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第5章 居抜き店舗を甦らせるお店づくり

最大の効果を上げる、飲食店開店宣伝の方法

看板の大切さの項でも指摘したが、飲食店が確実に成功するための最大の条件は、ひとりでも多くの人たちに自店の存在を知ってもらうことである。お店があることを知らせなければ、お客様になってもらえない。したがって、とにかく目立つための努力をしなければならないわけで、看板はそのためにある。

ただし、飲食業はビジネスだ。多くの人たちに知ってもらうまで、じっと待っているというわけにはいかない。オープンと同時に、自店の存在を広く知ってもらう必要がある。つまり、いきなり目立つためのアピールが不可欠ということだ。その戦術が開店宣伝なのである。

オープンは、飲食店の成功のカギを握っているといっても過言ではない。オープンがうまくいけばそのまま軌道に乗る確率が高いが、オープンで失敗するとなかなか取り返しがつかないからだ。

もちろん、将来のすべてがオープンで決まるということではない。しかし、オープンの失敗でお客様に植えつけてしまったマイナスイメージを帳消しにするには、かなりの時間と努力が必要になる。

しかも、居抜き店舗を活用してオープンする場合は、前のお店のイメージというハンデイがある。そのイメージを払拭して新しいお店が誕生したということをアピールするためにも、開店宣伝は非常に重要な意味を持つ。

では、オープンを最大限に盛り上げて、できるだけ多くの人たちに自店の存在をしっかりと覚えてもらうにはどうすればいいのか。そして、覚えてもらうだけでなく、実際に利用してもらうにはどうすればいいのか。実は、肝心なのはここである。派手に開店宣伝をすればいいのかという、必ずしもそうではない。いくら大々的な宣伝をかけても、盛り上がるのはお店の側だけということにもなりかねない。

たしかに、新店がオープンしたということは伝わるだろう。しかし、いまは飲食店のオープンなど珍しくない時代だ。外食に慣れているお客様は、オープンしたというニュースだけでは乗ってこないと考えるべきである。

できるだけ多くの人たちに確実に利用してもらうためには、それなりの開店サービスを提供しなければならない。お客様からすれば、オープンしたのは知っていても、まだ海のものとも山のものともわからない新しいお店なのだ。それを確実に足を運ばせるためには、それなりの見返りが必要ということになる。それが開店サービスだ。

そこで、町で配るティッシュやチラシに何らかのサービス券を付けるのが一般的になっている。しかし、中途半端なサービス内容では、いくらたくさんのティッシュを配ってみても、大した効果は期待できないと知るべきだ。

たとえば、普通のサービス内容はワンドリンク付きとか、せいぜい一割引き程度のものだが、これではたして、お客様のハートをくすぐることができるだろうか。トクすると思わせられるだろうか。はっきりいって甘い。

開店サービスとはたんなる御祝儀ではない。お客様の自店を知ってもらい、末長くお付き合いしてもらうための試食の場でもある。なにしろ飲食店は、どんなにいいお店でも利用してもらわないことには、そのよさは伝わらないのである。

それを考えれば、せせこましい形ばかりのサービスであっていいはずがない。本気で成功したいのなら、50パーセントOFFとか5枚つづりのサービス券にしてさらに別の特典も付けるなど、思い切ったサービス内容にして当然だろう。

それができないのは結局、開店サービスなど名ばかりで、通常営業の利益を出したいという本音があるからにほかならない。要するに、できるだけ損をしたくないというわけだが、昔から「損して得取れ」という言葉があるように、ある程度の投資をしなければ大きなリターンは望めない。それがビジネスというものだ。

サービス期間の長さについても一考を要する。ふつう、サービス券の有効期間はせいぜい3日間とか1週間程度に設定されているが、これではあまりに短すぎる。その期間中にたまたま来られなかった人は、オープンに駆けつけてくれたありがたいお客様と見なさないというのだろうか。また、サービス期間中は一度だけの来店でけっこうです、という意思表示ともとられてしまいかねない。私なら最低でも2週間、できれば1カ月は有効期間にする。その間は開業経費と割り切って、ひたすら自店のアピールに徹するのである。

