候補物件の適否を判断するには、物件周辺の立地調査と、物件自体の調査の2つの視点が必要だ。すでに商圏内の立地調査によって、エリア内の様子はある程度つかんでいるはずだが、ここでは物件周辺に絞り込んで、人の動きと競合店の状況を調査する。
まず、人の動きの調査は、物件の店前通行量調査である。道端で両手にカウンターをもち、通行人の数を調べている光景を見たことがあると思うが、ファーストフードなど店前通行量が直接集客力に結び付く業態以外は、カウンターを使用するには及ばない。
この調査のポイントは、人数は概算でいいから、男女別、年齢別、職業別の大まかな傾向をつかむことだ。自店のお客様になりそうな人が通っていなければ、いくら通行量があっても意味がない。
また、飲食店はその業種業態によって、お客様の利用する時間帯に大きな波がある。したがって、調査の時間帯は1時間ごとに区切り、予定している営業時間の前後1時間まで調査する。曜日別の傾向をつかむには、最低でも平日、土曜、日曜の3回は物件の前に張りついて調査する必要がある。
郊外型のお店の場合は、曜日別、時間帯別のクルマの通行量を調査するが、クルマの数だけでなく、車種(乗用車、トラック)、1台当たりの乗車人数、ナンバー(地元、他府県)などをチェックする。この場合は、できればカウンターを使用して正確な数を出したほうがいい。見るだけだと、渋滞している道路は通行量が多いと錯覚しがちだ。
なお、ロードサイド立地では、中央分離帯の有無や、反対車線から右折しやすいかということが大きなポイントになる。一般に、大きな道路だと、片側車線しかお客様を見込めないことが多い。
周辺の飲食店については、競合店と思われるお店はすべて、お客様として利用してみることだ。メニューと価格を見ることはもちろんだが、お客様を注意深く観察することで、客層の動向や消費レベルもつかめる。
次に、店舗物件調査に入る。ポイントは、オープンする業種業態に適しているか、賃借条件が適正か、である。
ところで、店舗物件は1階だけでなく、2階(以上)や地階もある。1階に比べて家賃・保証金が安いから、小さなお店が入りやすい物件だ。ただし、この場合は階段の形態やエレベーターの有無と位置も重要なポイントになる。
つまり、立地条件とは平面だけでなく、テナントビルに出店する場合は、タテの条件も重要になるということだ、ここで、1階、2階、地階の特徴をまとめておこう。
まず、1階はお客様がお店に入るのに最も抵抗感がないから、立体で見た場合の一等地になる。しかも、ほとんどすべての業種業態にとっての好立地であるため、家賃・保証金が高くなるわけだ。
エレベーターのない場合の2階は、階段を上がるのに抵抗があるお客様が多いため二等地の位置づけになる。階段を降りる地階の場合は、2階よりもお客様は楽だが外から目立ちにくい。そこで、やはり二等地となる。
しかし、業種業態によって、ビル内立地の評価は変わる。1階は一等地といっても、1階であることが絶対条件になるのは、ファーストフードなど日常的利用動機を取り込む業態の場合である。逆に言えば、それ以外の小さなお店は、無理してまで1階に入ることはないわけだ。
2階は比較的カジュアルな業態が向いており、窓の採光があればなおいい。また、窓からの眺めがいいなどの場合は、一等地といってさしつかえないケースもある。
反対に、地階の場合は高級感を重視するなど比較的重い業態に適している。隠れ家的な雰囲気を演出しやすいのも地階の特徴だ。つまり、この場合もお店のコンセプトによつては一等地になる。
さらに、フロアの中での位置も重要だ。たとえば、2階や地階でも、階段やエレベーターの近くは一等地になるし、ビルの奥に引っ込んでいて見えにくい場所は二等地となる。他店や柱などで見えない場所もあるが、そういう場所はできれば避けたい。
以上は店舗の位置を中心にした判断基準だが、店舗は面積だけでなく、その形状もじっくりと検討したほうがいい。形によつては席数を取りにくいケースもままあるし、柱などの出っ張りも予想以上に邪魔になるものだ。小さなお店だからこそ、間回の広さにはこだわるべきだ。
また、物件調査では、ガス・水道。電気の容量は必ず確認すること。別工事をするとかなりの出費になってしまう。ビルによっては、看板やサンプルケースに制限がある場合があるから、これも注意してほしい。
賃借条件が適正かどうかは、これら店舗の状態を確認して判断することになるが、保証金の償却や共益費・管理費などの付帯条件についても、慎重に検討するべきだ。家賃が多少安くても、これらが高かったら意味がないことになってしまう。