人時売上高を基準にした例と同じ条件で、客単価を1,000円として計算すると、人時売上高が5,000円の場合の人時接客数は5人、4,000円の場合は4人である。しかし、A店の従業員は一人一時間当たり6人(人時接客数)の接客ができるとする。すると、
10,000千円/(6人×1,000円)=1,667時間…(1)
10,000千円/1,000円=10,000人
10,000人/6人=1,667時間(2)

そこで、社員月間労働時間は1,000時間だから、
x=(1,667時間-1,000時間)/100時間=7人

となる。逆に、1人1時間当たり二人しか接客できないとすると、23人のパートアルバイトが必要になることになる。

採用計画と店長の仕事

このように、基準にする指標によって、パート・アルバイトの必要人員は変わってくる。しかし、問題はどの指標をとればよいのかということではない。

たとえば、 一人一時間当たりの粗利益高=人事生産性は、適正な利益を確保するための人件費の支払い能力を示す。この能力を高めるためには、粗利益率を高くするのが手っ取り早い。しかし、それは値上げか商品の品質を落とすことだから、必ずお客の反発を受けて客数減を来すことになる。正しい方法は人事売上高を高くすることだが、それには従業員一人一時間当たりの接客数を多くする必要がある。

逆にいえば、いかにして総労働時間数を短くするかが間われているのだ。つまり、教育・訓練によって従業員の人事接客数が高くなれば、パート・アルバイトの人員や総労働時間を増やさなくても、利益は上がるし給与を上げていくこともできるのである。

パート・アルバイトの採用計画は、数式をいじるだけでは絶対にうまくいかない。従業員一人ひとりの作業レベルをつねに把握し、同時に、そのレベルアップと新人の教育・訓練のシステムをつくりあげておくことが大事なのだ。

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ワークスケジュールの上手なつくり方(1) スケジュールづくりの前提

ワークスケジュールづくりは最重要のマネジメント技術

来客数に応じた人員配置計画をワークスケジュールと呼ぶ。たとえば、ランチタイムのピーク時にはホール何名、キッチン何名、アイドルタイムは何名というように、人員態勢を変えていくことだ。

一般に飲食店では、季節、月、曜日、そして時間帯によって、来客数に大小の波がある。それなのに、いつも同じ人員配置をしていたら、非常に効率が悪くなってしまう。来客数の多いときは、お客に対応し切れずに機会損失(売れるはずだった売上げを逸すること)を起こしてしまうし、反対に来客数が少ないときは人手が余り、ムダな人件費によって利益を圧迫してしまう。

こんなことは、少し考えてみれば誰にもわかることだ。ところが、現実にはしっかりとしたワークスケジュールをつくることなく、漫然と営業しているお店が少なくない。

ピーク時にはフル回転して走り回るから、しっかり働き稼いだという充実感が機会損失を忘れさせ、アイドル時や暇な月などには、忙しいときもあるのだから仕方ないなどと、妙に開き直ってしまうのだ。

また、とんでもないことだが、ワークスケジュールを考えるのが面倒だ、と考えている店長が少なからずいることも事実である。

しかし、一番の原因は、ワークスケジュールがなぜ大切なのかという認識が不足していることではない。それは、店長であれば誰でも、うすうすは感じていることだ。

決定的なのは、ワークスケジュールをどうつくればいいのか、その方法論が欠落していることである。つまり、ワークスケジュールづくりが店長にとって、もっとも重要なマネジメント技術だということを知らないのである。

近ごろ、飲食業全体でサービスレベルが低下しているとよく指摘されるが、それはたんなる人手不足や安易な店づくりのせいばかりではない。ワークスケジュールについての店長の認識こそが問題なのだ。

ワークスケジュールづくりの意味

いま「しっかりとしたワークスケジュール」といういい方をした。なぜなら、実効をあげないワークスケジュールをつくっても、意味がないからだ。そしてこのことが、一般にヤル気のある店長の評価を下げ、意欲を減退させる原因になっている。

このテーマについてはヤル気だけではダメなのだ。あくまで方法論が問題なのである。ここでもう一度、ワークスケジュールの意味を考えてみよう。「来客数に応じた人員配置計画」ということだった。ということは、来客数にかかわらず、つねにすべてのお客に満足を提供できる人員態勢づくり、ということになる。重要なのはここだ。