大切な飲食店オープン前トレーニング

優良フランチヤイズチエーンでは、加盟店のオープン前に必ず、オーナー(店長)とスタツフのトレーニングを実施している。なぜか。フランチヤイズチエーンのオーナーはほとんどが素人であり、飲食店経営の経験があつたとしても、自チエーンのやり方については初心者だからである。当然、スタッフも素人だ。

初心者・素人の集団に、いきなり加盟店の運営を任せたらどうなるのか。結果は火を見るよりも明らかだろう。しかも、その加盟店が失敗するだけでは収まらない。たつた一店がお客様に迷惑をかけただけで、チェーン全体のイメージが損なわれてしまう。

もちろん、チエーン本部は加盟店オーナーが素人でも成功できるように導いていく責任を持っている。だからこそ、オープン前に徹底的なトレーニングを実施するわけだが、同時にそれは、チエーンのイメージを維持し、お客様の支持を拡大していくために絶対に必要な条件でもあるわけだ。

逆にいえば、このオープン前トレーニングを軽視していたりろくに実施しないチエーンは成長することができない。だから、優良チエーンとそうでないチエーンとに分かれてしまうのである。

さて、本題に入ろう。うちは個店なのだから、チエーンの事情など関係ないと早合点してはいけない。オープン前トレーニングの重要性は、個店でもチェーンでもまつたく変わらないのである。なぜなら、本来、飲食店はオープンしたその日からプロの集団でなければならないからだ。

飲食店の経営はビジネスである。つまり、お客様からお金をいただく。当たり前のことと思うだろうか。しかし、当たり前にお金をいただく以上は、オープンするその日から、その料金に見合った価値を提供しなければいけない。商品、サービス、雰囲気のすべてにおいて、お客様に満足してもらわなければならない。それができなければ、 一種のサギ行為といわれても文句はいえないのである。

もちろん、初めてオープンするお店に完全を求めるのには無理がある。多少のことはお客様も許してくれるかもしれない。

しかし、オープンまでにできるだけプロに近づける努力は絶対に必要なのだ。その努力をしているかどうかは必ずお客様に伝わるものだし、何か失敗したとしても許してもらえるのは、その場合だけである。

お客様を迎えても恥ずかしくない、お客様を裏切ることのないきちんとしたお店でスタートするからこそ、成功のチャンスがめぐってくる。さらにいえば、いつたん営業を始めてしまうと、毎日の業務の忙しさに追われて、訓練などなかなかできなくなる。最初が肝心なのである。

トレーニングは接客サービスと調理の両方で行うが、限られた期間で効果的に進めるには、同時進行がベストである。どうしてかというと、実際の営業ではその連携がもっとも大切になるからだ。十分なトレーニング期間を取れるのなら別だが、短期間の場合は実戦訓練がもっとも効果的である。

具体的な訓練については、とにかく基本を徹底的に叩き込むことだ。まず、接客サービスでいえば、トレーニングは発声訓練と動作訓練の二つに分けられる。「いらつしゃいませ」に始まる基本の接客用語とお辞儀の仕方、料理の運び方などを教えるわけだが、どちらも特別むずかしい仕事ではない。しかし、ここに落とし穴がある。

だれでもできそうな簡単な言葉と動作だが、ふだんの生活で使っている言葉や動作ではないということだ。だから、用語が自然と口をついて出るようになるには、あるいは感じのいいお辞儀ができるようになるには、それなりの慣れが必要だ。しかも、お店のやり方に従つてもらわなければならない。また、オーダー通しの訓練もしっかりとやっておかないと、オープン後のピーク時に必ずバンクしてしまう。

一方、調理のトレーニングではまず、安定した料理を標準時間内につくれるようにすることが第一の目標となる。料理の試作は材料費がかかるだけに、つい手抜きをしたがるお店が多い。しかし、商品がぶっつけ本番など、飲食店では絶対にあつてはならないことである。

さらに、サービススタッフにも試作した商品を食べさせ、ある程度の商品知識を持たせることも大切。自店の商品を説明できないようでは、お客様の信頼は得られない。

効果的な飲食店スタッフ募集の方法

スタッフの募集ではまず、 100パーセント確実な募集方法はないということを頭に置いておこう。なんとなく簡単に集まるという期待があるから、なかなか決まらないとイライラしたりする。スタッフ探しが大変なのは、どこのお店も同じである。かなり名前が通っているお店でも、しゅっちゅう募集広告を出しているケースがあるが、現実はそんなものなのだ。甘い期待はしないことである。

