前節では、前のお店と同業種同業態のお店をオープンするケースの、プラス面。マイナス面について考えた。ここでは、積極的に違いを強調する手法について考えてみよう。実は、前のお店との違いをアピールするというのは、居抜き店舗を活用する場合の、もっとも手堅い方法なのである。
たしかに、前のお店を踏襲するというのは、居抜き店舗活用の最大のメリットである。内装も設備機器も什器備品も、ほとんどすべてが揃っているのだから、これらを利用しない手はないというのが常識的な考え方だろう。しかし、もっとも大事なことは、確実に繁盛店に育て上げることである。それがオープンの目的だ。お店づくりのすべてが、その目的実現のために集中されていなければならない。そのうえで前のお店との違いを強調すべきだと判断したら、迷わずその方向に向かってコンセプトを組み立てていく必要がある。
また、いうまでもないことだが、前のお店の評判があまりよくなかった場合も、今度のお店は以前までとはまったく違う、魅力的なお店がオープンしたということを、強力にアピールしなければいけない。
その方法としてもっとも有効なのが、業態転換である。業種は同じままで、業態だけ変更する方法だ。といっても、極端な転換の必要はないし、それではむしろマイナスになりかねない。なぜなら、大幅な業態変更をするとなると、厨房はともかく、客席フロアにはかなりの手を入れなければならなくなる。
それをやつてもいいのは、どうしてもこの「場所」がほしいため、自分でいつたんカラ店舗にするつもりで居抜き店舗を借りるというケースだけである。つまり、前のお店から譲渡された内装などは最初から捨ててもいいと考えているオープン計画の場合で、 一般的なケースとはいえない。
通常の業態転換は、価格帯でも大きな違いは打ち出さないで行うのが成功しやすいやり方である。たとえば、以前はラーメン店(中華そば屋)だった居抜き店舗を活用するとしよう。これを高級中国料理店にするのではなく、居酒屋的な利用ができるカジュアルな中国家庭料理のお店に変えるといった方法だ。
ここで注意したいのは、業態を変えれば当然、ターゲットも変更することになるということだ。たとえば、 一般にラーメン店は若い客層が中心だ。今度つくるカジュアルなお店も若い客層を狙おうと思っているとする。それなら、ターゲツトは同じでいいのかというと、単純にそうはならないのだ。
なぜなら、想定する客層の年齢層はほぼ同じでも、業態が違えば利用動機が違うからである。利用動機の違いは予算の違いでもあるから、お客様の年齢層も変わってくる可能性が大きい。したがつて、業態転換する場合は、転換した業態のニーズがどれくらい見込めるのか、そこをしつかりと見極める必要があるわけだ。