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飲食繁盛知識/決定版 飲食店の店長&経営者 これができなければ務まらない

バート・アルバイトを最大限に活用する (1)軽くみてはいけない

出来、不出来で店の評価が下される

先にも述べたように、いまや飲食店の経営はパート・アルバイトの労働力抜きには考えられない時代である。お店の総労働時間の70〜80%がパート・アルバイトというお店も珍しくはないし、ファーストフードチェーンに至っては、実に90%がパート・アルバイトで占められている。

これほどパート・アルバイトに依存する比率が高まっているのにもかかわらず、いまだに彼らを「使い捨ての単純労働力」と見下す風潮がある。そのためパート・アルバイトのほうも、自分たちは補助的な労働力で、仕事への責任度も低い(あるいはほとんどない)と思い込んでしまう傾向がある。困ったことである。

パート・アルバイトといっても、一日の労働時間、あるいは週・月の労働時間が社員に比べて短いこと、あるいは学生アルバイトのように一定期間だけの短期労働であることを除けば、その仕事の内容は社員ととくに変わりがあるわけではない。社員であろうとパート・アルバイトであろうと、お客にとっては等しく、お店の従業員なのである。ここが大事なところだ。

つまり、パート・アルバイトにも社員と同じ働きをしてもらわなければならないわけだが、労働力としての依存度が高ければ、お店の評価はパート・アルバイトの出来、不出来で決まってしまうということなのだ。パート・アルバイトを軽視していては、売上高は上がらないのである。

早く一人前に訓練し、気持よく働いてもらう――これも店長の仕事

飲食店のパート・アルバイト労働力への依存度が高い理由は二つある。ひとつは人件費が安くつくこと。

もうひとつは、お店の繁閑に応じた効率的な人員編成ができることである。

人件費については、すでに何度か述べてきたが、まず、同じ労働時間とすると、社員の40〜50%の金額ですむこと。そして、社員だと固定費になってしまう人件費を、変動費化できるというメリットがある。

他の産業に比べて生産性の低い飲食業において、確実に利益を出していくために不可欠のメリットである。

効率的な人員編成については、お店によってその効率の追求度に問題があるようだが、それは後で詳しく述べる。ここで考えなければならないことは、勤務時間の短さと教育・訓練の問題についてだ。

たしかに、お店の忙しい時間帯や曜日だけ出勤してくれるというのは、経営にとって大きなメリットである。しかし、それは実は机上の計算にすぎないのだ。

忙しい時間の従業員はいうまでもなく、暇な時間帯よりも高い能力を要求される。暇なときなら多少まごついたりしても、仕事の流れに大きな影響は出ないが、ピーク時はそうはいかない。少数の仕事の習得度の低い従業員のために混乱をきたし、パニックに陥ってしまう危険性が大いにある。現にランチタイムやディナ―タイムのたびに、ホールばかりか内厨房まで大混乱、というお店は少なくない。大型店ほどその危険性が高いし、混乱も大きくなる。従業員間の仕事のレベルの落差が、いちばん大切なチームワークをガタガタにしてしまうからだ。

こういう状況をお客がどう感じるのか。お客の満足はQSCの三要素で決まるといったが、サービスがこういう状態では、とても満足などしてもらえない。また、従業員間で仕事のレベルに差がありすぎると、従業員同士の人間関係もギクシャクしてくる。そうなると必ず、お店の雰囲気は暗くなる。これも、客数減少の大きな要因である。つまり、パート・アルバイトを採用することによって、たしかに人件費は圧縮できるのだが、肝心の売上高を落としてしまう可能性もまた、一方にあるということだ。

もちろん、パート・アルバイトは仕事ができないといっているのではない。いかにパート・アルバイトを訓練し、気持ちよく働いてもらうかは、店長の重大な責任だといっているのである。

軽く見る店長は、しっべ返しを食う

パート・アルバイトの給与は、社員に比べてはるかに低い。しかも、実際の仕事は社員とほとんど変わらない。それでどうして、パート・アルバイトは甘んじているのだろうか。諸悪の根源は、最初に述べたパート・アルバイト軽視の風潮である。「給与が安い代わりに、大した責任もない」というのが彼らの常識になってしまうのだ。

しかし、理由はそればかりではない。むしろ、もっと大きな理由といえるのが、彼らの働く目的である。パート・アルバイトが飲食店で働く動機は、いろいろあるだろう。主婦のパートタイマーなら、空いている時間を利用して小遣い稼ぎをしようとか、家計の足しに、という動機が多いが、なかには社会経験のためという人もいる。学生のアルバイトの場合も、たんなる小遣い稼ぎばかりでなく、バイクを買うとか、海外旅行の資金を貯めるといった、具体的な目的をもっている人も多い。

ここで大事なことは、どんな動機、目的にしろ、彼ら(の大多数)にとって一番の問題は、おカネを稼ぐことだということだ。飲食店の仕事がしたくて応募してくるのではない。つまり、どこで働くかは二の次の問題のわけである。だからこそ、時間当たりの給与や、その他の労働条件が社員より劣っていても、それを甘んじて受け入れているのである。

したがって、パート・アルバイトの教育・訓練に当たっては、サービス業としてのこの仕事の意義をよく理解させる必要がある。これをおろそかにすると結局は、お客のお店に対する評価を下げて、自分で自分の首を締めてしまうことになる。また、短時間のうちに習得させなければならないのだから、教える店長はかなりの訓練技術を要求されることになる。

パート・アルバイトを上手に使うというのは、実は大変なことなのだ。その代わり、きちんと教育・訓練すれば、計数的にも大きな戦力になる。つまり、パート・アルバイトはいわば両刃の剣なのである。パート・アルバイトを軽く見る店長は、必ず手痛いしっペ返しを受けることになる。

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マニュアルの上手なつくり方(2)清掃マニュアル

店の清潔度は士気のパロメーター

清掃はお店のQSCのひとつ、クレンリネス(C)を維持するための重要な仕事である。いいかえれば、クレンリネスの程度は、店長を評価する基準のひとつでもある。

ヤル気のない店長のお店では当然、従業員のモラルダウンが進行するが、その最初の現象としてあらわれるのがお店の汚れである。クレンリネスがいかに大切かについてもう一度、その意味を確認してほしい。

さて、ひと口に清潔感といっても、その感じ方にはかなりの個人差がある。敏感な人もいれば鈍感な人もいるし、なかには無神経としかいえないような人もいる。鈍感な人や無神経な人と敏感な人とでは、「きれい」のレベルが違う。したがって、鈍感な人の場合、本人はちゃんと清掃しているつもりでも、結果としては「手抜き」でしかないということになってしまう。

しかし、飲食店で働く以上は、鈍感な人にも敏感になってもらわなければ困る。ではどうすれば、その個人差を埋めることができるのか。

その答えはいうまでもない。きちんとした清掃マニュアルをつくり、計画的に実行することである。そうすれば、従業員全員が一律に掃除できるはずである。

しかし、マニュアルは万能ではない。マニュアルがあるからお店がきれいになると思ったら、大間違いである。もっとも大事なことは、従業員一人ひとりのクレンリネス意識を向上させることなのだ。

「店を清掃に」は店長の率先実行で

それにはまず、店長であるあなた自身が、シビアなクレンリネス意識をもっていなければならない。ここがしっかりとしていなければ、「ピカピカに磨いた清潔感」など、しょせん絵に描いた餅でしかない。

つまり、飲食店のあるべき清潔感とは、どういう状態のことなのか、お店のすべての部分について明確な基準をもち、従業員に具体的に示すことができなければならないのだ。どんな組織でも、トップ(お店では店長がトップである)がだらしなければ下は右へならえ、である。しかし、素晴らしいお店にしたいという強い意識があり、しっかりとした認識をもって率先実行すれば、お店のクレンリネスは必ず向上していく。

できる店長とはつねにお店の清潔感や家具の破損に対して敏感だから、自然と床に落ちているゴミを拾い、破損部分を修理するものである。ルックスの落ちた蛍光灯にもすぐに気がつく。そして、従業員も店長の感覚を共有できるように育っていくものだ。