しかし、スタッフがいなければお客様を迎えることができない。 一般に、お店のオープン準備というと、店舗関係の準備ばかりに頭が行ってしまいがちだが、いくら店舗が完成しても、スタッフがいなければ話にならない。飲食店の付加価値は商品、サービス、雰囲気の総合力で決まるが、そのうち商品とサービスは通常、スタッフの助けがなければきちんと提供することができないのである。

そこで大切になるのが、スタッフ募集は早めにしておくということだ。オープン当日にスタッフ全員が一応の戦力になっているためには、最低でもオープン予定日の三〜五日前にはトレーニングを開始しなければならない。そこから逆算すれば、いつ頃から募集を始めなければならないのか、おのずと計算できるはずだ。ただし、 一回の募集で決まることもあれば、二回、三回と募集をかけなければならないこともあり得るということを忘れてはいけない。

しかし、効果のある募集の仕方というものはある。それは、どんなお店がどんな人を求めているかということを、明確にアピールするということだ。

たとえば、よく見かける募集広告は、店名と職種、勤務時間、時給などの給与、それに交通費支給の有無程度を書いたものだが、これを見て本当に働きたいと思う人がどれほどいるだろうか。似たような広告はほかにいくらでもあるわけだし、通勤が楽とか、自分の好きな繁華街にあるとか、応募の動機はせいぜいそんな程度でしかない。だから、応募してくる確率も低いし、採用できたとしても定着率が悪かったりする。

だから、募集広告には当店がどんなお店で、どんな人材を必要としているのかをわかりやすく表現する必要があるわけだ。応募する人たちも、働けるのならどんなお店でもいいとは思っていない。たとえば、同じウエートレスの仕事でも、できれば楽しく働きがいを持って働けるお店に勤めたいと思っているものだ。当たり前のことである。

一般に、飲食店の経営者は、そういった配慮が足りないことが多い。要するに、たんなる員数合わせの発想なのだ。そして、辞めたらまた募集すればいいとさえ考えている。だから、募集広告の内容も機械的になってしまうのである。効果的な募集をしたいのなら、ここのところをよく考えることである。

募集の媒体は求人専門誌や新聞、ミニコミ紙などが中心になるが、駅などの掲示板も利用してみる価値はある。また、店舗の内装工事期間中に、店頭に募集の張り紙を出しておくのもいい。後々のことを考えると、スタッフはできれば近所に住んでいる人がもっとも理想的だ。住まいが近所なら、別のスタッフが急病など場合に何かと無理も聞いてもらいやすいということがある。

ところで、スタッフは員数合わせの発想では集まらないといつたが、たんなる労働力ではないということは、しっかりと認識しておく必要がある。お店のコンセプトをつくるのはあなただが、そのコンセプトを実際に表現し、お客様の支持を取りつけていく力になるのは、ほかならぬスタッフなのだ。

その意味でも、どういう人なら自店のスタッフとしてやっていけるのか、募集する前にその条件を明確にしておかなければいけない。繰り返すが、どんな人に来てもらいたいのかがはっきりしているからこそ、面接時に客観的評価ができるのだ。そして、この人ならと判断したら、時給を多少高くしてでも確保すべきである。

なお、パート・アルバイトの場合は、未成年者はもちろんのこと、主婦のパートであっても、必ず家族の了解を取りつけておくこと。家族の承諾がなかったばかりに、つまらないトラブルに巻き込まれるということもあるから、注意が必要だ。

また、小さな個店では調理師を雇うことはあまりないと思うが、もしも雇うのであれば、そのキャリアだけで判断してはいけない。大切なのは自店の規模やメニュー内容に合う仕事をしてきた人かどうかということなのだ。また、これまで何店も職場を変わっている、つまり一店で長続きしていない人も注意したほうがいい。

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新規開店の食材業者選び方

飲食店の経験のない人にとつて、もっともやっかいなのが食材業者の選定だろう。まず、知人などの紹介でもなければツテもないというわけだ。

もちろん、飲食業の専門雑誌などを見れば広告は出ているし、電話帳でも探すことはできる。しかし、どの業者がいい業者なのかは広告などではわからない。

飲食店をオープンしようというほどの人なら、ひと口に食材といっても、品質や価格などさまざまだということくらいは知っているはずだが、自分で選ぶとなると、お客様として批評していた時とはわけが違う。いくらモノがよくても仕入れ値が高すぎたら利益は出ないし、利益を優先すればお客様は支持してくれない。長年営業しているお店でも、実はけっこう苦労しているのが食材の仕入れなのである。

