当たり前のことだが、飲食店の看板は商品である。もちろん、飲食店の価値は商品だけでなく、サービス、雰囲気も合わせたトータルな付加価値で決まる。しかし、第一の売り物はあくまで商品なのだ。
ところが、多くの飲食店はこのことがまるでわかっていない。どうしてそう言えるのかといえば、理由は簡単だ。多くのお店が、自店の商品力のなさを何とも思っていないからである。何の魅力もない商品を漫然と売っているだけだ。
なるほど、そういうお店に言わせれば、メニュー表にのせていれば、それがうちの商品、売り物だ、ということになるのだろう。しかし、お店側の自己満足や弁解など、それこそ何の役にも立たない。飲食店として営業している以上、お客様に認めてもらえなければ意味がない。お客様が魅力ある商品と感じてくれなければ、商品価値はゼロに等しい。当たり前のことである。
また、たしかにいまのお客様は、たんに空腹を満たすだけの目的で飲食店を利用しているわけではない。
お客様の本当の目的は、食事を通して豊かで楽しい時間をすごすことだ。つまり、外食のレジャー化である。
だからこそ、商品ばかりでなく接客サービスや雰囲気のレベルアップが不可欠なわけだ。しかし、それでもお客様を納得させる最大の不可価値は商品なのである。料理に魅力があるからこそ、そのお店での食事が楽しくなるし、豊かな気分も味わえる。逆に、料理がまずかったらどうか。どんなにサービス態度がよくて雰囲気も立派だったとしても、満足感は得られない。
よく「料理さえよければもっといいお店なのにね」というお客様の話を耳にすることがあると思うが、そういうお店が繁盛できたためしはない。カフェなど流行のスタイルのお店で一時的に繁盛できたとしても、結局は長続きしない。
いまは昔と違って、そこそこおいしいことなど当たり前の時代である。一定レベル以上の味であることは、飲食店としての最低の条件と思われている。だれがそう思っているのかというと、お客様である。
もうひとつ、商品力とはたんなる味だけの問題ではないということを、しっかりと理解してほしい。要するに価格である。
お値打ち感というのは、味と価格のバランスがとれていてはじめて成り立つ価値だ。こんなにおいしいのに、こんなに安い。これが究極のお値打ちである。そして、多くのお客様に支持してもらうためには、多くのお客様が買いやすい価格に設定することが鉄則だ。
いくらおいしいという自信があっても、お客様に高いと思われたら利用してもらえない。つまり、同業態の他店と比較してどうかということも、考慮に入れなければならないわけだ。味と価格。この2つの面で他店との競争力をもってはじめて、商品力があるといえるのである。
繰り返すが、飲食店の看板はあくまで商品である。商品あっての飲食店なのだ。適正な価格で、お客様に「あのお店でしか食べられない」と思わせるパワーをもつことが、繁盛の最大の武器なのである。飲食店で成功したいと思うのなら、何よりもまず商品力をつける努力を惜しまないことだ。