別項で説明したように、飲食店の粗利益率は群を抜いて高い。要するに、材料原価が低い。それなのにどうして、お客様は飲食店を利用するのだろうか。
いまはコンビニやスーパーやデパ地下に行けば、たいていの食品は揃っている。しかも安い。お酒も小売店で買ったほうがはるかに安いし、自宅やオフイスでも本格的なレギュラーコーヒーが飲める。それにもかかわらず、お客様はレストランや居酒屋、バーに行き、コーヒーショツプを利用する。なぜなのだろうか。
結論からいえば、お客様が飲食店を利用するのは飲食店ならではの付加価値を求めているからだ。付加価値があるから、高く付いても利用するし、納得してお金を払うのである。逆にいえば、付加価値を感じられないような飲食店は、お客様に利用してもらえないということになる。高い粗利益率に見合った付加価値がなければ、お客様は絶対に支持してくれない。繁盛するには、お客様に価値あるお店と認
では、飲食店の付加価値とは何か。それは、次の三つの要素で構成される。
・商品
・サービス
・雰囲気
これら三つの付加価値のレベルが対価として正当であれば、お客様は満足してくれる。対価以上と認めてもらえれば、固定客になってくれるわけだ。
ここで大事なことは、飲食店の価値は、これら三つの付加価値の総合力で決まるということだ。三つのうちのどれが欠けても、お客様の満足度は低くなってしまう。たとえば、料理はおいしいけれどもサービスがよくないとか、料理もサービスもいいのに店内が汚いといった理由でお客様に嫌われてしまう
お店はいくらでもある。実にもったいない話だが、飲食店の価値に対する経営者の認識が甘いと、たとえ調理技術があろうと、店舗にお金をかけようと、結局は繁盛できないということになる。
飲食店なのだから、料理さえおいしければサービスや雰囲気など関係ないと信じているお店は少なくないが、これはまさに三〇年前、四〇年前の貧しかった時代の発想だ。いまのお客様は外食に慣れて回が肥えているから、そこそこおいしいことなど飲食店として当然と思っている。お客様は、そこそこおいしいという前提の上で、自分の納得できるお店を選んでいるのである。
納得できる条件とは、快いサービスや居心地のいい店内である。料理がおいしくて、なおかつサービスがよく雰囲気もいい。お客様が支持するのは、そういう付加価値のバランスのとれたお店なのである。
忘れてはいけない。飲食店の価値とは、あくまでお客様にとっての価値だということだ。経営者がどう考えようと勝手だが、お客様に支持されなければ成功はできない。このことを正しく認識することが、成功への第一歩なのである。