しかし、飲食店は食材がなければお店を開けることができない。どこかで仕入れなければ話にならないのだ。とすれば、とりあえず当たりをつけてサンプルを取り寄せ、自分で比較検討してみるしかない。

ところで、食材といっても生鮮品もあれば加工品もある。また、生鮮品の中にも魚介や肉類、野菜類がある。そして、 一般に飲食店は、かなりの種類の食材を使用する。したがって、それらの食材をいちいち別の業者から仕入れているのでは収拾がつかないことになってしまう。また、業者によって得意な食材、不得手な食材もあるし、当然、品質や価格も違ってくる。

そこでお薦めするのが、自店の主要食材を決めて、その取引業者を探すことを優先する方法である。

主要食材はせいぜい二、三種類に絞り込む。そして、それを専門に扱っているか、あるいは主力商品として宣伝している業者を探して、相見積もりを取ってみるのだ。ただし、相見積もりは最低三社から取ること。そして、営業担当者とよく話をして、品物のことだけでなく、配達の条件もしっかりと確認することが大切だ。

この配達の条件は重要なのでとくに注意を促しておきたい。仕入れで大切なことは、何といっても品切れを起こさないことと、過剰な在庫を抱えないということだが、これらは業者の配達態勢に大きく左右されてしまうからである。

残りの食材については、最初は小売店で買ってもいいだろう。最初からすべての業者を決定する必要はないし、漸次、いい仕入れ先を探していけばいい。

業者との付き合いで大事なことは、無理な値引きを強要しないことである。業者も商売だ。利益にならない相手に誠意を持って付き合ってくれるはずがない。つまり、食材業者は飲食店のビジネスパートナーと考えるべきなのだ。食材の流通は素人が考えるほど単純なものではない。

だからこそ専門の業者が存在価値を認められているのである。自分だけ儲けようとしないこと。お互いに利益が出るようになれば、さらにいい食材、お得な食材、変わった食材も届けてくれるようになるものだ。

飲食店・営業時間と休日の決め方

最初にいっておきたいのは、営業時間とは本来、自店のコンセプトによって決めるものだということだ。そういってピンとこない人は、コンセプトと業態についての項をもう一度読んでほしい。

コンセプトとは、自店をどのように利用もらうのかという基本方針である。お店づくりでは、まず自店ではお客様にどのように過ごしてもらいたいのかを考え、商品、サービス、雰囲気を決定していく。

その提案が明確だからこそ、お客様の確実な支持を受けることができるのだ。業態とは、そのコンセプトを具体化するための考え方だが、その基本は、いつ、だれに、何を、いくらで、どのように売るのか、である。(以下記事5W2H参照)

これでわかるように、いつ売るか、つまり自店の営業時間とは、コンセプト・業態によって決定されるべきことである。ターゲットとする客層と利用動機、それに基づく商品構成や価格、提供方法、雰囲気づくり。それらトータルなコンセプトの組み立ての中でおのずと決まってくるものなのである。

一般に飲食店の営業時間は、業種業態によってほぼ同じ時間帯に設定されている。要するに経験則である。飲食ニーズはほとんどの場合、発生する時間帯がある程度の幅の中で決まっている。ということは、その時間帯以外の時間に営業していてもお客様を期待できず、ロスやムダが出てしまう。だから、確実そうなところで営業時間を決める。これが一般的な決め方である。

たしかに、この考え方にも一理ある。というより、たいていの場合はそれで大きな間違いは起こらないものだ。しかし、日につく間違いがなければ正解なのかというと、そうではない。営業時間外にもニーズが発生している場合がよくあるからだ。

たとえば、ランチタイムからデイナータイムまでの午後の時間帯をアイドルタイムという。食事のニーズが発生しない暇な時間帯だからということで、大半の飲食店はクローズしてしまう。しかし、この時間帯も通しの営業としてお店を閉じず、かなりのお客様を呼び込んでいる事例も少なくない。これは夜の営業でもいえることだ。他店が一一時に閉めてしまっても、さらに二時間、三時間遅くまで営業して成功しているお店もある。