これまで何度も、自店のQSCのスタンダードを繰り返してきたが、これが守られていなければならないのは、お客に満足してもらい、何度も来店してもらって売上高を上げるためである。

ところが、ワークスケジュールをつくって実行していても、売上高の上がらないお店が現にある。その理由はいうまでもない。お客が不満に思っているからだ。

たしかにピーク時には、たくさんの人数をそろえているのだが、料理の出来にはバラツキがあり、ろくなサービスもできない。ただパニック状態で走り回り、汗をかいているだけ―― これは別に、極端なたとえ話ではない。

店長の実力が試される

どうしてこういうことになるのかというと、スケジュールづくりの前提に、「お客の満足」がないからだ。だから、単純に人数を集めればいいと考えてしまう。違うのだ。ワークスケジュールとは、単なる頭数合わせではない。きちんと教育・訓練された人員を必要な人数だけ、計画的に配置することなのである。

しかし、そのためにはまず、すべての従業員の教育・訓練を日ごろから徹底していなければならない。そして、店長は従業員一人ひとりについて、その能力や技術の習得度を正確に把握していなければならない。

そのうえで、店長自身は全体の指揮・監督ができるように、店長代行者を務められる有能な部下を一人でも多く育てあげていなければならない。

これらの成果があってはじめて、店長は「お客の満足」を前提にした人員配置を組むことができるのである。

つまり、日ごろの店長の労務管理の集大成、それがワークスケジュールなのだ。店長にとってもっとも重要なマネジメント技術だといったのは、このためである。

お客不在の発想に陥るなかれ

また、ワークスケジュールづくりでは、先に挙げた例と逆のケースもよくある。つまり、むやみに人の効率を追及するため、必要な人数を切り詰めてしまうというケースである。これは現象としては反対の方向だが、その発想の元をたどれば同じ、「お客の満足」不在の発想である。

極端に人手を切り詰めるのは、その発想が生産性の向上に凝り固まっているためだ。たしかに人件費のコントロールは店長の腕の見せどころだし、それなくしていまの飲食店は利益を確保できない。

しかし、人件費は決して「余計な」経費ではないのである。お客に満足を提供するための適正な人件費をかけてこそ、お客の支持が売上高となってあらわれ、結果として適正な利益を得ることになる。このことを絶対に忘れてはならない。

よく数字は魔物というが、計数管理をしていると、往々にして、数字至上主義に陥ってしまう。数字をコントロールしているつもりが、いつの間にか、数字に振り回されるようになってしまうのだ。そして必ず、自己矛盾に陥って苦しむことになる。人件費やその他の経費を切り詰めたはいいが、肝心の売上高が落ちていくからだ。

一般にワークスケジュールは、人時売上高ないしは人時生産性をもとにつくられている。とくに人時売上高は、店長が人件費をデイリーでチェックするのにわかりやすい指標だから、これを基本に考えれば大変つくりやすいし、決して間違いではない。

ただし、人時売上高や人時生産性は、あくまで効率上の考え方である。したがって、そこだけを追求していけば当然、お客不在の発想にたどり着くことになる。一方、「お客の満足」を追求していくと、つねに十三分な人員を配置しなければならないことになる。過剰な人件費を使えば当然、売上高はそこそこ上がっても、利益は出ない。

結局、ワークスケジュールづくりは、人の効率とサービスの質という矛盾との戦いなのだ。人時売上高や人時生産性の追及と、サービスの質の追求とのはざまで、どう折り合いをつけてお客に納得してもらうか、その技術にほかならない。

それともうひとつ、従業員の気持ちを忘れてはいけない。いくら有能な部下をたくさん抱えているからといって、彼らに不当な負担を強いるようではしょせん、長続きしない。従業員の不満がたまってくれば、それはお店の雰囲気の劣化やサービス自体の低下をもたらす。

従業員にとっても、お店の繁栄は喜ぶべきことだ。それが誇りとなり、働く意欲も高まっていく。しかし、そこには楽しく働けて、かつ十分な給与を得られる、という大前提がある。ワークスケジュールは、従業員が働きがいのもてる職場づくりの技術でもあるのだ。

