かつては飲食店の成り立たない立地とされていた住宅地だが、最近は飲食店の出店事例がぐんと増え、成功例も増えている。むしろ、あえて住宅地に出店するケースも少なくないほどだ。マスコミなどでも話題店がどんどん紹介されている。
住宅地が飲食店の適合立地になった理由は、何といってもお客様が外食に慣れたことである。外食がたまのごちそうだった時代には、外食する場所はもっぱら繁華街とか駅前とか、とにかく人が集まるエリアだった。当時は住宅地に飲食店が少なかったということもあるが、人がたくさん来るということが安心感になっていたことが大きい。
しかし、いまのお客様は、そういうことにはこだわらない。お客様にとって大事なのは、おいしいお店、楽しいお店であることだ。どこにあるのかということは大した問題ではなくなっているのである。
しかも、自分の家の近所にあるのならこれほど便利なことはないし、お店にも覚えてもらいやすいから、「自分だけの行きつけのお店」をほしがるといういまの消費者のニーズにも合致している。もはや、だれもかれもが判で押したようにフアミリーレストランに行く時代ではない。個性のあるお店が求められているということは、小さな個店にとって願ってもない変化だが、住宅地は、その変化が掘り起こした立地ということもできる。
ところで、ひと口に住宅地といっても、古くからの住宅地と、新しいマンションやアパートが建ち並ぶ新興住宅地とに分かれるが、飲食店の立地として有望なのは後者、新興住宅地である。
なぜなら、住人の層が違えば、飲食店の利用動機も利用頻度も違うからだ。 一概にはいえないが、新興住宅地のほうが住人の年齢層が低い傾向が強いし、それだけに外食への依存度も高い。また、年齢が若いほど外食の楽しさをよく知っていて、より気軽に飲食店を利用する傾向も強い。そこが狙い目だ。
ところで、住宅地立地は、駅前商店街などの飲食店が競合店になると思われかちだが、意外とそうでもない。理由は簡単。先にも説明したように、地元の住人がターゲットだからである。通勤客なら、駅からの距離が問題になるが、住人にとってはむしろ自宅に近くなったりする。また、多少遠回りになったとしても、自分の地元という意識が強いため、わざわざ歩いて行くことに抵抗感がないのである。
もちろん、店前通行量は期待できない立地なのだから、「わざわざ客」を呼び込めるだけの魅力のあるお店でなければ繁盛はむずかしい。しかし逆にいえば、実力のあるお店なら、余計な競合を避けて安定した経営がしやすい立地ということになる。
しかも、この立地は商業立地ではないから、家賃・保証金は低く抑えられる。問題はテナント店舗があるかどうかということで、居抜き店舗の場合はさらに範囲が制約される。しかし、掘り出し物にぶつかる可能性は十分にある。