このように、飲食ニーズと営業時間の関係は必ずしも固定的に決まつているものではない。もしもニーズがあるのに営業をやめてしまうのは、実にもつたいないことだ。

では、どう決めればいいのか。答えは立地特性を見極めるということだ。 一般論などこの際関係ない。

自店の立地では自店のユーズはどの時間帯にどのくらい発生するものなのか。それをきっちりと調査すればいいのである。立地調査は店舗物件を決める時に行うが、その時、ニーズということをしつかりと頭に置いておくことが大切だ。

立地調査では、どんな人たち(性別、年齢別など)がどの時間帯に集中するのかを探るわけだが、この時、自店のコンセプトという前提で調査すること。 一般に、店前通行量というと、通行する人数が問題にされがちだが、お客様にならない人たちがいくら通っても意味がない。

この調査の結果、もっとも効率のいい時間帯を営業時間として設定するが、ここで注意しなければならないのは閉店時間である。なぜなら、お客様は入ってすぐに閉店するようなお店は利用しないからだ。

だから、お客様の入りがある程度見込める時間帯に一時間プラスして設定するといい。なお、立地調査では、平日、土曜、休日の三日間は調査して、曜日ごとの傾向もつかんでおくことだ。

次に休日だが、これもまた立地特性によつて変わってくる。たとえば、オフイス街のように、土曜日の午後と休日はまつたく商売にならない立地もある。いずれにしろ、営業時間と同様に立地調査の結果で決めることになる。

ところで、商店街などの場合、水曜日とか土曜日にいっせいに休むという場合がある。週のうちもっともニーズが少ない日というのが理由で、これもまた経験則といえる。しかし、ニーズが少ない日といっても、 一店だけなら十分に成り立つということもある。それなら、あえて競合店の休日に営業してもいい。ここは柔軟に考えることだ。

ただ、営業時間にしろ休日にしろ、無理をするのはよくない。営業時間を決め、定休日として休む分にはお客様を裏切ることにはならないのだ。無理を続ければ必ず、どこかにヒズミが出る。それよりも、週に一日は休みを取ってリフレツシュし、いつも新鮮な気持ちで営業することだ。飲食業は長続きしてこそのビジネスなのである。

居抜き店舗施工後の引き渡し時注意点

まずいっておきたいのは、店舗引き渡し日と店舗の完成日は必ずしも同じではない、ということだ。

たしかに、 一応は工事終了日になっているが、問題なく仕上がっているかどうかは別だ。当然のことだが、もしも問題があったら完成とはいえない。

つまり、店舗引き渡し日とはあくまで、改装工事が予定通りに完成しているかどうかをチェックする日なのである。設計図、見積書、工程表と突き合わせながら、詳細にチェックする必要がある。

ところが、初めてオープンする人は、どうしてもこのチェックが甘くなる。ひと通り見て回って簡単にOKを出してしまうケースも少なくない。業者に遠慮してしまう人もいるようだが、そんなことではこの先が心もとない。また、嬉しさのあまり、つい点検がおろそかになってしまいがちなこともあるが、余計なトラブルを招かないためにも、引き渡し時には慎重なチェックを心がけたい。

チェックの方法は簡単だ。設計図や見積書と照合しながら、実際に使ってみる。それだけである。ただし、必ず業者を立ち会わせること。問題があった場合の証人になってもらうわけだ。業者不在のままチエックして問題点が出た場合、それだけムダな時間を費やすことになるし、やり直し工事が必要な場合は何かとトラブルの元になる。

重点チェック箇所は、動かす部分である。業者と一緒に、動かせるものはすべて動かしてみる。自動ドアなど電動のものはスイッチを入れて、何度も開け閉めしてみる。主導のドアや窓、戸棚、収納庫、カウンターの出入口など、戸の付いているものは、すべてきちんと開け閉めする。

こういう建て付けが肝心のものは、ちょつと試してみるだけではダメだ。ほんのわずかの引っ掛かりがあるだけでも、非常に使いづらいものになる。動きはスムーズか、何度も使ってみて確かめることが大切である。

水回りも重点チェック箇所である。もっとも多いトラブルは水漏れだが、これはただ水を流しただけでは気づきにくい。ある程度の時間、水を流しっ放しにして、水漏れがないかどうか、シンクの裏まで点検してみることだ。トイレを直した場合なども、ほんのわずかな水漏れが出る場合があるから、注意してチェックする。

