• +03-5436-8908
  • info@egg-recruit.com

居抜き物件知識/居抜き店舗経営の教科書

居抜き店舗施工のチェックポイント

店舗の工事に入ったら、できるだけ現場に足を運ぶこと。これが施エチエックの鉄則である。要するが山ほどある。

しかし、居抜き店舗の工事の場合は、通常は一部改装の工事である。新店舗での工事でのような、大型機器類の配置や配管関係といった大掛かりな工事はほとんどないのがふつうだ。したがつて、工事期間も短い。時間を取るのが大変と思うかもしれないが、そんなことは言っていられない。工事の後で後悔しても遅いのである。

もちろん、現場に足繁く通ったからといつて、やるべきことがたくさんあるわけではない。工事が設計図、工程表通りに行われているかチェツクするといつても、素人の日で判断できることは限られている。それでもできるだけ顔を出すべきなのだ。

実は、現場に顔を出すことの最大の目的は、工事の人たちと親しくなることなのである。仕事の出来不出来というのは、人間関係が微妙に影響するものだ。好感を持っている人からの仕事なら力も入るが、逆の場合はどうしてもいい加減になりがちなのが人間である。これは、お金を払って依頼しているのだからなどといってもどうにもならない問題で、サービス業である飲食店でさえ、多かれ少なかれそういうことはある。

だから、まず工事の人たちと親しくなって、好感を持ってもらうことが大切なのだ。缶コーヒーやちょっとした菓子でも差し入れして、「ご苦労さま、よろしくお願いします」と声をかける。たったそれだけのことでも、彼らの持つ好感度は違ってくる。つまり、工事の仕上がり具合も変わってくるということだ。

また、工事期間中なら、多少の手直しがきくということも指摘しておきたい。業者と念入りに打ち合わせをしたうえでの設計でも、実際に形にしてみるとちょつと違うということがよくあるし、ひょんなことから変更したほうがいいと気がつくこともある。

たとえば、ベンチシートの下に収納庫をつくるとか、厨房に棚をつくるといった細かいことだが、これがあるとないとでは、お店の使い勝手は大きく変わる。棚の大きさを変えたほうが使いやすいとか、もっと大きな棚をつけられるという場合もあるだろう。初めての人は、設計図を見ただけではなかなかわかりにくいものだが、工事が進んでくると、細部まで具体的にとらえることができるようになる。

そういう時、築いてきた人間関係が生きてくる。多少の追加料金は請求されるかもしれないが、それは仕方がない。ちょつとした棚ひとつつくるだけなら、無料でやってくれることだってあるのだ。

なお、工事に入る前には、必ず店舗の隣近所への挨拶をしておくこと。たとえ小規模の工事でも、騒音やらホコリやらで何かと迷惑をかけるのだ。挨拶するのは当然である。地域密着という意味でも、近隣にマイナスの印象を与えてはならない。

最後に施工契約の雛形を公開させていただく。

居抜き店舗・設計施工業者の選び方

お店づくりでの設計施工業者選びの第一のポイントは、飲食店での実績のある業者にするということだ。建築設計士ならだれでも、お店の設計もやつてやれないことはないはずだ。しかし、やはり専門の設計士とそうでない設計士とでは、仕上がりが違う。どこが違うのかというと、飲食店としての機能性である。

たとえば、客席フロアの内装デザインだけなら、センスのいいインテリアデザイナーはいくらでもいる。しかし、客席フロアは、デザインがすぐれていればそれでいいというものではない。まず何より売上計画に基づく必要な席数を確保しなければならない。また、客席フロアはお客様にとって居心地のいいところでなければならないが、同時に、サービススタッフが効率的に動ける動線も確保しなければならない。

制約のあるスペースの中で、これら三つの要件を同時に満たすというのは、やはり慣れた設計士でなければむずかしいということになる。

施工業者も同様だ。飲食店の内外装工事は、 一般の住宅や物販店の工事とは微妙に違う。ちょつとした部分に装飾的なつくりがあったりするし、カウンターなどでもきれいに仕上げるにはやはり経験がものをいう。

