いうまでもなく繁華街とは、人がたくさん集まる街である。朝から晩まで、とにかく人が多い。そして、人が集まれば、その人たちを目当てにしたさまざまな商業施設も集中する。飲食店もそのひとつで、どこの繁華街も飲食店を探すのに苦労することはない。名前の通ったチェーン店や大型店もほとんどが出揃っている。
繁華街を歩く人たちの目的はいろいろだ。デパートに買い物に来た人もいるし、映画を見に来た人もいる。なんとなくブラブラ散歩するとか、ウインドーシヨツピングを楽しむという人も少なくない。
目的が何にしろ、繁華街に来た人たちに共通するのは、まず「わざわざ出かけてきた」ということと、必ずといっていいほど外食するということだ。昼間ならランチやお茶を楽しみ、夕方からはデイナーとなるが、せつかくわざわざ出てきたのだからと、ふだんよりも予算が高い人が圧倒的である。つまり、非日常的利用動機も豊富に存在しているということだ。
繁華街のもうひとつの特徴として、土地カンのない人が多いということがある。なにしろ、この街に集まるのは、大半がわざわざ出かけて来た人たちだ。デパートとか映画館ならどこにあるか知っているが、たまにしか来ないのだから飲食店の利用経験は極端に少ない。そのため、飲食店のお客様の大半はフリ客ということになる。
フリ客とは、たまたま入ってくれるお客様のことである。ふつうの立地なら、フリ客を固定客につなげることが可能だ。ところが、この立地のフリ客は、ほとんどが再来店を期待できない。一過性のお客様で終わってしまう。それでも繁盛しているお店が多いのは、人の数が圧倒的に多いためである。
また、街の様子をよく知らないフリ客の行動パターンとして、名声に弱いということもある。名前の通ったお店なら安心という心理が働くのである。そのため、有名チェーンや大型店は有利だが、小規模の一般のお店は不利になるという傾向が強い。
しかも、フリ客は安心できる場所を選びたがる。だから、気軽に利用してもらえるのは、メインストリートに面した立地が圧倒的で、路地に入ってもせいぜい一、二本までである。繁華街といっても路地裏に入れば、家賃・保証金も少しは安くなるが、繁華街らしい人通りはとても望めない。
したがって、 一般の小さな個店にとって、繁華街はけっして有利な立地ではないわけだ。もちろん成功例もたくさんある。しかし、成功のハードルは非常に高いということを覚悟しなければならない。それでも確実性のあるコンセプトという自信がなければ、高い家賃・保証金を払ってまで出店する意味はないだろう。
あえて小さな個店の狙い目を探せば、デパートなどで働く人たちをターゲットにすることくらいである。