また、空調関係もトラブルの多い箇所である。冷暖房の効き具合はもちろんのこと、排気工事をした場合は、千物でも用意しておいて実際に焼いて確かめてもいい。その他、壁紙などの仕上がり具合など、ひとつひとつていねいに点検していくが、昼間のチェツクで忘れがちなのが照明である。

問題があつた場合は、ただちに補修工事に取り掛かってもらう。そして、再度チエックを行い、それで問題がなければはじめて完成ということになる。最終的な工事代金の支払いもこの時にするといい。

居抜き店舗施工のチェックポイント

店舗の工事に入ったら、できるだけ現場に足を運ぶこと。これが施エチエックの鉄則である。要するが山ほどある。

しかし、居抜き店舗の工事の場合は、通常は一部改装の工事である。新店舗での工事でのような、大型機器類の配置や配管関係といった大掛かりな工事はほとんどないのがふつうだ。したがつて、工事期間も短い。時間を取るのが大変と思うかもしれないが、そんなことは言っていられない。工事の後で後悔しても遅いのである。

もちろん、現場に足繁く通ったからといつて、やるべきことがたくさんあるわけではない。工事が設計図、工程表通りに行われているかチェツクするといつても、素人の日で判断できることは限られている。それでもできるだけ顔を出すべきなのだ。

実は、現場に顔を出すことの最大の目的は、工事の人たちと親しくなることなのである。仕事の出来不出来というのは、人間関係が微妙に影響するものだ。好感を持っている人からの仕事なら力も入るが、逆の場合はどうしてもいい加減になりがちなのが人間である。これは、お金を払って依頼しているのだからなどといってもどうにもならない問題で、サービス業である飲食店でさえ、多かれ少なかれそういうことはある。

だから、まず工事の人たちと親しくなって、好感を持ってもらうことが大切なのだ。缶コーヒーやちょっとした菓子でも差し入れして、「ご苦労さま、よろしくお願いします」と声をかける。たったそれだけのことでも、彼らの持つ好感度は違ってくる。つまり、工事の仕上がり具合も変わってくるということだ。

また、工事期間中なら、多少の手直しがきくということも指摘しておきたい。業者と念入りに打ち合わせをしたうえでの設計でも、実際に形にしてみるとちょつと違うということがよくあるし、ひょんなことから変更したほうがいいと気がつくこともある。

たとえば、ベンチシートの下に収納庫をつくるとか、厨房に棚をつくるといった細かいことだが、これがあるとないとでは、お店の使い勝手は大きく変わる。棚の大きさを変えたほうが使いやすいとか、もっと大きな棚をつけられるという場合もあるだろう。初めての人は、設計図を見ただけではなかなかわかりにくいものだが、工事が進んでくると、細部まで具体的にとらえることができるようになる。

そういう時、築いてきた人間関係が生きてくる。多少の追加料金は請求されるかもしれないが、それは仕方がない。ちょつとした棚ひとつつくるだけなら、無料でやってくれることだってあるのだ。

なお、工事に入る前には、必ず店舗の隣近所への挨拶をしておくこと。たとえ小規模の工事でも、騒音やらホコリやらで何かと迷惑をかけるのだ。挨拶するのは当然である。地域密着という意味でも、近隣にマイナスの印象を与えてはならない。

最後に施工契約の雛形を公開させていただく。

居抜き店舗・設計施工業者の選び方

お店づくりでの設計施工業者選びの第一のポイントは、飲食店での実績のある業者にするということだ。建築設計士ならだれでも、お店の設計もやつてやれないことはないはずだ。しかし、やはり専門の設計士とそうでない設計士とでは、仕上がりが違う。どこが違うのかというと、飲食店としての機能性である。

たとえば、客席フロアの内装デザインだけなら、センスのいいインテリアデザイナーはいくらでもいる。しかし、客席フロアは、デザインがすぐれていればそれでいいというものではない。まず何より売上計画に基づく必要な席数を確保しなければならない。また、客席フロアはお客様にとって居心地のいいところでなければならないが、同時に、サービススタッフが効率的に動ける動線も確保しなければならない。