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店長代行者の育成の必要性とポイント

店長は二四時間店にいるわけにはいかない

店長はつねに、部下に適切な指示を出し、また基準どおりのレベルで仕事がおこなわれているかを監督していなければならない。だから、自分が接客サービスに没頭してはいけないのだが、部下の指揮・監督に徹したとしても、つねにお店にいるわけにはいかない。

まず二四時間営業のお店では、店長がいつもお店にいることなど不可能である。深夜営業がないとしても、毎日、朝から通してお店にいるわけにもいかない。生身の人間なのだから、いつケガや病気にみまわれるかもしれない。店長会議などでお店をあけることも少なくないし、大型店になると、店長一人ですべての管理業務を取り仕明っていたのでは、かえってマイナスになる場合もある。

また、当たり前のことだが、店長にも休日をとる権利がある。実際、一般に店長の悩みをホンネで聞くと必ず、休日がなかなかとれないことだという答えが返ってくる。それでなくても人手不足だから体むに体めないし、やっとのことで休日をとっても、お店の様子が心配で、ポケットベルを手離せない店長もたくさんいる。パート・アルバイトが急に何人も休んだりしたら、店長はいやでも出勤してカバーしなければならないからだ。

これでは店長はたまったものではないし、そういう現実の姿を見ている部下は、店長になりたいなどと思わなくなってしまうだろう。

店長代行者の育成は急を要す

店長の代行者はどうしても必要である。実際問題として、店長はつねにお店に張りついているわけにはいかないのだ。もし代行者がいなければ、店長不在時のお店は、お客に対する責任者不在ということになってしまう。もちろん、このことをしっかりと認識し、組織として副店長や主任といった代行者を置いている会社もあるが、そうでないお店の場合は、店長自身が自分の代行者を育成していかなければならない。

しかも、これは急を要する。社員であればそのうちに育ってくるだろう、などとのんびりと構えてはいられないのである。店長代行者がいない限り、つねに一定のレベルのQSCをお客に提供することはできないからだ。お店のQSCにバラツキがあれば必ず、客数は減少する。店長の代行者とは、お店の成績を大きく左右するキーマンでもあるのだ。

候補者選びの五つのポイント

店長代行者を育成するには、候補者の抜擢と特別な教育・訓練が必要になる。候補者選びのポイントは、次の五点である。

①接客サービスを完全な形でおこなえること
②管理の仕事を理解でき、会社の方針もきちんと理解できていること
③責任感が強く、仕事に対して積極的であること
④勤続期間ができるだけ長いこと⑤同僚から信頼されていること

①は、すでに基本の接客技術を完全に身につけていて、お客とのトラブルなどに対して臨機応変な判断、態度をとれるくらいであることが望ましい。また、人の抜擢は往々にして、同僚の嫉妬や反感を買いやすい。したがって、能力はあっても、同僚から浮いているような人では代行者は務まらない。そのため⑤は重要な条件になるのだが、そのうえで、代行者が代行者としての仕事をしやすい職場の空気づくりをしてあげるのは、店長の義務である。

②には、お店のスタンダードを知っていることも含まれる。つまり、サービスやクレンリネスばかりでなく、商品の基準についても知っていなければならないということだ。これは調理場を信用しないということではない。一定の水準の商品をお客に提供することの最終的な責任は店長にあるからだ。

お客のクレームヘの対処ということも、あらかじめ念頭に置いておく必要がある。③、④については、いまさら説明することもないだろう

候補者の教育はOJTしかない

店長代行者の候補者を選んだら、さっそく計画的に役割を与えて、短期間のうちに育成するが、そのためには、店長の業務とは何なのかを、店長自身が熟知している必要がある。そうでなければ、自分が不在時に代行者として求められる仕事と責任を、具体的かつ簡潔に教えることはできない。何と何をどのようにおこなえばいいのか。教えられたとおりに実行すればお店は間違いなくスムーズに機能する、というようになっていなければならないのだ。

