飲食店の立地には、 一等地と二等地の区別がある。これは事実である。なぜ区別されるのかといえば、飲食店の経営は立地の優劣に左右されやすいからだ。当然、 一等地と二等地とでは、テナント物件の家賃・保証金が大きく違ってくる。
立地がよければ成功の確率が高い。それは間違いない。だから、資金力のある大手などは、競って一等地に進出している。しかし、忘れてはならないのは、 一等地だからといつて、 一〇〇パーセント成功できるというわけではないということだ。
実際、繁華街のメインストリートに面していながら繁盛できないお店は珍しくないし、反対に、商店街のはずれとか裏通りといった一見不利な立地でありながら大繁盛、というケースも多い。つまり、立地は飲食店の経営を左右する大きな要素ではあるが、決定するものではないということだ。
立地も大切だが、それ以上に大きいのは、お店に本当に魅力があるかどうかなのである。要はコンセプトの問題だ。魅力さえあれば、それがアピールできていれば、二等地でも立派に繁盛できる。 一等地でも伸びないのは、そもそもお店がお客様に選ばれるだけの魅力がないせいである。
また、立地によって、発生する利用動機や客層が違うということも見逃してはいけない。業種業態によっては成功しやすい立地もあれば、成功しにくい立地もある。立地特性の見極めが甘ければ、一等地に出店しても成功できないわけだ。
つまり、 一等地、二等地というのは、あくまで大ざっばな評価にすぎないのである。そして、すべての業種業態に適合する立地などはあり得ない。大事なのは、自店のコンセプトに合致するかどうかという一点である。だから、もしもコンセプトにぴったり合うのなら、家賃・保証金が多少高くなってもやむを得ないという考え方も成り立つ。
ただ、居抜き店舗を活用する場合、自分の考えているコンセプトと合致する立地を探すのは新店舗の場合に比べてむずかしい。やはり、新店舗のほうが立地の選択肢は幅広い。それは仕方がない。しかし、仕方がないと諦めることはない。それなら、その立地に合ったコンセプトを組み立てればいい。
一等地が有利といわれるのは、要するに人が多いという理由である。人がたくさんいれば、いろいろな利用動機が発生するし、客層も多様だ。ニーズ事態も豊富になる。その意味では断然有利といえるが、必ずしもそうではない。なぜなら、人が多ければ出店数も増え、それだけ競争が激しくなるからだ。
また、 一等地は家賃・保証金が高いが、そうなると損益分岐点売上高も高くなる。そのため、そこそこお客様が入ったとしても、経費に足を引っ張られてなかなか儲からないということになる。 一方、二等地の場合はその反対だ。家賃・保証金の負担が小さいだけに、小さな売上高でも利益を出しやすくなるのである。