制約のあるスペースの中で、これら三つの要件を同時に満たすというのは、やはり慣れた設計士でなければむずかしいということになる。

施工業者も同様だ。飲食店の内外装工事は、 一般の住宅や物販店の工事とは微妙に違う。ちょつとした部分に装飾的なつくりがあったりするし、カウンターなどでもきれいに仕上げるにはやはり経験がものをいう。

そのため、飲食店の設計施工は専門の業者に依頼することになるわけだが、居抜き店舗での改装工事の場合は、もうひとつポイントが出てくる。それは、 一部改装でも誠意をもって取り組んでもらえるかどうかということだ。

長引く不景気のなかで、設計施工業者も経営が苦しくなっていることが多いから、さすがに一部改装だからイヤがるなどということはあまりないだろう。しかし、イヤがらないということと、好意的にやつてくれるということは同じではない。どんな小さな工事でも一生懸命にやってくれる業者もいれば、仕方がないから引き受けるといった調子で、適当に流してしまう業者もいる。大切なのは、その見極めである。

また、当然のことだが、誠意があるかどうかで工事代金も変わってくる。大きな工事なら値引きもするのに、小さな工事だと効率が悪いからと高めに吹っかけてくる業者もいるから、ここも注意が必要だ。

失敗しないためには、複数の業者に当たってみて、相見積りを取ることである。まず予算を正直に打ち明けて、その範囲内でできるだけ手を入れたいということを、じっくりと相談してみる。そして、この段階では自分の希望を率直に説明することだ。打ち合わせのなかで、希望してもできることとできないことが明らかになってくるし、代替案も浮かんでくるだろう。そのうえで、それぞれの業者に見積りを出しもらうのである。

なお、受注はしても他の下請け業者に丸投げしてしまうような業者や遠方の業者は避けたほうが無難だ。何か問題があった時に、すぐに対処してもらえないからである。

改装のポイント(6) -トイレ-

いま飲食業界でもっとも遅れているのがトイレの考え方である。ここ一〇年ほど、トイレの重要性に気づいて改善するケースはかなり増えてきてはいるが、それでも、まだまだである。とくに小規模の個店の場合、残念ながら大半のお店が、大いに問題ありといわなければならないというのが現状だ。

では何が問題なのかというと、清潔感に乏しいことだ。はっきりいつて「汚い」としかいいようのないお店も少なくない。そこそこ掃除はしているのだろうが、汚さが染みついてしまっているから、ちょつとやそっとのことではきれいにならない。長年営業しているお店だと、悪臭もひどいということになる。

どうしてこんなことになるのか。要するに、トイレなどお店の「付け足し」と思っているからだ。ないと不便だろうから用意してやっている。汚いトイレからは、そういう不遜な姿勢すら見えてくる。そして、だれがそう見るのかといえばお客様である。お客様に平気で悪い印象を与えているのである。

いまは家庭内のトイレもかなリレベルが高くなっている時代だ。しかも、時代の空気ははっきりと、「清潔感」を非常に大事にする方向に向かっている。かつては汚いトイレの代名詞だった駅のトイレですら改善が進んでいるのである。そんななかで、飲食店だけが時代に乗り遅れているわけだ。

しかt 一方で、時代の変化をしっかりと読み取っている飲食店は、「きれいなトイレ」からさらに一歩進んで「化粧室」という位置づけで取り組むようになっている。女性客は食事の前後にトイレを使うことが多いが、それは化粧直しの意味合いも濃い。とくに口元の気になる食後はそうだろう。そんな時、広くなくてもいいから落ち着いて化粧を整えることのできるスペースがあれば、喜ばれること間違いない。

ただ、居抜き店舗の場合、店内の大改装を行うわけにはいかないから、化粧室といっても、おのずと限界はある。それは確かだ。しかし、化粧室を別に取るスペースの余裕はなくても、トイレの改善ならできる。できるというより、しなければならない課題である。

客室フロアは、多少の汚れがあってもカバーすることができる。しかし、トイレの汚れだけはごまかすことができない。そして、お客様はトイレの清潔感に対して非常に敏感だ。これからの飲食店は、女性客にどれだけ支持されるかで成功が決まるが、とくに女性客にとっては、トイレはお店の評価の大きな比重を占める要素である。お座なりにしていいはずがない。