そのため、飲食店の設計施工は専門の業者に依頼することになるわけだが、居抜き店舗での改装工事の場合は、もうひとつポイントが出てくる。それは、 一部改装でも誠意をもって取り組んでもらえるかどうかということだ。

長引く不景気のなかで、設計施工業者も経営が苦しくなっていることが多いから、さすがに一部改装だからイヤがるなどということはあまりないだろう。しかし、イヤがらないということと、好意的にやつてくれるということは同じではない。どんな小さな工事でも一生懸命にやってくれる業者もいれば、仕方がないから引き受けるといった調子で、適当に流してしまう業者もいる。大切なのは、その見極めである。

また、当然のことだが、誠意があるかどうかで工事代金も変わってくる。大きな工事なら値引きもするのに、小さな工事だと効率が悪いからと高めに吹っかけてくる業者もいるから、ここも注意が必要だ。

失敗しないためには、複数の業者に当たってみて、相見積りを取ることである。まず予算を正直に打ち明けて、その範囲内でできるだけ手を入れたいということを、じっくりと相談してみる。そして、この段階では自分の希望を率直に説明することだ。打ち合わせのなかで、希望してもできることとできないことが明らかになってくるし、代替案も浮かんでくるだろう。そのうえで、それぞれの業者に見積りを出しもらうのである。

なお、受注はしても他の下請け業者に丸投げしてしまうような業者や遠方の業者は避けたほうが無難だ。何か問題があった時に、すぐに対処してもらえないからである。

改装のポイント(6) -トイレ-

いま飲食業界でもっとも遅れているのがトイレの考え方である。ここ一〇年ほど、トイレの重要性に気づいて改善するケースはかなり増えてきてはいるが、それでも、まだまだである。とくに小規模の個店の場合、残念ながら大半のお店が、大いに問題ありといわなければならないというのが現状だ。

では何が問題なのかというと、清潔感に乏しいことだ。はっきりいつて「汚い」としかいいようのないお店も少なくない。そこそこ掃除はしているのだろうが、汚さが染みついてしまっているから、ちょつとやそっとのことではきれいにならない。長年営業しているお店だと、悪臭もひどいということになる。

どうしてこんなことになるのか。要するに、トイレなどお店の「付け足し」と思っているからだ。ないと不便だろうから用意してやっている。汚いトイレからは、そういう不遜な姿勢すら見えてくる。そして、だれがそう見るのかといえばお客様である。お客様に平気で悪い印象を与えているのである。

いまは家庭内のトイレもかなリレベルが高くなっている時代だ。しかも、時代の空気ははっきりと、「清潔感」を非常に大事にする方向に向かっている。かつては汚いトイレの代名詞だった駅のトイレですら改善が進んでいるのである。そんななかで、飲食店だけが時代に乗り遅れているわけだ。

しかt 一方で、時代の変化をしっかりと読み取っている飲食店は、「きれいなトイレ」からさらに一歩進んで「化粧室」という位置づけで取り組むようになっている。女性客は食事の前後にトイレを使うことが多いが、それは化粧直しの意味合いも濃い。とくに口元の気になる食後はそうだろう。そんな時、広くなくてもいいから落ち着いて化粧を整えることのできるスペースがあれば、喜ばれること間違いない。

ただ、居抜き店舗の場合、店内の大改装を行うわけにはいかないから、化粧室といっても、おのずと限界はある。それは確かだ。しかし、化粧室を別に取るスペースの余裕はなくても、トイレの改善ならできる。できるというより、しなければならない課題である。

客室フロアは、多少の汚れがあってもカバーすることができる。しかし、トイレの汚れだけはごまかすことができない。そして、お客様はトイレの清潔感に対して非常に敏感だ。これからの飲食店は、女性客にどれだけ支持されるかで成功が決まるが、とくに女性客にとっては、トイレはお店の評価の大きな比重を占める要素である。お座なりにしていいはずがない。

