予算管理の基本は、日別売上計画に基づいた曜日・時間帯別売上分析である。毎日の計画と実績を対照することで、自店の売上げが現在どういう状況にあるのかが確実に把握できる。
問題点を発見するタイミングが遅れることもない。経費が適切に使われているかどうかのチェックも日別におこなえば、店長は十分な態勢でコストコントロールに取り組むことができる。
月次損益のコントロールでは何よりも、人件費のコントロールがポイントとなるが、これによって効率のよいワークスケジュールを組めるようになるわけだ。
ところで、月次売上計画についても日別売上計画と同様に、月ごとの累計売上高と予算を対照しながら、その達成状況をチェックしていく必要がある。と同時に、今後の売上推移をできるだけ正確に予測して、最終的に予算とのズレが出ないように調整していかなければならない。
ここでは、そのための二つの手法について説明しよう。
手法のひとつは季節指数の算出による方法である。季節指数とは、その年の月間平均売上高を100%としたときの各月の売上高の規模を割合で示した数値で、次の式で算出する。
(年間売上合計/12ヶ月)=月間平均売上高
各月季節指数=(各月売上高/月間平均売上高)×100
季節指数は月間比とともに、各月売上計画の作成データとしても用いられるが、各月の売上規模と季節変動がわかりやすいため、月次予算管理にも重宝な手法である。
飲食店の売上高が季節によって定期的に変動することはいうまでもないが、季節指数は、年間を通して変動する月別売上構成比や月別の売上げ傾向を数字でとらえられるところに意味がある。
上記表11は、表10の売上高実績を基に算出した二年間の季節指数例である。
また、上記はこれらの季節指数をグラフ化したものだが、こうすると各月のパターンや年度による売上規模の推移がよりわかりやすくなる。
季節指数の対比は3年間で十分だから、毎年、前々年の数値をグラフ化したうえに、今年の数値を毎月プロットしていくといい。
二つめの手法は、年間移動累計という数値を基に、今後の売上推移を予測する方法だ。年間移動累計というのは、各月ごとに過去一年間の売上合計をつかむ手法で、経過月ごとに移動しながら順次、売上合計を求めていくものだ。
いま季節指数について述べたように、各月の売上高は季節によって変化する。したがって、各月の売上高をそのまま比較してもあまり意味はない。しかし、年間移動累計の比較には意味がある。なぜなら、各月の年間移動累計売上高には、過去1年間の1月から12月までのすべての月の売上高を含んでいるからだ。
年間移動累計の計算法は簡単だ。前年度の年間売上高から前年同月の売上高を引いて、それに今年同月の売上高をプラスする。この計算を順次繰り返していけばいい。
たとえば、上記の表12の第4期1月度の年間移動累計は、
142,500千円(第3期年間売上高)-10,500千円(第3期1月度売上高)+11,100千円(第4期1月度売上高)=143,000千円と求める。
そして2月度は、143,000千円-9,500千円+10,000千円=143,000千円 となる。
この計算式を用いれば、いちいち12カ月分の売上高をプラスする必要はないわけである。
この年間移動累計を利用して、各月の売上高推移を視覚的に管理するために作成するのが、上記で示したZグラフである。グラフのドの折れ線は各月の売上実績を、斜めの折れ線は各月売上実績の累計を、そして上の折れ線は年間移動累計をあらわしている。 一月の時点では、上と下の点でしかないが、月が経過するにしたがって折れ線が伸びてゆき、最終月(一二カ月目)に三本がつながってZ字形となる。そこからZグラフという名称がつけられた。
さて、Zグラフの活用法だが、まず前年のグラフの上に今年の実績をプロットしていくことで、前年同月対比で、次の一二つをつかむことができる。
①下の折れ線=各月ごとの売上げの格差と月ごとの季節変動
②斜めの折れ線=今年度当該月までの累計売上高の推移
③上の折れ線=前年と今年の売上高の趨勢
とくに、③の移動累計線の傾向は重要なポイントで、少しずつでも低下の傾向を示すようなら、抜本的な対策を講じる必要がある。
また、年間売上予算を各月売上計画に分配してZグラフを作成し、そこに今年の毎月の実績をプロットしてグラフを重ねていけば、売上目標に対する推移を視覚的につかむことができるから、より実戦的な売上高管理ができるようになる。