清掃マニュアルづくりと同時に教育の徹底を

もうひとつ、従業員のクレンリネス意識を向上させるのに大切なのは、従業員になぜクレンリネスが必要なのかについて、きちんと教えることである。飲食をするのにお店が汚なかったらお客はどう感じるか、ということばかりでなく、飲食店としての衛生管理義務についてまで、噛み砕いて話してあげることだ。つまり、清掃は自分たちにとって大事な仕事のひとつなのだということを、よく理解させるのである。

クレンリネス意識の低いお店(実はこれが大多数なのだが)では、この教育がしっかりとなされていない。そのため従業員は、余計な仕事までさせられていると思ってしまう。清掃マニュアルをつくるお店は増えてきてはいるが、この意識改革の教育を抜きにしてマニュアルをあてがっても、効果はあがらない。

これが、マニュアルは決して万能ではないという意味である。お客を迎えるのに掃除をし、部屋の中を片づけるというのは、家庭でも当然のことだ(と教えなければならない)。ましてや、おカネをいただくのである。イヤな仕事ではなく、当然の仕事と理解させることが、清掃マニュアルを活かすための鉄則である。

マニュアル作成の留意点

清掃マニュアルづくりの注意点は、
①計画的に実行できるようにシステム化する
②掃除のやり方を統一する
③掃除用具をきちんと揃えておく
の三点である。
いくら清掃が大切だといっても、実際問題として、お店のすべての部分を毎日、くまなく清掃することは物理的に不可能である。現実には、お客の日につきやすい箇所や効果的な箇所を重点的におこなうことになる。そのため、重要度の高い清掃を優先しながら、すべての箇所に清掃が行き渡るような計画性が必要だ。

上記、表1は、短時間でもっともきれいにできる清掃計画を実現するための、清掃基準表である。

お店の中を、汚れが日立つ、あるいは汚れやすい順に細かく分割して、1日に何度も清掃する箇所(時間)、日回の箇所、週に一回ないし複数回の箇所、月に一回の箇所とあらかじめ決めておき、それぞれの箇所の清掃ポイントを示す。

これを毎日のタイムスケジュールに組み込み、さらに、どこを誰が清掃を担当するのか以下表のように決めて、お店の清掃度に対する責任を個々の従業員にもたせるのだ。

②はマニュアルそのものの内容の問題である。汚なさの感じ方が人それぞれなように、ぞうきんがけひとつひとつとっても、人によってやり方が違うクセもある。角を丸く拭き残す人は、掃除機をかけても同じようにやるものだ。神経の鈍感な人は、誰が見ても汚れているダスターで、平気でお客の日の前のテーブルを拭く。こういうことが多くのお店で、ごくぶつうにおこなわれているのである。しかし、やり方が悪いと叱るよりも、まず正しいやり方を教えることが先決だ。

たとえば、テーブルの拭き方なら、

(1) テーブル用のきれいなダスターを使用する
(2) まずテーブルの外周を角から角に向かって拭き、
(3) その中を左←右←下←左←下←右と拭くという具合に、具体的にいちいち指示することが大切だ。これくらいのことはわかるだろうという思い込みがいちばんいけない。また、当然、従業員の中にも、それくらいのことはわかっています、という人もいるだろう。しかし、それでも一からきちんと教えなけれ統一するため、と説明すべきなのだ。

一人でも違うやり方をする人を認めると、それが必ずマニュアルの有名無実化につながっていく。正確に守ってこそのマニュアルなのである。

清掃用具もつねに整理整頓して同じ場所に保管してあれば、気がついたときにすぐにやれるようになる。

洗剤や殺菌・防臭剤、バケツ、ブラシ、モップ、ぞうきん類などがそろっていないようでは「清掃しろ」というほうが無理である。道具がなければできないし、後回しにしているうちにやらなくなってしまう。

「店を清潔に」の習慣は従業員の休憩室から

店内をいつも清潔に保つには、マニュアルや清掃のチェックリスト、掃除のしやすい器具や道旦(が必要である。しかし、もっとも大切なのは結局、他人に対する思いやりの心なのだ。本書の最初で、飲食業は奉仕業だといったが、他人を気持ちよく過ごせるようにしてあげようという奉仕の心こそ、サービス業のホスピタリティの原点である.そして、この思いやりの心は、たんなるマニュアルでは決して身につかない。強制してしかできないようでは、必ずボロが出るし、タガが員が自然に思うようにすることが大切なのだ。

そのためには、まず店長室を整理整頓することだ。

そして、従業員の休憩室もきれいに使う習慣をつけさせることである。寮がある場合は当然、寮の清掃を厳しくしつける必要がある。私生活で汚れた状態が平気なようでは、お店が汚れていても気にならなくなってしまう。店長室がいつも乱雑でホコリがたまっているようでは、いつまでたってもクレンリネスなど実現できない。休憩室は従業員が心身をリフレッシュし、また従業員同士、店長と従業員がコミュニケーションをはかる大事な場所である。まず、ここからきれいにする習慣をつくることだ。

清掃は地味な作業である。また、誰もがイヤがる作業ともいえるだろう。しかし、お客の評価はたちどころに下される。お客は何よりも不潔なお店を嫌う。お店の人間にとっては、「あまり汚れていない」状態でも、お客の目には不潔に映るのだ。このことを忘れてはいけない。

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マニュアルの上手なつくり方(1)サービスマニュアル

サービスマニュアルに含まれる四つの基本的事項

サービスマニュアルの基本は、

①身だしなみ=服装、髪型、手指の爪など
②言葉遣い=接客用語、主な敬語の使い方
③基本動作=お客が来店してから帰るまでの一連の動作(客待ち時の態度も含む)

――の3つだが、そのベースとなるのは、
④愛客精神=飲食店の売りものは「お客への愛」
――である。サービス業としての素晴らしさ、お客に喜ばれることの喜びが感じられなければ、従業員はたんなるロボットになってしまう。工場での流れ作業のように、決められた作業だけソツなくこなせばいい、という従業員ができあがってしまう。お客にもっとも嫌われるサービスとは、マニュアルどおりの言葉遣いと動作だけで、心のこもっていないサービスである。

あなたもお客の立場になってみればすぐに納得できることだが、お客はそんなことはすぐに見抜いてしまう。そして、やっかいなことに、こういうお客を不快にするサービスは、新人よりもむしろ、ベテランの従業員がやりやすい。

たとえば、ウエイトレスがあるテーブルに料理を運んだとする。そのとき、近くのテーブルからそのウェイトレスに声がかかる。よくあるケースである。ところがこの場合は、料理を運んだテーブルのお客からもほとんど同時に、追加オーダーが入ってしまった。ここで、このウエイトレスはどう対応すればいいのだろうか。

この場合まず、自分が料理を運んだテーブルのお客に接客しているのだから、その追加オーダーを受け、その後、近くのテーブルのお客の要望に応える――ふつうはそう考えるだろうし、それで間違いない。問題は、後回しにしたお客への対応の仕方である。

A社のマニュアルには、次のように書いてある。
―― こういう場合にはまず、いま接客しているお客に、「少々お待ち下さい」とことわってから、離れたテーブルのお客に対して軽く頭を下げ、「中しわけありません。すぐにまいりますから、しばらくお待ち下さい」と挨拶し、それから元のお客に向き直り、「お待たせいたしました。ご注文をおうかがいいたします」とオーダーをとり、その後、待たせているお客のテーブルに向かう――

ところが、往々にして、ベテランのウエイトレスは、後回しにするお客に対しての対応が通りいっぺんになりがちなのだ。マニュアルどおりの動作と言葉を使ってはいるのだが、その表情や言葉の響きに「申しわけありません」という気持ちがこもっていないのである。

とくにピーク時でお客がたて込んでいるときなど、まるで立て板に水のように「処理」できることを、得意がっているとしかいいようのないウエイトレスも珍しくない。

これが、愛客精神の欠如なのである。入社した当初は、「お客さま第一」と教えられたかもしれない。ところが、お店の方針や空気がマニュアル(作業指示)

順守に傾いているために、いつの間にかそれを忘れてしまう。最悪の場合は、手際よくお客をあしらえることを誇りに思うようにさえなってしまう。それが仕事の習熟度の証しだと、勘違いしてしまうのである。

多くのマニュアルに欠けているもの

A社のマニュアルは間違ってはいなかったが、不備な点があった。後回しにするお客への対応の仕方として、言葉と動作だけでなく、(本当に申しわけありませんと思い、その思いを言葉や動作に込めること)というただし書きをつけるべきなのだ。