候補者の教育・訓練の中心は、OJTである。機会あるごとに、また積極的に機会をみつけて、いかに部下の仕事を見守リバックアップしていくかについての、実施の管理経験を積ませることが肝心だ。

必要な知識を教えることも大切だが、部下指導の能力や的確な判断力というのは、実際にやってみないと身につかないものだ。また、OJTをしっかりやっていないと自信をもてないため、部下を自由白在に動かすことができない。代行者である以上、店長と同様に部下を動かす権限がなければならないのだ。

パートでも店長代行者は務まる

ところで、店長代行者は必ずしも社員でなければならないということはない。条件さえ満たしていれば、パート・アルバイトでもかまわないのである。人を指揮するのにふさわしい年齢ということから考えれば、主婦のパートタイマーは有望な候補者といえる。40〜50代で子育ての経験のある主婦なら、若い人たちの気持ちをつかむのがうまいし、一般的にいって、若い人たちよりもはるかに責任感も強い。お店のコンセプトにもよるが、一般にお客のほうも、人生のキャリアのある主婦が責任者とわかったほうが、なんとなく安心するものだ。

パートタイマーはいうまでもなく、勤務時間が短い。しかし、少なくとも昼のピーク時間帯の勤務は可能だ。その意味でも、昼間は学校がある学生アルバイトよりも戦力として計算しやすい。

パートタイマーで代行者が務まるのか、と思う人もいるだろう。しかし、これは可能なのだ。そもそも店長代行者といっても、何から何まですべての店長業務を任せるということではない。

たとえば、ワークスケジュールづくりや客数予測などは、絶対に代行者に任せるわけにはいかない。つまり、代行できる仕事を代行させればいいのである。だからこそ、店長は自分の仕事を分解して、その範囲と

内容を明確にしておかなければならないのである。現にパートタイマーが、店長代行者を務めているお店はある。社員数が足りないということもあって、そういうケースは増えてきつつある。

店長と代行者との間には責任の明確化が必要

ただ、代行者としての教育・訓練をおろそかにして、立場上でだけ代行者としているケースが少なくない。

お店の運営上も大問題だが、そのことによって優秀なパートタイマーが辞めてしまうことも、大きな問題である。管理業務について何も教えられないまま代行者を努めさせられるため、その負担に耐え切れなくなってしまうのだ。

こういうケースは第一に、会社の仕組みとして店長代行制が確立していないことがあるのだが、店長自身が、代行者をつくるとはどういうことなのかについて、よくわかっていないことも多い。そして、結局は自分で自分を窮地に追い込んでいるのである。

なお、店長代行制を導入するには、店長と代行者との間の責任関係を明確にしておくことが肝心だ。権限の委任の原則について知っておくということだ。

権限には必ず、責任がついてくる。では、ある権限を部下=代行者に委任したとすれば、その責任は委任された部下が負うことになるのかというと、それは違う。なぜなら、店長には部下に対する監督責任があるからだ。部下=代行者に権限を委任したあとでも、この監督責任は残るのである。

したがって店長は、代行者が何か失敗したときは、その責任をとらなければならない。代行者に責任を転嫁するような店長のもとでは、本当に仕事を任せられる代行者は育たないし、また、そういう店長は経営者や上司の信頼を失うことになる。このことをしっかりと認識しておく必要がある。

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従業員の評価は公平に[明快な基準が大切]

公平に評価されたい気持ちを理解する

あなたはこれまで、職場で上司や経営者に正しく評価されてきただろうか。正しく評価されたときは疲れなど吹っ飛んでしまったろうし、さらに仕事への意欲が湧いたことだろう。

しかし、そうでないこともあったに違いない。どこにでもモノのわからない上司はいるものだ。仕事の実績を残しているのに、それが認められず、先輩や同僚と比べて不公平な扱いを受ける。これほど口惜しいことはないし、ヤル気をなくさせることもなかったはずである。

そしていま、店長としてお店と従業員を預かっているあなたは、経営者に正しく評価してほしいという気持ちをいっそう強くしていることと思う。これだけの責任を負って働いているのだから、と思っているに違いない。

それは、部下も同じことなのである。あなたがかつてそうだったように、部下は、つねに店長によって正しく評価されている、という確信があってはじめて働く気持ちになる。向上しようと努力する気になるものなのだ。