トイレの改装といっても、水回りの工事が伴わなければそれほど大きな投資にはならない。予算が足りなければ、客席フロアの内装工事を一部縮小してでもやるべきだ。それだけの価値がトイレにはある。

居抜き店舗改装のポイント(5) -客席ホール-

客席ホールはお客様の目に直接触れる部分である。したがって、居抜き店舗の場合は外観と同様に、「新しいお店」がオープンしたということを明確にアピールしなければならないわけだが、改装のポイントは次の二つである。

・できるだけお金をかけずにイメージチェンジする
・できるだけお金をかけずに居心地感をよくする

どちらのテーマも、できるだけお金をかけないということが大前提だが、これは言い替えれば、できるだけ内装業者に依頼しないで済ませるということになる。要するにアイデアの勝負ということだ。

まずイメージチェンジだが、思い切って店内の色(カラー)を全面的に変えるという方法がある。たとえば、奥に長い四角形の店舗で、入日から奥に向かってカギ型のオープンキツチンのカウンターになっていたとしよう。床は板張りで、壁と天丼は明るいベージュ系である。

そこで、店内の構造は変えずに、床、壁、天丼をすべて真っ黒のペンキで塗つてしまい、カウンターの天板の交換だけを業者に依頼するというわけだ。ペンキを塗っても、照明の照度が低い業態なら、多少の塗リムラやデコボコなどはデザインのひとつに見えてしまうものだ。

壁紙を張り替えたり、天丼に和紙を張ったりするのもひとつの方法だが、カーテンの色を変えるなど、店内のポイントとなる部分の色使いを変えるだけでも、インパクトは持てるということを指摘しておきたい。

一方、居心地感ということではまず、イスやテーブルをそのまま流用すべきかどうかという判断があるが、同時に、客席レイアウトの見直しも大切になる。

本来、客席レイアウトでもっとも重要なことは、必要な席数を確保することだ。必要というのは、売上計画を実現するために必要な席数という意味である。なにしろ、飲食店の売上高は「客単価×客数」で決まるのだ。

しかし、席数の確保にばかり目が行ってしまうと、肝心の居心地感のよさがおろそかになってしまう。イスやテーブルを詰め込んでいたら、お客様にとっては狭苦しいだけで居心地感どころではなくなってしまう。

また、店内の形や規模によっては、客席がサービスの動線を邪魔して、非常に使いにくいホールになってしまうことも多い。といって、席数を減らせば、客数も制約される。つまり、席数の確保と居心地感の確保という二つのテーマのどの辺で折り合いをつけるかが、客席レイアウトの基本になるわけだ。

ただし、席数はただ多く取ればいいというものではない。客席は実際に稼働してはじめて意味を持つ。お客様が座ってくれない客席は、実質的には客席ではないのである。

お客様に利用されない客席を「死に席」と呼ぶ。無理して四〇席を確保しても、 一〇席が死んでいたら実質的には三〇席と同じことだ。しかも、最初から三〇席でレイアウトした場合に比べて、居心地感ははるかに劣る。

大事なのはここである。お客様の立場に立って「生きた」席をできるだけ確保するという視点が不可欠なわけだ。前のお店の客席レイアウトでは席数が多すぎるのなら、新たに居心地感を考えたレイアウトに変更して席数を削る必要がある。店内の形状によっては、店内中央などに大テーブルを置くのも効果的だ。

また、カウンターの天板が古くて傷が目立つようなら張り替えることになるが、その場合はカウンターの下にバツグなどが置ける棚をつくること。これをしないから、イスが荷物置き場になってしまい、「死に席」が増えるのである。カウンターではイスとイスの間の距離も大事なポイントで、あまりくっつきすぎているとお客様が座りたがらない。

なお、少しでも内装業者に依頼するのであれば、壁際や窓などに、花瓶などを置けるスペースをつくつてもらうといい。工事としては簡単なものだが、花や小物を飾るのは効果的なイメージチェンジの方法である。