このただし書きは、たんにそうすることによってウェイトレスが笑顔で対応するようになる、というだけの意味ではない。一つひとつの接客の場面で、いちいちこういう「心」の部分を付け加えておくことで、ウェイトレス自身が、自分で接客には何が大切なのかということを考えるようになるのである。つまり、自分がサービス業に従事していることの意味、そして喜びを理解するようになるのである。

この理解がない限り、どんなベテランであろうとサービス業のプロとはいえないし、大局的に見れば、そういう従業員の存在は、お店のマイナスでしかないということなのだ。

もちろん、新人にしても同じである。マニュアルが「作業指示書」でしかない限り、お客に「いい加減にしてよ―」と思われる。お仕着せ人形のオンパレードになってしまう。

マニュアルをベースに個々の担当者の人間的な良さをプラスする

サービスマニュアルというのは、調理マニュアルや清掃マニュアルと根本的に性格が違う。ほかのマニュアルはそれだけマスターすれば一応問題ないが、サービスマニュアルはそうはいかない。

もしも、サービス担当者が全員、サービスのプロであるとすれば、基本になるお店のコンセプトを全員で確認し合ったうえで、個々のサービス担当者が、どうしたらお客に喜ばれるかを考えるべきであろう。それが本来のあり方である。しかし、現実はプロ集団ではないのだから、サービス担当者として身につけておくべき、最低限度のサービスを教えなければならない。

それを誰にでもわかりやすく理解させるための教科書が、マニュアルなのである。マニュアルをベースに、個々のサービス担当者の人間的な良さを肉づけしてはじめて、質の高いサービスを実現することができる。マニュアルは、それをマスターすることでようやく、サービス担当者としてお客と接する資格を与えられる、ひとつの教材にすぎない。

つまり、従業員一人ひとりのハートをうまく引き出し、活かしてあげるためのもので、本当のサービスの向上はここから始まるのである。したがって、店長はマニュアル習得を目的化してはならない。なお、接客サービスに向いているのは必ずしも、器用で物覚えのいい人とは限らない。お客の心を動かすのは、接客の心と温かいハートの持ち主なのである。

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マニュアルの必要性と限界[マニュアルの一歩先へ]

だからマニュアルが必要なのだが

飲食店の仕事でもっとも大切なことは、自店のスタンダードをつねに維持することである。いつ、どのお客に対しても、一定のレベルの商品、サービス、雰囲気を提供しなければならない。これを仕事の均質化という。

口でいうのは簡単だが、これを従業員全員に徹底させることはむずかしい。だからどうしても、マニュアルが必要になる。では、なぜ仕事の均質化がそれほどむずかしいのだろうか。

第一の理由は、人それぞれ「常識」が違うからである。従業員教育の項でも述べたが、この違いは非常に大きい。自店のスタンダードといっても、観念的な表現では、全員がそれを具体的にかつ同一に理解することは、ほとんど不可能である。

たとえば、お客に感謝の気持ちをもて、ということなら誰でも理解できる。しかし、その感謝の気持ちをお客に対してどう表現すればいいのかとなると、これは難間である。「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」がちゃんといえればいいというものではないからだ。

オーダーのとり方ひとつ、テーブルヘの皿の置き方ひとつでも、お客は従業員の態度に敏感なものだ。かりに従業員に悪気がなくても、お客は内心、「なんだ、この店は!」とあきれているかもしれない。また、同じ接客用語でも、いい方や顔の表情、身体の姿勢でその印象はずいぶんと変わってくる。

とくに教えもしないのに、生き生きした表情で明るく、ハキハキと接客できる人もいれば、蚊の鳴くような声でしかモノをいえない人もいる。心の中で感謝していても、それがはっきりとした言葉や態度に表現されていなければ、お客には伝わらない。そして、飲食店では、お客に伝わらなければその感謝の気持ちはないも同然なのである。

調理の場面で考えると、もっとわかりやすい。たとえば、飲食業では分量を「一人前」で表現する。しかし、一人前という分量ほど曖昧な単位はない。極端な話、人によっては三倍近い違いが出るのだ。そこまででなくても、熟練した職人以外の目分量ほど当てにならないものはない。だから、各材料の使用分量をあらかじめ決めておく必要があるのだ。作業工程についても同じことである。

マニュアルのジレンマ

人それぞれ常識が違えば、当然やり方が違う。それなら、そのやり方を統一すればいい。そればマニュアルの考え方だが、しかしマニュアルはベストではない。この点をとくに強調しておきたい。

たしかに、自店のスタンダードを維持するためにはマニュアルは必要なのだが、マニュアルはたんに、従業員をロボットのように操るためのものではないということだ。ここを勘違いしてマニュアルに頼り切っていると、お店のスタンダードは必ず低下していくことになる。この点がサービス業のむずかしいところである。

お店の側が従業員はロボットでいいと考えていれば、従業員も当然そう解釈し、自然とロボット化していく。つまり、お客への感謝の気持ちが次第に薄れていく。

接客用語や接客動作は上達しても、お客にとっては不快なサービスになってしまう。たんなる形だけのサービスであることがミエミエだからだ。

マニュアルのこのジレンマに陥っているお店は実際、数え切れないほど多い。あなたもうすうす、そのことに気づいているはずであるcどうしてこういうことになるのかというと、 一般にマニュアルが、たんなる作業指示書でしかないからである。

もちろん、従業員といってもいろいろな人がいる。しかも、その大半は、パート・アルバイトであり、まったくの新人教育から始めなければならない。また、急速に店舗展開しているチェーン店では、チェーンとしての形を維持するため、従業員のロボット化が不可欠という事情がある。だから、従業員の足りない分は店長が補っていけばいい、という考え方になるわけだが、この考え方は非常に危険である。

マニュアルの一歩先を行くのに店長のなすべきこと

それなら何が特効薬でもあるのかというと、そんなものはない。従業員は、自店で育てていくしかないのである。

ただし育てるとは、ロボット化することではない。当店では、どういうふうに仕事をすればいいのか、そのやり方を示してあげることは絶対に必要だ。しかし、それで教育が終わるわけではない。教育はそこから始まるのである。

それでなくても忙しいのに、パート・アルバイトにまでそんなことをしていられるか、という店長や経営者がよくいる。しかし、それはすでに自店のスタンダードの維持というお客に対する義務を放棄しているか、最初からスタンダードの実体がなかったか、そのどちらかである。

マニュアルはあくまで、従業員の教育・訓練・しつけの一ツール(訓練ツール)でしかない。このことを正しく認識し、実践してはじめて、マニュアルの本来の意味が生きてくるのである。

従業員の教育・訓練。しつけについての考え方は、会社によってさまざまだろう。店長の独断で会社の方針を変えるわけにはいかないことは、いうまでもない。

しかしそれでも、かりに会社の考え方に欠陥があったとしても、現場の店長次第で、かなりその欠陥を補うことができる。

逆にいえば、どんなに会社の方針が立派なものであっても、従業員を預かる店長がきちんと理解していなければその方針は何にもならないのだ。

マニュアルのとらえ方は、店長の従業員教育の出発点である。

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これが飲食店業務の正しい教え方だ[責任とOJT]

徹底した訓練は、この仕事の喜びを知る近道でもある

従業員がヤル気をもって、気持ちよく働けるようにするためにはどうしたらいいのか。何よりもまず、従業員全員がきちんと仕事ができることが、その条件になる。飲食店では、お客に尽くし喜んでもらうことで、はじめて働く喜びを味わうことができる。お客の喜びがそのまま自分の喜びとなることこそが、飲食業ならではの醍醐味なのである。

ところが、きちんとした教育・訓練を受けていないと、お客にうまく対応できない。場合によってはみなの前で、お客に怒られることもあるだろう。また、同僚や先輩たちの態度も冷たくなる。これではたまったものではない。

一般に、飲食店は従業員の定着率が低いといわれるが、その要因は仕事そのものにあるのではない。仕事の教え方が悪いか、あるいはほとんど教育・訓練らしいことをしていないからである。

たとえば、人手不足のため、店長が現場の先頭に立っているお店は多い。そして、忙しいからとつい、従業員の教育・訓練がおろそかになる。だから次々と従業員が辞めていくのに、店長はいっこうに気づかないし、人手不足はどんどん深刻化していく。典型的な悪循環の構図である。