もちろん、いまのあなたは、より大きな責任をもつことで、いやがうえにも意欲が高まっているだろう。しかし、だからこそ、あなたは「公平に評価されたい」という部下の切実な気持ちを深く理解できていなければならない。

部下を預かるというのは、部下によく働いてもらい、お店の成績を向上させることである。それにはまず、部下にヤル気をもってもらわなければならないのだ。

そういう職場づくりをしなければならないし、ヤル気をもってもらうような仕事への評価のしくみをつくらなければならない。

仕事での評価はなるべく形にしたいものだ

仕事での評価は、その結果が給与に反映されなければ意味がない。「君はなかなか優秀だね」とか、「よく働いてくれて助かるよ」とほめることは、もちろん重要なファクターのひとつである。

しかし、ほめられるばかりで給与はいっこうに変わらないというのでは、せっかく高まった従業員の意欲はカラ回りしてしまうし、かえってマイナスに働くこともしばしばある。

目ばかりで信用できないという体験は、あなたにもあるだろう。そしてその不信感は、店長であるあなたに向けられるのだ。店長が部下に信用されないということは、店長はお店のコントロール機能の大半を失ったことを意味する。

実力で給与差を埋められる仕組みがあるとよい

従業員の給与への不信感のなかで最悪なのは、従業員間の不公平感である。

たとえば、最近は同じパート・アルバイトなのに、大学生、高校生、主婦というように学歴や年齢で時給に差をつけるお店が増えている。その理由はたいてい、お店がもっとも欲しい人材を明確にアピールするため、とされている。

それはそれで間違った方法ではない。しかし、それならば、そのことを採用時にはっきりと説明しなければならないわけだが、もっと大切なことは、いったん仕事に就いたあとは、実力でその給与差を埋めることができる仕組みを用意しておくことだ。

どんな会社でも、給与体系で問題となるのは初任給ではなく、以後の昇給額、賞与支給額である。つまり、仕事の能力評価がもっとも大切なファクターだということだ。

明快な評価の基準が大切だ

当たり前のことだが、従業員の評価でもっとも大事なことは、その基準が明確で、かつ誰にでもわかりやすい形になっていることである。従業員の定着率の悪いお店は、十中八九これがしっかりとできていない。

店長の好みや気分で部下を評価してしまっているケースが多いのである。

たとえば、若い店長だと、世代が近くて何かと話の合う大学生や専門学校生ばかり目をかけて、主婦のパートタイマーをおろそかに扱うことがよくある。また逆に、私的な面での趣味(競馬とかパチンコ)や、つき合い(酒など)によって部下への接し方が変わるというのは、ベテラン店長にありがちなことだ。

いずれにしろ、店長の胸先三寸で給与が決められてしまうのでは、従業員はいたたまれない。辞めていって当然だ。ところが、そういう恣意的な店長に限って、「代わりはいくらでもいる」などとタカをくくっているから始末が悪い。

ダメな従業員の代わりならいくらでもいる。しかし、優秀で自分の評価をも押し上げてくれる、つまり売上高アップに貢献してくれる部下はそれでは育たない、ということに気づいていないのだ。従業員評価の基準とは、ひとことでいえば、売上高の評価のモノ差しはあり得ない。このことを忘れてはいけない。

「向上心」と「努力」を見る

次に、具体的な評価の仕方についてだが、これも当然のことながら、社員とパート・アルバイトでは違っていなければならない。同じ従業員であっても、本人に期待する意味合いが違うからである。

まず、社員に対しての評価では、つねに一歩上をめぎす向上心があり、そのための努力をしているかどうかが、最大の基準でなければおかしい。社員になったということは、会社=お店と一緒に自分も成長していこうという意思表示でなければならないからだ。

会社としても、いずれは主任、店長とステップアップしてほしいからこそ、高い人件費を払って社員にしているのである。

よく勘違いされることがあるのだが、社員制度は単なる人手確保の手段ではない。もちろん、仕事の出来、不出来も評価基準ではあるが、社員の場合、それは社員であることの前提でなければならない。そうなるように教育・訓練しなければいけないということだ。