そのほか、アンティークの家具とか変わった置き物を飾る、布や和紙などでアート的な雰囲気づくりをするなど、アイデア次第でやり方はたくさんある。ヒントは自宅の装飾である。同じ家でも、ちょっとしたことで雰囲気はかなり変わるというのは、だれでも経験しているはずだ。自分のセンスの発表の場というくらいの気持ちを持つことだ。

居抜き店舗改装のポイント(4) -厨房-

居抜き店舗の場合、基本的には厨房の改装の必要はない。というより、前のお店の厨房を流用することこそが、この店舗のメリットなのだから、できれば改装は避けたいところだ。

しかし、前のお店がどういうお店だったのか、また、オープン後何年くらいたつているお店なのかといったことで、事情もいろいろと変わってくる。

たとえば、前のお店が自分のやろうとするお店とまっく同じ業種業態だったとしよう。その場合、基本的には譲り受けた厨房をそのまま使用できるはずである。しかし、長年営業していたお店の場合、設備機器類によっては性能が落ちていたり、使い勝手が悪くなっていることも十分にあり得る。もちろん、契約の際には、その辺のチェックもきちんとして、使えない設備機器類があればその分、造作譲渡代金を安くしてもらうなどの交渉をしなければならないわけだが、そういう時は新たに購入するしかない。

一方、業種業態を変える場合は、厨房の設備機器類にもあちこち変更箇所が出てくることになるだろう。しかしその場合でも、使えるものはできるだけ使うというのが、居抜き店舗での基本である。

ところで、厨房というのは、必要な設備機器類が揃ってさえいればいいというものではない。それは絶対に必要な条件だが、もうひとつ、大切なことがある。それは、働きやすい厨房にするということだ。

たとえば、厨房機器メーカーのショールームなどに行くと、各機器類が整然としたレイアウトで展示してあったりするが、それが自分にとっての働きやすい厨房とは限らない。

そして、居抜き店舗を活用する場合は、この働きやすいという点で、多少のことは目をつぶらなければならない。しかし、それは使いにくさを諦めるということではない。

たとえば、調理台の高さが低すぎる時は台の高さを調節するとか、面倒がらずに工夫を凝らして、少しでも使いやすい厨房にするよう知恵を働かさなければいけないということだ。使い勝手というのは、ちょっとしたことで大きく変わるものである。

ただし、排気に問題がある場合は、きちんと改装しなければならない。もちろん、排気・空調関係で工事が必要かどうかということは、契約時に確認しておかなければならないことだが、逆にいえば、その工事をしてでも買い得な店舗かどうかという判断が先になることはいうまでもない。

また、厨房内の空調にも十分に気を遣うべきだ。それでなくても自分の思い通りの設備機器類やレイアウトではないのである。せめて冷暖房くらいはちゃんと効かないと、長時間の労働が続かなくなってしまう。自分は我慢できても、スタッフが長続きしない。

要は予算との兼ね合いの問題だが、厨房ではとくに、必要なこととそうでないこととを明確に区別してかかることが大切である。

居抜き店舗改装のポイント(3) -サンプルケース-

お店の外観のセンスはいいし、商品やサービスも悪くないのに繁盛できない、というケースがよくある。どうしてなのか。経営者は不思議で仕方がないだろう。しかし、お客様の立場に立てば、原因はおのずと見えてくる。要するに、初めての人にとっての安心感がないのである。

最近は、店舗のデザインに気を遣うお店が増えて、センスのよさを競い合うケースも少なくないほどになっている。それはけっこうなことだ。豊かな時代にふさわしいお店が増えることは、外食市場の成始まらないのである。

当たり前のことだが、飲食店のよさは、利用してみてはじめてわかるものである。たとえば、雑誌で見たとか知人から聞いたお店だったとしても、実際に席に着いて、サービスを受け、料理を食べて、店内の雰囲気を味わってみなければ、本当のところはわからない。ましてや、 一般のフリ客は何の予備知識もない人たちである。お客様になってほしいのなら、自店のよさを知らせる努力をするというのは当然のことだろう。