また、あまり徹底して教えると、すぐに辞めてしまうのではないかと臆病になっている店長もいるが、それは逆である。

もちろん徹底といっても程度(パワーハラスメント・モラルハラスメントなど)の問題だが、部下に対する愛情をもって教えるのであれば、訓練が苦痛だといって辞める人はいない。なぜなら、入念に訓練されることで、早くこの仕事の喜びを知ることができるからだ。そうなれば自然と、与えられた目標を達成しようという意欲が湧いてくる。

店長の体験をありのまま部下に伝えろ

誰でも最初は、仕事に対する興味をもっている。そして、自分の力を試してみたい、自分を活かしたいという意欲をもっている。その芽を摘み取ってしまわないようにすることが大切だ。

とくに、社員と違ってパート・アルバイトにとって、生活の中心はお店ではない。主婦には家庭があり、学生には学校や友人とのつき合いやサークル活動という生活の中心がある。お店での時間は、彼らにとって生活の中のほんの一部分にしかすぎない。だからこそ、その限られた時間を充実したものにしてあげなくてはならないのだ。

私自身、飲食店ではじめて働いたのは、大学一年生のときのピザハウスでのアルバイトだった。もちろん学生のアルバイトだから、動機も何もない。ほんの軽い気持ちだった。ところが、ウエイターの仕事を始めてまもなくの頃、自分がひどく感動していることに気づいたのである。仕事はピザやコーヒーを運んでいるだけなのだが、お客はとても喜んでくれる。私も一所懸命に働いていたが、なかには「君がいるからこの店に来るんだよ」といってくれるお客もいた。お店の外ではなんの個人的関係もない人たちが、お店の中ではまるで友人や後輩のような、親しい態度で接してくれる。そのことに感動したのである。

お客に喜ばれるということがどれほど素晴らしいことか。あなたの体験にもしっかりと刻み込まれているはずだ。あなたには、その体験を部下に伝える義務がある。それが、みなが楽しく気持ちよく働ける職場をつくっていく。お店の伝統とは、そのようにつくられていくものなのである。

うまくいく仕事の教え方、四つのステップ

一般に、効果的な仕事の教え方として、次の四つのステップが知られている。
①心構えをさせる
②仕事の内容を教示する
③実地に訓練する
④反復指導する

このうち、①と② のステップは、教育としつけの段階である(第2章6項を参照)。ふつうはこの二つのステップを飛ばして、いきなり③の実地訓練から入ってしまうようだが、結果的には優秀な部下が育ちにくい。奉仕業としての飲食業の本質やその社会での存在意義が理解できていないと、お客に喜ばれることの喜びがわかりにくいからだ。

次の「マニュアル」の項で詳しく述べるが、心のこもらないロボットのようなサービスでは、ある意味で作業効率は上がっても必ず客数の低下を招くことになる。また、①、②の段階では、すぐに覚えられるという自信をつけさせることが大切である。

正しい順序で教える

さて、店長がおこなう教育。訓練の中心になるのは、いうまでもなく、毎日やる仕事を教えること、つまり③、④である。これをOJT 、または職場内訓練と呼ぶ。

ここで人事なことは、まず正しい順序で教えることだ。たとえば、オーダーをとる訓練をするには、新人はメニュー名と価格を正確に暗記していて、かつ基本の接客用語があるていど身についていなければならない。しがたって、その前にメニュー表を渡して覚えさせ、接客用語がスムーズに口をついて出るようになるまで発声練習をしておく必要がある。

また、OJTで大事なことは、その人に合った教え方をするということだ。個人差を無視して画一的なやり方で教えても、効果はあがらない。そして、よくできたときはほめ、間違いがあれば、その場ですぐに指摘して直させること。ここで大事なことは、温かな態度で接することと、本人に納得させることだ。とくに、間違いがあったときは、どんな小さなことでも率直に指摘すること。基本動作訓練の段階で完璧に身についていないと、応用段階に進んでも自分のものにならないからだ。

また、本人が納得できないときに、遠慮なく質問できるような雰囲気をつくっておくことも大切である。徹底した訓練とは、何も厳しい顔をしてスパルタ式に教えることではない。仕事の習得という点についてのみ、妥協のない厳しさをもって訓練することなのだ。

部下の習得レベルは個別に観察、把握する

飲食店の基本サービスとは、それほどむずかしい仕事ではない。接客基本用語も「いらっしゃいませ」「かしこまりました」「ありがとうございました」など、せいぜい7〜8種類くらいのものである。ところが、実際には多くのお店で、それすらも満足にできていない。なぜなのか。

実は、むずかしいからできないのではなく、あまりにやさしいことのためにかえってできないのである。

むずかしい作業なら、頭を使って神経を集中させるから、間違いなくやれる。しかし、飲食店の基本サービスはいちいち頭で考えてやるものではない。お客が見えた瞬間にお辞儀をしているというように、ひとつの反射動作にまでなっていなければならない。だから訓練が必要なのだし、訓練にはある程度の時間もかかる。

だが、いったん身についてしまうと、あとは無意識のうちにできるようになるものだ。これが新人に与えるべき第一目標である。人間は明確な目標を与えられれば、それに向かって努力する。そして、ひとつの目標の達成感を味わうと、次の目標に向かって自ら行動するようになる。

そこで、④の反復指導が大切になる。反射動作にまで習慣化させるということだ。お辞儀の角度ひとつでも、つねに決められた角度になるように仕上げていかねばならない。

そのためには、店長はつねに部下を観察していなければならない。監視するのではなく、見守ってあげるという姿勢が大切だ。部下は店長が見守っていてくれる、という安心感があるからこそ、生き生きと働くことができるのである。この意味でも、店長は現場の先頭に立ってはいけないのだ。

仕事の習得スピードは一人ひとり違う。しかし、スピードの遅い人でも、多少時間をかけさえすれば、一定のレベルには達する。店長は、個々の部下の習得段階を個別に把握して、それぞれが完璧に育つのをじっと待っていなければならない。我慢することを知っている店長は、必ず人望を集める。お店のレベルを上げる原動力は、部下の店長に対する信頼感なのである。

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労務管理は飲食業の落とし穴

部下がつくりだすサービスと雰囲気

売上高を安定させるための店長の第一条件は、仕事のできる部下を一人でも多くもつことである。店長がどんなに優秀でも、優秀な部下がいない限り、売上高を安定させることはできない。これが、店長は部下を通して仕事をする、ということの意味である。素晴らしい商品もサービスも、そして雰囲気も、飲食店の売り物もすべて、部下=従業員がつくりだすものだ。

ところが、このことを理解していない店長が少なくないから、労務管理のいい加減なお店が多い。というよりも、労務管理の大切さがわかっていないのだ。

これは、長いあいだ飲食業界がどっぷりと漬かってきた業界の体質によるところが大きい。いわゆる「水商売」の旧弊である。

もちろん、この20〜30年ほどの間に、大手飲食業を中心に、経営の近代化がはかられてきている。最近になってようやく、中小規模の飲食店でも水商売から脱却し、ビジネスとしてとらえるところが増えてきた。そのため、一見、いまの飲食業界はすっかり、かつての経営体質から脱却したかのように見える。

「いい人材がいない」とこばす前に

しかし残念ながら、それはごく一部の現象であって、まだまだ業界に浸透したとはいえないのが現状である。

その証拠に、繁盛店が行き詰まる最大の理由は、いまもって「人」の問題だ。サービス担当の質がガタリと落ちたり、調理担当者が変わったことで商品の品質が低下して、客離れを起こしている。

そういうお店の店長は決まって、「いい人材がいない」、「できる人材が集まらない」とこぼす。たしかに、人手不足はこの業界の慢性的な体質だし、人材確保がむずかしいことは事実だ。しかし、その現状を嘆く前に、店長、そして会社のトップは真剣に考えなければならないことがある。それは「人」の問題こそが、水商売体質の旧弊の最たるものだということだ。

たとえば、パート・アルバイトの問題。ここ数年の間にパート・アルバイトの時給はぐんと高くなった。時給には地域ごとの相場があるから、相場が上昇すれば、高い時給を払わぎるを得ない。そこで、時給がアップするたびに、必要な粗利益高を得るために値上げをおこなう。しかし、値上げはいうまでもなく客数減少の最大の要因である。あるいは、人件費が高くなったからと、ピーク時の人員まで削減してしまう店長がいるが、これも結局は売上げを落とす(機会損失)。

