店舗は厨房と客席ホールとに分かれる。理想を言えば、厨房もホールも、どちらも広く取りたいものだ。厨房は働きやすく、使い勝手のよいものにしたいし、客席は居心地がよくて、しかも席数はできるだけ確保したい。店舗レイアウトの最大のテーマは、限られたスペースの中で、こういう矛盾をいかにうまく解決するかということだ。
もちろん、小さなお店の場合、客席数の確保の問題があるから、厨房スペースは当然、ぎりぎりの広さになる。その限られたスペースで、なおかつ働きやすい厨房にしなければならないわけだ。
一般に素人の場合、業者のすすめるレイアウトのままでOKしてしまうことが多いが、後になって、ああすればよかったと後悔することになりがちだ。厨房レイアウトで最も大事なことは、広さに余裕があるとか、機器類が整然と並んでいることではない。本人が作業しやすい厨房でなければ意味がないのである。
たとえば、調理はさまざまな工程から構成されるが、その一連の動きがよどみなく流れなければ、ピーク時にパニックになってしまう。しかも、通常は一人ではなく、何人かのスタッフが同時に働く。それぞれのスタッフの仕事がうまく連携できて、お互いに邪魔にならないような動線を工夫しなければならない。まな板やガス台の高さなど、長時間働いてもできるだけ疲れない位置取りも大切だ。また、盛りつけ台とデシャップ(料理出し下げをする場所)、食器を下げたときの置き場所と洗い場の位置は、できるだけ最短距離にすること。ここが意外と盲点になる。
厨房レイアウトは、いったん工事が終了して設備機器類を設置してしまったら、現実にはほとんど変更がきかない。配管などの工事は、大変なお金がかかるのだ。 一方、客席ホールのレイアウトでは、必要な席数を確保することが最大のテーマになる。必要なというのは、売上計画を実現するために「必要な」席数という意味だ。
しかし、席数はたんに数だけ取れればいいというものではない。1席でも多く取って売上を伸ばしたいという気持ちはわかるが、客席は稼働しなければ意味がないということを知ってほしい。たとえば、4人掛けテーブルに2人客だと、2席が「死に席」になってしまう。実際、 一組当たりの客数は、せいぜい2〜3人である。それなら、最初から2人掛けテーブルを基本にしておくべきなのだ。いまのお客様は相席を非常に嫌がるから、席の取り方には注意したほうがいい。
小さなお店では、オープンキツチンのカウンター席にすると席数を取りやすいが、この場合は、カウンターの下にバツグなどを置ける棚をつくっておくことだ。棚がないとお客様は隣の席まで占領してしまう。また、イスの間が狭くて一人分のスペースが小さいカウンターは、 一見席数を確保できたようだが、お客様に敬遠されやすい。
客席ホールは、いくらデザイン的にすぐれていても意味がない。まず、お客様の居心地感がいいこと。そして、サービスのための動線が単純(直線的)で、距離はできるだけ短くなければいけない。
なお、テーブルの広さは、使用する皿の大きさとオーダーしてほしい皿数を考慮して決めること。狭いと並べきれないから、オーダーもしてもらえない。