いくら見た目がよくても、安心感を感じられない、というより不安を感じさせてしまうようなお店では、知らない人が利用してくれるはずがない。

フリ客がもっとも不安に感じるのは、価格と商品の内容である。このお店にはどんなメニューがあって、いくらくらいかかるのか。お客様の最大の関心事はこれだ。お客様のお店選びは、その時の利用動機によつて変わる。そして、お客様の予算は利用動機によつて決まる。つまり、予算を立てられないようなお店では、安心して利用できないということになる。また、メニューにしても、自分の食べたい料理があるかどうかは、業種(看板、外観でのアピール)だけではわからない。

冒頭で書いた繁盛できないお店とは、要するに、こういう不安を抱かせてしまうお店である。原因は明快。サンプルケースがないからである。最近はどうかするとサンプルケースを軽視する傾向があるようだが、これではいけない。フリ客に安心感を持たせることは、固定客づくりの第一歩でもあるのだ。

もちろん、業種業態によつてはサンプルケースが似合わないとか、設置する場所がないといつた場合もあるだろう。だったら、メニュー表を掲示すればいい。

ただし、サンプルケースもメニュー表も、単純に価格とメニューの内容を知らせるためのものではない、ということも指摘しておきたい。もうひとつの役割は、それを見せることによって消費意欲を刺激することなのだ。

したがって、サンプルケースもメニュー表も、清潔感とセンスのよさが求められる。よく薄汚れたサンプルケースを見かけるが、これではかえつて逆効果だ。季節感を上手に取り入れるなど、工夫の余地はいっぱいある。

居抜き店舗改装のポイント(2) -アプローチ-

お店のアプローチ=外観は、いわばお店の顔である。顔ということはつまり、お客様に対してもっともインパクトがある部分のわけだ。

人間の場合で考えてみるとわかりやすい。初めて会った人がどんな人か判断する時、その人の顔の持つ役割は非常に大きい。美人だとかハンサムだということではなく、その人の人柄が読み取れるからだ。

誠実な人か、やさしい人か、それとも信用できない人か、顔を見た第一印象で、なんとなく判断するものである。

もちろん、その人の本当の姿は、顔だけではわからないだろう。しかし、ふつう人間は、自分の第一印象を無意識に優先するものだ。だから、初対面の人でも、すぐに打ち解けたり警戒したりと、対処の仕方が違ってくる。

お店の場合も同じである。初めて利用する人にとって、お店の外観の第一印象は非常に大きな意味を持つ。前節で看板の重要性について述べたが、看板が目に止まったからといつて、必ずお客様になってくれるとは限らない。だれにとっても、初めてのお店というのは不安なものだからである。

初めて利用する人にとって、迷う材料はいっぱいある。自分の知っているお店とどう違うのか、店内の雰囲気はどうなのか、感じはいいのか、料理はおいしいのだろうか、などなど。そういう不安をなくしてあげて、さらに「入ってみたい」と思わせる。それが店舗の外観の役割である。

一般の飲食店でもそうなのだ。前のお店を活用する居抜き店舗の場合、外観はさらに重要な役割を担うことになる。前のお店のイメージをまったく感じさせない、新しいお店としてのアピールカを持たなければいけないのだ。

お客様が入りたくなる外観は、まず感じのよさがあること。これが基本である。もちろん、デザインはお店の業種業態によつていろいろ変わってくる。しかし、どんな業種業態であろうと、どんなデザインであろうと、お店への期待感を持たせられる外観になっていなければならない。

期待感を持たせるにはまず、第一印象の感じがよくなければいけないわけで、同時に、デザイン的なセンスのよさも不可欠である。世の中には、見た日は悪くても中身はいいということもあるが、少なくとも飲食店にはそれはない。また、看板と同様に目立つ外観にしてお客様の目を引きつけるというのも大事なことである。

外観の改装では、見た目の印象を思い切って変えることが基本になる。「新しいお店」としてのイメージチエンジを強烈にアピールすることで、前のお店の記憶を消してしまうのである。といつても、必ずしも大袈裟な工事が必要になるわけではない。壁を塗り替えるとか入日付近だけ手を入れるといった部分的な改装でも、まったく別のお店に見せることは十分にできる。要はセンスの問題だ。