かつて、パート・アルバイトの時給は格段に安かった。飲食業は、その安い賃金のおかげで、かろうじて経営を維持していたのである。そして、当時はお客の飲食店に対する価値観も、いまほどシビアではなかった。だから「寄せ集め」的な従業員でも、経営は成り立っていた。ところが、お客のほうはどんどんシビアになっていくのに、飲食業界の体質はほとんど変わっていない。いまの飲食店が抱える「人」の問題は、実はかつて安易にパート労働力に依存していたツケにほかならないのである。

「いい人材」は自店で育成するつもりで

よく「アルバイトなのだから、まあ無断欠動しないでそこそこ働いてくれればいい」という店長がいるが、とんでもない間違いである。そして、こういうダメな店長に限って、「いい人材がいない」という。

飲食業は人が相手のビジネスである。そして同時に、人の手をかけなければ成り立たないビジネスでもある。そのため、生産性は他産業に比べてきわめて低い。ということは、飲食業においては、労務管理は最大のテーマでなければならないのであるが、現実にはその認識ははなはだ薄い。労務管理が飲食業の大きな落とし穴になっているのは、そのためである。

「いい人材」とは、たまたま来てくれる人のことではない。自店で育成すべきものである。これについては第2章6項で述べたのでここでは省くが、とにかく優秀な部下を育成しない限り、適正な人件費コントロールはできないし、サービスの質も向上しない。何より売上高を確保できない。

店長は自店のQSCのスタンダードを維持する責任をもつが、そのスタンダードとは、従業員の仕事の結果である。つまり、労務管理とは、自店のスタンダード管理ということなのだ。

従業員にヤル気を起こさせ、気持ちよく働くことによってその人の能力を引き出していくためには、公平なルールづくりが不可欠である。そのルールが就業規則だ。

就業規則というと、従業員を縛りつける規則と考えがちだが、そういうマイナス思考からは「いい人材」は生まれない。そうではなく、誰もが同じ条件で働くことができ、さらに本人の努力や能力に応じて報酬も高くなることを従業員に約束するためのものなのだ。

繰り返すが、サービス業である飲食業は、人間関係によって左右される。就業規則の内容は会社によって違うが、その位置づけは店長によって大きく変わってくる。つまり、飲食店の労務管理は、店長の教育・訓練技術と人格に負うところが大きいのである。 

以下は実際に過去に店舗で配布された規則要項を元にした例文となりますが、人口分布や価値観の変化に伴い企業と従業員のあり方も同様に大きな変化をしております。あくまでも一例と捉えて頂き、時代の世相を反映した適切な要項を策定する必要があります

従業員規則要項
「規則」は、私たちのファミリーの一員として、あなたが自信と誇りをもって仕事に励めるよう、楽しく働きやすい職場にするために作りました。あなたの行動が、他の大勢の人々に影響を及ぼすことを忘れずにチームワークに徹してください。

-私たちの信条-
※各店舗に応じた信条を記載

1 入店に関する事項
(イ)入店に際しては、履歴書に写真を貼り提出してください。また免許、資格証明書(写)、そのほか会社(店)が求めた書類を提出してください。
(ロ )入店時には、本人の身元確認のうえ、本籍、年齢に間違いのない場合は採用となります。ただし、 3ヵ月間は見習い期間とし、見習い期間内または見習い期間終了後、従業員として勤務させることを不適当と認めたときは採用を取り消すことがあります。
(ハ)入店時には、誓約保証書を提出してください。

2 退店に関する事項
(イ)退店届けは、退店日の15日以前に文書にて提出してください。なお、届け後15日間の実働を必要とします。
(ロ )無届け退店者または雇用取り消し者への給与は、基本給のみの日割計算にて支払われます。
(ハ)見習い期間内での退店の場合は、(□ )と同じ扱いになります。

3 遵守事項(違反者は、即時雇用見直しとなります)
(イ)勤務時間中は禁酒・禁煙を守ってください。
(ロ)商品・備品の盗用、横領のあつた場合は、弁済のうえ即時退店となります。(ハ)お客さま(男女問わず)および異性従業員間の交際は認められません。
(二)社会通念からの逸脱やコンプライアンス違反などの理由なくして上司の指示に従わない者は即時退店となります(理由なく職場を放棄した者も同じです)。
(ホ)お客さまより苦情が持ち込まれ、これが営業上重大な影響を及ぼすと認められた場合には、雇用は取り消されます。
(へ)従業員間およびお客さまとの金品の貸僣は禁じられています。
(卜)外出はすべて許可を必要とします(買い物など)。
(チ)お客さまとのトラブルは、理由の如何にかかわらず最高25%の減給、または退点処分となります。
(り)マニュアルの遵守

4 病状に関する事項
(イ)伝染病を患い接客し、お客さま、または従業員に多大な影響を及ぼす場合は雇用の見直しを行います。
(ロ)病気を患い、これが長期10日以上に及ぶ場合は一時休職となります。

5 欠勤に関する事項
(イ)欠勤届けは、遅くとも1週間前までに提出してください。
(ロ)電話での欠勤届けは原則として認められません。やむを得ず欠勤する場合は、自分の勤務時間以前に会社(店)まで必ず電話をください。
(ハ)土曜日、祝日の前日、日祭日、25~ 月末の/AN体、欠勤は原則として認められません(病気診断書提出の場合には例外)。ただし、やむを得ないと会社(店)が認めた場合には公体となります。
(二)見習い期間内に無断欠勤のあつた場合は雇用を見直します。
(ホ)無断欠勤が3日連続に及ぶ場合は、無届け退店として扱われます。
(へ)皆勤手当は、欠勤1日するとなくなり、無断欠勤は罰金として日給相当額が差し引かれます。

6 遅刻に関する事項
(イ)30分単位で時給の10割増の罰金が差し引かれます。ただし、前日までに会社(店)の承諾を得ている場合はこれに該当しません。
(ロ)遅刻が3回に達すると精勤手当がなくなります。

7 早退に関する事項
(イ)早退した時間分だけ時給計算にて差し引かねます。
(ロ )早退が勤務時間の2分の1以上になる場合は、その日は欠動扱いとなります。

8 休憩時間および休日に関する事項
(イ)休憩は1日1時間与えられます(食事時間は別)。
(ロ)休日は月4回とし、ロ―テーション表に従つてください。そのほか会社の定めた日。

9 体暇に関する事項
(イ)半年間継続勤務した者には、継続または分割して10日の有給休暇を与えます。
(ロ)1年半以上継続勤務した者には、 1年を超えることに、 1日を加算した有給休暇を与え、20日を限度とします。

10 特別体暇に関する事項
結婚、出産休暇、葬祭休暇などは、会社、従業員の状況を考慮の上
都度協議をし策定をいたします。

11 昇給に関する事項
(イ)昇給は年*回、*におこないます。
(ロ )昇給の算定期間は、*月26日より翌年*月25日までとします。
(ハ)昇給審査基準は、算定期間における職務能力の伸長、発揮度および勤務成績、勤務態度とします。
(二)昇給審査基準により次に挙げる者を除きます。
① 8月21日以後に採用された者。
② 昇給算定期間における所定就業日数の3分の1以上就業しなかつた者。
③ 昇給時において休職中の者。

12 給料に関する事項
(イ)給料は毎月、月末メ切りの翌月5日支払いとなります。
(ロ )給料の内訳は、基本給50%、営業手当50%です。
(ハ)給料の間違いは、その場で明細書を付け、提出してください。
平成 年 月 日
説明者
入店日
◎従業員規則要項を確認しました。
氏 名 (印)

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飲食メニューABC分析の手法と有効活用法

メニューひとつひとつの貢献度を把握する

メニューを構成する商品は次の四つに分類される。

①売れて、しかも儲かる商品
②売れるが、あまり儲からない商品
③あまり売れないが、儲かる商品
④売れも儲かりもしない商品

メニューとは、分析してみるとまさに玉石混交であることがわかる。とくにメニュー数の多いお店では、この混交によって材料や調理手段にかなりのムダが出ている可能性が高い。したがって、商品一品一品についての貢献度を正確に把握することで、材料や調理の合理性を高めていく必要がある。このための分析手法を「ABC分析」という。