ちなみに、一歩上をめざす努力とは、与えられた仕事以外で自己啓発に努めることをいう。

店長はつねに公平を心がけなければならない

一方、パート・アルバイトの場合は、基本的には、与えられた仕事の範囲内での出来、不出来を問題にする。

たとえば、一見すると接客に慣れていて、一人で対応できる客数も多いというウエイトレスがいるとする。しかし、それだけでは高い評価を与えるわけにはいかない。大事なポイントは、会社のスタンダードを実現するために、会社のルール、やり方をきっちりと守って働いているかという点なのだ。

「あの人は仕事ができるから」などという理由で一部のパート・アルバイトの違うやり方を認めることは、お店のスタンダードを自ら否定することである。お店のルール、やり方に従わなくても優遇されるとしたら、そのルール、やり方は存在しないも同然なのだ。

社員にしろ、パート・アルバイトにしろ、評価の基準はただひとつでなければならない。そして、その基準がいつも変わらないことが鉄則だ。従業員は明快な評価基準があるからこそ、評価されるためには何をどうすればいいのかがわかる。目標がはっきりしているからこそ、早く覚えよう、もっと進歩しようと努力する。

勤務評定は、もっとも主観が入りやすい。評定者の好みや思い込みにも左右されやすい。だからこそ、店長はつねに公平を期すよう自分を戒めていなければならない。そして、すべての従業員の仕事ぶりを見守っていなければならないのだ。

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バート・アルバイトを最大限に活用する(2)即戦力にするやり方

無理な取り決めは長続きしない

パート・アルバイトを十分に活用し、戦力化するにはまず、彼らが働きやすい環境をつくることが大切である。働きやすい環境とは、

①勤務時間の選択ができること
②すべての仕事が標準化され、会社のスタンダードがわかりやすい形で示されていること
③評価・待遇の制度が確立されていることの三つの要件を満たしていることである。

まず①の勤務時間だが、お店で働くことは彼らの生活の中心ではない、ということを念頭に置く必要がある。

とくに主婦のパートタイマーの場合は、何といっても家庭が第一である。主婦が一定の時間、家庭を留守にすれば、大なり小なり家庭に不便をもたらすことになる。また、家事があるから、どうしても出勤が無理な時間帯も出てくる。

したがって、主婦のパートタイマーを雇う場合は、本人の意向だけでなく、必ず家族の同意を得るようにしなければいけない。家族の協力が得られなければ、遅刻や早退、欠勤が増えて、結局は長続きしないのである。

一方、学生アルバイトだから時間が自由になるというものではない。曜日によって授業の時間が異なるだろうし、サークル活動をしていればその制約もある。それなのに、なんとかなる式(お互いに)で無理な取り決めをしても、しょせんは無理なものは無理なのだ。

遅刻や欠勤が続いたりして居づらくなり、やはり辞めてしまうのである。

また、パート・アルバイトにとっては、一カ月にいくら稼げるのかが大きな関心事である。働く目的によって、 一カ月の日標金額も違ってくる。 一カ月の労働時間は、後述するワークスケジュールづくり(第4章‐11-12項)とも関連してくるが、採用に当たっては働く目的と日標金額を確かめ、彼らが安心して働けるようにしてあげることが大切である。

教育・訓練では店長の力量がハツキリ出る

次に②だが、誤解してはいけないのは、社員とパート・アルバイトでは、教育・訓練の仕方が違うということだ。社員とパート・アルバイトは仕事が同じといったが、それはサービス業としての基本の部分で同じなのであって、当然、仕事の内容や範囲は違ってくる。しかも、何度もいうように、パート・アルバイトは勤務時間が短い。非常に限られた時間内で教育・訓練し、即戦力にしなければならないのだ。

したがって、パート・アルバイトの教育・訓練では、店長の力量がはっきりと出るわけだが、その力量とは、たんなる教え方の優劣だけではない。合理的な訓練をおこなうためのシステムづくりができるかどうかということが、大きな問題となる。

まず、社員と比べて仕事の範囲が狭いのだから、マニュアルもパート用のものを別に作成しておく必要がある。余計なことを覚える必要はないのである。と同時に、仕事に不慣れな主婦でも簡単に習得できるように、標準化した仕事を作業分解し、わかりやすい言葉と表現で説明してあるマニュアルでなければならない。