居抜き店舗改装のポイント(1) -看板-

飲食店で成功するには、とにかく目立つことである。では、なぜ目立たなければならないのか。 一人でも多くの人に、自店の存在を知ってもらうためである。いまはどこにでも飲食店がある時代だ。自店がここにあるのだということを強烈にアピールしていなければ、たくさんのお店のなかに埋没してしまう。しかし、周りにどれだけ飲食店があったとしても、日立つお店は繁盛できる。

とにかく、自店の存在を知ってもらわないことには始まらない。そのために必要なのが看板である。看板の重要性に気づくかどうかで、成功の確率も大きく変わってくる。

しかし、世の中、それほど暇で親切な人ばかりではない。ちょっとよく見ればというが、だれが注意して見てくれるというのだろうか。そんな自分本位の期待は、必ず裏切られることになる。

よほど好奇心の旺盛な人は別にして、ふ?つ道を歩いている人は、周りの景色などあまり注意して見ていないものだ。自然に目に飛び込んできたもの以外には、ほとんど興味を示さない。どこのお店にしようかと迷っている人でさえ、スミからスミまですべてのお店を確かめているわけではない。せいぜい半分も見ていればいいほうだろう。

これだけ飲食店の数が増えているのに、お客様のほうから探してくれるのを待っているというのでは、とても成功など望めない。

さて、通行人は看板を見てはじめて、お店の存在に気づく。看板が目に止まらなければ、お店はないも同然のわけである。とすれば、看板をできるだけ目立たせて、確実に通行人に自店の存在を意識させるということは、成功の第一歩ということになる。

看板でもっとも大切なことは遠視性にすぐれていることである。つまり、遠くからでもお店を識別できる看板でなければならないということだ。通行人は、遠くから見えているからこそ、あのお店を利用してみようかという気持ちになるものだ。お店の真ん前で気づいても、どうしようかと迷っているうちに通り過ぎてしまう。そして、いったん通り過ぎたら、二度と戻ってくれないと考えるべきなのだ。

居抜き店舗を活用する場合でも、看板にはかけるべきお金をかける必要がある。看板と店舗は別に考えるくらいでちようどいい。そして、どの位置にあるのがもっとも見やすいのかをよく研究して、遠視性にすぐれた看板にしなければいけない。

とくに小さなお店の場合は、 一階の路面店であってもお店の間口が狭いため、お客様の目に入りにくい。三階や地下への出店だと、ますます不利になる。しかし、効果的な看板にすれば、その不利も十分にはね返せるのである。

居抜き店に大切な「新しいお店」へのイメージチェンジ

前節で述べたように、居抜き店舗活用の基本は、できるだけ前のお店の内装を生かすことだ。できるだけお金をかけない。それが活用の基本である。しかし、ただ前のお店の店舗を流用するだけでは「生かす」ことにはならない。そこで注意しておきたいのは、お客様の視点に立って考える必要があるということだ。

お店づくりでもっとも大事なことは、お客様から見てどういうお店に映るのかということである。もちろん、せっかく自分のお店をつくるのだから、自分の趣味や好みを反映させたいと思うだろう。その気持ちはよくわかる。しかし、もしもどんなにお金をかけたとしても、それがお客様にとっての「いいお店」になっていなければ意味がないのである。

逆にいえば、居抜き店舗を活用するのか、それとも新店舗でオープンするのかということは、お客様にとっては関係がないことなのだ。お客様にとっては、そのお店が新鮮な魅力のあるお店なのかどうか、それだけが関心事なのである。

とくに居抜き店舗の場合、前のお店が撤退した店舗を活用する。撤退の理由は、大半が経営の失敗である。ということは、前のお店のイメージを引きずったままでは、お客様の目には新しいお店とは映りにくいわけだ。