メニュー分析としてのABC分析

ABC分析とは、たくさんの管理対象物のなかから重点的に管理すべきものを探し出す計数手法で、対象をA、B、Cの3つのランクに分けて検討することから、この名称がつけられている。製造業や小売業でも盛んに用いられている手法である。

メニュー分析の手法としてのABC分析には、
①出食数ABC分析=消費者支持度別ABC分析
②売上高ABC分析=売上高貢献度別ABC分析
③粗利益高ABC分析=粗利益高貢献度別ABC分析
の三つがあるが、分析の手順はいずれも簡単である。

たとえば、①出食数ABC分析を例にとると、
(1)月間の品目別売行き個数を集計する
(2)売れ行き個数の多い順に、品目を一覧表にする
(3)全体の個数を100として、各品目別の構成比を算出する
(4)さらに、その構成比を順次累計する
(5)累計構成比が上位から七五%までの品目をAランク、95%までをBランク、それ以下をCランクとする

以上である。②売上高ABC分析の場合は売れ行き個数に単価を掛け、③粗利益高ABC分析の場合は、売上高に粗利益率を掛けて算出するだけだ。下記表24では、これらのうちの売L高ABC分析の例を示した。

75%、95%という区切り方をするのは、社会現象では一般に、少数のものの貢献度が大部分を占め、多数の貢献度は小さいという法則に基づいている。事例の表では、16品目中わずか3品目だけで売上げ全体の75%を占めているが、一般に、Aランクに入るのは、全商品のうちせいぜい10〜20%程度である。つまり、ごくひと握りのエリート商品(Aランク商品)を重点管理するだけで、全売上高の75%が管理可能になるということだ。

バレート図で分析結果を示す

図3は、売上高ABC分析のデータをパレート図にあらわしたものである。イタリアの社会学者パレートが開発した構成比累積図表なので、パレート図と呼ばれている。要するに、各商品の構成比累計値を線で結んだもので、各商品の売上高構成比を順に積み上げていくと、パレート曲線になる。

パレート図にすると、いっそうメニュー分析がしやすい。もしもすべての商品が均等の働きをしているとすると、累計点を結ぶ線は直線になってしまうが、実際にはそういうことはほとんど起こり得ない。そして、パレート曲線のふくらみ具合が大きければ大きいほど、強力なエリート商品をもっていることを示す。

事例でいえば、上位3品目(d,f,a)の売れ行きがこれほど突出してなく、Bランクの2品目(e,c,g)に人気が分散していれば、パレート曲線はもっとなだらかなカープを描くわけである。

Aランクに属する商品の品目数が少なければ少ないほど、お店の主カメニューが明確であることを意味するから、材料の仕入れ、ロス管理、調理手順のムダの排除について、さらに高効率化を図れることになる。

ABC分析の真の目的

ところで、実際に分析表を作成してみるとわかるが、売上高ABC分析、出食数ABC分析、粗利益高ABC分析の結果導き出される貢献度(順位)は、多少食い違ってくる。

たとえば、売上高では貢献度が一位なのに、粗利益高貢献度では二位に甘んじ、売上高では三位だった商品がトップに踊り出たりする。これは、商品の原価率が.品目ごとに違うために起こる現象だ。かりに全商品の原価率が一律=粗利益率が一律であるなら、売上高ABC分析の結果と粗利益高ABC分析の結果はぴたりと一致する。

しかし、全商品の原価率を一律にすることなど、常識では考えられない。原価率を先に決めて価格をその率とコストで決める方法を原価主義というが、これではとうていお客に支持される価格設定などできないからだ。

また、ABC分析の目的を誤解しているケースがあるので、注意を促しておきたい。いちばんの問題は、Cランク商品の扱いである。たとえば、その商品があることでファミリー客を呼べるとか、老人客にも喜ばれるなどのケースは少なくない。居酒屋でも子どもが好むメニューが必要な場合もある。子どもと老人への対応は、今後さらにその重要性が高まってくる。たんにレパートリーをひけらかしたいがために、あるいは無政策の結果としてメニュー表に載せているのなら、Cランクとわかった時点で切り捨てなければならない。しかし、立地条件や客層をも勘案した臨機応変さは絶対に必要である。

商品にはそれぞれ、役割分担がある。

粗利益率の高さで儲ける高収益型商品もあれば、粗利益率は低いが価格が高いため金額としては儲かる高収入型商品もある。また、売れ筋商品にお客を誘導するためのおとり商品や引き立て商品は、順位が下でも品揃えの必要がある商品だ。通年さばける商品もあれば、季節性による波の大きいものもある。したがって、あまりに分析の結果に従順すぎると、かえってメニュー政策がぼやけてしまうことになってしまう。

ABC分析の第一の目的は、売れているAランク商品がよりたくさん売れるように、管理の重点を置くことにある。

飲食店の売上伝票の整理と現金管理(レジ)はこうする

正確な売上げ報告

店長は経営者の代行者として、人とお金と店舗(資産)を預かっている責任者である。したがって、店長にはさまざまな報告義務があるわけだが、もっとも大切なのは、正確な売上報告だ。お店の運営にはさまざまな要素と場面があるが、その結果はすべて、数字であらわれる。売上高と経費である。この二つの数字を正しく計上しなければ、正確な収支はつかめない。

このうち経響の管理についてはすでに述べたので、ここでは「売上げ」の管理と報告、そして現金管理についてまとめておく。

売上げ報告でいちばん大事な点とは何か

最初に理解しておかなければならないのは、「売上高」と「売上金」は違うということ。本来は同じでなければならないものだが、実際にはしばしばギャップが発生する。1日の営業が終わり、レジを集計してみたらレジの合計額(あるべき売上高)と売上げの現金とに差が出てしまった、というケースである。

現金とのギャップは、10円単位のこともあれば、1,000円を超えることもあるだろうが、いずれにしろ、二つの売上高が出てしまったことになる。金額が小さい場合はうやむやに処理されがちのようだが、これではいけない。問題はギャップの金額の大小ではなく、ギャップが発生すること自体にあるのだ。

では、この場合、店長はどう対処すべきなのか。いうまでもなく「あるべき売上高」を正規の売上高として計上しなければならない。「あるべき売上高」とは、レジに打ち込まれた売上伝票一枚一枚の合計額である。最近は会社への売上報告書にレジの記録用紙を添付するシステムを採用する会社が増えているが、それは「売上高」を厳密にとらえることで、計数管理の精度を高めるためなのだ。

つまり、売上げ報告でいちばん大事なことは、「あるべき売上高」と「実際の現金残高」とに差が出た場合は、そのありのままを報告するということである。

わずかな金額ミスは何人もの信用を失う

「あるべき売上高」と「実際の現金残高」の食い違いは、不正がおこなわれていないとすれば、お客に料金を過少請求したか過大請求したかのどちらかである。

過少請求した場合はお店がその分の損失を被ることになり、過大請求した場合はお客に大変な迷惑をかけ、お店の信用をいちじるしく損ねることになる。

最近は欧米人のように請求金額を細かくチェックして、間違っていれば指摘するというお客も増えているが、たいていのお客はよほどの金額の間違いでなければ、気がついても知らぬふりをするものだ。そして、三度と来店してくれない。また、「あのお店は会計がいい加減だ」という噂もすぐに広まる。わずかな額のミスが元で、何人ものお客を失うことになってしまう。

これは別に大袈裟な話ではない。お金にかかわる信用とはそれほどシビアなものなのである。

また、現金残高が不足していることが続いたり、その金額が1,000円を超えるようなまとまったものだったりすると、たんにお店の損失というだけにとどまらず、レジ担当者の責任問題を引き起こすし、従業員同士が疑心暗鬼にかられたりしてチームワークにヒビが入る恐れもある。

レジ担当マニュアル作成のポイント

現金の過不足が発生する原因はいろいろ考えられるが、ほとんどは単純なミスである。

たとえば、5,000円札を預かったのに1万円札と勘違いして釣り銭を渡してしまったり、レジを打ち間違えるといったミスで、気をつけていれば未然に防げるはずである。しかしそこが人間のやること、ピークタイムで忙しかったりすると、ついうっかり、のミスが出る。オーダーエントリーシステムがレジと連動しているお店ならレジの打ち間違いは起こらないが、現金の授受に関してはつねにミスの可能性がある。

