空調設備は厨房の設備機器類と同様に、新品を買うとなるとかなりまとまった金額の投資になる。したがつて、これがそのまま使えないとなると、居抜き店舗の活用のメリットが大きく損なわれてしまう。
通常、空調設備は冷暖房設備と換気設備との二つで構成される。その意味では、いろいろな機器類を組み合わせてある厨房設備機器類のチェックよりも簡単といえばいえる。確認作業はずっと単純だ。しかし、飲食店の設備に慣れていないと、肝心のチェックポイントを見逃してしまうことが多いのもまた、この空調設備なのだ。
まず、冷暖房設備を考えてみよう。スイッチを入れてみて、きちんと冷風・温風が出てくるか。そのチェツクだけなら子どもにでもできる作業である。しかし、お店の冷暖房は、機械から冷風・温風が出るというだけではダメなのだ。問題は、店内隅々まで、限なく快適な冷房・暖房ができるかどうか、なのである。したがって、このチェックにはけっこう時間がかかる。ある程度の時間、冷房・暖房してみなければ、実際のところが正確につかめないからだ。
とくに、小さなお店の場合、オープンキツチンのカウンター席を活用することが多いなど、客席フロアの形が不規則な場合が少なくないが、そうすると、冷暖房の死角ができやすい。設備から直接風が来る場所は冷暖房が効いても、カウンターなどの角の部分で空気の動きが遮られたりして、効きのよくない場所ができやすいのだ。ある程度のことは仕方がないが、効き目のあるなしがあまりに極端な場合は、やはり一考を要する。
なお、冷暖房というと、客席フロアにばかり関心が向いてしまいがちだが、厨房の効き具合もしっかりと確認すること。厨房は自分たちが働くところなのだから、暑さ寒さくらい我慢すればいいという人もいるが、それは間違いだ。いまはそんな時代ではない。自分はいいとしても、そんな劣悪な労働環境ではスタッフが長続きしない。とにかく長時間働く場所なのである。
一方、換気設備だが、これもある程度の時間をかけて実際に機械を動かしてみることが基本だ。そして、お店を営業する場合と同じ条件でチェックすることが大切である。まず、冷房。暖房を同時に作動させるのは当然として、厨房で火を使った場合の煙の流れなども入念にチェツクする必要がある。換気など換気扇が付いていれば大丈夫だろうと思いがちだが、換気扇の能力によって、換気の具合にはかなりの違いが出る。とくに、焼き物や揚げ物メニューの多い業種業態の
場合、換気が十分でないと煙や油煙は客席フロアに流れてしまう。当然、お客様の居心地は悪くなるし、店内の汚れもひどくなる。その意味では内装の汚れ具合もバロメーターである。また、喫煙できるお店にする場合は、タバコの煙の換気も非常に重要なテーマである。店内に紫煙が淀んでいるようでは、これからの時代のお店とはいえない。