たしかに、いまのお客様は昔と違い、過去のことにはあまりこだわらなくなっている。しかし、とくにこだわらなくても、お店自体=店舗に対する悪いイメージがどこかに残っていたら、自然とそのお店を敬遠するようになる。それがお客様の心理である。なにしろ、いまは飲食店などいくらでもある時代なのだ。なんとなくイヤな感じのするお店をわざわざ利用することはない。

したがって、居抜き店舗の活用では余計なお金はかけずに、なおかつお客様に「新しいお店」と認められるようなアピールを工夫しなければならない。つまり、効果的な店舗のイメージチェンジである。

できるだけお金をかけないようにするためには、内装業者に依頼するものを徹底的に絞り込むことだ。たとえば、壁が汚れていてイメージが悪いのなら、壁紙を張り替えるだけでいい。

とにかく、お金をかけないためには改装する部分をできるだけ少なくすることだが、どうしても改装する必要があると判断した場合は、材料よりもデザインを大事にすることがポイントになる。「いいお店」にしようとすると、つい「いい材料」に目が行ってしまいがちだが、そんなことでは節約はできない。ただの安普請ではダメだが、安い材料でもデザイン次第で「いいお店」はつくれるのである。

お店のイメージチェンジでは、家具や装飾品、置物、花などの小物類が大きな効果を発揮することも忘れてはいけない。そのほうが安上がりというだけではない。むしろ、自由のきく小物類のほうが、イメージに変化をつけやすいのである。

中途半端は悪。前店の内外装を上手に生かす居抜きとは

何度もいうようだが、居抜き店舗活用のメリットは、投資額を低く抑えられることである。しかも、前のお店の内装や設備機器類を譲り受けるために、内装譲渡代金も払うのだ。したがつて、居抜き店舗でのオープンでは、保証金などの物件取得費以外には、できるだけお金をかけないというのが基本になる。とくに内外装は、前のお店のものをできるだけ生かすことが必要だ。

また、そうすることで店舗の工事期間も大幅に短縮できるが、これもまた、居抜き店舗活用の大きなメリットなのである。店舗の工事中にはすでに家賃が発生していることを忘れてはいけない。工事が長引けば長引くほど、ムダなカラ家賃を払わなければならなくなるのである。

では、前のお店の内外装を上手に生かすにはどうすればいいのか。基本は、お店の構造を変えないということである。たとえば、店内にカウンターがあるのなら、そのままカウンターとして使用する。イスやテーブルなどはもちろんのこと、床、壁、天丼も同様だ。玄関部分も、とくに傷んでいなければそのまま生かす方向で考える。

大事なことは、「生かす」ことを最優先に考えることと、生かすための工夫を惜しまないことである。かりに多少の手を入れるとしても、新しくつくり直すのではなく、ちょっと修正を加えるという発想で取り組む。それが「生かす」ということだ。

居抜き店舗にしろ新店舗にしろ、初めてオープンする人は、どうしても内装にお金をかけすぎてしまう傾向がある。どうしてかというと、少しでも「いいお店」にしたいと思うからだ。いいお店というより、自分が気に入ったお店といったほうが正確だろう。要するに、マイホームを建てるのと同じ感覚である。

しかし、お店はマイホームと違って「一生」の買い物ではない。ビジネスの場である。投資を回収し、さらに利益を生み出していくための場だ。自己満足はきつばりと捨てなければいけない。ましてや居抜き店舗を活用するのである。ふつうのオープンよりも、さらにはっきりと割り切った考え方ができなければ、成功はむずかしいだろう。

また、内装を長く持たせたいという考え方も捨てるべきである。店舗はビジネスの場といったが、それは、店舗とは基本的に、 一定の期間で償却していくものという意味でもある。そのために、税法上も減価償却が認められている。

飲食店で最悪なのは、中途半端にお金をかけたお店をつくり、いつまでもその店舗のまま営業をし続けることだ。お金をかけているからもつたいないというわけだが、そんなことでは時代の変化、ニーズの変化に取り残されてしまう。いわゆる老舗とはわけが違うのである。大事なことは、お客様に楽しさや居心地のよさを感じてもらえる店舗にすることだ。その一点に集中して、いろいろと工夫してみることである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。