これを防ぐには、レジ担当マニュアルをつくって、従業員に徹底させるしかない。

マニュアルのポイントは、次のようになる。
①お客が売上伝票と現金を一緒に出しても、まず伝票だけを受け取る。
②伝票の金額をレジに打ち込んだあとに現金を受け取る。
③ 1,000円以上の紙幣はすぐにレジに入れず、会計後にレジに入れる。
④金額にかかわらず、お客からの預かり額は必ず国頭で確認する。
⑤釣り銭の一円玉や五円玉をお客が受け取らなかった場合、会計後すぐにレジ横の募金箱などに入れる。

一方、レジの打ち間違いをした場合だが、すぐにミスに気づけば、現金授受のトラブルは防ぐことができる。しかし、間違えて発行したレシートとレジ登録の訂正という管理上の問題は残る。

この場合の処理は、
① レジを打ち直して、正しいレシートをお客に渡す。
②打ち間違ったレシートには、担当者のサインと伝票ナンバーを書き入れておく。
③間違って発行してしまったレシートはその売上伝票と合わせてホチキスで止め、レジ内に保管する。
④店長または店長代行者は、レジの集計前にミスの確認をし、レジ登録の訂正をおこなう。打ち間違えたレシートには承認のサインをする。

不正予防と店長の姿勢

一日の業務終了後、売上伝票を整理するのは店長の義務である。その日的は、毎日の売上高を確認すると同時に、来客数や来客組数、来客時間、各商品の出食数などを把握することだが、もうひとつ、不正防止という意味もある。

不正にもいろいろな手国があるが、たとえば、レジの訂正キーをレジ内などに保管していると、このキーを使ってある伝票の金額をマイナス処理し、現金を浮かすことができる。この場合、レジの登録金額と現金残高が合っているから、レジを集計するだけでは不正を発見することはできない。不正にしろミスにしろ、正しい記録は売上伝票だということを忘れないことが、予防の第一歩なのである。

なお、現金の過不足が出たとき、ポケットマネーで不足分を補填したり、過剰だった場合は次に不足したときのためにと「貯金」したりする店長がいるが、絶対にしてはならない。こうした取り扱いのルーズさは、必ず従業員に伝染し、不正の温床をつくる元になる。

管理はシビアにし、一方で、人間がやる以上は現金の過不足はあるていど起り得るのだ、ということを部下にわからせることが、不正を防ぎ、チームワークを乱さないためのポイントである。

小口現金管理と店舗運営

お店の現金管理にはもうひとつ、小□現金管理がある。たとえば文房具とか電球ひとつとかちょっとした買い物をするときや、近所のコンビニエンスストアでコピーを取るときなどのお金の扱い方である。

残念ながら、飲食店は従来、この管理がズサンだった。金額も大したことがないからとレジの現金から平気で使ってしまう、というのがぶつうだった。小規模店ばかりではない。あるていど店長の計数管理を重視している大型店でも、現金はレジから出して、営業日報で報告すれば事足れり、としているケースがいまだに少なくない。なかには、レジの現金で食材の支払いまでしてしまっているケースすらある。しかし、こういうやり方はすぐにも改めなければならない。

こういうやり方をしているお店は、買い物をしたら領収証があるのだし、計算が合えば問題はない、と同を揃える。たしかに、それはそのとおりである。しかし、これを続けていると、従業員の現金管理に対する認識は必ず甘くなる。本来レジとは、厳正に管理されていなければならないのだ。その現金をルーズに流用するのでは、現金残高の過不足に対しても認識が薄れてしまうことになる。店長の経費管理意識については、いうまでもないだろう。

こういうルーズさはまた、不正を招く要因にもなる。小口現金はレジとは別に、毎月金額を定めて管理する必要がある。その使用に当たっては当然、店長の月次報告のひとつとして会社に報告すべきである(下記表参考)

現金の管理は、店舗運営上もっとも重要なテーマである。あらかじめ厳重なルールを定めておくべきだ。

発注システムのつくり方と納品伝票の管理

正確な発注量を生み出す条件

正確な発注量は、次の式で求められる。
発注量=各食材の標準在庫量-現在庫量

逆にいえば、正確な現在庫量がつかめなければ、正確な発注量を決めることはできないわけだ。ということは、棚卸しは毎月一回ではなく、毎週、いや毎日でも実施する必要があることになる。

とはいえ、業種業態によっては、ひと口に食材といっても300〜400品目にものぼる。いかに棚卸しのやり方をシステム化しても、これを毎日実施するのにはやはり無理があるだろう。それに、生鮮品を別にすれば、毎日棚卸しをしなくても、発注や在庫品の品質管理に支障の出ない食材もけっこうある。そのへんは臨機応変に判断すればいい。

ただし、生鮮品を頻繁に発注しなくてはならない食材については、毎日実施すべきである。標準在庫量=適正在庫量が決まっていて、棚卸しのやりやすい仕組みもつくってあれば、それほど大変な作業ではない。

調理長とよく話し合い、飲食店として当たり前の仕事だという認識をもちたい。これができない限り、発注量はいい加減な数字ということになる。

ふつういわれる適正な在庫量とは

ところで、棚卸しと発注業務に関して必ず問題になるのが、標準在庫量である。

適正な在庫量とは、
①品切れを起こさない
②過剰な在庫量にならない
③材料の品質が劣化しない
以上二つの条件を満たす量である。

具体的には、お店ごとの売上高予測(メニュー出数予測)と業者からの配送スケジュール(配送回数)によって決まってくるが、一般には、週一回の配送の食材については、一週間の使用量プラス三〜四日分の在庫量を適正としている。日配(毎日配送)や週に2〜3回配送の場合で、出数予測×120%前後である。

ところが、実際にはかなりの過剰在庫を抱えているお店が多い。そして、そういうお店は必ずといっていいほど、毎月の材料費率の変動が激しい。なぜか。

品切れが怖いからである。そしてこの傾向は、単独店に多くあらわれる。チェーン店の場合は、出数予測を上回って品切れを起こす恐れがあれば、エリアマネージャーを通して近くのお店から食材を回してもらうことができるが、単独店はそうはいかない。そのため、どうしても多めの在庫になってしまうのだ。

店長みずから在庫チェックを心がけよ

いま、適正な在庫量の条件として三つ挙げたが、そのうち①と②とはつねに裏腹の関係にある。このコントロールの自信がないと、品切れを避けようと在庫が多めになり、それが材料の品質低下や腐敗などのロスを発生させてしまう。さらに、在庫量が多ければ、棚卸しが面倒になるから、ますます大ぎっぱな発注になる、という悪循環に陥りやすいのだ。

たしかに、品切れでオーダーストップをすることは、店長にとって大きな恥である。何よりもお客に対する裏切り行為である。しかし、正確な在庫管理ができないことは、もっと問題だ。品切れによる機会損失を防ぐことができても、正確な材料費コントロールができないのでは、店長失格といわれても仕方がない。

適正在庫量のコントロールは、正確な棚卸しを確実に実行し、必要最低額の食材のみを発注する習慣を身につけていくことで、必ず実現できる。それにはまず、店長みずからが在庫のチェックをすることだ。部下任せにするから、不安になってしまうのである。

自動発注システムは万能ではない

ところで、最近は大手チェーンや大手外食企業を中心に、POSレジを導入するところが増えている。POSを使えば、すべてのメニューの出数がたちどころにわかるから、店長の出数予測はぐんと楽になるし、発注システムにも活用できる。実際すでに、大手ファミリーレストラン・チェーンなどでは、この自動発注システムを稼働させているところもある。

しかし、自動発注システムは決して万能ではない、ということを注意しておきたい。なぜなら、このシステムが正しく稼働するには、正確な棚卸しと正確なデータのインプット、そして、1品当たりの正確な食材使用量が前提になるからである。

機械に依存すると人間は必ず、心にスキができる。それでなくても、人間であれば必ずミスやチェック洩れが出る。そして、そのミスをもっとも的確にカバーできるのは、人間の判断力なのである。

また、自動発注システムに依存してしまうと、店長の食材の状態の確認が手薄になりやすいし、食材の先入れ先出しの鉄則が崩れる元にもなりやすい。どんなに便利なシステムが出てきても、最後は人間の判断力がモノをいうのだということを、銘記しておきたい。