また、いうまでもないことだが、パート・アルバイトがお店でしなければならない仕事の範囲を明確にして、それを最初の訓練のときにはっきりと示さなければならない。

よく「便利屋」的にパート・アルバイトを使おうとする店長がいるが、仕事の範囲が明確でなければ、確かな目標を持てないために習得スピードが遅くなるし、仕事にイヤ気をさす原因ともなる。

訓練時間を短縮するには、メニュー名を価格を暗記は宿題にして、自宅でやらせるべきである。もちろん、標準暗記時間を設定して、その分の時給は払わなければいけない。

店長は間違いを発見したらその場で指摘し直す

作業の標準化とは、お店のサービスの基準がはっきりしているということだ。そして店長は、その基準どおりに教えること、これが訓練の絶対条件である。

かりに店長が何らかの理由で交替しても、会社のスタンダードが変わらない限り、サービスの基準も変わってはならないのだ。

ところが、店長が代わったことで、それまで通用していたやり方を否定され、それが原因で辞めていくパート・アルバイトが少なくない。

また、店長の教えたやり方と、同僚・先輩のやり方が違うとうのもあってはならないことだ。これでは、パート・アルバイトは誰のいうことを信用していいのかわからなくなってしまう。

そうならないためにも、店長はつねに部下全員の仕事ぶりを観察し、少しでも間違っているところを発見したら、その場ですぐに指摘して直させるようにしなければならない。

早く現場へ出してOJTする

パート・アルバイトを即戦力にするには、とにかくできるだけ早く、客席の現場に出すことである。ひととおりの接客技術を身につけていなくても、できる仕事はある。

たとえば、接客話法をマスターしていなくても、食べ終えた皿を下げることならできるし、このくらいの作業はすぐに覚える。そうした実践で使われることによって、自然と仕事の勘が養われていくものなのだ。

もちろん客席に出すことはOJTなのだから、店長はその動きをよく見て、うまくできたらほめ、誤りがあればすぐに補足していかなければならない。 一般に、最初にマニュアルを渡してひととおりの説明をしただけで、あとは何も教えないというお店が多いが、これではパート・アルバイトは使い捨て、と宣言しているようなものだ。

パート・アルバイトも、飲食店に勤める以上は、早く接客サービスをしてみたい、と思っている。先輩たちのようにうまくサービスできるようになりたい、と思っている。

しかし、なかなか覚えられなければ、そういう気持ちはどんどんしぼんでいってしまう。従業員のヤル気を引き出すことをモチベーション(動機づけ)というが、せっかくあるヤル気の芽を摘み取ってしまうのでは、それこそ本末転倒である。

納得できる評価の仕組みをつくろう

ところで、どんな仕事でもその結果を評価してもらえなければ、仕事への意欲はなくなっていく。人間は本質的に、他者から評価されたいと思っているものなのだ。

評価されたいからこそ、早く覚えよう、もっと上達しようと努力する。だからOJTでのキメ細かい評価が大切なのだが、一応の仕事を身につけて一人前に働けるようになると、ただほめられるだけでは満足できなくなる。

当たり前だ。彼らは趣味やボランティアで、お店で働いているのではない。目的は収入を得ることである。これは、あなたを含めてすべての働く人にあてはまることだ。給与に反映されないような評価は、真の評価ではないのである。

ところが、パート・アルバイトに対する評定制度のあるお店、会社はいまで少数派である。社員は毎年昇給していくのに、パート・アルバイトは何年経ってもほとんど昇給しない、というお店が圧倒的である。これで彼らにヤル気を出せといっても、それは無理な話である。

評価の仕方については後述するが、パート・アルバイトを即戦力にし、さらに有能な部下として長く働いてもらうには、この問題を棚上げにすることはできない。

きちんと教えられ、すぐに仕事を任され、努力しだいで給与が上がるという仕組みがあれば、彼らは素晴らしい戦力に育っていくのである。そして、従業員一人当たりの生産性が向上すれば、当然、値上げなどせずとも、彼らに高い時給を払うことができるのだ。

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著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。