• +03-5436-8908
  • info@egg-recruit.com

思い切った発想の転換が成功を呼び込む

思い切った発想の転換が成功を呼び込む

従来、飲食店のオープンといえば、まっさらな新店舗の物件を探して、そこに一からお店づくりしていくというのが常識だった。いや、いまでもなお、これが常識と信じている人は多い。飲食店の経営を考えている人には当然、自分の理想のお店像があるだろう。こんなお店を経営してみたいという夢があるはずだ。いろいろなお店を利用しながら、あるいは飲食店を紹介している雑誌を見ながら、将来の「自分のお店」を思い描いていることだと思う。それはそれで素晴らしい夢である。

また、現在、飲食店に調理師やサービスマンとして働いている人たちにとっても、自分のお店を持つことは大きな目標に違いない。そして、苦労して一国一城の主になるのだから、自分の思い通りのお店にしたいと思っていることだろう。その気持ちも私にはよくわかる。毎日、勤務先のお店を見ているわけだから余計に、自分だったらこんなお店にしたいという気持ちが強くなるのだろう。

夢を持つのはいい。ただし、ビジネスとして成功させたいと思うなら、夢を追うだけではいけない。いま、 一般的な「自分のお店」という夢について取り上げてみたが、ここで何か気づくことはないだろうか。それは、お店の店舗自体のことに、あまりにこだわりすぎているということだ。

どんなお店にするのか。そのプランを具体的に詰めていく作業をコンセプトづくりという。そして、飲食業は料理や飲み物を通して、お客様に楽しく豊かな時間と空間を提供するビジネスである。ただお客様が注文する料理を出せばそれでいいというものではないし、快適な場所さえ提供すればいいというものでもない。商品(料理)、サービス、雰囲気のトータルな付加価値を提供することで、お客様に喜びを売るビジネスだ。

さて、ここで気づかなければいけないのは、店舗とはそのトータルな付加価値の一部にすぎないということである。たしかに、お金をかけて優秀なデザイナーを使えば、快適な空間をつくることができるだろう。

しかし、飲食店に求められるのは、たんなる快適空間ではない。料理はもちろんとして、そこに人(お店のスタッこによる温かいサービスが加わることで、本当に楽しく快適な空間になるのだ。どんなに立派な店舗でも、質の高い料理とサービスが伴わなければ、お客様にとって価値のある空間にはならない。お店の雰囲気づくりでは店舗の内装そのものも大事だが、それを生かすのはあくまで料理とサービスなのである。

実際、店舗自体にお金をかけていなくても、気分よく過ごせるお店はたくさんある。料理がおいしくスタッフの配慮もキメ細かい。そして、店舗はけつして新しくはないが、いつも清潔感に満ちている。この究極のケースは老舗だが、お客様は、こういう付加価値のバランスのとれたお店に、本当の飲食店の価値を感じるものなのである。

バブル時代の一億総グルメを経験したいまのお客様は、外食に慣れ、お店を評価し選択する能力をしっかりと身につけている。何が本当のお値打ちなのかを見抜く目を持っている。飾り立てても中身がなければ、目を向けてくれない。いま、世の中はあらゆる分野で大きく変化しているが、飲食業も変わらなければならない時代にきている。お客様の「常識」が変わっているのだから、お店側も古い「常識」を捨てなければいけない時代なのだ。

飲食店経営者にとって、店舗は自分の城だ。そこに思い入れを込めたい気持ちは痛いほどわかる。しかし、これはビジネスなのだ。ビジネスとして成功できなければ、立派な城など何の意味もないのである。なぜ新店舗でなければならないのか。なぜ居抜き店舗ではダメなのか。ここをよく考えてみることだ。

新しい時代には新しい価値観が必要だ。思い切って発想を転換してみよう。そうすれば、居抜き店舗の魅力がはっきりと見えてくるはずだし、成功もぐんと近づいてくるはずだ。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。