経費の「週間管理手法」が注目されている。

さて、飲食店でもっとも繁雑になりやすい書類は、食材を中心とする納品伝票である。備品数の伝票はそれほどでもないが、食材の伝票は1カ月でかなりの数になる。この納品伝票の整理も、店長にとって重要な業務のひとつである。

第1に、納品伝票に書かれた金額は、業者に支払う金額である。

請求書は一カ月分とかまとめて送られてくるが、その金額は、毎回お店に納品した金額を積み上げたものである。つまり、納品されるごとに、注文どおりの量と単価であるかどうかをチェックしない限り、請求書の内容について検討することはできない。意外と見過ごされているので、注意を促したい。

見過ごしている証拠に、納品時に、発注書に基づいた検品を実施しているお店は、驚くほど少ないのだ。業者に悪意はなくても、ミスは十分に起こり得る。発注書と納品書を見比べて数字が合っていたとしても、それでOKとはならないのである。

第2に、経費の計上の問題がある。一般に、お店の月次収支において、売上高はその月の分が計上されるが、経費については支払いが発生した月に計上される。つまり、当該月の売上高に対して、別の月の経費が計上されていることになる。たとえば、材料費についても、肉と野菜とでは支払い月がズレたりするのがぶつうである。しかしこれでは、店長は正確な月次収支がつかめない。

これを改善して、売上高に対する正確な経費率を毎月つかむためには、納品伝票を毎日集計することが基本になる。それを週単位で売上高と対比させるべきで

ある。こうすれば、週単位で問題点を発見できるから、早期に効果的な解決策を打つことができる。従来の月次損益は、売上高の予算管理とお店の中期的なバイオリズムを見るには適しているが、短期的な数字の把握には問題がある。たとえば、材料費に大きなブレが生じていたとする。それを一カ月後(一般に月次損益がまとまるのは翌月一〇日ごろ)に発見しても、その間の損失を防ぐことはできない。経費の週間管理手法が話題になっているのは、そのためである。

ともかく、基本は正確な棚卸しと発注、そして検品と納品伝票の整理である。これなくして正確なコストコントロールはない。

正確な棚卸しの必要性とそのポイント

食材の品質管理は店長の業務

一般に店長は、ホールでのサービス業務にばかり気をとられて、食材の管理への感心が薄れがちだが、これではいけない。店長は会社から、人、モノ、お金を預かってお店を運営している。このうち、人についてはいいとしても、モノとお金とは何なのか。食材(酒などの商品も含む)と店舗設計である。つまり、来客数に応じた人と食材を確保し、店舗がつねに快適な場所であるように管理することは、店長の責任である。

調理関係の仕事は調理長の責任と思われがちだが、そうではない。調理技術については調理長の管轄だが、食材の品質管理は店長の責任業務である。ふつう実際の管理業務は調理長がおこなうが、便宜上の役割分担をしているだけなのだ。なぜなら、売上高と利益の責任は、調理長ではなく店長が負うからである。

また、つい忘れがちなことなのであえて注意を促しておくが、食材はモノであると同時にお金でもある。

お金が形を変えただけのことなのだ。たとえばニンジン1本を腐らせて捨てるということは、その代金を捨てるに等しいのである。

正確な粗利益を把握するためには

利益=売上高-材料費-(人件費+諸経費)=粗利益-(人件費+諸経費)
飲食店の計数管理はすべて、この等式から出発するといっても過言ではない。たとえば、労働生産性や労働分配率がマネジメントできわめて重要な数値であることはすでに述べたが、これらの数値は粗利益率から算出される。つまり、
粗利益=売上高-材料費
この数値が正確でなければ、そこから導き出される労働生産性も労働分配率も正確に把握できないことになる。元になる数字の信頼性が低いのでは、計数管理の意味は半減してしまう。

正確な粗利益をつかむには、正確な材料費を計上しなければならない。そのために必要な作業が、食材の棚卸しなのである。正確な材料費は、次の算式によって計算される。

前月棚卸高+前月受入高-当月棚卸高=当月使用料
この式のうち、当月売上高(仕入高)は納品伝票を集計すればわかる。問題は、調理場や倉庫、ホールの一部などにある在庫である。この在庫高は棚卸しによってしか把握できないのだ。棚卸しが必要なのは、このためである。

よく、仕入高をそのまま材料費としているお店を見かけるが、これではまったく計数管理になっていない.もちろん、仕入高が材料費と等しいことは理屈上はありえる。前月未在庫量と当月末在庫量が等しい(前月棚卸高=当月棚卸高)場合だが、現実にはそんなことはない。

棚卸しをいい加減にやる店はない

別項でも述べたが、材料費、人件費(社員の固定給与を除く)、そして水道光熱費などの諸経費は、売上高に応じて増減する経費=変動費であり、店長の管理可能経費である。しかも、材料費は金額が大きいばかりでなく、商品のクオリティを決定する要因である。

その意味でも、店長は正確な材料費の把握が不可欠なのだが、現実には、棚卸しをろくにやらないお店や、やったとしてもいい加減に済ませているお店が多い。

理由は多忙だからとか人手が足りないからとかいったところだが、私にいわせれば、店長が棚卸しの意義を理解していないためにほかならない。

いいかえれば、正確な材料費をつかむことの重要性をまったく認識していないためである。ちょっとキツイいい方かもしれないが、そういういい方をしなければならないほど大切なことなのだ、ということをわかってほしい。

棚卸しが正確に実施されていない理由としては、
①在庫量自体が多すぎる
②材料のストック場所が一定していない
③材料の梱包単位がバラバラで、数量を把握しにくい

などが挙げられる。要するに、棚卸しをしようとしても時間がかかりすぎるcそれで面倒になってやめてしまうのだ。

棚卸しをやりやすくするポイントとは

正確な棚卸しを実施するにはまず、棚卸しをしやすくするシステムをつくっておく必要がある。1時間も2間もかかるからつい億劫になる。しかし、30分もかからずにおこなえば、人手不足を国にするほどの作業ではなくなるのである。

棚卸しをやりやすくするポイントを挙げておこう。

①適正な標準在庫量を決めておく
②棚卸表と原料単価表を準備しておく
③材料のストック場所を整理整頓する
④材料の配列の順序と棚卸表に記入する順序を一致させる(主な材料については、棚卸表にあらかじめ印刷しておく)
⑤材料の梱包の単位を統一にする
⑥液状の食材(ソース、スープ類) の計算方法を決めておく

また、棚卸し実施に当たっての注意点は、

①ストック場所(冷凍庫、冷蔵庫、倉庫、ホールなど)によって分担する
②棚卸し担当者は、カウント担当者と記入者の2名1組とする。
③棚卸表は冷凍品、冷蔵品、缶詰など、部門別、場所別に用意する
④カウント担当者と記入者は、品名、量を互いに復唱しながら集計し、記入する

つねに材料の品質チェックを心がけよ

棚卸しの目的は実は、正確な材料費の把握だけではない。食材の品質チェックと正確な発注も、棚卸しの重要な目的である。

在庫量といっても、材料に生鮮品が多い飲食店では、物販点の比ではない。しかし、生鮮品が多いだけに、品傷みしやすいため、在庫ロスが出やすい。そして、料理は材料の品質が命である。料理の質は、調理技術だけで決まるのではない。材料のよさを引き出し、生かすのが調理技術である。

材料の品質を落とさないようにするには、つねに過剰な在庫量を持たないようにすることと、先入れ先出しの鉄則を守ること。この二点を励行するしかない。

先入れ先出しの鉄則とは、古いものから順に使用するということだ。なんだ、そんなこと当たり前じゃないかと思うかもしれないが、意外と守られていない。

先入れ先出しは、材料の納品時から守られていなければ、とうてい実現できない。納品時に、冷凍庫や冷蔵庫の中のものをいったん外に出して、新しい材料を奥のほうから並べ、古い材料は手前に並べるようにしなければ、ロスはどんどん拡大していく。

しかし、この習慣は簡単なことのようでいて、なかなか身につかない。これを実現するのは、なぜ正確な棚卸しが必要かということが、店長以下、しっかりと理解したときである。

そして、つねに材料の品質チェックをおこなっていれば、店長は自然と材料の質を見抜く力をつけていくことになる。それによって、さらに、材料の品質管理をシビアにおこなうことができるようになる。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。