• +03-5436-8908
  • info@egg-recruit.com

飲食店経営の二毛作の実現とは?

飲食店経営の二毛作の実現とは?

お酒を積極的に売るという発想を進めていくと、二毛作という業態に行き着く。これからの飲食店は、この二毛作の必要性と取り込み方を真剣に考える必要がある。

二毛作とは本来、同じ畑で2種類の作物を作ることだ。飲食業では、昼と夜とでまったく「別のお店」になることをこう表現している。1つの店舗で2種類の商売(飲食業)をするという意味だ。

一般に飲食店の営業は、ランチとディナーに分けられる。そして、本来、飲食店が最も書き入れ時になるはずなのはディナーの時間帯である。ところが、ほとんどの飲食店がいま最も苦戦しているのが、このディナータイムなのだ。

お酒を積極的に売ろうというのには、この弱い時間帯の客単価を上げて売上高を確保するという意味がある。客数が劇的に増えないのなら、せめて客単価だけでも上げようという作戦である。

しかし、二毛作は違う。なんとか客単価を上げるのではなく、夜の時間帯は最初から客単価を取れる業態に変えてしまうという戦略なのだ。したがって、小手先だけの中途半端な取り組みでは絶対にうまくいかない。このことは肝に銘じてほしい。

さて、二毛作を導入するのに最初に考えなければならないのは、昼と夜とではお客様の利用動機が違うということだ。

別項で説明したように、お客様の飲食店の利用動機は、日常的利用動機と非日常的利用動機とに分けられる。これを時間帯で分ければ、ランチは日常的な、デイナーは非日常的な利用動機である。

もっと具体的に言えば、その違いは、たんに空腹を満たすだけの利用なのか、それともレジャーとしての利用なのか、ということになる。そして、目的が違えば当然、お客様の予算も違ってくる。

ランチは毎日食べなければならない食事だ。だから、だれでもできるだけ安く上げたいと思う。いまランチが驚異的な低価格で争われているのは、ただ不景気のせいということではない。もともとランチは経済性が優先されるものなのだ。

これに対して、デイナーは毎日欠かせないという利用動機ではない。ふつうの人が毎日ディナーを楽しんでいたら、生活が破綻してしまうだろう。 一般には、週に何回とか月に何回といつた、たまのぜいたくを楽しむ日ということになる。つまリレジャーである。だから、許容される客単価もぐんと高くなるわけだ。

ここで考えなければならないのは、レジャーにはレジャーにふさわしい場が求められるということだ。たとえば、牛丼のチエーン店にもビールやお酒は置いてあるが、ディナーを楽しむ気になるだろうか。ふつうはなれないはずである。

したがって、二毛作を成功させるには、お客様の利用動機に合わせて、昼と夜の売り方、売り物を明確にして、その違いをアピールする必要があるわけだ。

まず、夜のメニューはお酒を楽しむことを前提にしたものに切り替える。もちろん、食事メニューに重点を置いてもいいが、その前に軽くでもお酒を楽しむことで食事がレジャーになる、ということを忘れてはならない。つまみやサブメニューを充実させて、楽しめるお店ということを前面に押し出す必要があるわけだ。

レジャー対応型のメニューのお手本は居酒屋メニューである。サラリーマンの仕事帰りの一杯から家族での会食まで、ほとんどの利用動機に応えられるメニュー構成になっている。

ただし、お手軽に居酒屋メニューの真似をしようとしてもうまくいかないということを注意しておきたい。たとえば、材料の仕入。幅広いメニューにするということは、それだけ仕入業務が繁雑になるということを意味する。しかも、材料の種類が増えれば、材料ロスが発生しやすい。魚などの生鮮品を多く使うとなるとなおさらだ。

当然、調理技術や調理スタッフの人数など調理態勢の問題も出てくる。当たり前のことだが、職人を雇えば人件費がかかる。こうした問題をきちんとクリアできなければ、居酒屋メニューは実現できないのである。

したがって、中途半端に居酒屋の真似をするのではなく、自店の業種業態に適した夜の売り方を編み出す必要がある。たとえば、メニュー品目数は絞り込んで、 一般の居酒屋では出せない手づくり感のあるものを売り物にする。アルコール類も安く幅広くというのではなく、こだわりを感じさせるものを品揃えする。要するに、居酒屋とは違う個性を打ち出すことだ。

それと、二毛作でもうひとつ大事なことは、お店のイメージ自体を昼と夜とでガラリと変えるということだ。内装や照明からスタッフのユニフォームまで、どうすればあまりお金をかけずに変身できるか、徹底的に検討してみることだ。イメージというのは、ちょっとした工夫でかなり変わるものである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。