トイレの改装といっても、水回りの工事が伴わなければそれほど大きな投資にはならない。予算が足りなければ、客席フロアの内装工事を一部縮小してでもやるべきだ。それだけの価値がトイレにはある。

居抜き店舗改装のポイント(5) -客席ホール-

客席ホールはお客様の目に直接触れる部分である。したがって、居抜き店舗の場合は外観と同様に、「新しいお店」がオープンしたということを明確にアピールしなければならないわけだが、改装のポイントは次の二つである。

・できるだけお金をかけずにイメージチェンジする
・できるだけお金をかけずに居心地感をよくする

どちらのテーマも、できるだけお金をかけないということが大前提だが、これは言い替えれば、できるだけ内装業者に依頼しないで済ませるということになる。要するにアイデアの勝負ということだ。

まずイメージチェンジだが、思い切って店内の色(カラー)を全面的に変えるという方法がある。たとえば、奥に長い四角形の店舗で、入日から奥に向かってカギ型のオープンキツチンのカウンターになっていたとしよう。床は板張りで、壁と天丼は明るいベージュ系である。

そこで、店内の構造は変えずに、床、壁、天丼をすべて真っ黒のペンキで塗つてしまい、カウンターの天板の交換だけを業者に依頼するというわけだ。ペンキを塗っても、照明の照度が低い業態なら、多少の塗リムラやデコボコなどはデザインのひとつに見えてしまうものだ。

壁紙を張り替えたり、天丼に和紙を張ったりするのもひとつの方法だが、カーテンの色を変えるなど、店内のポイントとなる部分の色使いを変えるだけでも、インパクトは持てるということを指摘しておきたい。

一方、居心地感ということではまず、イスやテーブルをそのまま流用すべきかどうかという判断があるが、同時に、客席レイアウトの見直しも大切になる。

本来、客席レイアウトでもっとも重要なことは、必要な席数を確保することだ。必要というのは、売上計画を実現するために必要な席数という意味である。なにしろ、飲食店の売上高は「客単価×客数」で決まるのだ。

しかし、席数の確保にばかり目が行ってしまうと、肝心の居心地感のよさがおろそかになってしまう。イスやテーブルを詰め込んでいたら、お客様にとっては狭苦しいだけで居心地感どころではなくなってしまう。

また、店内の形や規模によっては、客席がサービスの動線を邪魔して、非常に使いにくいホールになってしまうことも多い。といって、席数を減らせば、客数も制約される。つまり、席数の確保と居心地感の確保という二つのテーマのどの辺で折り合いをつけるかが、客席レイアウトの基本になるわけだ。

ただし、席数はただ多く取ればいいというものではない。客席は実際に稼働してはじめて意味を持つ。お客様が座ってくれない客席は、実質的には客席ではないのである。

お客様に利用されない客席を「死に席」と呼ぶ。無理して四〇席を確保しても、 一〇席が死んでいたら実質的には三〇席と同じことだ。しかも、最初から三〇席でレイアウトした場合に比べて、居心地感ははるかに劣る。

大事なのはここである。お客様の立場に立って「生きた」席をできるだけ確保するという視点が不可欠なわけだ。前のお店の客席レイアウトでは席数が多すぎるのなら、新たに居心地感を考えたレイアウトに変更して席数を削る必要がある。店内の形状によっては、店内中央などに大テーブルを置くのも効果的だ。

また、カウンターの天板が古くて傷が目立つようなら張り替えることになるが、その場合はカウンターの下にバツグなどが置ける棚をつくること。これをしないから、イスが荷物置き場になってしまい、「死に席」が増えるのである。カウンターではイスとイスの間の距離も大事なポイントで、あまりくっつきすぎているとお客様が座りたがらない。

なお、少しでも内装業者に依頼するのであれば、壁際や窓などに、花瓶などを置けるスペースをつくつてもらうといい。工事としては簡単なものだが、花や小物を飾るのは効果的なイメージチェンジの方法である。

そのほか、アンティークの家具とか変わった置き物を飾る、布や和紙などでアート的な雰囲気づくりをするなど、アイデア次第でやり方はたくさんある。ヒントは自宅の装飾である。同じ家でも、ちょっとしたことで雰囲気はかなり変わるというのは、だれでも経験しているはずだ。自分のセンスの発表の場というくらいの気持ちを持つことだ。

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著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。